ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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※今話は長めになります。
 また、ボンバーマンやガールのキャラがそろそろ出てきます。





053:知識チート

 

 あ、読み終わっちゃったわ。

 続きはー……あ、続き買ってなかったっけ?

 面倒だけど、買いに行くしかないわねー。

 

 モモさんモモさん!

 

 いや、急に入って来ないでよ。

 

 そんなことはどうでも良いにゃ!

 そんなのより、その本の続き、欲しくありませんかにゃ?

 

 いや、欲しいけどさ……別に買いに行けば良いし。

 

 お家に居ながら買えるって言ったらどうかにゃ~?

 

 家に居ながら買い物ぉ?

 なーんか怪しいわねぇ。

 

 と・に・か・く。

 家に居ながら買い物が出来るんだにゃー!

 詳しくはショートカットの先で!

 

 ブックショップ、モモマート!

 

 

 

アニメ調で流れるCM。

三十秒ほどで終わるとまた、似てはいるが、内容の違うモノが流れ始める。

眺めていたナビ達。

その中でチョコチップアイスを齧っていた一体のナビが、隣のナビに小さく聞いた。

 

「……なあ、あの映像ってなんだ?」

「自販機作ったパイにゃんが何か新しいコト始めたらしいぜ」

「へ~、でも本って俺達には関係なくね?」

「そうだな。ま、オペレーターにちょっと伝えてはみるかぁ」

 

順調。

外套型データを被って情報収集。

スクエアの片隅に立ちながら自販機に並ぶ列のナビ達の話に聞き耳を立てれば、順調順調。

 

ナビというかPETだけど、そこを経由した情報伝達。

あとは興味本位のナビとか。

そう言った方々がショートカットから先に入って行っていく。

 

現実世界の会社を買い取ってから。

主に、社内の電子化を中心とした改革を推進した。

通信販売用のホームページの作成やそのショートカットを許可を得て各地のスクエアに設置して回り、等々。

全てを終えるまでに中々時間を要した。

 

とは言っても、それ以降は比較的楽だった。

自販機は、アメロッパに居る殆んどのネットナビがお客様。

そのネットナビが知ると言うことは即ち、現在ネットナビを所有しているオペレーターの殆んどが知ると言う事。

本来の初動に必要な、まず存在を認知して貰うと言った手間がなかったのだから。

 

通信販売。

本のみとはいえ、通信販売。

いや、こう言い換えよう。

オンラインストア、と。

 

「くっふっふ~……」

『各地のショートカットから人入り……いえ、ナビ入りは順調なようだね』

『良い調子ですね、先生! マスター!』

「ええ! まずは順調にゃ。この調子で知名度が増えれば行く行くは……」

 

ネットワーク社会。

世界はそれに向けて推進を続けている。

各国の政府は内容に大小こそあれ国策として、様々な事柄の電子化を推し進めていた。

 

しかし、だ。

そう言う風潮が誕生したからと言ってすぐ民間が追い付ける訳でもなし。

実際、国が推し進めてこそいるがまだ碌な施設も整ってない状況もある。

精々が大企業や国有施設等が進めていると言った具合か。

 

上に併せて中小とでも言うべき企業も導入を頑張っているような雰囲気はある。

買収したこの会社にも既に幾らかPCが入ってはいた。

まあ正直、あまり使われている雰囲気ではなかった。

生憎ネットナビを、あるいはネットナビが、十全に動かすには性能が低い。

PETが化物性能なだけとも言えるが。

 

それ等を踏まえた上で。

この世界がワタシの前世、元居た未来と似たような世界に成るとは思わない。

むしろこの世界の方が同じ年代であっても遥かに進歩することだろう。

知らないから比較出来ないが、既に一部は発達自体しているとも思っている。

具体的に何が、とか聞かれると困るが、流石はワイリー様と光の両人。

 

そして残念ながら、ワタシはそんな天才と言われるような面々に追い付けるとは思えない。

ワイリー様と言う補助輪が居て下さっても、フォルテを仕留め切れなかったのだ。

人間、その真正の天才達。

起業し、研究し、世界を推進し、牽引して行くだろう方々には。

ワタシ自身が追い付けることはきっと、永遠にないのだろう。

 

だが、だ。

ワタシの記録にある未来の世界にあって、この世界にはまだないモノに限れば。

既に完成形が分かっているのだ。

見えているのではなく、分かっているのだ。

 

先人を模倣するようにすれば、怪物染みた天才達にも。

追い付ける。

追い越せる。

相手にするのは記録の世界の、同じ人間な以上。

 

ワタシの持つ記録の中から。

便利だと思うような代物を、娯楽となるような代物を。

抽出すれば受け入れるだけの土台が、大本が。

人間なのだ。

ある。

ハズ。

 

そうしてまず始めたのが、コレ。

ネットワークを用いた通信販売。

つまり、オンラインストア。

ネットショッピング。

 

世界を牛耳るような商売を先に始めてしまう。

これこそまさに、知識チート、と言う感じ。

とは言ってもこれが当初、完全に順調だった訳じゃあない。

 

「しかし貴方の話だと早くて助かったにゃ~」

『顧問にして貰った以上、キチンと働きますよ』

『私もご指示通り、サポートさせて頂きます!』

『期待しているよ』

『……はいっ!』

 

新しいシステム。

仕事のやり方。

そう言ったモノを取り入れようとするとどうなることか。

 

実際、ホームページのためのサーバーや仕事の為のパソコン等々。

使ったことのない人間もまだ居る。

いや、居た。

 

そんな中、大きな改革を行おうとすればどうなるか。

半ば強制的に新しい道具を使うように徹底すればどうなるか。

必然、反発も生まれる。

 

買い取ったこの会社。

『Majesty Magazines Mart』。

素晴らしい、雑誌の、市場。

そう言う名前の会社を買い取れたのは、まさに運命。

 

何せ、だ。

頭を取って、『MMM』。

三つのM。

Mが三つ。

Mさん。

モモさん。

 

パインの姿を使わせて頂いている我が身。

それからすれば、彼女の、心の師。

目標。

「モモさん」こと「モモコ」の名前を取ったとも言えるこの名称は驚きのマッチ。

もうこれは頑張るしかないと思ったわ。

 

ちなみに会社は現在、三つ運営している形である。

この『MMM』。

次いで、私的目的以外でネットナビ等の製造や研究出来るようにと用意した研究会社『Doll Production』こと『ドルプロ』。

最後に、今後に備える意味で株式の管理等をすることだけを目的としている『パイン・ホールディングス』。

 

『パイン・ホールディングス』は、ただの管理会社でしかない。

あくまで、後々にワタシの作るナビ達が所属する会社を別個に用意出来るようにするための措置である。

『MMM』に何でもかんでも詰め込むとややこしくなりそう、と言うか絶対ややこしくなるだろうし。

 

ただ、例外は『伊集院PETカンパニー』のモノ。

彼の会社も設立されると言うことで出資して得た株。

それの保有は『ドルプロ』でしている。

PETと併せるならネットナビなので、今後のことも考えて。

購入自体は予定通りだけれども、さて、先行きがどうなるか楽しみである。

 

いけないいけない。

思考が大いに逸れてしまった。

とにかく、だ。

改革に伴って生じた数々の反発。

まあ、分かる。

 

既存の業務から見知らぬ業務が増えるのは、誰だって嫌だろう。

ワタシが人間だったとしたら実際、嫌だ。

それを抑え込んだのが、現在は顧問となっている元社長さんだった。

 

 ――君の考える未来を見たい。

 

ワタシの考える未来。

その達成に向けて協力してくれると言うのだから、非常にありがたかった。

元社長。

会社への理解も確りしているし、従業員達へもまた然り。

 

欠点としてはどうも、後継者の不在から来る惰性感があったようだが。

ワタシが社長となったことでそれも解決した。

将来の展望が芽生えて来たお陰で。

 

そうなれば一代からそれなりの大きさをした本屋を創り上げた手腕が如何なく発揮された。

もとい、取り戻された。

剛腕が振るわれ、電子化が取り入れられた。

 

居なくなった社員も、居る。

だが、それに代わる存在が居る。

ワタシが用意した。

 

「…………おや?」

 

ショートカットの先。

つまりはワタシの作り上げたホームページから、一体のナビが姿を見せた。

軽く周囲を見渡して、ワタシを見付けたとみるや近付いてくる。

 

視線を、必要は本来ないけれど、通すため指先で持ち上げられるテンガロンハット。

覗いて見える短めの黒髪に、ピンク色のシャツ等々。

持ってなかったがサーベルと銃を追加した、と言うよりもある意味では原典帰りして持たせたと言うべきか。

カウガールを模したネットナビ。

 

その名は、スタッフマン。

ボンバーガールにおけるスタッフさんをモデルに、数々の他のナビ達と同様エグゼナイズして作り上げたナビである、その中の一体。

そう。

一体である。

 

【怪しさしかない】

「やめてにゃ」

 

言語プログラムを未搭載。

相手からはともかく、此方からは代わりにプラカードを用いて、つまりは文字を用いて会話を行う。

言葉では齟齬の起こる可能性もあるが、文字にすることで解消も図れるためだ。

ウソ。

正直、スタッフさんが話すのは完全にとは言わないけど解釈違いであったのと、声等と言った会話に必要なリソースを削るのが目的だった。

 

なお、ネットナビだから当然、性能もお高め。

その上でも、そんじょそこいらのナビには負けない地力を誇っている。

スタッフさんが弱い訳ないから、その辺りは力を入れた。

 

しかもその数、百体ちょっと。

社内事務の代行からホームページ周辺の巡回、お客様センターの代わりに道案内等々。

プログラムくんとは違う柔軟性を以って社員の代役を勤め上げている。

 

手隙な時間に追加で作ってもいるので、それがちょっとの部分で、数は増す一方。

一度フルオーダーで作りさえすれば、後は殆んど流用が利くから割と楽なのだ。

なのでまず、百体用意した。

自力で。

 

人格部はともかく、ボディ関連は何れ彼女等に作って貰えるようにしたいが、流石にまだ先にはなりそうではある。

とは言っても、そう言った苦労を差し引いても作った価値は十二分にあった。

実際、よく働いてくれている。

勝手に動いてくれて、しかも優秀な手足は何と便利な事だろうか。

 

「それで、どうしたのにゃ?」

【顧問に用があります。メールを見て下さい】

『えぇ!? ちょ、ちょっと待って下さい!』

 

聞けば一瞬でプラカードの文字が切り替わった。

そっちに用か。

視線を向ければ困ったような顔でPETに指を動かしている様子。

メールが来ていたのに気付いていなかったのか。

その辺りはやっぱり、多機能なPETの弊害か。

 

用意させて貰ったネットナビの子も、まだ完成してからまだ数日。

とあってはPETの機能に慣れてない様子。

どちらかと言えば、顧問の経験を吸収するよう指示している弊害もあるか。

業を煮やしたらしいスタッフマンがワタシの肩を握ったかと思えばデータを探られている感覚。

おおよその想像は付いているので、分かり易く示して見せる。

 

少ししてその姿が消えた。

同時に画面の向こうで困惑の声が二つ上がる。

ワタシとの通信情報を元に顧問のPETに移動していった。

紛うことなきハッキングである。

 

行動的な。

あと、派手に高性能さを見せ付けてくれる。

いえ当然、このワタシもそれぐらいやろうと思えば出来ますけども。

もっと短い時間で出来ますけども。

 

「……いかがかにゃ?」

『会社のシステムで分からないことがあったようだ。君には聞き辛いから教えて欲しいと』

『ごめんなさい、先生……』

『失敗は誰にだってある。同じ失敗を重ねないようにだけ気を付けなさい』

『! はい!』

「あ、じゃあお気をつけて」

『またその内に』

 

何処かげんなりとした表情。

改革を強行したワタシより、現実世界で剛腕を振るったとは言っても折衝を勤めていた顧問の方に人気があった。

元とは言えども社長でもある。

あと正直、ワタシが現実世界に存在しないのも、原因の一つではないかとも思っているが。

だからか顧問だけでなく、お悩み相談室みたいな担当にもなってしまっているのに悲哀を感じる所。

 

とは言っても文句も言わずやってくれるのをこれ幸いとさせて頂いているのだが。

画面が切れるまで手を振って。

やがて消えたのを確認して目を逸らす。

ナビ達の視線が集まっていた。

 

そりゃあそうか。

早々見ないような派手な格好のナビが二体。

外套を羽織ったワタシと、プラカードで会話するスタッフマン。

それが一時とは言え、揃っていれば視線も集まる。

 

「………………」

 

無言の脱衣。

外套を脱ぎ払って姿を晒せば「あ、パインか」みたいな雰囲気で視線が逸らされて行く。

と言うか実際に呟かれた。

妙な気恥ずかしさを感じつつ、さっさとショートカットに移動する。

 

「……モモマートをよろしくお願いしま~すにゃ」

 

なんてことを言いながら。

目を閉じ、身体が移動していく感覚。

次に目を開ければ。

そこは、暫く籠って仕立て上げたホームページ。

 

スクエア級とまでは行かずとも、丹念に仕上げた此処はウイルスの出現を抑えられている。

とは言っても残念ながら完全に、とは言えない。

個人のホームページにすら発生するレベルなんだから、正直どうしようもない部分でもあるんだけれど。

それらに関しては問題なし。

 

「ウイルス ガ 発生 シマシタ! 皆様 ゴ注意 下サイ! 繰リ返シマス!」

「えっ!?」

「ご心配なくにゃ」

 

頭の上の警告灯を回転させながら叫んでいるプログラムくん。

以前に作ったウイルスを見付け次第、警告を発する用。

それが注意喚起を始めた途端、念のための誘導を行う別のプログラムくん達を尻目に方々から駆けて行くスタッフマン達。

 

数瞬の後。

脚を止めた一体が腰元の銃を抜き放ち引き金を引けば、放たれる《ラビリング》。

派手な電光が見えたかと思えばデリートが完了したらしい。

微かながらも確かな感嘆の声が聞こえて来る中、スタッフマン達がその腰元に銃を納めた。

 

このように。

ワタシが手を出すまでもなくデリートされるのだ。

今回は近かったから思わず宥めるために声を出してしまったけれど。

 

「いやぁ……凄いっすね!」

「ありがとうございますにゃ~」

 

さておき周辺を見やれば、一先ずは順調。

普通の本屋みたく、入ってすぐ見える本の分類別に示した吊り看板とその下のショートカット。

検索用のネットナビ向けディスプレイや質問すれば色々と答えてくれるプログラムくんも完備。

 

それでも分からないことがあれば聞ける案内所にはスタッフマン。

他、商品を確認出来る場所まで先導するプログラムくんも居る。

あまり時間が掛かってようだと様子を伺いに行くプログラムくんもだ。

 

本当はその場で見ようと思えば見れるけど、混雑防止も兼ねて。

入口に屯されても困るし。

とはいえ勿論、お客様の安全は第一。

 

セキュリティも、ストーンマン達に目立った穴がないか確認して貰った。

商品も基本的には表紙が分かるようにしている。

決済も当然、カードで可能。

 

あと何か足りない。

と思ったので、棚っぽい部分脇とかエリアの床面とか色々な場所に広告スペースを用意もした。

まあ、現在の所はゼフラム社のみ。

色々とお手伝いして下さったから半年間は殆ど無料お試し期間で、今後どうするか決めて下さいみたいにしている。

聞いた話だと中々効果はあるみたいで、我が社も我が社もとの話が来ている。

 

等々と。

要は殆ど、ワタシの記録にあるネットショッピングの方式にしている訳。

お客様はまだ少なくはあるものの、この調子で行けば前世の如く流行って行くことだろう。

 

それに、だ。

視線を端。

エリアの端の、端。

コッソリと用意した、カラフルながらも控えめなイルミネイトが輝くルートに向ける。

 

「…………にゃふふ」

 

あのルートの奥には広場。

アチラには何かと時間を潰せるよう、ゲームコーナーと売店を用意してあるのだ。

ゲームの方は無意味によくゲームセンターで見た筐体を再現した物を二十台ばかしで、内容はボンバーマン風のゲーム。

一回五十ゼニーで、ステージモードと他筐体との対戦モードを遊べるようにしてある。

 

これは単純にワタシの趣味。

と、将来的にボンバーマンのゲームが現れたら面倒臭いことになるかも知れないからとの措置。

どうやらまだ出来ていないのか、開発している会社自体がないのかは分からないが。

 

少なくとも、ニホンの情報を探った限り、ボンバーマンのゲームは存在してないようだった。

だから良いでしょう。

綾小路と言う方が社長をしているガブゴン社とか言う気になり過ぎる会社があったけど、まあ良いでしょう。

 

あとは売店。

正直、コッチがある意味メインであるかも知れない。

今まではワタシが直接やり取りしていたチップの一部を、数量限定ながら販売している場所にもしている。

レア度で称すと、2までのだけど。

 

この売店。

ただでさえ求める人、もといナビは求めるチップがあるお陰で宣伝すると一気に寄り着いて混乱を来す恐れがある。

等と考えた結果、一応は、コッソリさせておくしか選択肢がなかったと言える。

ワタシの手元品の処分みたいな意味もあって供給量が安定しないのもあるけど。

 

あと、これは完全に趣味だが。

TCGことトレーディングカードゲーム。

もといDCG、デジタルカードゲーム。

コッチはあんまり調べてないけどまだ流行ってる風じゃなかったから流行の先取りとして、マジック&モンスターズなんて名前で売り出してもいる。

M&MつまりMM、モモ。

 

と言うのはともかく。

これも売店で四十枚入りのスターターデッキ一つ五百ゼニー。

二つ買えばなんと、自分のナビと対戦することも出来る、と言うように。

モチロン他と対戦も出来るよう、テーブルもゲームコーナーに用意している。

 

以上。

まあ正直に言うとチップの販売以外、ボンバーマンっぽいゲームとDCGしか用意してない。

チップは供給が不安定。

それ以外の二つも、品揃えが貧弱。

しかもどっちも記録を元に再現しただけと言う。

とりあえずネットショッピングに寄り付く機会が増えればヨシ、ぐらいの感覚。

 

TCGなんかは特に、カードを刷るのは金を刷るのと同義。

みたいな与太話を聞いたか見たような曖昧な記録もあった。

だから儲かりそうならやってみようの理論である。

 

何にせよ、ちょっとぐらい来る理由になれば良いかなと思いつつ、気になったのかその先に進んでいくナビを見るとニヤニヤする。

と言った程度だ。

ともかく。

表はこれで良し。

問題は、

 

「……さてさて、裏側はどうかにゃ」

 

裏側。

一部のプログラムくん他、スタッフマン達等が入れるよう設定してある出入り口。

他のナビからの目がないことを確認し、見えないルートから侵入する。

ホームページの裏側。

 

システム面。

そちらに興味があるような輩、つまりはハッカーなんか。

そう言った輩はネットショッピングなんかよりシステムに関心があるようで、ネットナビを使って侵入して来ている。

一口に、全てハッカーと言って良いのかは悩ましい部分ではあるが。

 

ともかく。

流石は電脳世界。

治安はまさに世紀末。

 

まあ、知ってたけども。

未来であればニホンの省庁レベルがテロされるような世界。

知っているのだ。

油断するハズがない。

 

多種多様。

プラグアウト防止空間。

多重のファイアウォール。

認証式のセキュリティキー。

間違えたルートは変幻する道。

パトロール用のプログラムくん。

俯瞰して監視するスタッフマン達。

まさに万全。

 

おニューな体となったストーンマンをして「面倒くせぇ~」と最終目的地点で呻いたレベルの堅牢さ。

この一番奥まで入れたストーンマンはそう言う意味で、馬鹿。

なんで其処まで行けてるんですか。

 

いや、ワイリー様の技術が本当に馬鹿と言うべきか。

お陰様でもう一段階、レベルを引き上げる羽目になったのだ。

如何に甘かったか勉強になりました。

 

なので、さっき通った以外の見えないルートとかが追加分。

お陰でか。

それ以降は未だ、セキュリティの半分を越えられたナビすら居ない。

判明してないだけで居る可能性もなくはないけれど。

 

 ぉ―ぃ

 

等と考えながら足を進めている内。

ふと雑音が耳に入る。

顔を向けずそちらに集中すれば、

 

「助けてくれー! 頼む、助けてくれー!」

 

憐れ、電脳の迷宮に囚われたネットナビの姿が。

気付いていないフリしながら管理者権限も活用して情報を探ればどうも、既にPETとの接続が絶たれている。

つまり、見捨てられたのだ。

オペレーターから。

 

プラグアウト出来ない空間でそうなってはお終いだ。

ウイルスに襲われるか、彷徨い続けて何れ亡霊ナビと化すか。

そういう結末を迎えるだろう。

 

あの手のは、プログラムくんやスタッフマン達にも放っておくよう伝えてある。

入れないハズの場所に入り込んで来ている以上、そもそも助ける義理はない。

ましてや下手に武装されているとスタッフマンやプログラムくん等の皆さんが危険だ。

もっとも、スタッフマンと一対一でやり合って勝てるナビは現状、少ないだろうが。

 

とは言っても、さて。

今回はワタシ自身が聞いた話だ。

「危険かも知れないから」と言っていたワタシ自身がこんなことするのもどうかとは思うが。

声に気付いたように顔を向け、

 

「仕方ないにゃ~……」

 

遠目にも分かる程に顔を明るくし、手を大きく振っている姿が目に入った。

キチンと指示通り気付いていないかのように無視していたと言うことか。

そう理解してしまうと尚更、見なかったことにするのは出来そうにない。

 

ガックリと肩を落とし、周囲を見渡す。

遠く。

巡回しているスタッフマン。

ワタシが見ていることに気付いた彼女が振り返った。

暫くの、間。

駆け足で此方に寄って来るが、その顔は露骨に不機嫌。

 

【ナンスカ】

「ごめんにゃさい」

【助けるの?】

「いや~……ワタシなら強いですし?」

【なら一対五で当たれば良いと?】

「まあ………………オペレータとの接続が切れてれば?」

【言質取った】

 

ピョンピョンと跳ねるスタッフマン。

人が、もといナビが良い。

何処からともなく、続々と集まって来る。

 

これは、通信アプリ的なメッセージボード。

情報共有。

標準化。

あらゆる事柄をやり易くする目的でスタッフマン達に搭載しているので、情報のやり取りは非常に円滑。

そのお陰で動きが速い。

 

数にして、十。

丁度それだけ揃った所で、半々に別れていく。

片方はワタシの護衛。

片方は、先程に話した通り揃って救出へと向かっていく。

 

と言っても見えないルートをさっさと進んで行き、程なくしてそのネットナビは囲まれながら此方に連れて来られる。

先導するスタッフマンに連れられて歩いてはいるものの、後ろから四つの銃先を向けられているその顔は絶望に染まっていた。

もしかして、普通に助けられるだけだと思ってたのか。

だとしたら見通しが甘過ぎる。

 

「た、助けて下さい……」

「――オペレータからは見捨てられ、挙句に危機的状況ですにゃあ?」

「どうか……何卒っ!」

「選択肢は二つにゃ。オペレーターを裏切るか、消え去るか」

「そ、そこを何とかなりませんか……?」

「………………」

 

足元に《プルルンボム》を生み出し、脚先で弄ぶ。

両手を上げているナビから扇状に、しかし銃口を向けたまま離れていくスタッフマン達。

それが、爆風に巻き込まれないようにそうしていると言うのは想像するに容易いか。

 

微かに震えているその姿から、答えは明白。

しかし、その口から聞く。

沈黙はしばし。

やがてその口からか細く漏れた言葉に笑った。

 

「――――ようこそ、MMMへ」

 

と。

これで区切りが付けば綺麗な終わりなのだけれども。

五体一組であれば連れて来て良いと言ったのが運の尽き。

とりあえず、別の見えない通路の先にある小広間に案内するよう指示を出してすぐ、続々と連れて来られるナビ達。

流石に囲まれた状況で強気に出れるナビなんて早々、

 

「オレを誰だと思ってやがる!」

 

流石に早々、

 

「オペレーターも居る! テメエのようなのとは根本から違ぇんだよ!」

 

早々、

 

「あんな道さえなけりゃテメエ等なんぞぉ!」

 

早々。

居ないと思ったんだけど。

居るのか。

身の程を知らない馬鹿。

 

「…………ハァ」

 

露骨に溜め息ついて見せれば気に障ったのがよく分かる。

気付いたスタッフマンの一体がワタシの前に出、案内をして来ている一部も脚を止めた。

刹那、

 

「舐めるなぁ!」

 

片腕が変貌する。

銃口。

変化した形状から種類を索定。

見捨てられてなおチップを隠し持っていたとは。

 

軽く、足元のボムを蹴り込めば流石に早い迎撃。

同時に此方へと誘爆しようとしているのを見知っているのでスタッフマンを蹴り押し別れる。

押されて蹈鞴を踏み掛けたその目が誘爆した銃撃、《ショットガン》のモノだろうソレを捉えた。

 

予想通り。

そう呑気に考えていたワタシを他所に。

瞬間。

変貌する。

 

無。

虚無。

無表情。

困ったお客様に対応していたスタッフから、ウイルスを削除する掃除人へと。

それにそのナビが気付くことは最早ない。

 

次いで展開される、ただの《ソード》。

瞬時に銃を抜きその口先を向けるスタッフマン達。

他所に、踏み込んだ。

しかし。

遅い。

前方から放たれた《ラビリング》を横に避け、

 

「見え見ガッ?!」

 

後ろ。

予知して放たれていた二つの《ラビリング》がその背と脇を直撃。

目を見開き背後に視線を向けようと藻掻く中。

既に振り被られた二本の赤いサーベルが首と腰を薙いだ。

断。

と。

 

数歩。

走り抜けて。

振り抜いたソレをゆっくりと、鞘へと戻してゆく。

燃える剣身が納まり切った時には、狼藉を働こうとしたナビの姿はない。

 

「お見事にゃ~」

 

軽く拍手。

まあ、出来て当然ぐらいな感覚。

一対一でも余裕だったろう。

同じような軽さで頭を下げて来るスタッフマン達。

 

「――あと何体かにゃ?」

 

流し目で見る。

次のナビを。

最早、ワタシの元に追いやられるのを処刑か何かと勘違いしているらしいそのナビは全身を震わせていた。

 

【もう少し】

「……流石に無理にゃ、アレ」

【っス】

「とりあえず同じ所に放り込んでおいて下さいにゃ」

 

ひらひらと手を振りながら奥へと向かう。

残りはまた今度。

すぐさま行動に移り始めた皆を他所に。

過ぎ去り行く景色を眺めながら、少ないながらも時折現れるウイルスを葬り、歩を進める。

 

進むに連れて、スタッフマンは元よりプログラムくんもその数を減らす。

反比例するように増えて行く、ファイアウォール等のセキュリティ関連。

正しい道以外は定期的に変形し、不可帰の彼方に誘う迷宮。

時折、同じルートを往復しているだけのプログラムくんの横を通り過ぎ。

 

やがて。

最後の扉。

如何にもな。

足元にドクロマークを埋め込んでみた場所。

真っ直ぐに長く、伸びた道を抜けた先。

そこにシステムの中枢と、

 

「ホーッホッホホホホ! 余の元に侵入者など、実に何日ぶり」

「アウルムさん、パインさんですよ」

「よく見ろポンコツ」

「……何だ、パインか。つまらぬ」

「そ、そんなこと言っちゃあ流石に怒られちゃいますよぉ……」

 

二体の守護者。

片方は。

両手足に光り輝く枷を付けた横縞服の、赤青の妖眼を持つ長い白髪の堕天使。

パプル。

 

そのまま、あらゆる性能その他諸々が彼女をモデルとしたネットナビ。

おまけとして、顔だけな黒白半々の丸いサポート用プログラムこと、セイジャ。

そしてもう片方。

 

「そーんなことはどうだって構わぬわ! ホッホッホー!」

 

ビシッ、と音でもなりそうな具合に指を向ける。

如何にも気の強そうな金の短髪釣り目の女騎士系王女様風のクソデカ大剣持ちネットナビと言う、属性の過重積載。

アウルム。

彼女は名称不明な、ボンバーガールの没デザインをモデルに作ったネットナビ。

容量の問題でボンバーガールをモデルとしておきながらそれにあるまじき、ボムを使えない。

 

と言うのも。

プログラムアドバンス。

特定のチップの組み合わせからなる、通常のチップ一枚を遥かに上回る威力を誇る特殊データ。

それをネットナビに組み込めないものかと言う考えがそもそもの大本。

 

《フレイムソード》《アクアソード》《エレキソード》の三種の組み合わせでお手軽に発現出来るプログラムアドバンス《ドリームソード》のデータを基に造り上げたのが、アウルムだ。

世界的にも研究対象であるプログラムアドバンスを、全てではないにせよ知っているのは絶大なアドバンテージと言えよう。

 

ともかく。

そんな思惑の元に組み上げていたアウルムには大きな問題が生じた。

重過ぎたのだ。

データが。

 

複数枚のチップで瞬間的に発現する『プログラムアドバンス』。

それを安定してならともかく、恒常的に使い続けられるようとする試みがそもそも宜しくなかったのかも知れない。

行ける行けるで突き進んで、コレ。

ネットナビのバトル用にあった容量では収まらず、ナビの身の丈の倍近い剣型のメモリとセットで漸く上手く行ったと言う不始末。

 

結果。

産まれたのは、通常攻撃全て《ドリームソード》級のバ火力だが、それ以外は遅いし鈍いネットナビとなった訳だ。

機能をそのまま再現しようとしたのが失敗だったと勉強にはなった。

ただし、誰も思い付かなかったのではなく思い付いてもしなかった類の勉強だが。

その全体的な遅さは、ワタシのかつての記録にあるモンスターをハントするゲームの大剣並のモッサリ感。

 

ウイルスバスティングでも苦戦する、ドが付くポンコツ。

うっかり普通のガルーにデリートされ掛けたことがあるレベルなのだ。

ただし、単独では。

 

「は、はい! アウルムさん!」

「へーへーアウルムアウルム」

「そう! 余だとも! ホーッホッホホッホッホ!」

 

押されるがまま答えているパプルと、反対に毒づくように名前を呼んでいるセイジャ。

これがタッグだと凶悪になる。

前衛のアウルムを後衛としてパプル、補助としてセイジャが見る。

下手なナビでなくとも一撃デリートの剣戟を振り回されるし、その間に矢が飛んで来るのだ。

 

そしてその矢に当たろうものなら、動きに一時のノイズが発生して遅くなり、ズバン。

と言った具合。

それに失敗ばかりではない。

予め出力用の機能を外部に用意することで容量を抑える手法は、スタッフマン等にも用いられている。

今後、比較的余裕を持って皆の機能の拡張を進められるだろう。

 

「はいはい、元気そうで何よりにゃ」

「だが気が滅入って仕方がないぞ!」

「私は静かで悪くないかなぁって……あ、お菓子の種類増やして貰えると嬉しいです……!」

「甘やかし過ぎも良くないと思うぞ?」

 

唇を尖らせているアウルムを他所に、パプルの視線は自販機へと向いた。

娯楽も碌にないからと設置しておいた自販機、それの完全無料版。

食べ放題。

既にまだ見ぬお菓子に意識が行ってしまっている様子のパプル。

呆れ眼なセイジャから苦言が飛ぶ。

しかしここは重要拠点。

 

「いえ、ここはシステムの中枢! 守り切って貰うのにゃから、お安い御用にゃ!」

「余が見たことあるのはこの前のアイツぐらいだよ?」

「パプル」

「……ハッ、はい! そもそもここまで来られた方は…………」

「言いっこなしにゃ! ビスケットはまだ調整中だから……クッキーを用意するにゃ」

「わぁ!」

「人間だったら太ってたろうな」

 

冷たく言い放たれた言葉にフリーズしているパプルを他所に。

その間を抜け、システムに手を伸ばす。

触れる。

見る。

それで、分かる。

 

「問題なしにゃ――じゃ、引き続き警備と整備、よろしくにゃ!」

「          」

「おい。おい、おい! パプル! ……駄目だな。ま、精々見といてやる」

「うむ! 余等に任せるがよい!」

 

一先ずの所。

仲は特に悪くないようだし、緊急連絡も機能している。

パプルは性能面で見て、単独でも足止めできるからスタッフマン達を呼べれば万事解決。

その上、仮にカーネルが突っ込んで来ても奥まで来るのは相当苦労すると言う自負もある。

これで大きな問題は起こらないだろう。

 

気が滅入るそうだから、日に二回ぐらいはスタッフマンの誰かが行くようにもした方が良いかも知れないが。

等と考えながらも、これで区切りは付いた。

付けることが出来た。

管理者権限でプラグアウトしながら、そう小さく息を吐いた。

 

 

 





・アウルム
ボンバーガール没デザインをモデルとしたネットナビ。
設定画には「オークに負けるやつ」とあったがこちらは「ガルーに負けるやつ」。

なお新ガールとして紹介でもされない限りは多分、本格的にはもう出ない。



あと、プログラムアドバンスのデータを最初から使えるナビが居れば最強ではと思ったものの考察。
変容したデータをナビ単独に次ぎ込むには、通常のデータを入れるよりも数段難しい上に容量を取って現実的ではないのではないか。
と言った形となります。
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