ワイリー様に似た老体。
袋に入った人型の黒油。
大体そんな、居並ぶ二体。
それ等と丸テーブルを囲うように、正三角形を描く形で座っていた。
口をへの字に曲げたサーゲスと、何が楽しいのか笑うオイルマン。
この二体。
他に居なければ、フェイクマン以降の新しいナビではある。
疑念があるとすれば。
ワイリー様の復讐を知っているか。
それだけだ。
「デ……おめえ等」
「……なんじゃ?」
「なんでい?」
「ワイリー様の計画、何処マで知っテる?」
「ふむ――――そうじゃな。それについてはまず」
「オレっちは大体知ってるぜ~!」
「…………まず、ワシ等の設計目的から話した方が相互理解も深まるじゃろう。だからお前ちょっと黙ってろ」
「オ~ゥ」
大仰に。
さも秘匿されているべき計画の一端を、事実ではあるが、勿体ぶるように口にしようとするサーゲスを他所にオイルマンがあっさりと言った。
瞬間、その額に血管が浮かぶのを幻視する。
あくまでも幻。
本当に浮き出てはいない。
が、僅かに口端を震わせながら続けた言葉に、オイルマンはその両手を横に広げてから黙って立ち上がった。
生き方のノリが違うとでも言うべきだろうか。
あまり相性が良くはなさそうだとか考えている間に、一旦閉じた口が開く。
「……ワシはワイリー様の、電脳世界における助手を務める予定にある。現在、過去、未来においての――だから決して資料整理のためだけの存在ではないのじゃ」
「ダから?」
「ワイリー様の企てておられる全ての……は言い過ぎじゃが、大凡の計画は聞き及んでおる。でなければ、情報の取捨選択が出来ぬからな。違うか?」
「成程――おめえはソウなんダろうな。デ、アッチは?」
指差した先。
黙った代わりに小粋なステップのつもりなのか踊り始めていたオイルマンを示す。
気付いたのか、くるりと一回転して、しかし止まる気配がない。
動きがうるさい。
「……――オイルマンは我々のメンテナンスを担当するナビになる」
「さっキも言ってタな」
「そうだぜぃ、兄姉! オレっちはその体の具合が如何か確かめるために作り出されたネットナビって訳だ!」
「今はセルフチェックや……リーガルとか言う者が作ったメンテナンス装置を活用しているじゃろう? だが、それも完璧ではない」
「そう! オレ達のジジィもアレで妖怪じゃなく人間だからな。全員をキッチリ調べ上げるなんてムリ無理ムリ無理かたつむり! ってなるだろ? 人間風に言ったらアレ、健康診断とかするお医者様ってことだぜぇ~!」
医者か。
頷きつつ、そう言われて最初に思い浮かぶのは、闇医者。
ウラスクエアに出現すると言うアレだが、少々種類が違う。
アレはあくまでもウイルスに対抗するワクチンプログラムを製造する存在だった。
実際の所どうかはまだ分からないが、どちらかと言えば受動的で、事後対応的な種類だ。
それに対して、オイルマン。
此方は、どちらかと言えば能動的と言えよう。
健康診断をして問題が大きくならないように調べる、事前対策的な種類の。
まあ要するに、
「つマりおめえに命綱握らレる訳か、おお怖」
「ハッハッハー! そうだぜぃ! さあ、恐れ敬うが良い~ぃ!」
「ハハー!」
等とわざわざ立って腰を九十度曲げて馬鹿っぽい振舞こそしているが、内実はその通りである。
文字通り、ナビとしての生命線。
その一端を担っていると言っても過言ではない。
詰まる所、軽い雰囲気に反してそれ相応の性能を有しているであろうこともまた疑いようはない。
ないのだが。
感じ取れる底は、然程深くない。
微かに訝しむ間にも、苛立ち交じりの咳払いが割って入った。
「もう良いじゃろう」
「……うス」
「チェ~……」
「…………ワシは情報統括。オイルマンは整備全般。双方、分野は違えど根幹に携わっておる」
「ツまり?」
「どちらもお前の姿を聞き及んでおる。他言無用と、確りと刻まれてはおるがな?」
何処か皮肉っぽく、口の端を吊り上げながら自身の側頭を指先で叩いて見せる。
念のためオイルマンの姿を見ても、肩を竦めて見せるだけ。
つまり、真実ではあろう。
パインとして手に入れた情報の精査。
本来の体の整備。
そう言った要素は、知らなければやり様がない。
仮に匿名の情報等となっていた場合には情報の裏取りにイチイチ時間を取っていては幾ら時間があっても足りなくなる。
なれば、だ。
気楽に行こう。
ワイリー様が直々にワタシのコトを伝えたと言うのだから。
「良いダろう――――」
徐に、立つ。
微かな警戒の色が双方に見える。
それ等を振り切るように背を向けながら、片腕を伸ばし、指を鳴らす。
「――――すっぴん、お見せしちゃいま~す! にゃん!」
アーマーパージ。
アンド、くるっと回って一回転と半分。
おまけに目元でピース。
「と、言う訳でパイにゃんにゃん! どっちもよろしくにゃん?」
「――――」
「ッハッハッハー!」
外したボンバーアーマーを脇に避けつつ、席に座り直す。
無言で居るサーゲスを他所に、楽しそうに手を叩いた後、手を差し出して来たオイルマンには握手を返す。
気分良さそうに大笑いする姿はそのまま腕を大きく振り回すように。
やがて。
気を取り直したように、重々しくもゆっくりとサーゲスが頷いた。
「――――そうかぁ…………」
しみじみと。
染み渡るように言葉を溢した。
一瞬、ワタシに面食らったのかとも思う。
しかし、知っていたハズだからそうではあるまい。
恐らくは単純に。
ワタシがワイリー様に送り込んだ大量の情報が本物と確定したことへの言葉だろう。
多分。
そうじゃなければ流石にちょっと傷付きそうだから、そう言うことにしておく。
「ヘイ! レディ?」
「ノー! ガール!」
「ガール?」
「イエスイエス」
「ヤー! ガール? 簡易メンテナンスはいかがかな?」
「サーゲス」
「……ん?」
「話はメンテして貰いながらでも大丈夫かにゃ?」
「……ああ。問題ない」
「じゃ、よろしくお願いしまぁ~す」
独り頷いているとオイルマンから声が掛かる。
念のためサーゲスに確認を取れば、問題なし。
であれば、喜んでお願しよう。
ニコニコ笑顔で近付いてくるのを前に、一旦立ち上がって他の装備を剥がす。
僅かに面食らった様子だが、軽く頷くとそのままワタシの後ろへと回った。
「とりあえず、動作系の確認するから動かないでくれよぅ?」
「はいにゃん」
「あ、ちなみに胸元は?」
「戻すつもりはないにゃ」
「オーケーオーケー!」
言われるがまま。
背後に立ったのを確認しつつ、視線はサーゲスへと向ける。
次の瞬間、背中から指が、腕が、侵入してくる感覚。
思わず小さな呻き声が出てしまうが、瞬きだけする。
問題ない。
そう言った意図が伝わったようで、後ろから解析されているワタシを見やりながらも口を開いた。
「――単刀直入に言おう。まず、コトの犯人の目星は八割方付いていると言ってよいじゃろう」
思わず動きそうになる体。
それが微か。
跳ねるような動きで止まる。
視線を彷徨わせればすぐ、肩が叩かれ、後ろから伸びた黒い手がグーパーと開いては閉じを繰り返す。
言葉はない。
ないが、思わず籠っていた力を抜けば、親指だけ立てて後ろへと引っ込んでいった。
サーゲスとオイルマン。
相性が良くはなさそうに思えたが。
それ即ち、仲が良くないと言う訳ではなかったらしい。
油断ではないが、些か気を抜き過ぎていたか。
微かに自戒。
そしてその先を視線で促せば、察したように小さく頷く。
「――――じゃが、その名を伝えるつもりはない」
「なんでかにゃん?」
「お前がコトの最前線に居て、最も危険であるが故じゃ。ワイリー様は宇宙開発なんぞと理由を付けて軍部から離されるが、ボンバーマン……とパインか。その双方とも、離れられる立ち位置にない」
「だから危険ですと? むしろパイにゃん、教えて貰った方が動き易いと思うんだけどにゃ~?」
「聞いてなお、その相手を前にした時に冷静であれるか?」
口を開く。
よりも前に。
強く。
二度、右肩を叩かれる。
舌を打ち。
渋面。
それをワタシの顔に浮かんだと知れた。
我が意を得たりとばかりに嗤うサーゲスに目を細める。
「――それが答えじゃ。知れば冷静には居れまい」
「……まあ、でも? ネットナビとして表層と内面を切り分けるぐらいの芸当は出来ますにゃ?」
「やれば出来るのと、やろうとする必要もないのは違うじゃろう?」
「ふ~む。一理あるかもにゃ? でもですよ? 例えば」
「まずお前が無理に押す必要があるのか? ん?」
黙る。
後ろからは。
何もされない。
分かっていることだ。
半ば分かっていながらも、あえて口に出したことだ。
それを否定された所で、メンテナンスに支障を来すような動き等、ありはしないだろう。
「…………」
「彼のキャスケットがどのような人物だったかワシは知らぬ」
「………………」
「じゃが、ワイリー様が悲しみ怒り、チラリとこの目で拝見させて頂いたバレルの父親と聞けば一角の人物だったのだろうな」
「……………………」
「ストーンマン……で良いか。ヤツもその死を嘆いてはおったが――えぇ? パイン?」
「…………………………」
「ワイリー様ほどではないにしても、お前が彼奴に対して抱く念は――彼奴の死に携わった者に対する怨念は、如何ほどのモノかな?」
「………………………………」
背後から、再び右肩が掴まれる。
問題ない。
問題ない。
ワタシが、コトに携わったモノをどう思うか等。
知れたこと。
知っていたこと。
「――――博士の手を煩わせるまでもない」
「しかし煩わすことをこそ、お望みよ」
その返しに、力が抜ける。
まあ、その通りではあるのだ。
手を煩わせ、自らの手を汚すこと。
ワタシとしては避けて欲しいのだが、それをこそ望んでおられる節がある。
いや、望んでは居られないだろう。
居られはしないだろうが。
そうしなければ、進めない。
キャスケット様を遺して、進めやしないだろう。
主犯。
首魁。
そう形容すべき存在が平然と生きていると思われる限り、ワイリー様の御心に平穏は訪れない。
半ば想像だが、そのように理解して居る。
その訪れる平穏が例え、虚しさとでも称すべきモノであったとしても、だ。
せめて納得だけでもして頂きたいとは思う。
しかし、手を汚されてまで得られる平穏に価値はあるのか。
御心が例え、嵐のように荒れ狂っていたとしても。
そう思い悩むワタシもまた、居る。
「………………にゃ~るほどですにゃ。遅かった、と言うのはそう言うことですかにゃ?」
「……と、言うと?」
「惚けないで下さいにゃん? 博士に伝えるよう言われてたんでしょう、そう言う風に?」
「さてな」
そう惚けているが、当たらずとも遠からずと言った所だろう。
でなければわざわざ、ワイリー様のお言葉を代弁するようなことは言うまい。
嘘でなければ、知性派のナビ。
戦闘型と言う武力派のナビであるワタシと最悪、敵対し兼ねないようなことを口にする理由はない。
もっと言えば、「随分遅かった」だとか「耄碌されて」だとか。
仮にも主人に対する物言いではあるまい。
それが出て来るようなことが前もってあったのだろう。
まあ、全部想像なんだけども。
不意に指先が動く。
念のため何時動くようになるか確かめていた指が動いた。
と言うコトは、
「ヘイ! それじゃあ下半身に移らせて貰うぜぃ!」
終わったと思った刹那。
人間であれば腰骨と背骨の間辺りに腕を突っ込まれた感覚。
そのまま背骨のズレを物理的に治されているような気配に背筋を何か、昇って来るように感じられる。
身震いしそうなソレから強引に意識を逸らして口を開いた。
「……ま、そう言うことでしたら聞かないでおきますにゃ」
「言質は確かに取った」
「引き続き、情報は集めるけどにゃん」
「……良いのか? 先程も言うたが八割方、間違いなかろうと言う目途は付いておるのだぞ?」
「二割外れてるんでしょ? 違いますか?」
答えは、沈黙。
分かり易い。
「――――今まで通り、集められるだけにゃ。問題はないでしょう?」
「此処に集まっているデータを見て……そう言える神経が分からぬな」
呆れた声音と共に、周囲を見渡すサーゲス。
そう言われれば、ワタシとしては渋い顔をするしかない。
軍事基地一つから丸ごと引っこ抜いたデータ。
軍事機密はおろか、国家機密の一部も有る。
でもこれ、ある種の不可抗力から。
自分からそうしようと思って動いていた訳じゃあ、決してない。
等と抗議は流石に出来まい。
先程、言質を取ったと口にした。
ならばそのデータをワイリー様にお見せする位はしそうな所。
多少なり、安心させるためにも。
そこで併せて言い訳がましいことを口にしていたデータでも添えられれば、一発でピンチ。
門限の代わりとか言って、自動プラグアウトデータでも組み込まれるかも分からない。
「…………一つ、問いたいのじゃが」
「なにかにゃ~?」
「主犯に目星は付いておるのか?」
「多分コイツ、って言うのは居るにゃ」
「ちなみに、誰じゃ?」
「ハートレス将軍」
反応を伺うがてら口にする。
少し考えてから、小さく頷いた。
流石に易々と反応を見せては来ないか。
分かっていたことだが、仕方ない。
「……何故、そ奴が怪しいと?」
「見た目と名前」
「見た目と名前?」
「見た目と名前」
大真面目に、そう。
ロックマンエグゼの記録の中に、その名前の存在は居ない。
しかし別方面。
ワタシの有する記録の、悪役の一片。
後ろに流した金髪。
筋骨隆々な浅黒い体。
特徴的な、赤縁メガネ。
そして名前が、アメロッパ風だけど、ニホン的に直せば如何にもな感じ。
諸々含めて「絶対悪役でしょ、この人」と言った感覚でしかない。
なのでその回答には困惑しかないらしい。
それはそうだと思う。
胡乱なモノでも見るような目をワタシに向けながら、ワタシの言った言葉をそのまま繰り返している。
そのままメンテナンスが終わるまで眺めているのも選択肢の一つ。
だが、流石に暇。
「――――ちなみににゃんですけど、何か他に変わったこととかって分かったりしてますかにゃ?」
なのでワタシに出来るのは一つ。
話題逸らし。
動けない所為で、そうせざるを得ないのが悲しい所だ。
その言葉に意識を此方に引き戻したらしい。
何か悪そうで意味深な笑みを浮かべるサーゲス。
本当、良い性格してる感じ。
そう言うコトでさも不本意ですと言う顔を作ると更に笑いを深めたが、やがて、
「クク…………さて。フフ……まあ、一つぐらいはあるなぁ、お前に関わることが」
「ほほぅ?」
「ぶっちゃけるとワイリー様も関わって来ている部分じゃ。ワイリー様が異動される真相…………の一部になる」
「真相?」
妙な。
思わず、発した言葉にそんな疑念が混じる。
しかしそれでも、妙だ。
ワタシが手に入れたデータはあくまで、アイリス達と共に防衛本庁に突っ込む前のモノ。
アイリスが逃げ出したことを察しての懲罰人事の面もあろうと考えていたのだが。
それとは食い違いが出て来る。
僅かに顔を歪めたことを察したらしく、首を横に振った。
「この情報に関してはストーンマンが持って来たモノを参考にしておる」
「…………ちゃんと動いてるんですにゃぁ」
「犯人探しでも八分ぐらいの働きはしておるよ」
あっさりと答えられたそれに対し、興味ないように頷きながら内心で驚愕する。
八分とはつまり、八パーセント。
ワタシが基本、引っこ抜いたりしているデータ総量だとか時期を鑑みればかなりの割合を占めているだろう。
つまり、滅茶苦茶確りと調べて回っていることの証左である。
ストーンマンが。
もっと言えば、プルーンが。
イメージに合わな過ぎる。
いやでも、ストーンマンは確か、秋原町に開通したばかりの駅のシステムに異常を起こすとか言う、僻地にまで足を運んで働いていた実績があった。
そう考えればおかしくはない。
ハズなのに、イメージに合わない。
絶対プルーンの所為だ。
「どうした?」
「あ、いえ。別に……とりあえず、理由をお聞かせ願えれば」
「う、うむ。まあ端的に言って、ワイリー様の技術力が突出している上に迎合出来なかった、と言うのがあろうな」
「突出は分かりますにゃ。でも、迎合?」
「癖が強い。国家が運用する物として扱うには、些かな――言い換えれば、互換性に難がある。そう見えた」
「なるほど」
そう言われてしまうと納得できる話だ。
技術力が突出している。
とはいえ、現実世界における軍事機器の開発。
そこだけで言えば然程の問題にはならないだろう。
設計図があり、運用法がハッキリとしていれば。
しかし最近は些か違う。
最近関わることが多かったのはシステム関係。
不得意ではないが、得意な訳ではない。
それでも突出はされていただろうが、光正と比べれば一段二段は落ち込もう。
その上で、既に光正の技術を一部とは言っても得ているアメロッパ。
更には如何にも消沈して落ち目にもなって、開発スピードも落ちて来ている。
落としておられる。
システムと言うかプログラム面では癖が強く、『OS計画』と『Σ計画』の件もある。
国家の主要部を担うには、互換性に欠けるともなれば些か不出来。
そう考えれば宇宙開発も嘘ではないのだろうが、丁度良い厄介払いの面もあったのかも知れない。
だが、愚か。
人の集まりを馬鹿にするつもりはないが。
高々数十人数百人が集まった程度でワイリー様を超えられると少しでも思っているのであれば。
「――追加の情報をやろう。まだ表には出ていないようじゃが、アメロッパとニホンとで技術協力協定が結ばれることが既に決定しておる」
「協定?」
「一部の技術者を交流のために一時交換すると言う話じゃが、実際は人身御供よな。例の、『環境維持システム』の開発資金を得るための」
「おやおやおやおやおや? 穏やかじゃあにゃいですねぇ~」
「その通りだぜえぃ! ニホンは不祥事起こしたようなのや無力の技術者を送り込んで、アメロッパはソイツ等や送り込んだ技術者から技術を巻き上げる! どっちも得してハッピーハッピーってね!」
「言い過ぎじゃ、オイルマン」
全くそんなことを欠片も思っていなさそうな口振りで窘めているサーゲスを見やってから、ゆっくりと虚空へと視線を移す。
ふむ、と。
少なくとも、ワタシの有する記録にはそのような事柄はない。
と言うコトは恐らくだが。
どうやら結婚してから然程経っていないらしい光祐一朗やそれなりなお歳の光正がやって来る事はないだろう。
ソレが安心の要素である。
祐一朗の方はともかく、正の方が来るとなるとパインとしては動き辛いことこの上なかった。
主に、食品プログラムの方面もあって。
しかし幸い来るのは曰く、不祥事付きや有名無実の木っ端。
正直、左遷に近かろう。
下手をすればワイリー様や光の二名と比べられていた上でそうもなれば、些か憐れ。
憐れむだけだ。
左遷されてくるような輩も、ワイリー様追放の一助ぐらいしている可能性あるし。
ただ。
アメロッパが来たる技術者を軽んじているようであれば、実力を伺って引き抜きに掛かるのも十分にアリであろうが。
しかし、そうか。
『OS計画』と『Σ計画』。
この二つとも、ニホンをアメロッパの力の一部として扱う方針にしていると見るべきか。
形振り構わずに。
であればいよいよ、どのようなナビが出来るのやら。
「――――一先ずは、それぐらいですかにゃ?」
「大きな部分はそれぐらいじゃ。まあ、気になることがあるようなら、ワシの話せる範囲で答えよう」
「ハッハッハ! 良かったんじゃあないか、パイにゃん? これでチェック完了! ヘイ! ……次はアーマー見させて貰うぜぃ」
スパァン。
とでも形容しそうな音が鳴る。
体を戻しがてら、オイルマンがワタシの尻を引っ叩いた音であった。
痛くは別にないが。
ともかく。
体を軽く動かす。
人間的に言えば、筋の閊えがなくなったと言うべきか、可動限界まで楽々動くようになったと形容すべきか。
体が軽い。
こんな気持ち初めて。
では流石に無いですけども。
弄繰り回された結果は大成功。
見事な技術と言えるだろう。
それはそれとして。
《マジカルポテトマッシャー》を生み出す。
爆発はオフ。
握り心地を軽く確かめてから。
既に、アーマーの確認に移っているオイルマンに狙いを定め、
「おいパイン、何を……」
「パイにゃんはぁ……」
「ア~ン?」
「お触り厳禁! デス!!!」
「グエー!?」
振り下ろした。
パインの尻を触ったケジメとして。
まあ、軽く。
形だけでも。
念のため。
途中で名前が出た人は、推定未来に出る方とは無関係です。
序でに、本編では其処まで深く掘り下げるつもりもありません。
次回は閑談の予定です。