ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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055:ハッカー

 

一週間。

それだけ比較的、手隙になった。

であれば確認したいことがある。

 

困ったこと、であった。

我が社のシステムへの侵入。

これ自体は、まあいい。

よくはないが。

全て対応出来ている訳だから。

 

問題があるとすれば一つ。

侵入して来ている連中。

その中に、反応に困る存在が紛れ込んでいることだった。

 

一口に、侵入者。

大雑把に纏めれば、ハッカー。

しかし大別すればおおよそ三つほどにグループ分けが出来ることに気付いてしまっていた。

整理のためにも軽く例を挙げると。

 

一つ目。

ハッカー。

システムへと侵入しながらそれ以外の我が社の情報を吸い上げる輩。

 

もっと細かく分ければ個人と企業の二つになるだろうが、どちらにせよネットナビであるワタシが手を加えた会社とシステムについての情報を集めようと必死で分かり易い。

スタッフマン達が遭遇すればおおよそ逃げようとするのが特徴で、割合で言えば一番多い。

捕まえられれば人員の補充や情報の逆用が出来て便利だ。

 

二つ目。

クラッカー。

システムへと侵入し、少しでも奥で破壊を行おうとする輩。

 

恐らくは個人が行っている様子で、とりあえず何かしらの痛手を与えてやろうとでも思っているのか表側裏側問わずに動き回っていることがある、愉快犯か。

スタッフマン達が遭遇するのが裏側であればバトルに発展するのが特徴で、割合で言えば一番少ない。

先日ワタシを襲って来たのはこの分類になるか。

 

三つ目。

ビジター、と一先ずワタシはそう仮称している。

システムへと侵入して来ているがそれ以外の目的の一切が不明な輩。

 

恐らくは個人か大きくとも企業にも満たないグループ程度の規模だろうが、システムの奥へと侵入しようとして来ている以上の目的が一切が不明。

スタッフマン達が遭遇すれば逃げるか大人しく捕まるかが特徴で、割合で言えば二番目。

情報を吸い上げてもイマイチよく分からない。

 

「…………邪魔すルぞ、ストーンマン」

 

問題は、ビジター。

ハッカーとクラッカーは別にどうでも良い。

ハッカーがプログラムくんに遭遇すると何をしているかの情報を吸い上げているようだが、スタッフマンの方には直接の害はないから許している。

クラッカーとプログラムくんが遭遇すれば残念な結果になるが、スタッフマン達であれば対処は可能。

残留したデータから個人を特定できた場合は落とし前も確りと付けている。

 

だから、ビジター。

此方が問題なのだ。

侵入自体はエグゼ治安だし構わない。

だが目的が分からない。

これに尽きる。

 

ネットナビや何かしらの端末から侵入して来た場合、捕らえることが出来たソレから大体は身元の分かる情報はデリートされていた。

復元出来てはいる。

いるのだが、大凡は個人かグループである証拠や出入りしている場所の情報。

 

モチロン、逆探知的に現実世界の本人の居場所まで探れはするだけのデータも手に入れた。

ナビからプラグインの情報さえ入手出来れば簡単に出来るのだ。

しかしその情報を元に調べても、一般家庭らしき場所から夜間に侵入して来ている以上の情報が分からない。

 

困ったことだ。

理由が分からない。

目的が分からない。

この二つが分からない以上、どう対処するのが良いのかも分からない。

だからこそ、

 

「オい、ストーンマン!」

 

ストーンマンのプライベートルーム。

もとい、資料室。

あらゆるデータの管理を任せられている部屋。

そこに突っ立っているストーンマンに声を掛けるが、反応しない。

 

目の前に立っても視線すら向けられず、ただ突っ立っているだけ。

チラと、顔に見遣る。

目の部分に光があるので居るのは間違いない。

 

となれば。

仕方なし。

その側面へと近付いてそのデカい脚を足場扱いしてナビマーク、ストーンマンの側面にデカデカと描かれた丸と四角、を思いっ切り叩いた。

 

「起きロ!!!」

「ぅェっ!?!」

 

微動だにしない。

だが、ストーンマンの中から響いてくる声。

突如として動き始めるストーンマン。

その足から跳んで離れれば、周りを見渡すように動いていたその目と目が今度こそ合った。

 

「な……えふんえふん…………ゴゴゴゴゴ!」

「声作る必要ネえ。とりあエず、出テ来い」

「えぇ……何? ボスからの命令?」

「違うガ?」

「あ、そう。お疲れっしたぁ……」

「用があルっつってんダろ!」

 

何事もなかったように動きを止めようとするストーンマン。

その脚へと再び乗って、またしてもナビマークを叩く。

抵抗するように動き回るが、そもそも鈍い巨体。

動きの予想は付き易い。

 

そのまま十数秒ほど叩き続けてやれば。

やがて諦めたように動きを止めたストーンマン。

その側面部分が、さながら現実世界で言うシャッターがスライドしているかのように上へと昇って行く。

 

数えて五秒掛からず。

完全に開放された、ストーンマンの側面部。

その中には一体、

 

「んだよぉ…………また何かしろって言うんだろぉ?」

 

腰ほどまではあるが今は放り投げられたタオルのように無造作に広がっている、紫色の、ぶっとい注連縄のような二本の三つ編み。

髪の内側こそパインのような黄色で明るい色合いなのだが。

白のナース服を主としているハズなのに装飾として紫色を足したためだろうか、全体で見ると何処か暗めなデザイン。

ぐんにゃりと胸を圧し潰して寝そべる、普段はナースキャップを被った存在。

まあ今はキャップは壁に引っ掛けてるし、気怠げな瞳を此方に向けて来ているのだが。

 

プルーン。

ボンバーガールの、プルーン。

彼女の姿であった。

 

キャスケット様がお亡くなりになる少し前から欲しい欲しいと言っていた、普通サイズの身体。

幾つもあるボンバーマンやガール達のモデルの中。

それを使いたいと言うことで譲渡して生まれたのがこのストーンマン・プルーンである。

 

多分ナースキャップを被った姿だからシンパシーでも感じたのだろう。

正直、同じナースキャップ繋がりでのっぺらぼうみたいな方に行かなくて良かったと安心している。

 

「ちょっトしたお願いダ」

「おまえのお願い聞いたばっかだけどな!」

「出しタろ、報酬」

 

パインとして作ったシステムへの侵入。

何処までできるか試した結果、完全制覇したのがこのストーンマンもといプルーンである。

オペレータの補助もなしに。

 

補助があった上でも。

後半ほど厳しくなるようにしているにも拘らず、未だに半分も行けた侵入者が居ないのだ。

なのでハッキリ言ってワタシと同等の性能はあると見ている。

真面目に表へと出る機会があれば、アメロッパで五本指に入るナビ扱いされることだろう。

 

だが。

先日に出した報酬。

自販機に納まっているドーナッツを見ても反応は薄い。

 

「だぁってアレ、もさもさしてんだもぉ~ん……あんま甘くないし」

「ダが、悪くなかっタろ?」

「それとこれとは話が別! ともかく帰れ! あたしはボスの命令でもない限り働くつもりはなぁーいでース!」

 

駄々っ子のように手足をバタつかせているプルーンを眺める。

まったく。

なんでこうなったのか。

 

それは、実のところ分かっている。

知っている。

まあ言ってしまえば、折れたのだ。

色々と。

 

ストーンマンが居た病院。

そこで様々な対応を手伝っていて、恐らく自信も付いていたのだろう。

付いてしまっていたのだろう。

 

そんな折に起きた、襲撃。

幾人もの軍人が、人間達が呆気なく死んだ。

キャスケット様も。

 

恐らく、ストーンマンが尽くせる最善は尽くしたろう。

病院の人間達も同様にだが。

ストーンマンのお陰で救えた命があったと聞いた。

 

それでもなお、救えない命があった。

そしてその中にはキャスケット様も含まれていた。

何を思っていたかは、知る由もない。

 

しかし、病院から戻ってきて。

失意に暮れるワイリー様を見、知り、折れた。

ワタシの想像する物語はそんな所だが。

大筋は、間違ってはいまい。

 

ちなみに余談だが。

ワタシとストーンマンは疑似人格プログラムを最新のモノ、『ココロ・プログラム』搭載の心が僅かながらでも読み取れるらしい、ソレの移行をしていない。

提案はされたが、断った。

 

ワタシは単に、覗き見みたいで嫌だから。

特にワイリー様の御心とか、今、絶対に碌なモノじゃないだろうし。

常に一緒に居たらノイローゼとかになる気しかしない。

ストーンマンは恐らく、余命間近な人間を見てその心なんぞ読み取りたくないとでも思ったのだろう。

 

少なくとも、事実として。

引っ張り出さなければストーンマンボディの中から出て来ない程度には引き籠るようになってしまったのだ。

それに、このストーンマンボディは優秀だ。

 

「はァ…………」

 

ストーンマン。

ワタシが身に着けているボンバーマンアーマーと同様。

ストーンマンのナビデータを流用したボディではあるが、その本質は異なる。

ボンバーマンアーマーとは違い、ボディ。

 

そう。

まずもってストーンマンの元々がデカ過ぎる図体な所為でアーマーみたいに着ると言うより中から操作する感覚。

ボディと称しているが実際は胴体丸ごとロボットのコクピットのような扱い。

大きさは、胴体だけでもワタシのモヒカンの天辺位まであるのだからサイズは本当に大きい。

 

だが別に、操作する方法はハンドルやらではない。

脳波、じゃなくて電波でコントロール出来る。

それを可能にしているのが《リモコゴロー》のチップデータ。

遠隔での操作を可能とするウイルス、パララの性質をワイリー様が流用したのだ。

だが、利用したのはそれだけに留まらない。

 

「とりあエず報酬は先払いしてヤる!」

「ぬえあ!? や、やぁめろぉー! ボンバーマンとて許さんぞー! 労働反たぁーぃ!」

 

首元を引っ掴み、強引にストーンマンから引っ張り出す。

口答えしながら暴れてはいるが、単純なパワーだけで言えばワタシの方が強い。

パワーだけならば、だ。

暴れるプルーンにため息を吐きながら周囲を見渡す。

 

居並ぶのは、十体ほどのストーンマン達。

本物ではない。

イメージデータだ。

 

ナビから、戦闘データのみを抽出したデータ。

今の所は対ウイルス戦の立ち回りを勉強する位にしか取り扱われていなかった。

そんなデータを、プルーンがかワイリー様がかは知らないが、活用出来ないかと考えたらしい。

 

結果。

プルーンを操縦士。

ストーンマンボディがプルーンを守る鎧にしてイメージデータを生成する機構。

そして生み出されるイメージデータは、理論上なら無尽蔵に湧き続ける兵士。

そう言ったシステムが完成したのだ。

 

ちなみにイメージデータの方のストーンマンだとかは、パララ&リモコゴローにおけるリモコゴローに当たる。

要するに、ボディ同様に遠隔操作を受け付ける。

ワタシやカーネルでもなければ文字通り数だけでも磨り潰されるヤバイ奴。

しかも視覚情報も得られるらしいから、プルーンの視点では見えなくとも見失う心配はない。

 

実際、怖い。

イメージデータのHPはそんな大したことない。

とは言っても、ソレ等が無尽蔵に岩を落として来ながら押し寄せて来る訳だ。

 

まあまず普通のナビならバトルにもならない。

ワタシでも正直、厳しい戦いになるのは想像に難くない。

やり合う機会が訪れることはなかろうが。

 

ちなみにだが生成出来るイメージデータは、元々の身体だけではない。

一般的なナビのイメージデータも用意はされているらしい。

そのためある種、遠隔操作で使い捨てられる体を手に入れている訳だ。

ストーンマン自身、他の身体はあんまり好きじゃないらしいので使う機会が少ないようだが。

 

ともかく。

軽く足元を見渡して、十分なスペースがあるのを確認。

そこに報酬物を生成し、プルーンを放り投げた。

 

「ぅえ?!」

 

瞬時にそれを理解し、放り投げられた先に在る物体を確認したプルーンが身を捩って背中を向け。

ぽにゅん。

とでも音が鳴りそうな具合に跳ね上がった。

 

目を白黒させているのも束の間。

更に数回、跳ね上げられ、やがて止まった。

不思議そうな様子で腰下を結果的に埋めている水色の物体を指先で突いて、どう言うモノか分かった様子。

 

ぐにゃりと大の字に寝そべれば、恐らくその想像に違わずプルーンの身体を包み込んだ。

併せて。

戦闘態勢を取っていたイメージデータが消え、本体のボディとだらしない顔のプルーンのみ。

 

「ぅぇ~………………ひんやり? してて気持ちぃ~……?」

「《プルルンボム》かラ爆発機能ヲ抜いてソファにしタ。プルルンソファだ」

 

要するにウォーターベッドだが。

直径で表すならワタシ基準で二メートルぐらいになるだろうか。

殆んどストーンマンボディの胴体部分と同じぐらいのサイズ感。

 

勿論プルーンの身体のサイズなら、包み込んでなお余りある。

寝そべるのが気持ち良いのか。

よく分からないことを呻きながら弱弱しく身動ぎしたかと思えば、さっきよりもぐんにゃりとした感じに身を委ねた。

 

「ぉ―…………こりゃえぇわー…………」

「耐久力もアって、サンドバッグの代わりにモなる」

「こわ。でぇ~もぉ~、お高いんでしょー?」

「調べ事してくレりゃ充分ダ」

「調べ事ぉ?」

 

早くも要領を掴めたのか。

重心移動だけで顔をワタシの方に胡乱な目を向けて来たプルーンに、データを送る。

片目だけは此方に、もう片目は開いたデータ群を流し見やりながら、

 

「これは?」

 

器用に片目だけ狭め、聞いてくる。

肩を竦め、答える。

 

「分からネえ」

 

実際、よく分からない。

ビジター。

そうワタシが呼んでいる存在が残していったナビ等から手に入れたサルベージしたモノ。

残留データ。

 

その中には、インターネットの特定の場所に辿り着けるリンク先に関するデータ等が存在していた。

個人情報で探れるのは、一般的な家庭の情報ばかり。

ある程度まで調べた後になると最早、調査するのはそう言った場所になる。

 

なるが、困った。

理由が分からない。

目的が分からない。

調べたいとは言ってもそのような輩が屯している場所に、スタッフマン達を送り込む訳には行かない。

そうなれば、どうするべきか。

 

簡単だ。

送り込んでも然程、問題にならない存在を送り込めば良い。

例えば、

 

「おめえがイメージデータを操作すリゃ、何かアっても問題ネえ。違うカ?」

 

ナビのイメージデータ。

そしてそれを遠隔で操作出来るプルーン。

調査するには打って付けな訳だ。

だがどうにも、気のない風に口を開いた。

 

「ふぅーん…………なんだって調べたいの?」

「言っタろ、理由も目的も分からネえからダ」

「知ってたら調べなくともコレ、くれんの?」

「――――何ダと?」

 

思わず睨む。

そして気付いた。

少し前まで流し見ていたデータ。

それがいつの間にか、途中で止まっている。

両の目も、ワタシではなくデータの方を見詰めている。

 

「知っテんのカ?」

「おー、知ってる知ってる。知識欲が暴走してるだけのチビッ子共だもん」

「知識欲?」

「そうそう。ハッカーって一口に言ってどう言うのが居ると思う?」

 

質問に訝しむ。

分かり切った答えだ。

ワタシがそうだったように、

 

「盗人ダろ?」

「はいバッテーン! そんな単純じゃあないでース!」

「ふウん? なら三ツか?」

「…………具体的には?」

「ハッカー、クラッカー、あト……ビジターとワタシは呼んデる」

「お~! 経験者だけあって違うねぇ~」

 

言葉の威勢とは裏腹に、寝そべったまま身動ぎもしないプルーン。

代わりに周囲のイメージデータのストーンマンが手を叩く。

岩と岩とのぶつかり合いなので控えめに言って、煩い。

思わず耳を抑えたくなるような、派手な音に顔を顰めながら顎で先を促す。

 

だが、甲斐甲斐しく。

ボディがプルーンへとバナナをやっている。

が、勢い余ってか一気に殆んど一本丸ごと突っ込まれた。

 

声にならない悲鳴を上げているが無視。

実質独り芝居だし。

暫く悶えわざとらしく咳き込んではいたが、ワタシが乗らないと見ればつまらなそうに目を細め。

丸呑みにしてから口を開いた。

 

「…………ま、実際、大まかに分けて三つ。ハッカー、クラッカー、ビジターっスね……しかしビジターは何かこう……しっくり来る?」

「シックリ?」

「ハッカーとクラッカーは別に説明は要らない感じ? っつうかメンドイし、ハッカーだったボンバーマンには説明必要ないっしょ。ビジターだけ説明すると、要するに暇人」

「暇人」

 

あんまりと言えばあんまりな物言い。

思わずそのまま復唱してしまったが。

プルーンはただ頷いた。

 

「そ。学校の勉強は分かっちゃっててつまんないけど、知らないことを知りたいっつー欲張りさん――要は、知りたがり」

「何ヲ知りたいんダ?」

「何でも。何でも知りたいんだよ――普通に知れないようなことも平然とあって、自分の知らないことでも何でも知れる。未知に有り触れた世界がそのチビッ子達にとっての電脳世界な訳」

 

思わず舌打ちが漏れる。

子供。

子供か。

学校に通ってるような子供。

アメロッパは倫理教育がどうなってるのか。

 

等と文句を口に出したくなるが、そんなことを言っても仕方ない。

極上の暇潰し。

本を読み進めるように。

ゲームでボスを倒すように。

アニメのキャラクターを追うように。

映画の展開に目を輝かせて見守るように。

 

ワクワクする。

そう言ったモノを、電脳世界に感じている。

ある意味、朗報ではあった。

 

要は、子供の目から見ても電脳世界は有用であるのだから。

しかし現状では困る。

放っておくと、未来の犯罪者天国がガチのガチ過ぎる。

 

「……ダが、犯罪ダろ?」

「誰が証明すんだよ?」

「いヤ、そう言う問題じゃナく……」

「あー、パインに聞くとして。大体ビジターが侵入してくるのって何時?」

「……夜ダ」

「それも夜半とか? 大体二十一時以降から朝までの間。違う?」

 

夜だった覚えはあるが、正確な時間はどうだったか。

記録を探る。

侵入者のデータログ。

時間帯。

仮称ビジターを抽出すれば。

 

「…………大凡そうダ」

「夕飯も食べ終わって。自室に籠って。電気消して。布団被って――――自分以外の誰にも見えない状態でシステムに侵入して、それで誰が、犯罪を証明スんの?」

「ワタシは出来ル」

「アホぉ~。おまえだから出来んだよ――あー……厳密に言うなら? あたしとおまえと、カーネルにアイリス。フェイクマン辺り入れて良いとは思うけど、ボスが関わってないそれ以外だと?」

 

何か居るか。

微かに考える。

だが、思い浮かばない。

つまりはそれは、

 

「出来ない。フツーのナビや人間じゃあ消されたデータをサルベージした上で、復元までして、見れるデータになんて戻せない。マジで出来るって思ってる?」

「……認識が甘かっタのは認メる。ダが、罪悪感とカ」

「ねーよそんなモン。チビッ子の上、周りの目もないんだぞ? いやごめん、罪悪感はあるかも。でもあったところでスパイスにしかならないんスわ、それ」

 

ぐうの音も出ないとはこのことか。

要するに。

自販機のおつりの返却口に残っていた釣り銭をわざわざ警察に届ける人間は居ない。

そう言う類の話だ。

 

返却口と言う周りから見えない空間。

そこから自分の懐に、残っていた小銭を入れたとして。

誰が罪の意識を覚えるか。

 

ラッキー。

運が良かった。

その程度の認識にしかならないだろう。

 

それが例え、窃盗罪に当たるとしても。

まあ、小銭を取る感覚とシステムに侵入する感覚を一緒くたにするのは違うと思うが。

プルーンが言いたいのは、自分以外に知る者が居ない以上は、誰も居ないのと同じ事。

 

明確に。

迷惑をこうむる存在が。

自分には見えておらず、害を与えても来ない以上、居ないのと同じ。

 

ナイフを持って刺してる訳ではない。

拳を振りかぶって襲って来る訳でもない。

直接接してる訳じゃあない。

仮にワタシが向こうの使っている画面上に現れた所で、電脳世界と現実世界と言う名の境がある以上は驚きこそすれど危機感を覚えやしないだろう。

 

「――――面倒ダな、対処法がナさそうダ」

 

至極、厄介。

まだ然程、発展してない電脳世界の現状では。

明確に危機感を覚えるだけのことを成すのは手間が掛かる。

 

と言うか。

そこまでのことが起きれば、今後の電脳世界の発展が妨げられかねない。

それは勘弁願う。

こちとら一回一回PETから出る度に警察から身体検査されるような状態になりたくはない。

 

「あるよ」

「……エ?」

「あるよ、対処法」

「……本気で言っテんのか?」

「嘘言う理由がないってば。それに解決じゃなくて対処法だし」

 

あっさりと口にしたプルーンを思わず見返す。

相変わらずぐんにゃりとプルルンソファに寝そべってるまま。

むしろ、だらしなさが増して口の端から水が垂れてるような。

いやそれは幻覚なんだが。

 

「付き合ってやりゃ良いの、暇潰しに」

「付き合ウ?」

「あっちからすれば、おまえの所のセキュリティなんてゲーム? のダンジョン潜ってるのと同じ感覚な訳」

「迷惑な話ダ」

 

溜め息交じりに呟く。

なまじっか、エグゼのゲーム内で色々這入り込んだ記録があるので理解は出来る。

プルーンは苦笑いするだけ。

 

「だからちょっとその感覚に乗ってやりゃ良いんだわ。「パイにゃんのシステム、潜り心地はどうでしたかにゃ? でもゲームオーバーにゃん!」――なんて風に」

「流石にソレ、舐め過ギじゃネえか?」

「あ~……一応? システム作るような相手のことは先達として尊敬とかしてるみたいだし、露骨に舐めた態度取らなきゃ問題ないって。まあ、逆に? 舐めた態度取ったらキレてクラッカーに早変わりスんだろうけど」

「ふウん……」

 

とりあえず、頷いておく。

プルーンの言ってることに嘘はないだろう。

吐く理由自体がないし。

むしろ嘘だったら自販機の品を絞られるとか考えそうなものだ。

 

何時の間にやらイメージデータにクッキーを口に運ばせてると言う、色々と舐め腐った態度ではあるが。

割と確りと考えた内容だとは思う。

パインの台詞がワタシからすれば舐めた風に思えるけれども。

 

「んにゅ――――――あと一応言っとくけどぉ」

「ア?」

「おまえのトコに潜ってんの、一応そーゆー奴等のぉ、上澄みも上澄みだかんね?」

「あれデか?」

「どれかは知らんけど。そもそも、おまえの所の裏側に入るのって一部のプログラムくんとかだけじゃん。本来」

 

これは。

考えるまでもないか。

 

「そうダな」

「そいつ等とかから周りに気付かれないように侵入に必要なデータ引っこ抜いて入るの自体まず第一関門とか言われてるし――――何処だったっけ…………クリーミーランドみたいな……」

「クリームランド」

「そこそこ! ……いや、何で分かんの? ま、良いや……入れても入口からして整った監視体制。その先もクリームランド政府機関のセキュリティに並ぶ超難関とか難攻不落とか言われてっから」

「おめエ、本当によく知ってンな?」

 

少しばかり。

身を乗り出して見下ろす。

ワタシの視線に若干鬱陶しそうに返して来、逸らした。

だがすぐさま言わんとしていることに気が付いたらしい。

目を見開くと慌てた様子でクッキーを飲み込み口を開いた。

 

「いやいや! 勘違いスんな! おまえが渡して来たデータの一つ、ショートカットの先、知ってただけ!」

「売っタのか?」

「勘違いすスんなっつったろぉ~!?! よく覗いてる掲示板なんだって!!!」

「掲示板?」

 

まさか既にネラーか。

コイツ。

 

「またはBBS」

「ソう言うのじゃネえ」

「単なる情報交換の場ぁ! ハッカーの集いとかそー言う感じ! あたしも方々覗いてる内に知っちゃっただけ! 身内の情報出すほど落ちぶれてない!」

「そウ……」

 

流石に、身体まで起こして言って来るなら信じよう。

他はその限りじゃないみたいだけど。

飛んで来ていたクッキーカスを顔から払い落としつつ一歩下がる。

その対応で信じたことは伝わったのか、倒れ直した。

それはそれとして、

 

「一応聞くガ、なに調べテんダ?」

「……………………最近よく出回ってる医療機関のデータのコトとかぁ、あと…………キャスケットの」

「…………ソうか」

 

何と言うか。

この。

外見がプルーンのクセに根が真面目な感じ。

 

頭の中ではコスプレみたいなモノだと思ってても、感覚がバグる。

だが思わず黙り込んだワタシの反応を何か、違う意味で捉えたらしい。

心底面倒臭そうな鳴き声を漏らすと頭だけ起こした。

 

「とりあえずさー……調べるのは貰ったデータのだけで良い感じ?」

「オう」

「ふーん。時間があったらついでに身元も調べとくわ」

「別に構いやしネえ」

「身内に疑われてるとか絶ッッッッッ対ヤだから!!! 掲示板に書き込んでる奴等だけじゃく覗き込んでる奴等の身元も! 一人残らず! 一人残らず調べ上げてや゛る゛!!!」

「ワイリー様に誓っテ、おめえを信じテる」

 

後に尾を引いても困るから言うが。

本気で身内が売ると思うほど、落ちぶれてはいない。

 

「え? ……お、おう…………いや……まあ? 口にしちゃった以上はやるし? ストーンマン頑張るし?」

「そコはプルるんジゃねえノか」

「プルるん?」

「ヤ……気にすルな」

 

凄い訝しまれている。

だが、何でもない風を装う。

ボンバーガールのプルーンの見た目でストーンマンを自称されると。

なんか、こう。

違うじゃん、と言う気分になって思わず口が滑ってしまった。

 

別に見た目がそうだからと言って、生き方までそうしろとは思わない。

ちょっと真面目に口が滑ってしまっただけだ。

とは言え「プルるん」とか小声で口に出して頷いてる辺り、気に入ってしまったのかも分からない。

まあ、ワタシが強制した訳じゃあないし。

そう思う事にする。

 

「それヨり。本当にそこマで調べてクれりゃ追加報酬を出ス」

「追加報酬!?」

「自販機にケーキ追加すル」

「ケーキ!!!」

「チョコケーキ」

「チョコケーキ! チョコ? チョコだけ……? チョコ……噂に聞くイチゴのショートとかじゃなく、チョコだけぇ?」

「最近ちょっト忙しイんダ……」

「あ~…………じゃあ、仕方ないかぁ…………」

 

不服そうではあったが。

忙しい。

その一言で納得したように引き下がった。

 

イチゴのショートケーキのデータストックもない訳じゃない。

だがまだ味の微調整は終わっていない。

それにチョコ系統を派生させていく方が自然であるし何より楽なのだ。

 

微妙にガッカリしたような表情を浮かべつつ、しかし既にデータの分類を開始しているプルーンを眺める。

知っている何かしらのデータと、知らないデータとを分類し始めている様子が見て取れる。

ならば、言うことはない。

 

「――頼んダ」

 

それだけ言い残し、背を向ける。

背後で手をヒラヒラ振ってるのを感じながら。

ストーンマンのプライベートエリアを後にした。

 





1980年頃の時代背景は映画ウォー・ゲームや書籍等を参照。

ストーンマンはアニメの大発生がモデルです。
なおボンバーマンの方は大発生の予定は流石にありません。
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