ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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058:戦争遊戯

 

全てが順調である。

ゼフラム社との顧問契約。

当初、株主から反対の声が挙がった。

 

まあ当然。

むしろ予想通り。

人間からすれば所詮はネットナビ。

しかしそれでもと押し通したゼフラム社に批判の声が集まり、しかし様子見の声もあった中。

 

二ヶ月後に出された、新たな汎用ネットナビ。

ゼフラム社が元々開発を進めていたネットナビに、ワイリー様謹製『W2』のプログラムを一部ダウングレードして転用したその性能。

それでも今までのネットナビを十二分に上回っていた。

 

何故それを産み出すことが出来たかと言えば、ワタシのお陰と言うことになっている。

そうなれば話は別だ。

挙がっていた批判の声は瞬く間に賞賛の声へと変化した。

 

正直なところ実際に売り出されるまで安心出来なかったが、一応の対策はしてあった。

因果の逆転。

卵が先か、鶏が先か。

 

ワタシの記録にある、ノーマルナビと呼ばれていた、緑と黄を基調とした丸っこい感じのネットナビ。

その姿を参考にしたネットナビこそが『W2』であったのだ。

故にか、売れる。

 

性能が良いから売れるのか、未来がそうだから売れるのか。

果たしてどうなのかは分からなかったが、よく売れた。

まあ、良し悪しについて心配をしていたのはワタシだけだったのが何とも言えない気分になったが。

 

さておき、ゼフラム社は予定通り好調。

MMMの方も、元社長である顧問のお陰で特に問題なく進んでいる。

何よりも、

 

「…………どうぞ」

 

響いてきたノックにそう返す。

何処か緊張した面持ちで、予定通りの時間に来た社長達を笑顔で迎える。

ソファに腰掛け、暫くの間は世間話を興じていた彼だが。

やがて意を決したように、ワタシの待ち望んでいた言葉を口にした。

 

 

 

暫くの時間を置いた後。

空軍基地。

其処に入るのは案外、ワタシでも緊張する。

それも人に連れられてとなると、緊張も一入だった。

 

国家機密に該当する『Project・OS』。

『OS計画』。

遂にその手掛かりを掴んだのだ。

掴んだ、と言うよりかは想定通り懐に飛び込んで来たと言うべきだろうか。

 

アメロッパの進める計画と言う意味で、最新最高のネットナビの製造に成功したゼフラム社。

更にはそのアドバイザーとして技術顧問をしている『ドルプロ』のワタシことパイン。

その双方に声を掛けてくるのは当然と言えば当然のこと。

もっとも、ゼフラム社には想定していた通り、以前から計画に関しての協力を求められていたようだが。

 

『来られます』

「…………」

 

囁かれた言葉に、静かに瞼を上げる。

現在のワタシは、曰く安全の観点から、PETに入れられて基地内部を運ばれた。

そうして辿り着いた何処ぞの部屋にて兵士の一人によってコンピューターに繋げられ、今に至る。

 

思考テスト。

一応はそう言うモノを受ける必要があるとのことで、わざわざ連れられて。

普通なら断りたかった所だけれども。

流石に『OS計画』の詳しい情報があるとなればそうはいかない。

ゼフラム社の方々からのお願いもあってはなおさらだ。

 

「是非とも」との相手方の要望に応えた形。

要するに、相手側の顔を立てるため。

そう言った側面もあってこそ、知りもしない輩のPETに入れられて運ばれる何て言うコトを受け入れたのだけれども。

 

音を立てて扉が開かれた。

口を真一文字に閉じ、眉間に皺を寄せた金髪の男。

軍人。

それがワタシを一瞥し、目の前の椅子にどっかりと腰を下ろした。

 

「初めまして、サム・モーション将軍。ワタシはパ」

『本題から言う』

 

派手に失礼な。

思わず、自由に作れるハズの表情が本気で固まった。

自己紹介もなしに。

いきなり。

 

そんなワタシの混乱を他所に、むしろ苛立ちを抑えられない様子で舌打ちして葉巻を取り出した。

如何にも重厚なライターを取り出して火を付ける。

その上で、わざわざ吸い込んだ煙を此方に向けて吐き出し、困惑する様子を見てか笑った。

 

『お前は我がアメロッパ軍のネットナビの礎となる。光栄に思え』

「…………と仰いますと?」

『理解出来んか? 解析して我が軍の役に立たせてやろうと言うのだよ』

 

この典型的なカス軍人ムーブ。

即座に確認するが、先程から変わらずオフライン状態ではない。

入れられたコンピューターが隔離されている訳じゃあない。

全然やろうと思えば抜け出せるのですが。

 

とりあえず怪訝な表情を浮かべて、後ろに居並ぶ兵士達へと視線をやる。

直立不動を維持してはいるが、それらの瞳は揺れていた。

知っていた。

という訳ではなさそうなのがせめてもの救いか。

 

「あー…………ワタシ、『OS計画』でしたか? そ」

『お前を解析すれば済む話だ。分かったらこの葉巻を吸い終わるまでにスリープモードなりになれ、私は忙しいんだ』

「………………」

 

流石に、絶句。

怪訝とか困惑とか、そう言うのを通り過ぎて顔が引き攣るのを止められない。

一応、権利を持っていることになっているワタシに対する対応がコレか。

救いと言うか何と言うか。

 

とりあえず話の通じそうな人間を求めて視線を兵士達にやるが、動かない。

動けない、が正しいのか。

こんなのでも基地の上層の存在なのか。

だとすれば流石に話にならない。

いや、話が出来ない。

 

『チッ!』

 

何言ってるんだろうなコイツと言う視線を向け続けて暫く。

半分ほど吸った葉巻を圧し折った手が、舌打ちと共にその拳がPETを叩き潰した。

不吉な音が鳴り響いた。

幸か不幸かPETとの接続は絶たれていない辺り、ギリギリだろう。

戻って安全とは思えない。

 

つまり。

基地の電脳から堂々と出なければ行けなくなった訳か。

突然の。

というよりも突発的としか思えないそれらの凶行を呆れ眼で眺めるワタシに、鼻を鳴らして答えた。

 

『機械風情が権利等と! 寝言は寝ても言うべきじゃあなかったな!』

 

尻が顎にあるだけあってか、汚い言葉を言い捨て立ち上がったかと思えば、座っていた椅子を蹴り飛ばし扉へと歩き去っていく。

何なのだ。

呆然と見送る中、思い出したように懐から無線を取り出し何事か言っている。

 

聞こえない。

しかし、数回のやり取りを終え懐に戻すと此方に振り返った。

首を横に掻っ切る仕草。

そのまま高笑いをしながら部屋から出て行った。

 

とりあえず。

と言った具合に残っている兵士達に目を向ける。

椅子を直す者や、捨てられた葉巻を拾う者。

それらは共通して、誰もワタシと目を合わせようとしない。

 

要するに。

ワタシは此処に居なかったことにしたい訳か。

流石にそれは無茶だろうとは思うものの、あの態度。

平気で無茶を通して来た者のソレとしか思えない。

本来、痛くなることのない頭が痛くなる気がするのを、額を叩いて気分だけでも抑えながらゆっくりと息を吐く。

 

差別。

まあこれは許そう。

ネットナビが人と同等の権利を持てる等とはワタシも完全に思ってはいない。

同じ人間であっても、将来的にはラウル等の苦労していそうな例もある。

 

だが、だ。

頂けない。

ワタシを舐めるのは頂けない。

仮にもジーニアスを自称しているパインを侮り、基地内に繋がっている電脳に放置するのはあまりにも頂けない。

 

舐めている。

舐め過ぎている。

コレは少々、

 

「――――分からせるしかないにゃ~?」

 

理解をさせるべきか。

何に喧嘩を売ったか。

教育してやるべきか。

何をしでかしたのか。

 

一人一人と出て行くソレ等を尻目に。

続々とやって来るナビ達へと目を向ける。

どれもこれも、驚いた顔ばかり。

可哀想に。

知らなかったのだろう。

 

口々に「侵入」だとか「危険なナビ」だとか口にしているが察するに。

ワタシを侵入者として捕えに来た訳か。

カーネルが居るなら別だが。

睥睨するワタシに、三十体程度のナビが砲口を向けてきている。

 

侵入者がパインであることへの動揺か、微かに揺らいで見えるがそこまで。

自立型でない以上、されている命令を優先するのだろう。

ああ、全く。

 

「――――数を揃えれば勝てると思ったのかにゃあ?」

「お待ち下さいパインさん! ここは一先ず拘束させて頂ければ……」

「おマヌケさーん。撃つのが遅い。お前等全員千切り潰します」

 

全員、不合格。

改造型の《フリーズボム》を十個、手中に生み出す。

抵抗の姿勢を見せたことでいよいよ覚悟を定めたか。

掛け声と共に一斉掃射が放たれる。

 

だがその程度。

ワタシにとって。

ワイリー様に作られたこのワタシには。

ちょっとしたミニゲームにしか過ぎない。

 

迫って来る弾丸の数々を左右に軽く避けながら一息に迫り、驚愕に染まったそれらの顔に一つずつ《フリーズボム》を見舞う。

瞬間、ワタシの身体の脇を通り過ぎていく冷気。

《アイスキューブ》を参考にした、恒久的な封じ込め。

三十からなる氷山に封じ込められたナビ達を他所に、まさに入って来ていた場所からワタシは出る。

 

一瞬の浮遊感。

次いで耳を劈く警報の音。

現れたワタシの姿を見、驚愕に染まっている幾多のナビを他所に再び同じだけの《フリーズボム》を生み出し放る。

 

「全く…………雑兵がどれだけ集まろうと、当千に勝てる訳ないでしょうにゃあ」

 

無造作。

そう見えるだろうが違う。

固まっていたナビ達が、気付いて動き、予測通りに仲間に当たって併せて凍る。

一個で数体のナビを巻き込んで凍らせた成果に頷きつつ、悠々と歩く。

 

慌ただしい空気。

警戒の増していく空間。

それを他所に、セキュリティの厚い方面を探る。

 

どちらが深奥で、どちらが浅層か。

出入口はどちらになるのか。

探れば大凡、理解出来る。

 

「…………アッチが出入口かにゃ」

 

俄かに騒ぎ始めている方角。

最短の出入り口の方向。

そちらに、足を踏み出さない。

背を向ける。

目的地はそちらにはない。

 

仮に今から外に向かっても、十分に相手方の戦力が整ってから向かっても、どちらにしろワタシの性能を以てすればどちらであっても結果は変わらない。

脱出は可能。

これは自信や自負ではない。

事実だ。

 

それほどまでにワイリー様の手によって製造されたワタシの能力はその辺のネットナビとは隔絶している。

それでも、カーネルよりか下ではあろう。

故に、カーネル。

それこそが唯一にして最大の問題である。

 

詰まる所。

カーネルと完全に敵対状態になるのは都合が悪い。

アメロッパに存在しているのが分かっている中。

ワイリー様の手元にない、唯一ワタシをデリート出来得る存在だから。

 

将来、WWWがワイリー様の手によって結成された場合には、アメロッパに報告していないウラインターネットのルートだとかを使ってどうとでも出来るだろう。

だがそれはあくまでもボンバーマンとしてだ。

現在、パインとして敵対するのは都合が悪い。

主にワイリー様に情報をお渡しすると言う観点からして。

 

そうでなければ。

最悪、ウラインターネットに引き籠ってセレナードの部下その一でも標榜すれば良い。

あるいはスタッフマン達や他の皆さんを連れてウラに別組織を立ち上げるのも一興。

ただただ、現状はマズいと言うだけ。

いやまあ色々と義理だとかあるから出来得る限りそれはしたくない選択肢なのだけれども。

 

そう言う訳で。

初心に振り返る。

パインの目標は何か。

 

キャスケット様を実質殺した首謀者を見付け出す事。

そこに尽きる。

そのためにも『OS計画』の全貌を明かしたい。

計画内容は勿論、計画の立案者も含めて。

で、だ。

 

Q.手っ取り早く計画の詳細を知るにはどうすればよいか?

A.軍のデータベースから情報を全部引っこ抜く。

 その後であればカーネルと敵対しても問題ないから。

 

下手すれば国家反逆罪だけど、そこはまあ良いや。

まずは通信網の掌握。

カーネルを呼び出されると面倒臭いので。

それは成功。

メールと、ついでに電話回線も遮断させて頂いた。

ワタシが外ではなく内に向かっていると知られる前に完了したのが大きい。

 

次いでセキュリティの簒奪。

それも成功。

漸く逃げるのではなく、中に侵入して来ていると気付いたらしいナビ達が戻って来る前に出来た。

普通のネットナビなら相当手古摺ったろう。

 

でもワタシ、普通じゃないので。

そうこうしている内に動力源も確保。

セキュリティを味方に、戻って来ようとしているネットナビ達の迎撃に逆用出来てしまっている間に終わってしまった。

これで強制的に電力を落とされる事態は避けられる。

 

まあ、軍事施設。

緊急用の電力設備があったからこそ。

と言うのもありますけれど。

 

後は簡単。

人間が電脳世界の情報を得るためのモニターを占拠。

順次、ボムでブリハマチしてる映像や「パイにゃんは天才、パイにゃんは強い」と指や尻を振ってる映像等々に差し替え。

何処までがワタシのモノになってるか、分かり易く示唆してやる。

そうして少しずつ首を絞めてやれば、

 

『何をしている! 貴様!』

「はいは~い? にゃーにかご用ですかにゃん?」

『今すぐ辞めろ! どうなっても良いのか!?』

 

何とかワタシを止めたい彼方側が連絡を取ろうとしてくるのは察しが付く。

PETが完全に壊れてなくて良かった。

と言うのはワタシ視点か、はたまた彼方視点か。

 

画面。

それが見えないどころか音声にすらノイズが入り混じった通信を交わしながら、手を止めることはない。

プラグインを利用して直接、ワタシに挑み掛かってくるナビは《フリーズボム》で片手間に氷像に変えながらデータベースの掌握を進める。

まあどうせならボムじゃなく、ワッフルコーンのアイスでも片手にやりたい所だったけど。

 

「なにがどうなるのかにゃぁ~? パイにゃんー、分かんないにゃぁ?」

『ッ!!!』

 

未だ立場を弁えていない相手に、溜め息交じりに問う。

果たして。

見えていない向こうの表情は如何なものか。

 

血管でも切れそうな具合か。

はたまた顔を青褪めさせているか。

声の威勢だけは良いが、それ以外はまるで察しが付かない。

でもまあ、お互いのためになる助け舟を出してやろう。

 

「――――ま、そんな迫真の演技をしないで下さいにゃ」

『演ッ! 貴様、ふざけたことを!!!』

「ただの演習じゃあないですか。対ネットナビを想定して、貴方が手配を済ませたからと依頼して来た演習。そうでしょう?」

 

息を飲む音が聞こえた。

理解出来たようだ。

現在進行形で進んでいる、軍事施設の占領。

それを演習で片付けてやる。

そう伝えてやっているのだ。

 

全部、お前の責任として。

そう言うことにしないとどうなるか。

今現在、たった一個のナビによって占拠されようとしている軍事施設の意味を理解できない程の愚物ではあるまい。

果たして向こうには見えているのか知らないが、とりあえずニッコリと笑顔を浮かべて見せる。

 

『き、きさッ!!! きっき、き!!!』

「あーっとPETの具合が悪いみたいでーす」

 

振り絞る。

言葉として、何か口にしようとしている声音を他所に、ワタシ自らPETとの接続を断つ。

さて後は。

 

データベース確保完了。

そこにある情報の悉くを、既に押さえてあった通信設備からワイリー様の元に偽装しつつ発信。

是にて最低限の役割は終了。

 

二つに一つ。

基地の崩壊。

ワタシの手による解放。

そのどちらかの際にも痕跡を消し去れば、決してワイリー様に辿り着けはしまい。

 

仮に。

あの男が本物の愚物であれば、最早ワタシは助かるまい。

自らのこれまでの全てをアメロッパのために擲つことが出来る程度の心があれば、ワタシも助かるのだけれど。

そうでなければ基地の崩壊に巻き込まれるか、逃げ出せれても追手を出されるだろう。

パインとしてはお終いだ。

溜め息一つ。

 

いや本当。

なんでアメロッパのネットナビ関係の話から基地の掌握に話が変わってるんだろうか。

激動の時代でももう少し穏やかな流れのハズでは。

 

等と内心で愚痴りながら行き掛けに向かって来るナビをまたしても氷像に変える。

基本的な場所は押さえた。

押さえてしまった。

そう言う訳で最後。

空軍基地のある種、根幹。

 

「はぁーい、皆さ~ん。お元気ですかにゃん?」

『何としても止めろォオ!!!!!』

 

マイク越しに聞こえて来る絶叫。

居並ぶは、数十体のネットナビ達。

その奥に見えるシステム。

 

ミサイル制御システム。

一歩、足を進める。

瞬間迎えて来たのは数多のチップ。

《ガイアハンマー》の衝撃波が地面を揺する。

 

「パ~イにゃんは天才」

 

衝撃波を軽やかに飛び越える。

狙い澄まされた《メガキャノン》の弾丸。

 

「パ~イにゃんは強い」

 

着地際に身体をクルリと一回転させてやり過ごす。

前方より押し寄せる《アカツナミ》。

紛れ放たれている《ダイナウェーブ》。

 

「パ~イにゃんは天才」

 

ボムの爆風で散らし一歩、横にずれることで《ダイナウェーブ》を空かす。

《アカツナミ》に隠れ、押し寄せて来ていたナビ達。

その一角に《フリーズボム》を投げ付け凍らせる。

止まらない。

先陣。

袈裟掛けに放たれる《アクアソード》。

 

「パ~イにゃんは強い」

 

半身傾け頬の近くでピースサイン。

序でに腰元の片手から軽くボムを放って凍り付かせる。

氷像の左右。

それぞれが振り被った《フレイムソード》。

 

「パ~イにゃんは天才」

 

ピースしていた手で振り抜かれゆく腕を掴んで引き寄る。

蹈鞴を踏むそのナビとワタシのすぐ脇を振り抜かれた剣筋が通り過ぎた。

そのまま驚愕に歪んでいる二体のナビ同士をぶつけ纏めて氷漬けにする。

真上より来る《リモコゴロー》の一撃。

 

「パ~イにゃんは強い」

 

素早く前に飛び込んで避け更に寄って来ていた一体の脚を払う。

倒れながらも此方に《メガキャノン》を向けるのは流石。

感嘆しながらも、

 

「パ~イにゃんは天才」

 

不合格。

狙いがお粗末。

顔の動きだけで避けられる。

投げ捨てるように《フリーズボム》を落とし視線を切りながらそれでも三回ばかり拍手。

爆音と共に凍り付く悲鳴を他所に更に生み出したそれらをベースボールのピッチャーの如く振り被り、

 

「パ~イにゃんは強い」

 

当然外すことなくぶち当てる。

一個一撃。

《リモコゴロー》本体の消失と共に宙に在ったそれらは役目を失った。

怯んだように僅かに身を引いているナビ達、

 

「パ~イにゃんは天才」

 

に注目を集めて背後から迫っていた《エレキソード》の斬撃を一歩進んで空かす。

視線を背後にやる。

《インビジブル》。

姿を隠しているソレを後回しにすることを内心で決め一息に駆ける。

 

「パ~イにゃんは強い」

 

一斉掃射。

最初のそれより弾幕が分厚いのは最早飛び込むつもりのナビが居ないからか。

呆れつつ。

幾つか後ろの氷像に当たりそうなモノだけ迎撃。

残りは華麗なステップで避ける。

 

「パ~イにゃんは天才」

 

間。

一斉故の掃射の間。

愕然としているナビ達へと顔の横で両手を大きく振りながら歩いて近寄る。

悲鳴を上げたのはどのナビか。

統率も何もない射撃。

射撃。

射撃。

 

「パ~イにゃんは強い」

 

全く怖くもない。

掃射の厚みは真剣に対応する必要はあったけれども。

恐慌を来したナビ達ではワタシの相手になる筈もない。

こう言う所もしかすれば疑似人格故の弱点なのかも。

益体もなくそんなことを考えながら。

 

一体。

また一体。

丁寧に。

丹念に。

余すことなく氷漬けにし。

そして、

 

「――――ザ―コザコザコ皆さんザコォ~!」

 

氷像群の中。

両腕を広げて、ゆっくりと一回転。

妨害要素のない最後のシステムに手を掛けた。

 

併せてモニターをハッキング。

進捗に併せ、ミサイル制御室のモニターを進捗状況に併せて変えていく。

ワタシの映像に変えていく。

絶望の声を聞きながら。

一番大きなモニターまで。

 

「くふふ」

 

止め処無く、変えた。

振り返る。

大モニター。

 

そこに、振り返ったパインの姿が映るように。

微笑んで、両腕で迎えるような姿が映えるように。

備え付けられているカメラが、制御室を映している。

 

ある者は両目を見開き。

ある者はただ口を開け。

ある者は手で顔を覆い。

ある者は祈りを捧げて。

ある者はただ、立って。

ワタシを見ている。

その中の一人に、微笑み掛ける。

 

どうする。

どうされたい。

どうして欲しい。

 

最低限の役目を果たせた以上、ワタシはどちらでも構いやしない。

いや、嘘。

出来るなら口にして欲しいけれど、

 

「………………」

 

生み出したプルルンソファに腰掛けて。

脚を組んで、顎に手を当てる。

最中にもシステムは動き続ける。

目標は他の基地。

データベースより読み込んだ、迎撃設備の比較的薄い地帯。

 

『――もういい!!! 演習は終わりだ!!!』

「は~い」

 

見開かれた瞼が深く閉じられ、刹那にその言葉が放たれた。

彼から。

座ったまま答え指を鳴らす。

驚く間もなかった人達を他所に、制御室のモニターが正常に戻る。

 

序でに、氷漬けにしていたナビ達も。

呆けているそれらを無視して制御システムをワタシの支配から解き放ち、操作が利くように戻す。

飛び付くようにモニターにへばり付いた幾人からやがて、安堵の息が零れた。

 

「それじゃ、お疲れ様でしたにゃん」

 

そこまで見届け、まずはその場を後にする。

ここ以外も。

ロックを掛けている場所を順次、解き放っていかないといけない。

データベースと通信設備から諸々の痕跡も合間に消さないといけないし。

 

やることは多々。

とは言え。

それらを邪魔されることはなく。

ただ遠巻きに視線をやってくるナビ達を尻目に復旧作業を進めたワタシを、出て行くまで誰も声掛けしてくることすらなかった。

 

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