ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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「…………アノ」

「まあ、座れ」

「…………」

「……ハイ…………」

 

十三時まで時間を潰してスクエアへと戻って来た。

その間は広場のようなスペースで時間を潰していた訳だが。

来たのは予想通り。

カーネル。

 

十二時を少し回った所で、姿を見せたのだった。

驚く様子もなかったのは恐らく、軍の回線か何かで情報を仕入れていたからだろう。

軽く手を上げたワタシに対し、確りとした敬礼で返されてしまった。

 

まあそうされて思わず敬礼をキチンと返したのだが。

そうなると、困ったことにカーネルも合流する訳で。

アイリスはカーネルの実質分け身なモンで。

それをアイリスは何とも思ってない風で。

でもカーネルは動揺を隠し切れないぐらいで。

 

要するに。

言ってしまえば。

すごく、気まずい。

 

丸テーブルを囲うように座るワタシ達。

正三角形を描くように。

会話もなく、ただ座り続けている。

 

手はお膝。

ちょっとでも動こうとするとカーネルとアイリスからの視線と言葉が飛んで来るのだ。

カーネルは多分、アイリスと残されたくないからだろうが。

アイリスはアレだ。

次の食べ物の催促だろう、多分。

 

とは言え、動くに動けない。

午前中は気持ち、向けられていた視線も、ない。

近くを誰かしら通ったとしても、足早に去っていくのみ。

 

時々、先程のようにワタシが席を離れようとしては見咎められ。

軽い問答の末、仕方なしに座る。

そんなことの繰り返し。

 

繰り返して、どれだけ経ったか。

気まずい雰囲気のまま多分、三か四時間ぐらいは経っただろうか。

何ともなしに時間を確認する。

 

おかしい。

まだ十四時にもなってないんですけど。

一時間も経ってないんですけど。

 

白目を剥きそうになる内心を抑える。

ちょっと待って欲しい。

この素晴らしく気まずい空間で、あと数時間を待ち続けるしかないのか。

背筋を駆け抜ける怖気を振り払い、無理矢理に言葉を絞る。

 

「……………………なんダ……食べタいの、あルか?」

「……アイス」

「……オレもそれで頼む」

 

テーブルの上で視線が一瞬だけ交錯する。

自分で言ったのはそうだが、ワタシが買いに行って良い流れなのか。

助かるけども。

呼び止められないようそのままの流れで素早く立ち離れる。

一応昼も過ぎたお陰で然程並んでない列に続けば、そう経たずにワタシの番になる。

 

ワタシは。

まあ、ワッフルコーンのバナナアイス。

カーネルは。

カップのバニラアイスでいいや。

最後にアイリス。

カップの、チョコアイスでいこう。

 

連続して出してすぐさま脇に避ける。

後ろのナビから軽く視線を逸らされた気がして居心地が悪くなるが、それ以上は気にせず席に戻ってそれぞれに渡した。

カーネルはバニラアイスの色がバナナと違うことに若干の警戒を見せてはいるが、隣のアイリスは既に説明書きを読んでいたのか普通に口にした。

 

「ぷゅっ」

 

とでも形容しようか。

冷たい、と言う感覚が想像以上だったらしいその口元がキュッと窄まった。

僅かに驚いたのか、普段より少し目を見開いていたのはカーネル。

だったが、そう経たずに目元が和らいでいた。

 

一息。

それが、アイリスを前にしていたカーネルが初めて崩した表情だったからこそ。

多分、大丈夫。

特に根拠はないが。

多分大丈夫なのだろう。

 

訳もなくそう考えながら頷いて齧り続けていれば、やがて戻ったアイリスがスプーンに小さく掬ってアイスを舐め始めた。

食べられないとそのまま回して来るかと思っていたが。

チャレンジ精神があるのは悪いことじゃあない。

一先ず。

一先ずこの空気を保つため、存在しないが、舌を動かす。

 

「……そう言ヤあ、カーネル」

「何だ?」

「ストーンマンはドんな具合ダ」

「防衛ラインを八割方超えたと聞いている」

「流石ストーンマン」

 

どうやらワタシが気付いてなかっただけで何かしらの方法で連絡があったらしい。

だがまあ、其処は予想通り。

いや、予想以上。

ストーンマンのスピードじゃあ完全攻略は難しいと踏んでいたが。

 

まだ昼を多少過ぎた時点で八割を超えているなら案外、日を跨がない可能性もある。

頷き、コーンの残りを一息に飲み下す。

まだゆっくりと食べているカーネルやアイリスは、置いていても良いだろう。

 

立ち上がったワタシに視線を向けて来たカーネルをスルーして自販機へと向かう。

声を掛けられることはなく。

少しして列から様子を窺えば、遠慮がちながら、カーネルの方から話し掛けている姿がそこに見えた。

 

 

 

さて、夕方。

よりも少し前か。

現実世界なら、時期によってはこれから空も赤らんで来る。

そういう位の時間に、広場に戻った。

 

「そう言エば、アイリス」

「?」

「腹、大丈夫カ?」

「どう言う意味?」

「重クないか?」

 

心底不思議そうな顔をしていると思われるアイリス。

ライダーかマンかとでも言うべき仮面で表情は読めない。

だが、気のせいでなければ胸を張った。

 

「分解プログラムを組んだ」

「そ、ソうか……」

「ええ」

 

何と言う才能の、いや性能の無駄遣い。

将来、とんでもプログラムを即自作出来るだけある。

と言いたい所だが。

食べ物プログラムの処理速度を上げた所で、消費速度が増えるだけだ。

要するに、余計に金が掛かるだけだと言うのに。

 

いや。

この場合、支払ってたのがワタシだったのが悪さしているのか。

何とも言えない心持ちながら。

一先ず褒め称しながら、矛盾した表現だが、周囲へ視線を向けずに目だけを走らせる。

 

広場まで戻ったのは当然、理由がある。

単純な話。

カーネルの許に、ストーンマンが最後の基地の防衛線を突破したとの連絡があったらしいからだ。

 

暗号通信か何かか。

興味はあるが、流石にカーネル相手に引っ張り出す気は起きないからスルーしている。

ともあれ、そうなれば間もなくハッキング自体が完了するだろう。

しかもどうやら、そこまで派手な破壊活動はしなかったらしい。

 

何でも、正面突破。

《ストーンボディ》で正面から堂々と基地へと乗り込みハッキングして行っているとか何とか。

中身の優秀さ故のゴリ押しとでも言うべきか。

イメージデータは使ってないから単なる舐めプと言うべきか。

 

仮に使っていれば、動かなくとも一時間と掛けずに壊滅出来るだろうから当然だろう。

ワイリー様がお停めしたのか。

その辺りは知らない。

 

ともかく、正面突破と言う言葉に反して手際は流石の鮮やかさとも軽く聞いた。

そう聞いてしまうと、わざわざストーンマンが場所を選んだと言う所で邪推してしまう。

主に。

ハッキング仲間から何某の情報を仕入れていたんじゃあないのか。

既にある程度の情報が流れ得ているのではないか。

と言うような。

 

まあだからどうしたと言う話。

ワタシも別に、褒められた手段を使った訳じゃあない。

以前からハッキングされていたと言うのなら、今回のコトで警戒が強まるなら良いことだろう。

さておき。

アイリスを褒めるのを終わらせ、カーネルに顔を向けた。

 

「……デだ、カーネル」

「……何だ?」

「アりゃ、なんダ?」

 

今までは無視していた先。

そちらを指差す。

流石に、無視も出来なくなってきている。

苦虫を一気に噛み潰したような表情を刹那、浮かべたカーネルが顔を伏せた。

 

指を差した先。

居並ぶ、あからさまに重装備のネットナビ達。

それらが既に、ワタシ達に対して露骨に警戒の視線を向けて来ている。

何時でも撃てる、とでも言うように、既に片腕を銃身に変えているそれら。

 

まあ、良い。

良いんだが、流石に露骨過ぎる。

普通、もう少し抑えないかと思うんだけど。

 

「――――簡潔に言えば、やり過ぎたのだ。オレ達は」

 

その声に、ナビ達に向けていた視線を戻す。

表情は元のような仏頂面に戻しているが、それでも口の端に何か引っ掛かっているような顔。

 

「ヤり過ぎ?」

「アイリスの三時間切り。次いでボンバーマンもそれに近い――だがお前達はまだ、一応の隠密行動と言うモノを理解して動いていた」

「…………」

「だが、オレとストーンマンの突破だ――オレの方はまだ、仕事を知っている者達の理解の範疇だったようだが、ストーンマンは違う」

「文字通りのゴリ押しダろうな」

「《ストーンボディ》による制圧前進。通常のナビの倍以上ある体躯で、まるでダメージを感じさせずにされるソレは、圧力も段違いだったそうだ」

「アー……分かっテ来た…………」

 

額を指で叩きながら軽く状況を整理する。

ワタシとアイリス。

その隠密行動は恐らく方向性が違う。

 

ワタシは、プログラムくんを囮にした攪乱潜入。

だがアイリスは多分、ハッキング能力に依った強行潜入。

そんな所だったろう。

 

次いで。

カーネルとストーンマン。

カーネルは正面突破と口にはしたが、その実、機動力を駆使した攪乱だったことは想像に難くない。

流石に前方からの一斉掃射を相手にし続けるのは、神経を使うハズ。

場面場面で突っ込みはしただろうが。

 

さて、そんな中でストーンマン。

話を聞く限り、正面突破。

恐らく、それ以外はまともにしているようには見えまい。

 

《ストーンボディ》で大抵の攻撃で受けるダメージを抑えつつ、ボディには内側のプルーンが回復を施す。

そうなれば分厚い壁を殴り続けているような徒労感を味わうこと請け合いだ。

ただ、この戦法。

弱点もモチロンある。

 

ブレイク性能。

それを有する《ブレイクハンマー》等を使えば良い。

だが、ストーンマンがそれを正面から受ける愚を冒すとは思えない。

 

受けたとしても、効かないことを示すデモンストレーションの一環程度だろう。

《ホウガン》なんかは岩で、《ブレイクハンマー》なんぞの近接武器は解除して直接、受けるか叩き返すかしたのだろう。

口にすれば簡単だが、中々の技量が必要ではある。

 

恐らくやっていたことは、四方八方から来るボールをバットで丁寧に打ち返すような作業だ。

しかもそれを半日以上。

意識してやろうとすると精神力を使う。

使うが、それをネットナビをプログラムでしかないと捉えているだろう現実世界の人間が分かるかと言えば、

 

「ストーンマンのゴリ押しが、本当にゴリ押しにシか見えなかっタ訳か?」

「…………ともかく。ストーンマンが成功してくるのは殆んど確実。演習とは言っても、我が国には意地がある」

「軍隊は大変ダな?」

「………………」

 

口にすれば押し黙ってしまった。

これ以上、言葉を重ねても嫌味にしかならないか。

肩を竦めて視線を戻す。

 

熱心に連絡を取り合っているナビ達の表情。

そこにはあまり、余裕が見られない。

端に寄せているプログラムくんにすら警戒の目を向けている辺り、本当に。

わざとらしく、時計を浮かべて目をやる。

 

下手に隠れてやろうとするのは、彼方側に余計な心労を掛けかねない。

そう言う配慮もあってのことだったが。

殆んど同時に聞こえて来るざわめきに、配慮が全くの無駄に終わったことを察する。

 

十九時少し前。

一日の終わりまで、残り五時間と言った所だ。

一日を五分割しても残り五分の一と言った具合。

察しは付いているが。

 

「………………」

「…………ストーンマンが占領に成功した。直接的な被害は殆んどなく、少しすれば此方に来るそうだ」

 

少し離れたカーネルの元に来ていたナビ。

その報告を受け、敬礼で返していたカーネルが戻って早々にそう口にした。

聞こえてはいたが。

恐らくアイリスも。

ただ、形式的に口にされた言葉に感謝を添え、顎を擦る。

 

「どうした?」

「ストーンマンが戻っテも、仕事すルとは思えネえ」

「…………そう思う」

「四時間は休める――と言いたい所だが、多少の復旧に移動も含めればそうも言えない、か」

「ツう訳で、明日は速攻と行かネえか?」

 

睨むような眼がワタシに向けられる。

当然、周囲のナビ達からも。

だがそれを気にもしていない風を装いながら、言葉を続ける。

 

「ウダウダしてモ仕方ねエ。ダろ?」

「……わたしもそれで良いと思うわ、に…………カーネル」

「……お前もか? では、どう攻める」

 

意外にも乗って来た、と言うより意見を口にしたアイリス。

それに若干の驚きを含んだ声音で返し、しかし次の言葉では消えていた。

どう攻めるか。

それについて、

 

「策はネえな」

「…………なに?」

「小細工なシ。ただ、ワタシ達が正面かラ突き進む――デ、どうダ?」

「……危険だ」

「マ、乗るか反るか、ッつうヤツだ」

 

カーネルの言う通り危険な行為。

だが、だ。

アイリスと話していた通り。

ワタシ達の性能を過小評価しているなら、これ以上なく楽な戦法ではある。

 

あるいは、性能に追い付いていなければ、だ。

だからこそ危険で、その分の利益もある。

ゆっくりダラダラと勝ちが確定している作業をするよりも、鮮烈にワタシ達の性能を見せ付ける。

その方が、少なくとも軍属であるカーネルには良いハズだ。

唯一無二の切り札として大事にはされるだろう。

 

考え込むように。

薄っすらとだけ瞼を開いているカーネルを尻目に、アイリスを見やる。

ただ突っ立ってるだけ。

何をする訳でもない。

説得も、言い包めもする訳でもない。

 

ただ、出来る。

そう思ったから賛同した。

既に関せずの立ち位置に戻っている姿に呆れつつ、笑った。

とはいえ自主性が出てくるのは悪い話ではない。

 

「…………ボンバーマン、お前の試算では成功率はどの程度と見る?」

「勝ちは決まっテんのに試算スる必要アるか?」

「それもそうだな」

 

あっさりと頷く。

ある種、傲慢。

そのように頷いたカーネルに驚愕の視線が集まっているものの、考えを切り替えたらしく既に意識を逸らし、気付く様子はない。

 

浮かべられた地図。

総省の内部は映されていない。

外であるし、外部の存在であると言う扱いであるが故の配慮だろうか。

ただワタシ達の現在地と、これから進むだろうルートのみが簡潔に記されている。

 

元から想定されていた幾つか。

正面。

側面。

隠密。

散発。

様々あるがどれを見ても、何かしらの考えの元で組み上げられていただろう。

 

だがその悉くが瞬時に消える。

残されたルートは唯一。

真っ直ぐ突き進む。

それだけの、正面突破。

 

「――簡潔に言おう。今回の作戦は正面突破」

 

周囲を気にする様子もなく。

カーネル特有の堅苦しさこそあるが、その辺で出くわした時のような気軽さで。

作戦の詳細を開示する。

 

「ただ正面を突き進む」

「…………罠は?」

「踏み砕く」

「ナビはどウする?」

「蹴散らす」

「セキュリティは?」

「突き破る」

 

至極簡潔。

笑えて来るほどに。

やられる側は大変だろうに。

実際、聞こえるように語るカーネルの言葉に周囲が慌てふためいているのが見て取れる。

 

「じゃ、役割分担ダな?」

「必要なかろう」

「念のタめ。何かあっテ、全員対処に回っテたら恰好が付かネえ」

「確かにそうだな…………ではこうしよう」

 

まず。

指差されるワタシ。

 

「攻撃役ボンバーマン」

「オう」

 

次いで。

隣のアイリス。

 

「支援役アイリス」

「…………」

 

居ない。

が、僅かに宙を彷徨わせた後。

空いた空間を仮に示し、

 

「防御役ストーンマン」

 

最後に自身を指差して、

 

「そしてリーダーは、オレが務める。何か質問は?」

「リーダーの役割は何ダ?」

「状況の判断。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する――基本的にはお前と前線で動くが、場合によってはアイリスとストーンマンのサポートにも回る」

 

半ば予想は出来ていたが。

ある種のチーム行動と言う事だけか。

まあワタシ達が揃っている以上、最強のチームだ。

未来においてもそう居やしないだろう。

他は何も要らない。

 

「ふウん? マ、ワタシは突っ込んデりゃ良いんダな?」

「時には止まって貰うが、そうだ」

「デ、防御役のストーンマンは?」

「射撃等の攻撃が激しい場合、盾――最前線に立って貰う」

「有効活用ダな。デ、支援役は?」

「名前の通り、我々の支援をして貰う。役に立つと思った情報の共有を任せよう」

「臨機応変に対応、っテ訳?」

「そうだ」

 

説明が些か適当が過ぎる気も。

何ともなしにアイリスの様子を探るが。

駄目だ。

口を若干開いたアホ面。

何をすれば良いかよく分かっていないように見受けられる。

 

カーネルだから恐らく、これで分かるだろうと言うつもりで口にしたのだろうが自己の薄そうなアイリスにそれは酷。

いや待て。

そんなことはないハズ。

接して見れば自主性こそ薄いが割と個性はある。

多分ワイリー様の感情を受け取っていると考えれば、情緒も相応に成長を、

 

「……」

 

辞めよう。

ワイリー様の激情を感じてしまう立ち位置と言う時点で良い予感が全くしない。

ともかく、だ。

恐らく、自分と同じアイリスならば同じ水準を求めても問題ないと言う無意識な甘えか。

 

「……なラ、して欲しいノは相手の位置情報の共有辺りカ?」

「当然」

「他にハ、セキュリティの解除もしテ欲しい所ダな」

「無論」

 

カーネルと話しながら、アイリスを盗み見る。

その実、アイリスの役割に関して話しているのだが。

気付いている気配がない。

カーネルの方もだ。

こりゃあ、いかん。

 

「ンー……ちなみにダが、アイリス?」

「…………」

「おめえ、単独でドう言う風に立ち回っタ? チームで動くナら確認しテえ」

「……必要?」

「オう、必要ダ」

「……そう。なら、説明する」

 

そうして。

アイリスとの情報交換を進めていく。

時折、カーネルを挟み交えつつ。

やがてストーンマンも戻って来ての情報共有。

そう言った事柄を済ませ、一度スクエアで休憩を挟んだ後。

 

戻って来た其処は既に、ナビ達の配備が完全に済ませられていた。

思わず笑ってしまう。

スクエアで立ち回りを変えただとかは考えなかったのか。

実際、変えてはいないのだが。

 

それでも目の前に広がる景色は、完全に正面突破に対応するための構え。

横から小突けば簡単に崩れそうな陣形。

とでも呼べば良いだろうか。

広がっているソレは、何処までも人間的な思考によって作られたモノ。

 

本当に知らないのか。

肌感覚では分かっていないのか。

分かっていても理解に達していないのか。

 

電脳世界において圧倒的な個は、数多の群を凌駕する。

パソコンを何十台と並べようが、スパコン一基にゃ敵わない。

全く不公平な電脳の常識を。

 

「点呼! イチ!」

「ニ」

「……さん」

「ゴ」

「…………まあ、良い」

 

一瞬カーネルがストーンマンを見やり。

素知らぬ風な様子に小さくため息を吐いた。

だが、気を取り直したようにワタシ達を見渡す。

 

「今回の作戦は国防総省へのハッキングだ」

「…………」

「各員、質問は?」

「…………」

「……よし! 準備!」

 

日が変わるまで残り一分未満。

その言葉に、各々が動く。

カーネルとワタシが並ぶように前へ。

後ろにはストーンマン。

その足の付け根辺りの上に、アイリスが立つ。

 

十秒と持たない陣形だろう。

だが、結束感を高めるため。

後ろの、やる気の感じられないコンビを引き摺ってでも進むため。

 

有るか無きの緊張感。

しかしそれは、目の前の光景に対してではない。

一度しか行われないタイムアタック。

アメロッパへの被害を抑えた上で、何処まで縮められるかの緊張。

 

そして。

日を跨ぐまで。

十秒を切る。

決めた掛け声がカーネルより発せられる。

 

「――チームオブワイリー! 行くぞ!」

「オう!」

「……はい」

「ゴ」

 

返答と同時。

日を跨いだ瞬間。

放たれ迫る弾幕に向かって、カーネルと共に飛び出した。

 







このあと滅茶苦茶正面突破した。



なお、来週の更新は閑談の予定です。
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