ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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005:終息

 

疲れない。

鈍らない。

本来ならば有益な二つ。

 

「しつコい!」

「ゴッ!」

 

この二つをこれほど憎らしく思うのは早々ないだろう。

ワタシは人間の記録があるからこそ、憎たらしく思うだけなのかも知れないが。

数十度目の撤収を終えてもなお収まらない襲撃に辟易していた。

アメロッパ政府とニホン政府の折衝は未だ上手く纏まっていない。

 

他国は既にネットワークの切断を強行済み。

ニホンに残っている外国と繋がったネットワークは最早アメロッパのみとなってしまった状況下。

何とかこの未曽有の事態の収拾に巻き込みたいニホンと、大国としての威厳があるため無下にはし辛いアメロッパの譲歩の引き出し合いと言う状況になっているそうだ。

よりにもよって追い出したワイリー様の居られる国を頼るなどと、とも思う所だが恥も外聞もないらしい。

笑える話だ。

 

いや、現場は全く笑えない状況なのだが。

そう合流したカーネルからの報告でそれが判明した。

カーネルが合流すれば楽になると思っていたのに。

 

いや、楽にはなっているのだが。

コトはそう上手く収まっていない。

多くが遮断されたニホンの主幹ネットワーク。

そこに通じた唯一の出入り口。

プロトがそこに押し寄せてくるのは、ある意味で当然の結果であろう。

 

「ゴゴゴ……」

「おラ、ボムをクらえっ」

「《カーネルキャノン》」

 

機械的に。

近付いてくるプロトバグ共を相手に爆弾に弾丸、岩石をぶつけるだけの作業。

ストーンマンが岩石を手当たり次第落とす。

射ち漏らしの手近な相手にボムを蹴り込む。

カーネルはワタシでは届かない相手を撃ち抜く。

 

一瞬の油断がデリートに繋がった半日前が、最早懐かしいとすら思えるほどに作業。

単調過ぎる。

心なし、あのカーネルの目が死んでいるようにすら見えるのだから凄い。

 

かと言って油断も出来ない。

ワタシ達の後ろには、ネットワークが切断されれば早々に駆除を開始出来るよう、ネットナビ達が装備を整えている。

呑気と取れるかも知れないが、それらはカーネルを経由したキャスケット様からの指示。

であるならば守らなければならない。

早く始まらないものか。

警戒は緩めず、しかし飽き飽きとしている中、

 

「ァ……?」

「……ようやく、か」

「ゴゴゴ!」

 

唐突に。

沸くように発生し続けていたプロトバグ。

その発生数が目に見えて減った。

ニホンと接続している場所は遥か遠くで分からない。

だが、これはどうやら、

 

『待たせた』

「――!」

「ハッ!」

「ゴッ……!?」

 

即座に敬礼するカーネルの横で膝を突き、首を垂れる。

ワタワタとしているストーンマンは、少ししてから座った。

上目遣いに見れば、目を細めてワタシ達を見ているワイリー様が見える。

だが、気を取り直したかのように軽く咳払いをされた。

 

『――さて、まずはご苦労じゃった。お前達の働きで無事、アメロッパとニホンの間のネットワーク切断は終わった』

「――よろしいでしょうか?」

『なんじゃ? ――とは言え、聞きたいことは分かる。原因じゃろう?』

「はい」

『根本的な要因は不明じゃが、どうやら原因はニホンの主幹ネットワークであるプロト自体にあったようじゃ――ケッ』

「ネットワーク自体が? ……少し失礼。消えろ!」

 

身を翻した刹那、カーネルの剣先が煌く。

少し離れた場所から近付きつつあったプロトバグ達が一閃の下に消え去る。

飛ぶ斬撃。

《スクリーンディバイド》。

流石の威力だと内心で感心しつつ、探る。

だが幸い警戒するまでもなく、次は遠い。

 

疎らになったプロトバグに対しては先程までのように警戒する必要も最早薄い。

しかしそれで何かを思い出された様子のワイリー様が手元を操作され始め、少し。

チップデータが目の前に現れていた。

 

「――こちらは?」

『ウイルス、スウォーディンの持つソード系のチップでは奴等の中の弱い個体に対してすら体力の八割程度までしか削れないと分かっておった。故に! 残りの二割も一撃で削れるだけのチップを急遽作ったのじゃ! …………時間を掛け過ぎたと言わざるを得んがな』

「イや、流石ダ! ネットワーク切断の準備しなガらこの早サなら充分ダろ! ――デ、このチップは?」

『うむ。名は、《ファイターソード》! かつてアメロッパのコロッセオで戦っていたと言うファイター達が使うような強力なソードじゃ! 長さは元にした《ロングソード》とほぼ同じじゃ』

「ではすぐに配らせて――頂いても、よろしいでしょうか?」

『無論じゃ。それさえあればストーンマンやボンバーマンが居なくなっても問題ないはずじゃ』

「実際、問題ないでしょう。プロトについては後程、キャスケット様に確認させて頂きます……それでは失礼」

 

《ファイターソード》のチップデータを確認したカーネルが敬礼の後、その身を翻す。

見た限りでは二十枚ほどか。

《ブレイクハンマー》等のように範囲が狭く発動までに時間を要するチップと比較すれば、各ナビが一枚持っているだけも現状かなり違って来るはずだ。

基礎データを作られた上に配布出来るよう複製もされるとは流石としか言いようがない。

 

頷いている内に、鋭い視線が向けられていることに今更気付く。

内心慌てながら姿勢を正すが、その鋭さは緩まない。

何か不興を買ったか。

疑念がメモリ内を過ぎるが、然程経たず解消された。

 

『ボンバーマンは勿論じゃが、ストーンマンも随分と消耗しておるな……』

「ストーンマンも尽力しタが?」

『そこは疑っておらん。単に、結果的にヤツにワシの想定を上回られたことが……』

「……ゴゴゴ?」

『……何でもないわい! ストーンマン、ボンバーマン、戻って来い! すぐにメンテナンスする!』

 

頷いたらしいストーンマンがそのままプラグアウトしていく。

何度かプロトバグに貼り付かれていたストーンマンは、メンテナンスに時間が掛かるだろう。

かく言うワタシも一度、貼り付かれて損傷を受けている。

だが、カーネルの一撃よりかは正直軽い。

 

「ワイリー様」

『なんじゃ!? さっさとせんか!』

「ワタシは今しバらく、様子を見テぇ」

『なに……?』

 

ここで言われた通り下がっても良い。

良いが、それでは自立型ナビの名折れ。

ワイリー様の評価をより良くするためにも様子見に残っておく方がアメロッパの心証は良いだろう。

 

それにそもそも、幾らワイリー様と言えどワタシとストーンマンのメンテナンスを同時に行えはしない。

しないと思う。

しないだろう。

プラグアウトするように仰られているのはあくまで、デリートを警戒されてのハズ。

 

「後ろカら見るダけダが、ダメか?」

『……良いじゃろう。だが、危ないと思ったらすぐプラグアウトするんじゃぞ? 返事は?』

「オう」

『良し! ……無理をするんじゃあないぞ?』

 

そうして通信を切られた。

意見をしてデリートされると思ってはいないが、それでも通るのはありがたい。

実際、後ろから眺めているだけのつもりだ。

《ファイターソード》のチップは全て別個に配られた結果、現れた赤いプロトバグはあっさりとデリート。

それ以外のプロトバグも協力してか、カーネルがあっさり始末している。

あくまで万が一に備えての意味合いでしかない。

 

後ろにワタシが控えていることで、ナビ達もどこか安心した様子で動き回っているように見える。

とりあえず心配ないだろう。

そうは思いながらも、《ハイパーボム》を足で弄びながら眺めていた。

 

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