ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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006:バグの欠片

 

『プロトの反乱』。

そのオチはあっさりとしていた。

ニホンとアメロッパ。

そのネットワークが切断されたプロトの食料と呼べるモノは、殆んど喰い荒らし終えた残骸データしか残っていなかったのだ。

故に大人しく休眠状態にとなったらしい。

 

なら、ウダウダせずにさっさと切断した方が良かったのでは。

ワタシは訝しんだ。

それはともかく。

休眠状態となった隙にニホンの科学省が総力を挙げ、ようやく抑え込むことに成功したとのことだ。

 

「やれやれダ……」

「全く。傍迷惑なことだ」

 

軽く振るわれる剣撃を躱す。

事態は収拾したものの当然、ニホンとネットワークの繋がっていた各国からは苦情の嵐。

浸食して来ていたプロト本体のことは勿論だが、分離体とでも言うべきプロトバグも幾らか紛れ込んで被害を撒き散らしていた。

 

切断後には再生能力が落ちたと言っても残っており、ウイルスとして見れば厄介。

対応に苦慮していた各国に対し、アメロッパは即座に支援を表明。

二十体の精鋭ナビから成る十のタッグチームをプロトバグ等のデリートのため各国に派遣している。

各々がワイリー様の作られた《ファイターソード》を携えているのだから当然のことだが。

 

ニホンは自国内のネットワークが最低限の復旧が出来次第すぐに支援すると発表はした。

それも電子工学の権威である光正を被害のあった国に直接派遣すると言う形で行う。

と。

まあ、自国の復旧を被害国より先に行うと言うことで非難が殺到しているが、これに関しては光正を少しでも早く自国のネットワーク復旧もとい開発に携わらせたいと言う思惑からだろう。

と言うのが、キャスケット様とワイリー様の言だ。

 

光正の手が加わるか加わらないかで基礎からして違って来ると言うのは専らな話。

曰く、核から違う。

本来なら大きな利益を齎すハズだったろうに被害を理由にされれば、ニホンとて断れるハズもない。

ニホン以外、近い目だけで見れば被害は大きく見えるが、遠い目で見ればそれを遥かに上回る利益を受けられる。

 

「デ。その詳しい話は聞けネえ訳か?」

「すまないが機密に分類される」

「マ、仕方ネえか。ほイ」

 

お手玉のようにボムを放るが身軽に避けられる。

そしてそれらの上でも、アメロッパの受けられる利益の見込みは他国を大きく上回る。

何せ最後までプロトの被害を受け続けた上、その後のプロトによって生じている被害の支援までニホンに先んじて行っている。

否定しようのない程に大きな貸しをニホンに対して作ることに成功した形。

何か色々と受け取れるらしい。

国家機密があったりとで詳しくはワイリー様でも窺えていないそうだが。

 

ともかく。

そんなこんなでプロトからの被害をワタシ達で抑え、その後の支援にも間接的に携わったワイリー様はアメロッパから表彰を受けられた。

功績が認められるのは当然だが、良い意味で予想を上回られた。

 

ワイリー様は最大の功労者とも言えるカーネルが表彰されなかったことを気にしている様子だったが、それに関してはご友人のキャスケット様がナビ用の勲章を作る旨を上奏すると言うことで納まっている。

首元に《ソード》を突き付けられた所で固まり、両手を上げた。

一つ頷き、カーネルが剣を納めた。

雑談は、そう言う風に終わった。

 

 

 

そして今。

『プロトの反乱』から半年と少し経過した現在。

ワタシはネットワークパトロールの他に異常があれば報告するようにとの任務をワイリー様から受けていた。

ニホンのネットワークは暫く前に復旧を終え、アメロッパはもちろん各国と再び繋がっている状態。

それによる悪影響を心配されたらしい。

お陰で軍事ロボの開発ではなく、ネットワーク業務にお忙しいワイリー様を他所に、ワタシはそれほど忙しくはなかった。

 

ただのパトロール。

ウイルスに関しても、カーネルとプロトバグを知っている身からすれば片手間にデリート出来る強さでしかない。

なのでたまにあるネットワーク上のバグを報告して、復旧用に働いて回っているプログラムくんの護衛を行うのが主。

まあ、任務と言うことになってはいるがボランティアだ。

ウイルスをデリートして回っても、強くないからチップ的な旨みもないし。

 

「イヤー 護衛 アリガトウ ゴザイマス!」

「気にすンな」

 

それならば今回のように。

アメロッパでの心証を稼ぐ方が有意義である。

頭を下げてくるプログラムくんに適当に返しつつ、周囲を一応見渡す。

復旧の必要そうな所はもう見当たらない。

パトロールがてら恐縮しているプログラムくんを送り帰しつつ、ふと気になっていることを口に出していた。

 

「最近ダが」

「ハイ? ナンデ ショウ?」

「ニホンと接続さレてから、バグは多いカ?」

「イイエ? 普段 ト 特ニ 変ワラナイト 思イマスガ?」

「ナら良い」

 

若干不思議そうにしているが、特に何かを言うつもりはない。

ワタシがワイリー様のご命令と言うことにしてパトロールして回っているのは周知の事実。

だからこの質問にはそれほど違和感はないだろう。

実際、プログラムくんの待機所まで送るまでの間にそのことを深堀してくることはなかった。

 

確証が持てることでもない。

あるいは、既にコトが起きているのではないかと思っているぐらいだ。

そもそも此方にまで影響があると思ってもいないから気にしても仕方ない。

前兆を掴めたなら、様子見にせよ何にせよワイリー様の功績をより積み上げられると言う思惑があってのみ。

そう、思っていたのだ。

 

「オっと」

 

急なことであるが。

バグは別段、ネットワークにだけ発生する物ではない。

システムやプログラム等に不具合が生じても発生する。

 

顕著な例としては、ウイルスバスティング。

ウイルスのデリートが攻撃行動の最中、つまりカウンターでデリートすると時折『バグのかけら』と言われる小さな塊が発生することがある。

『バグのかけら』はこれ以外にも色々と発生要因があるが、ともかく。

単独ではバグと言えるほどのものではないが、放っておくとより大きな不具合を引き起こし、結果的に大きなバグに成ることもあるジャンクデータ。

これがウイルスのデリートの際に発生する。

時もある。

 

少なくとも、ワタシにとって珍しいことではない。

カウンターデリートと言う、能動的に発生させる方法を知っているからだ。

ただ放っておいてプログラムくんの仕事を増やすのも憚られるし研究にも使っているからと、何時も回収している。

今回もそうするつもりだった。

 

「! コいつは…………」

 

手を伸ばした。

その刹那だった。

まるで風に浮き上げられたホコリのように、『バグのかけら』が電脳の空に浮かび上がって行ったのは。

魅せられるように思わずソレを目で追う。

飛んで行くソレは、やがて何処かも分からない彼方へと消えて行った。

 

不思議なことがある。

そう片付けるのは簡単だ。

だが、ワタシは知っている。

警戒していた、とある記録がある。

コトが起こったのは、『プロトの反乱』後。

原因は今回も、バグ。

そしてコトが起こるのは今まさに、バグの欠片が飛んで行った方向。

かの国に繋がるネットワーク方面。

その国はやはり、ニホン。

 

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