ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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038:後の祭り

 

大きなため息が出た。

覗いても、何も見えない。

見えるのは電脳世界の奥。

 

称するならば、電脳世界と電脳世界の狭間。

インターネットエリアの間隙。

何処に繋がるとも知れぬ、底。

 

いやそもそも、底があるかも分からない。

下手に踏み入れば永遠に電脳世界のエリアとエリアの境目を漂流するだけのモノにも成り兼ねない。

確立したエリアの外とは、そう言った場所なのだ。

それこそ、飛べる存在でもなければ。

 

「――――――流石に追うのは危険です」

「ダな」

 

淵から離れ、座り込んで項垂れる。

それしか出来ない。

リーガルと協力して作り出した切り札。

 

広範囲に爆発を巻き起こす《ブラックボム》。

それを圧縮し、レンガ模様の装甲内に封入。

起動時には接触と同時に噴出。

一点凝縮された一撃で以って相手を砕く。

 

防御不能の必殺技。

あらゆる予定を打ち砕く。

故に《プロットブレイク》。

カーネルの《アスパイアブレイク》に匹敵する一撃として名付けた技だが、

 

「…………ハぁ~~~ア。逃げられタ」

 

カーネル同様《アンダーシャツ》はどうにもならなかった。

連続爆破式にすべきだったか。

いや、《ダークネスオーラ》を破れる威力にはしたかった訳だし、成るべくして成った失敗と思うしかない。

 

バグの欠片の研究を進めたくはあるが。

おおよそ現行で出来る上等な手段を以ってもデリート出来なかった。

この様であれば、別の手も考える必要が出てこよう。

手管がない訳ではないが。

改めて、ため息を吐きそうだ。

 

どれだけの時間戦っていたのやら。

その成果が、失敗。

しかも奥の手《プロットブレイク》を使用した上、あのセレナードと共闘していたにも拘らず、だ。

徒労感を覚えざるを得ない。

 

ワイリー様にはその辺りの映像を巧い具合に暈して頂ければだが。

その時間があるか。

いやはや本当に。

本当に、何だったのやら。

 

項垂れ。

暫く。

顔を上げる。

セレナードは変わらずそこに佇んでいた。

 

「……………………ドも」

「はい」

 

居られると。

その、一応アメロッパ所属なので。

やることをやらないとならない。

胡坐から軽く立ち上がりつつ体を解すように動かして、データを探る。

 

一応、不審なナビを見付けた場合の対応マニュアルを受け取っていた。

ワタシ、アメロッパには所属してない扱いのハズなんだが。

愚痴の一つでも口にしそうになるのを堪えながら、引っ張り出したソレを開き内容を読み上げる。

 

「ゴホン。アー…………ワタシは、アメロッパの方のボンバーマンっつウ。おめえは?」

「セレナードです」

「ウん、知っテる……セレナード、所属は?」

「ありません」

「所属は、ナし……話を聞きタい、同行願えるカ?」

「ええと……」

「はイ無理、と……」

「……いいのですか?」

「流石に無理言ワねえ。ワタシだけジゃ勝テなそうダしな――顔写真良いカ?」

「遠慮できますか?」

「顔はNG、ト……大丈夫ダ」

 

残りの細かい項目もあるが。

面倒臭いから全部不明、として終わり。

送信。

顔についてはワタシの映像データなりから引っ張り出したモノを提出させられるとは思うけど。

 

ともかく。

一応エリアとしては通ってるから、メッセージは届きはするだろう。

多分。

届かなかったら届かなかったで提出すれば良いだけだし。

周囲への警戒は引き続き怠らないようにしながら、一先ず頭を下げておく。

 

「今回はすマねえ……フォルテ取っ捕まエるのに巻き込んじまっタ」

「いえ。こちらこそ、彼のことで巻き込んでしまいました」

「……その、彼っテのは?」

「……聞かないで頂ければ」

「分かっタ」

 

言葉に僅かな鋭さが混じったのを察して引っ込める。

セレナードとして、あまり触れられたくない事柄なのだろう。

なら無理に追及することでもない。

と言うか、それならなんか意味ありげに言わないで欲しかった。

 

とりあえず。

忘れていた回復を、《フルエネルギー》で応急的に。

ボンバーアーマーに入っていた罅とも傷とも付かない損傷が、それ一つでサッパリ消え去る。

本当に便利なサブチップだ。

 

流石に、内部的な細かなバグだとかはシコリのように残ってる感覚があるとしても。

残っている中の一つをセレナードに押し付けつつ、そんなことを思いながら頷く。

まあ、渡したのは恩の一つでも売っておいて損はないだろう、という浅はかな考えだが。

特に必要ないだろうに、早速使って一応の回復している姿を眺めつつ、今更のように身震いする。

 

フォルテ。

セレナード。

今のフォルテはともかく、セレナードは紛れもなく最強に近しい。

それは肌で感じることの出来る感覚。

 

こうして何気なく接してはいるが、心身の何処かから危険信号を発し続けている感覚が確かにある。

幸か不幸か、セレナード自体はカウンター型とでも言うべきバトルスタイルだから積極的に攻めなければセレナード自体の性格も相まって問題は起こらないだろう。

と思う。

 

「……しかし貴方は」

 

無言のまま周囲を見渡していたハズのセレナードが、気付けばワタシを見ながらその口を開いていた。

 

「些か、妙な――」

 

咄嗟に。

ワタシ自身の口元に指を当てる。

何となく。

しかし、奇妙な確信があった。

 

セレナードが。

アーマーの中のワタシの存在を確りと捉えている、という。

奇妙な確信が。

 

「――ボムを使っていましたね。あれは?」

「《プルルンボム》っつウ。パインってヤツが使ってテな――ワイリー様……ワタシの主人に真似テ作って貰っタ」

 

ということにしている。

 

「自作ですか……なるほど。道理で見掛けない筈です」

「自慢の主人ダ。会ってミるか?」

「遠慮させて頂きます。そろそろ行きますので」

 

短い会合だ。

何故、残っていたのか。

ワタシを心配してくれたのか。

それとも中身を聞きたくてか。

 

しかし互いに聞くことはなく。

そんなことを聞くこともなく。

背中を向け、歩き去っていく。

その後ろ姿に、それでも聞いておく。

 

「何処ニ?」

「フォルテを」

「気を付ケろよ」

「貴方も」

 

そうして。

これと言って特別な言葉もなく。

セレナードと別れた。

 

 

 

その後の話。

後続隊と合流するのには、随分と時間を要した。

生憎、ワタシ達の戦っていたエリアはほぼ壊滅。

最低限のルート位なら何れウラの王となったセレナードが通すとは思うが、まだ。

そんな訳でパルクールみたく跳ね回りながら戻る羽目になった。

 

とはいえ、完全に通れる場所ばかりな訳でもなく。

通りたいエリアの一つばかりは殆んど完全崩壊。

どうやっても無理だったため迂回路を探しながら遠回りしつつ、と言った具合に戻ることになった。

記録ではあまり分岐していなかったハズだが、それはあくまでもゲームの話。

現実ではそうでもなかった、という訳だ。

 

だが悪いことばかりじゃあない。

幸いにも、収穫も多かった。

浅層とでも言うべき地帯とはいっても、流石はウラインターネット。

お陰でミステリーデータを多く入手出来た。

 

特にこのミステリーデータ。

アメロッパの辺りと違って、まだナビ入りが殆んどなかったのか探索がされた形跡もなく大量と言って良い。

単独行動だったから分配の心配もなし。

 

正直な所。

そう言う風に見掛けるミステリーデータを片っ端から確認していたのも、時間が掛かった要因の一つなのは秘密だ。

サブチップの《アントラップ》がないのも不便だ。

擬態したウイルスが襲い掛かって来ることもあった。

 

何はともあれ。

紆余曲折の末。

元の、アメロッパから探索をしていた辺りへと無事に戻れ、後続隊と合流を果たした後どうなったかと言えば、

 

『――この、馬鹿者がァアアア!!!』

 

報告をする暇もなく。

忙しいハズのカーネル経由でプラグアウト用のデータが渡されたかと思えばソレが強制的に働いてすぐコレだ。

一応、ワタシ用となっているPETに戻ったかと思えば線を引き抜かれ。

 

にっちもさっちもいかないワタシに説教。

『無茶が過ぎる』だとか『どれだけ心配したか』だとか。

口では色々と言っているが、周囲を見て察した。

 

まだ、ワイリー様のモノではある研究室。

居並ぶワタシの口から報告を聞きたいと思って来ているのだろう軍の上層部連中。

それを巧い具合に騙くらかすのが一先ずの目的であろう。

と。

 

察してしまえば此方のモノだ。

わざと色々な言い訳を口にして、ワイリー様の怒りを煽るようにしながら数十分。

一人二人と消えて行き、最後の一人が消えた所で息をゆっくりと吐く。

少し訝し気に口を閉じられた所に、こう言った。

 

「軍人連中居なくなっタし、報告させて貰ウ」

 

なんて。

正座から立ち上がりつつ口にして。

いやあ。

怒られるようなことをわざと言うのは気分がよろしくなかったから。

 

等と口にしていて、すぐ気付いた。

ワイリー様から表情が消えたことに。

首を傾げている内、キーボードを叩かれたかと思えば現実世界の部屋の方に完全なロックが掛かった音がし、

 

『ボンバーマン』

 

一転。

普段見ることのない、ニッコリと微笑むお姿に、

 

『ゆっくり、話をしようか?』

 

失敗を悟らざるを得なかった。

 







今後、詳細を出すことのなさそうなオモシロ起源説内実。

・セレナード、ダークロイドかその類型説(ダークマンの発言、自身が闇のチップ等より)
・セレナード、本当はエンカーの予定だった説(3Bのパンク、所々の金の鎧っぽい装飾等より)
 ∟バラードを出す隙間がなかった?(エンカーっぽい要素はセレナードの反射、ヤマトマンのスピニングリフレクト等)
 | ∟フォルテが代替?(フォルテのアースブレイカー、なお2で既に出ていたのは無視)
 |
 ∟・セレナード、慈悲言う割に慈しみ要素が薄いのは欠けている説(ウラの世界はギブ&テイク、エグゼ3の慈しみの扉の先に居る存在等より)
  ∟四無量心の一つである慈を手に入れられなかった?
   ∟欠けているため梵天(神)に到れず、王でしかない?

上記のようになります。
分岐先の部分は殆んど想像に依る部分で、仮説は「・」の部分になります。
なお本小説では恐らく何らかの関わりが出て来る要素があったとしても、一番上の「ダークロイドかその類型では?」ぐらいかと思います。

なお、真面目な起源説。

・セレナード、ウラインターネット管理用ナビ説

となります。
ただ、此方は此方で説得力はあるものの、ヤマトマンがわざわざ出奔して配下になっていたり、光祐一朗がサーバーの場所を知らない様子だったり、科学省の危機にドライだったりと。
科学省よりも、光正が独断かつ秘密裡に進めたのでは疑惑が出てきたりとで怪しい部分もあります。
それはそれで、セレナードが光正に対して何処か余所余所しい言い方であったりしますので謎が多いですが。



長々と記載しましたが、これらに無理矢理触れることはこの先ないかと思います。

今後もお楽しみ頂ければ幸いです。
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