ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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039:ウラの価値

 

一応のPETが、完全にワタシ用になった。

常に連絡が取れるように。

また、プラグアウトが出来るように。

基本的にはワイリー様宅の機材に接続されたままにするらしい。

プラグアウトするならそうじゃなきゃ困るが。

 

とにかく。

これがなかなか便利だ。

ウラインターネット。

そこを、楽に出入り出来るから。

 

「ん~……」

 

ワイリー様に一晩滾々と理詰めされ、精神がパズルみたくバラバラにされるかと思ってから暫く。

いや本当。

激情家で忘れることもあるけど、そもそもワイリー様は頭が良いお方なので。

逆に冷静になられると、もうなんか、淡々と詰められていくあの感覚はもう味わいたくない次第だ。

 

とにかく、仮称ウラインターネットはそのままとなっていた。

されたのは最低限の、ウイルス侵入防止ぐらいか。

現状、それだけ。

実に酷い状況だった。

 

しかしその酷い状況は、このワタシにとって追い風となっていた。

修復云々でまた暫く監禁される見込みになっていたが、アメロッパ軍からの要請。

あと、パインの身もあって。

ボンバーマンとしては十日、パインとしては三日で出ることが叶った。

 

いやはや本当にウラインターネットは凄い。

ミステリーデータを取り放題。

倒したウイルスのチップに関しても好き放題。

 

アメロッパから求められるのは把握出来たマップくらい。

だがそれにしたって、何処まで教えるかは完全にワタシの匙加減。

大手を振って出入りできる上、ウラのマップを把握。

 

これ等を利用して、将来的にワタシが様々な場所へ好き勝手移動出来るようにと考えてはいる。

だが強いてどれか言うならば。

これはやはり、チップを捌き放題と言う点か。

 

「枚数はぁ……まあまあですけど」

 

現在、アメロッパで優良なチップとして挙げられるのは《ファイターソード》。

出の早さとそれなりの距離まで届く、威力100の《ロングソード》みたいなもの。

数値に表して三桁行くのは他に、使い辛い《ブレイクハンマー》や《カウントボム》等しかなかった。

しかしウラインターネットはどうか。

 

《ダイナウェーブ》。

百に届き、出の速さと貫通力も備えた衝撃破。

 

《メガキャノン》。

貫通こそしないが狙いさえ確かならほぼ当たる射撃。

 

《オオツナミ》。

《ガイアハンマー》。

どちらも前方一帯を殲滅出来る火力を備えた範囲攻撃。

 

《フレイムソード》。

《アクアソード》。

ソード系の出の速さは据え置きに、属性と威力を兼ね備えた優良チップ。

 

主だったモノを挙げただけでもこれだけある。

これ等を手に入れる手段がある訳だ。

非常に大きな価値がある。

にも拘らず、調査は後回しにされているのには、理由は大きく三つあった。

 

「それなりの物が手に入ったかにゃ~」

 

一つ目。

未だにキャスケット様含めた事件が尾を引いている、一部のネットワーク情勢の悪化。

それに伴う忙しさ。

 

ワイリー様はバレルの教育を主にしており、あまり役に立たない。

そういう状況下でカーネルまでも、謎のネットワークことウラインターネットに回す余裕はない。

というより、警戒以上にナビを回せる余裕がない。

ウイルスの強さから、バックアップがあろうともデリートされる痛手を考えれば。

 

二つ目。

現状はまだ、ネットナビの強さが然程重視されていないことだ。

先に挙げたことと矛盾しているように感じられるかも知れない。

 

だが現在、ネットワークが荒れている主な原因は現実世界の治安悪化による部分。

その修復や応急処置に、ネットワーク上でネットナビがウイルスのデリートに動いていると言う状況。

 

そう。

将来的にはともかく、現状はネットナビ対ネットナビと言う状況は殆んど想定されていない。

あくまでもウイルスバスティングが主な目的である。

これは推定される未来の惨状を知っているから感じられる違和感なのだろうが。

 

故に、高性能なチップでなくともウイルスへの対処が出来れば十分なのだ。

ワイリー様のお造りになった《ファイターソード》等、まさにプロトバグ対策以外の何物でもなかった訳だし。

無理に潜る理由がない。

 

そして、三つ目。

フォルテとセレナードの存在。

不明なネットワークエリア内に存在していたこの二体。

フォルテは二ホン製と素性が知れてはいるが、セレナードは完全に不明。

更にそこにデリートされた謎のナビが居たという情報も合わされば、謎のネットワークはどのような場所か。

 

少なくとも、ただのナビでは容易くデリートされるような修羅の地。

という認識が、アメロッパ軍のネットナビやオペレーター全体に行き渡っていた。

ワタシもこの二体に注意を向けていた所為で戦闘が始まって暫く観られていたと気付かなかったが、躊躇がなければエリアを破壊出来る規模の攻撃が行き交う地獄絵図。

それを知り、共有されればそりゃあそうもなるという訳で。

 

結果。

最初の頃に行われた調査自体そもそも相当危うい橋を渡っていたと言う認識が罷り通っている。

そんな場所に入り込み、無事に戻って来れるのはアメロッパでも片手で数えられる程も居ないだろう。

という。

合計三つの事柄を理由に、ワタシは単独で悠々とウラインターネット探索を進められていた。

 

「って感じにゃんですけど、いかがです?」

「悪くはないだろう……」

 

それはさておき。

一番最初の探索の際、当然ながら先遣隊は幾つかチップを入手出来ていた。

全部でおおよそ、数十枚ほどだったか。

 

内の半数以上はアメロッパの研究機関行き。

残りの一部に関しても。

優秀だが、単独での使い勝手の難がある《リモコゴロー》や《サンダーボール》に《トリプルアロー》等々。

 

さてそこで改めて。

アメロッパに把握出来たエリア等の情報さえ回せば問題ないワタシという存在。

其処から齎される、強力ながらも枚数が酷く限られたチップの数々。

何が起こるか。

そう。

チップのプレミア化が発生した。

 

「……大っぴらな宣伝までは許可出来ないが、販売自体は許可する」

「いえいえ~。許可頂けるんにゃら、十分有難いですよ?」

「………………すまない。苦労を掛ける」

 

一般的なチップを容易に上回る性能。

限られた枚数。

そのチップ一枚さえあれば、伸し上がるのも容易と思わせる魅力。

カーネルが軍機であるし、他にやることは幾らでもある以上、実質的に可能な入手先はボンバーマンのみ。

その実情が、価格の暴騰を引き起こしたのだ。

 

売って欲しいと言ってきた輩に吹っ掛けたのもあるが、例えば《ガイアハンマー1》。

ハンマーを振り下ろし、前方一帯に衝撃を起こすチップ。

一撃で広い範囲を殲滅出来る高威力チップ。

 

たった一枚に掛けたその額、十万ゼニー。

ワタシから出た段階で、だ。

後々になって、転売を繰り返された末に五倍以上の値になっていると聞いた時は流石に白目を剥くかと思った。

 

いや、分からないでもない。

現状まだまだ強いチップは少ない。

それでもその額はおかしいだろう。

チップマニアでも居るのか。

そう思わざるを得ない金額だ。

 

さて。

そんな、供給元が絞られるが故の暴騰。

何処が焦ったかと言えば、アメロッパだ。

 

現状は供給元が絞られ、凄まじい額で取引されているのだ。

チップバブル。

とでも称そうか。

そう言ったことが発生することを恐れたのか。

 

しかし現実。

強力なウイルスや、所属不明のネットナビの存在する未知のエリアを探索し得、かつ万が一デリートされた場合に問題のない存在などアメロッパには。

 

居た。

そう。

居たのだ。

名誉アメロッパナビ。

パインという存在が。

 

「――――良いか?」

「いらっしゃいにゃ~! ご所望は?」

「《メガキャノン》。五万出そう」

「流石、太っ腹ですにゃ! コードの希望は?」

「! ――何がある?」

「アルファベットのKからOまで揃ってますにゃ」

 

そういう訳で、アメロッパからの依頼。

正式な、と言う訳ではないが。

依頼は依頼。

 

実際、当初は研究用のチップデータを欲したアメロッパがカーネル達を利用してパインを探していたらしい。

お陰様で一ヶ月から僅か三日に期間が短縮されて幸いだった。

もし口に出せば、ワイリー様に監禁されること殆んど間違いなしだが。

 

流石にあれ程までに心配されていたと分かれば多少は懲りる。

だが心配が過ぎる。

フォルテと遣り合う機会なんぞそうあってたまるかって話だ。

ウラで伝説扱いの輩、その一体がそう簡単にお目に掛かれる訳があるかと。

 

まあとにかく。

当初はアメロッパとパインの間だけでするハズだった取引。

だが、一般向けの供給元をボンバーマンのみから、最低限ボンバーマンとパインの二つ用意することで暴騰を少しでも和らげようとしている様子だ。

 

その上で、現在。

こうして販売した先のネットナビ。

性能は然程だが、軍用ではない。

 

確か、ゼフラム社だとか何とかだったか。

一般向けのネットナビの製造をし始めている会社。

そこが準備を進めている試作ナビが、わざわざ買いに訪れて来ている。

 

しかしこれはあくまでも一例。

追々、そう言った所がウラインターネットに潜り、チップデータの収集を進めても行くだろう。

今、進めているのはそのための先行投資と言うモノ。

 

「ありがとうございまぁ~す」

「いや。此方が礼を言う」

 

そう、去ろうとするナビの腕を掴む。

訝しむその顔に此方も顔を寄せ、小声で囁く。

 

「コレ、サービスですので」

 

さっと手にチップデータを握らせ、何事もなかったように笑顔で振舞う。

《インビジブル》。

主にウラインターネットのゴースラーから手に入るチップだ。

 

その真価はご存知、殆んどの攻撃が当たらなくなるインビジブル状態。

攻撃を避ける上ではこれ以上に優れたチップは存在するかも知れない。

だが、反撃まで考慮するならこれ以上のチップはないだろう。

 

下手しなくとも今し方に売り払った《メガキャノン》よりも高値が付く。

しかし、これは投資。

将来的な恩を売れると考えれば高々十万やニ十万ゼニー、はした金に成り得る。

 

「――――――――」

「これからもよろしくお願いしますね?」

「――――オペレーターからのメッセージだ。今後ともよろしく、と」

「はーいにゃ!」

 

先々、ウラに潜る可能性の高いボンバーマン。

それよりも、パインの顔を売りたい訳だから都合が良い。

しかも使っても違和感のない資金が増えるオマケ付き。

というか、スクエアに突っ立ってれば一日で百万ゼニーとか普通を通り越して余裕に稼げるし。

あまりにヤバイ。

 

例として挙げれば。

おおよそ二十年後に富豪がネットナビのカスタマイズに一千万ゼニー費やして自信満々の様子を見せていた記録がある。

現在と未来で技術力の差こそあれど、それだけの額を十回も開ければ稼げる訳。

 

流石に毎日開くつもりも開ける余裕もないけれども。

将来のギガクラスチップの数倍ぐらいの値段でポンポン売れてる。

しかもこれでも一枚当たりの売値を、あくまでもチップによってはだが、ボンバーマンの時よりも低めに設定してる訳だから本当にヤバイ。

 

とはいえ、大きな問題はない。

研究開発用に枚数を絞っているボンバーマン。

危険地帯のチップを『好意』で取ってきているパイン。

 

そう言った認識であるらしいからだ。

どちらかと言えば問題は、

 

「あ、いらっしゃいにゃせ~」

 

時折見受けられる。

ワタシを見る、目。

探るような視線。

ボンバーマンとパインを、結び付けて考えているモノの存在だろう。

 

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