「やってくれましたね」
『……そうですか?』
何処か緊張している様子で、PETの中の彼女が答えた。
彼女。
で良いのだろう。
自立型ネットナビ。
疑似人格プログラムを組み込まれているネットナビの中でも、特に高度な思考を行え自己判断が出来るようなナビをそう称する。
具体的な例はそれこそ数えるほどしかないハズだが、それでも業界では有名な話だ。
「お陰で大いに盛り上がりましたがね! この分なら。まだPETを持っていない子供達も持つようになりそうです」
『なら良かった』
「ええ! 参加して下さったのは勿論ですが、チップの配布まで……」
特に有名所を挙げれば。
言語機能に欠陥こそあれども破格の攻撃と耐久の性能を有するストーンマン。
ボムと言う時間差のある攻撃を難なく使いこなすボンバーマン。
二ホンで製造されるも人格に難があり破棄されたフォルテ。
アメロッパ軍の公然の秘密にして最終兵器、カーネル。
そして、彼女。
「……ところで我が社で用意出来る中では、最も良いモノを用意させて頂いたつもりなのですが……居心地は良くないですか、パインさん?」
『いえ……電脳世界と繋がってないので落ち着かないだけですよ』
ネットナビ、パイン。
製造者不明。
「ボンバーマンとカーネルのデータを基に造り出されたのではないか」と実しやかに囁かれている無所属のナビ。
実力も、広大かつ強力なウイルスの闊歩する不明の電脳地帯を平然と突き進めるだけの能力。
疑似人格の面でも、目立ちたがり屋に見えるが人当たりも良く言動以外に癖の少ないナビと言って良いのではないだろうか。
言動の癖がとにかく強いが。
更に言うと、開発者としても有名だ。
時間によって自滅するため詳しい調査が出来ていないそうだが、自販機を模したシステムで販売している食品プログラム。
その完成度は、アメロッパ軍より仕入れた話では彼のワイリー博士が認めたと言う。
数少ない欠点は、ほぼ間違いなく元の持ち主もとい製造者から逃げ出したことだが。
『…………』
その証拠にか。
PETと言う、ネットナビにとっては家の中とでも言うべき空間でもその視線は目まぐるしい。
気を払っている。
どう移動しているか。
PET越しとは言え、現実世界に気を払っている。
そんな様子だ。
「…………」
正直に言えば、このままオフラインのパソコンなりに繋いで研究に使いたくもある。
性能面。
人格面。
どちらで見ても優良。
いや、我が社で製造出来るナビの範疇にない。
仮に模造し、販売する場合でも許諾点は軽く越えられる。
しかし残念ながらそうはいかない。
アメロッパ国もとい政府自体が、パインと言うナビを非常に使い勝手の良い道具として扱っているのだ。
突如として発見された不明地帯の調査やら何やらに、と。
流石にアメロッパを向こうに回せるほどの度胸は、私個人でも、ゼフラム社自体にも、ありはしない。
社が主催したパーティーも中々盛り上がりの内に終わることが出来て、それで裏切るなどと。
最低限、分別はある。
つもりだ。
「…………さて」
私と彼、ひいては社の利益とも成り得る目的はそれはそれとして果たさなければならない。
事前に時間を頂きたいとは伝えていたが。
扉を閉めたことに若干の反応を見せた彼女に思わず苦笑しながら、コードを伸ばして突き刺す。
パーティーで使っていたほど、画面も大きくなく上等な物でもない。
とはいえ、電脳世界にも通じている、それなりのパソコンだ。
話の時にはキチンとロックを掛けるけども。
一先ず。
刺したのに気付いてすぐ移動したのを見て口を開く。
「パインさん」
『……私?』
「もちろん――件の彼を呼んで来ますので、少しお待ち下さい」
『分かった。寛がせて貰うわ』
「……ごゆっくり」
片手を軽く振って来る彼女に同じように返し、廊下へと出る。
戻って来る時には、固さも取れていることを願って。
取り決めていた信号。
それのある場所にはすぐ着いた。
視線を交わし、データの受け渡しという形で軽い情報の共有を済ませる。
それだけで確認は十分。
入れ替わる。
それだけだ。
あとはゆっくりと待ち構えるだけ。
以前に作っておいた回るオフィスチェアに腰掛けて、クルクルと回りながら瞼を降ろす。
閉じた所で周りを認識は出来ているのだけれども。
つい先程、と言うほどではないがさっきは少し興奮してしまった。
マグネッツ。
奥方は生憎、いわゆる原作とでも言うべき記録の中には登場はされなかった。
しかし二人。
ガウス氏。
そして、テスラちゃん。
この二人は、登場するか、する可能性のある二人だった。
だからこそ予定にない羽目の外し方をしてしまったのは、恥ずかしい限り。
そう。
予定になかった。
「………………」
ワイリー様は、ワタシの生みの親であらせられる。
光親子の二人は、生憎ながらワイリー様の仇敵とでも言おうか。
警戒心とでも言うべき感情が少なからずあった。
セレナード。
フォルテ。
この二体も同様だ。
生半可な気持ちで対すれば即座にデリートされるだろう位の心持ちはあったのだ。
そういう意味では、アイリスはまだその枠に入れたかも知れないが、おおよその外見を作り出した訳で感動も薄い。
しかし。
マグネッツの二人は違う。
殆んどワイリー様との関わりもなく、純粋にちょっとした感動を味わえる立ち位置の存在だと言えた。
言ってしまえば映画の中の俳優を生で見掛けたような感覚。
現実と非現実の交錯する気持ちもあって、そう言う意味でちょっとした感動。
思いの他の興奮。
故に、後になってみればサービスが過ぎたとも思う。
とはいえ、だ。
生憎ながらその気持ちはまだ終わらない。
と言うよりも。
これからがある意味で本番。
だからこそ、気を引き締めなければならない。
「……………………」
扉の向こう側。
二人分の足音を、集音機が微かながら捉えている。
その音を耳にしながら、ゆっくりと椅子の回転を鎮める。
脚を組み、指を絡め、微笑を浮かべながら扉を見詰める。
やがて足音が止まった。
控えめなノックの音が、部屋に響くのを感じる。
「……どうぞ」
一瞬の間。
微かな。
躊躇いのような間をおいてから、控えめな様子で扉が開かれ、彼等とワタシの視線が交差する。
案内役だった男が僅かに視線を揺らしているのに疑念を覚えながら、しかし絡めていた指を解き、片手でソファーを示しておく。
「お座りになって下さいにゃ――ワタシの部屋ではありませんけど」
面影がある。
記録の通りの。
ただ、髪に白いモノはまだ殆んどないが。
その事実に思わず笑みを深めれば、唾を飲み込んだ彼が何処か固さのある笑みを返してくる。
伸ばし掛けていた手を引っ込め、しかし立ったままだ。
動揺している。
慌てた様子で名刺を取り出して、しかし画面越しでは渡せるはずもなし。
視線を彷徨わせる彼に対し、ただ笑みで返す。
何をそれほど慌てているのか。
軽く深呼吸をしたかと思うと、小さく頭を下げ、ようやくソファに座った。
「――――」
『…………』
『…………』
「――さて、それじゃあ自己紹介させて頂きますにゃ? ワタシはパイン! 親しみを込めてパイにゃん、って呼んで下さいにゃん?」
『ああ、失礼しました……! 来て頂いたのですから私から名乗るべきでした! 少し、緊張していたようで……』
「気にしないで下さいにゃ」
『ハハハ、どうも……では、改めまして』
座りながら、しかし視線を此方に併せ、
『私は、伊集院秀石と申します。お見知りおきを』
僅かに固さの取れた笑顔でそう言った。
もう一人は既に挨拶してたから表面上受け取りつつ、観察する。
伊集院秀石。
ロックマンエグゼと言う作品において、欠かせないコンビ。
ネットナビ、ブルース。
そしてその主である、伊集院炎山。
彼の、実の父親である。
ただし記録が正しければ彼は二ホン有数の企業『伊集院PETカンパニー』の社長であり、王族すら招待出来る『ビッグカンパニー』と長年のライバル関係にある、とか何とかだったか。
生憎、それは記録に間違いがあったようだ。
『原作』とでも言うべき時間の二十年近く前の現時点でゼフラム社に勤めている。
ズレている。
あるいは、これから擦り合っていくのか。
分からない。
分からないが、良い機会だった。
是非とも会って欲しい人物が居ると聞いて、彼の名前が出たのは。
僥倖。
そう言うしかない。
既に『原作』から外れているのか、あるいは迫って行くのか。
伊集院秀石。
彼が、今後の先行きを計る一手にも成り得るのだから。
「いやー、どんな人が来るか心配だったにゃけど……」
それはそれとして。
「随分、格好良い人が来ましたにゃん!」
『え? ……あ、ああ、はい。どうも?』
伊集院炎山。
彼を知っているからこそなのかも知れないけれど。
何とも言えない感動が沸き上がって来る。
そんなこと知るはずのない秀石がぎこちない笑みを浮かべているが、ワタシとしてその湧き上がるモノを抑え切れない。
何せ、伊集院。
伊集院炎山の父親だ。
ロックマンエグゼの最初から一貫して光熱斗達のライバルとして出続けていた彼。
敵対することもあれど、一貫して正義の方に在り続けてはいた。
その親が目の前にいる。
彼からして訳の分からないことだろうとは思うものの、それこそサインの一つでも欲しい。
伊集院秀石自体、見た目は中々に男前だ。
両手を頬に当てるような演技を見せながら
しかし。
冷静な部分が座る二人を眺めても居た。
生憎とまだ、目的を聞いていない。
ただパーティーに併せて紹介され、まだマトモに話しても居ない。
伊集院炎山の父親である。
その情報と併せ、彼等が食事を共にすることも稀だと記録もある。
忙しなさはあれどもその様子では、必ずしも信頼に足る相手とは言い難い。
照れてるように見せながら。
実際、照れながら。
内心では冷ややかに二人を見やる。
何処か呆れたような案内人とは違い、秀石は流石か。
ワタシの視線に気付いたように、緩め掛けていたらしい気を取り直し、背筋を伸ばして目を合わせて来た。
『――――単刀直入にお願いしましょう』
「聞きますにゃ」
『私はニホンで起業します。そのための投資をして頂きたい』
「…………」
急過ぎる流れに驚きを見せる案内人。
それを他所に、微笑んで見せて、先を促す。
僅かに頭を下げた彼が、ゆっくりと息を吸い、口を開いた。
『――アメロッパでは最早、ニホンは落ち目と見る目が強いのです』
「ま、問題いっぱい起こしましたからにゃ~」
『光正博士は既に高齢。息子の祐一朗博士も居ますが、光正あっての祐一朗と言う見方が強いのです』
「と仰ると…………七光りってヤツ?」
『そうです。ネットナビの根幹であるプログラムもその実、光正博士が作り上げたのではないかだとか……根も葉もない噂ですが、そういう声もあります』
「光正博士が居なくなれば落ち目になるニホンに投資するより、アメロッパで金を回した方がよっぽど儲かるって訳にゃ?」
『そうです』
重々しく。
眉間に皺を寄せながら頷いた。
『しかし』と口を開き、続けた。
『ニホンが落ち目とは思えない』
と。
「……実際問題、粒揃いって意味にゃらアメロッパの方も凄いと思いますけど?」
『粒が揃っていても容易く一人が引っ繰り返す。光……正博士とワイリー博士という前例が既に世界を大きく変え、光祐一朗博士もまたその後に続ける逸材だと私は思っています――弊社で研究を進めているネットナビがまさにそれです』
「つまり、ニホンはまだまだ伸びると考えている訳ですね?」
『そうです。それにニホン政府――と言うより科学省ですか。科学省は、企業に対して技術の提供を惜しんでいない。惜しめる立場にない、と言う方が正しいかも知れませんが』
「疑似人格プログラムを公開しているぐらいですものねぇ」
『最近も何やらアップデートされたらしいですね。ああ、いやとにかく――ニホンであればその技術が比較的手に入り易く、使うことが出来ると言う利点があると考えています。考えているのですが…………』
「アメロッパの人達はそう思ってないから、資金集めに苦慮してるって訳ですかにゃ~」
苦り切った表情を浮かべる様に、成程と言う顔で返して頷いておく。
ワタシは、諸々の記録と直接対面したお陰で光祐一朗の才覚を知っている。
将来的に言えば、一部ではあるかも知れないが光正から己を越えたと言うお墨付きを貰えるほどだ。
しかし成程。
ワイリー様も口には出さないものの認めておられたから考えもしなかったが。
言われてみれば思いも寄らない視点だった。
光正。
光祐一朗。
親子関係であるが故に、傍から見れば光正が贔屓しているようにも見える部分があるのかも知れない。
流石にこれは、電脳世界からじゃあ感じ取れない部分だ。
『あー……失礼! 口を挟んで失礼しますよ? 私どもゼフラム社の人間は彼、伊集院秀石を高く評価しています!』
「そうじゃなきゃワタシと会わせたりもしないでしょうにゃあ」
『ええ! ……ですが悲しきかな。評価しているが故に、わざわざニホンでその才能を腐らせる等……と! 思っている者も多いのです!』
『………………』
「ふぅ~ん……そう言うアナタはどうなんですかぁ~?」
『私ですか? この場を整えた! それで察して頂きたいですね!』
「…………なるほどにゃん」
等と口に出しておくが。
既にワタシの腹の内は決まっている。
「投資して欲しい」と。
あの伊集院から。
喜んで貢ぐ。
当然。
将来的にあの炎山と何かしらの関係を築けるかも知れない絶好の機会を逃す訳ないでしょうが。
それに、先のパーティーもある。
あの場で発展のためと口にしておきながら、その直後に会った相手にその手を翻すのは無理。
難しいじゃなく、無理。
早々に話に入ったのも、あるいは入れ知恵か。
考える風を装いながらも目を向ければウインクで返された。
成程。
強か。
まあ、断る理由はない。
と。
言いたい所なのだけれども。
「……………………問題がありますにゃ」
『聞きましょう』
「ワタシ、ネットナビなので口座とか持ってないんですにゃ。だから株を買って……とか多分出来ない訳です」
『あー…………』
何か言おうと口を開く秀石だが、数秒ほどしてゆっくりと閉じた。
まあ、そうなる。
投資な訳で。
そうなれば後々何かしらの形で返して貰わないとならない。
別にワタシとしては寄付でも構わないけど、そういう建前は必要だ。
なら一番良いのは、秀石の会社設立に伴って共同株主になるような形で資金を提供出来れば良い。
しかしそこで問題がある。
ワタシは、ネットナビ。
生憎ながら人権なんてモノはない。
権利もなければ身分もなく、銀行の開設なんてのも出来やしない。
ただ放り込むことも出来なくはないけども、そうなると現実世界で色々とややこしいことになりそうなのが目に見えている。
手詰まりだ。
声を掛けてくれたのは非常に嬉しくも有り難いけれども。
そう考えているワタシを他所に、独り視線を彷徨わせていた案内人。
彼が、気を取り直そうとか、手を組み直し。
ゆっくりと息を吐いて、笑った。
『失敬、パインさん』
「なにかにゃ~」
『仮にですが――仮に、その手の問題を片付けられるとすればお幾らほど用意出来ますか?』
「即金で一千万ゼニーぐらいかにゃ~」
『なるほど一千万……一千万?』
「あ、あくまでも即金でですよ? 今出せますし」
どうしたものか。
そう、頭を捻りながらも話の流れで一千万ゼニーをポンと出す。
画面越しでも分かるだろう。
日夜ウイルスとバトルを繰り広げ、そのチップを売り払っているお陰だ。
今、出した以外の大半は何かあった時にワイリー様が使えるよう、ワタシのプライベートエリアの倉庫、その浅い場所に積んである。
現実世界のように衣食住に支払うモノがないお陰で正直、貯まる一方。
しかしまあ、電脳世界でのバトルなら毎日毎日繰り広げているから咄嗟に算段を立てることも出来るけれども。
流石に現実世界の法律とかに縛られた話になると。
わざわざ読み込んでいる訳でもないから、無力でならない。
『な……なるほどぉ…………ちなみにですが! お幾らまでなら彼に――伊集院秀石に出せるとお考えでしょう?』
『!』
「ん~? 仮に一億ゼニー分で会社を建てられるとしてですけど、買い過ぎても迷惑でしょうから三千万ゼニー位じゃないですかにゃ? 三割にゃ」
どれくらい出せるか。
買い過ぎると株主の権利だとかで面倒事も多い。
三十パーセントなら他が買う余裕もあるし、全体の三分の一に行かないなら彼からしても厄介な事にはならないハズ。
ざっくりと算盤を叩いて答えておく。
答えながら視線を軽く向ければ、現実世界で二人が視線を合わせている所だった。
腕を組んで瞼を降ろす。
どうしたものか。
どうすれば、秀石がちゃんとニホンに行って起業してくれるだろうか。
矛盾するようだが、伊集院炎山がニホンに居なければワイリー様がコトを起こされた場合に困る。
悩み。
悩ませ。
考え込み。
どれだけの時間が経ったか。
三分と経っていない訳だけれども。
『……なぜ』
「はい?」
『パインさん。貴方は私に、あっさりと三千万ゼニーを出せると断言出来るのでしょうか?』
理由。
理由か。
それは簡単だ。
「――今の電脳世界は言ってしまえば可能性の塊にゃ。アメロッパ以外で言えばニホンは光親子の力もあって発展していく一方と、此方の世界に暮らしているワタシも見ていますにゃ――まだまだ大きな企業の手が及んでにゃい内にそこに入り込もうって言う人が居るのにゃら、出す価値はあるにゃ」
『なるほど……私の見る目を見込んで下さっている訳ですか』
「それに」
『それに?』
「ニホンに更なる発展の可能性を感じて踏み出そうとしてる人と偶然にもワタシが出会うことが出来たんです。偶然にも腰を据えてお話が出来て、偶然にも――伊集院さん――信じるに足ると思うことも出来た訳ですにゃ」
だからこそ。
「この偶然に賭ける額として、三千万ゼニー、全く惜しくありません」
神妙な顔で、そう言った。
僅かに。
驚きでか二人が目を見開いた。
ワタシが短時間で伊集院秀石をそこまで評価することが意外だったのか。
まあ、嘘だけれども。
全部ではないけれど。
嘘だけれども。
何せ。
ワタシは未来を記録として知っている。
伊集院PETカンパニーと言う会社が大企業としてテレビのスポンサーをやれるレベルの企業になっていることを知っている。
大規模な大会のスポンサーをやれることを知っている。
そこに賭けれるとして。
賭けないで見逃すか。
否。
勝てると見え透いている勝負に賭けないのは馬鹿のすること。
それに幸い、ワタシには金銭の重みはそれほどない。
現実世界のように、明日食うモノにも困ると言うような直接的な被害を被る訳でもない分だけ、気楽に賭けてしまうことも出来るのだ。
『――――パインさん』
やがて掛けられた声に目を向ける。
案内をしてくれてた時よりも。
秀石を紹介していた時よりも。
話に耳を傾けていた時よりも。
何処か鋭く、真剣みの増した瞳でワタシを貫きながら、
『貴方は――――税金を払う気はあるでしょうか?』
今までにない。
薄らとした笑みを湛え。
そう嗤った。