ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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前話のセピアの挙動に困惑を抱かれていた方が多いようでしたので、一応作者的な想定を。

「神からの無償の愛を受け入れられないなんて、そんな……」
→「では代わりに私がその分以上の、広義的には同じ隣人愛で満たして差し上げましょう!」
→「なぜ受け取って下さらないのですか……?」
→「でも別に動けなくしてから捻じり込めば問題ありませんね!」

と言った思考変遷が想定です。
「いや、こうではないか」と言った考えをお持ちの方も居るかと思いますので、あくまで作者の想定の一つとしてはコレなだけですので。
ちなみに現時点で、セピアいっぱいくじ、が開催されてるらしいですね(露骨な)

さておき、今話もお楽しみ頂ければ幸いです。





077:兵

 

「コサックさんコサックさん」

『なんだい?』

「今週の土曜日、暇かにゃ?」

 

我ながら唐突。

しかし気にするでもなく懐から手帳を開き。

閉じた。

 

『内容によるかな?』

 

微かに笑って返して来るが、僅かに目が細い。

内容次第では断られる。

実に分かり易い表情であった。

まあ、そう難しいことじゃあない。

 

「土曜日に新作ナビのお披露目をゼフラム社でさせて頂く予定なのにゃ。同席頂ければと」

『ふむ…………私が携わった覚えはないが?』

「どちらかと言うと、顔繋ぎにゃ」

『顔繫ぎ?』

「ええ。軍の方々が来られるにゃ」

 

そう口にすれば、僅かに渋い顔。

分からないでもない。

現在のアメロッパから、実の所、中々に勧誘活動が激しい様子だ。

 

ワイリー様は、もう暫く先。

既に見えているリーガルのローバート大学卒業を機にアメロッパを離れることになっている。

親友の死んだ地に残り続けるのは、流石に辛い。

 

と言うのは表向きの話。

既にANSAから未確認飛行物体のデータを抜き終わっているそうな。

併せて研究の協力も程々にしながら、しかし衰えている演技を忘れずに。

故にこそ、キングランドに移住して余生を過ごす。

そう言った筋書きが出来上がっているのだ。

 

光親子はニホンを離れはしないだろう。

その他にも諸々と居る電脳系の研究者も同様。

少なくとも、光親子が居る限りは最先端がニホンと言うコトになるのだから。

 

それでいて。

厄介払いとばかりに来ているケイン・スミス博士はキッチリと押さえている。

さて。

そうして、如何にも手が届きそうな場所に居る研究者はどれほど残って居ようか。

そういう事である。

 

『…………分かってると思うけど、出来れば遠慮したいんだが』

「これはある意味、貴方のためでもあります」

『一応詳しく聞いておこうか』

「単純に、今回のネットナビの発表に同席されればアメロッパに在籍せずとも協力する意思がある――協力しているとアッチは勝手に見做すでしょうにゃ」

 

軍部の人間を招いた発表の場。

そこに、彼のコサック博士が居るとなれば。

別に携わって居られずとも、彼方は勝手に思うだろう。

コサック博士が開発に協力している、と。

 

ネームバリューを勝手に使いたい。

言ってしまえばそう言ったことなのだが。

意外にも、乗り気な様子で頷かれた。

 

『なるほど……既に協力していると見れば、接触して来ようと言う輩も減る、か』

「ええ。それに、後ろ盾に近い形にもなるでしょうにゃ」

『……軍とパイプがあれば、カリンカの安全を確保出来ると?』

「マイナスにはならないでしょ?」

 

娘、カリンカのため。

そう口にすれば一層悩まし気に腕を組まれた。

どうやら大分、天秤が傾いて来ている様子。

だが、傾き切っていない。

 

その原因は何か。

まあ、考えるまでもない。

現状のコサック博士にとって重要な要素等、フォルテかカリンカの二つだけだろう。

と言う事で、

 

「あと、どうでしょう? カリンカちゃんに格好良い姿、お見せしたくないかにゃ?」

『……ん? と言うと?』

「ハッキリ言ってコサックさん。貴方、カリンカちゃんにどんな仕事してるか言ってないでしょ?」

『まあ……普段は家でさせて貰っているからね。言うようなことでもないし……』

「ダメダメ! どーせならどれだけ尊敬されるようなお仕事してるか、欠片ばかりでも触れてもらわにゃいと! ……まあ、ゼフラム社の場所ですから、厳密には違いますけど」

 

カリンカを引き込む。

土曜日。

それで渋ったとなれば。

恐らくは家族サービスでもしようと考えていたのだろう。

 

手に取るように、とは流石に行かないが。

コサック博士の脳内が鮮明に浮かぶ。

研究室を案内し、さもその研究に携わっているような姿。

屈強な軍人達に握手を求められ、娘の前でそれに応える姿。

よく分からないにしろ、尊敬されるような仕事をしていると娘に思われて。

 

目を輝かせるカリンカちゃん。

そして「パパ、凄い」なんて言われでもすれば。

瞼を降ろしていたコサック博士が頷いたのは、それから数分後の事だった。

意外と掛かった。

 

 

 

居並ぶは屈強そうな軍人達。

狭そうに座る技術者達。

それらを眺めながら、緩やかに頭を下げる。

 

「この度は、皆様お越し下さいましてありがとうございますにゃ」

 

と言う訳で。

形ばかり同席して頂いているコサック博士とカリンカちゃん。

想定していた通りのイベントを、カリンカちゃんからの言葉以外だが、一通り終えた辺りで。

大モニターに映るワタシが適当に挨拶を済ませる。

 

長々と話すことでもない。

アイコンタクトを一応、形ばかり、ケツアゴと交わし。

意味もなく指を鳴らす。

同時に此方側で操作。

ゼフラム社の方々には休日出勤して頂いて申し訳ないので、大部分は電脳世界の面子で済ませれるよう動いている。

 

社の方々がするのは、データ取りだけ。

ワタシは動くつもりはないけども。

中々良いデータが取れるでしょう。

なんて釣ったら本当に来てくれた。

本当に申し訳ないけど、何か不具合があった時は動いて貰わないといけないので助かる。

 

周囲へと視線をやる。

興味深げに視線をやって来ている、多く。

思い思いの私服姿で、街に溶け込もうとでもしていたのだろう。

その中。

ワタシが最も怪しいと睨んでいる人物。

 

逆三角形みたいなサングラス。

筋骨隆々の金髪。

如何にも軍人とでも称すべき男。

 

それを視界の端に収めつつも。

意味深にコサック博士へと顔を向け、軽く頷く。

緊張した様子のカリンカちゃんにしがみ付かれているコサック博士だが、軽い苦笑の上で頷いた。

意味有り気に。

 

「……この度、ご紹介させて頂きますのは戦闘用ネットナビ――――ジョーマンです」

 

そうして。

一歩、脇へとズレる。

射角をワタシの身体で隠していたから見えていなかった姿。

それが、姿を現した。

同時に軽いどよめきが上がる。

 

さもありなん。

今回のネットナビは、今までのネットナビとは趣が異なる。

明らかに違う。

一目でそれが分かるデザインなのだ。

 

まずもって全身。

緑色した体は、他のネットナビのように部分部分で色分けがされていない。

艶やかな光沢のある姿は、強いて近しい存在を挙げるならアクアマンやトードマン辺りだろうか。

あるいは。

ただ単に、緑の全身タイツマンとでも言い表せるかも知れない。

それでもこのネットナビの異質さには遠く及ばない。

 

そう称するしかないだろう部分はやはり、顔。

フルフェイスメットの眼の部分に緩やかな黒い曲線のようなスリットが入ったような顔。

その、黒の中から覗くはモノアイ。

爛々と輝いて見える赤玉。

一つ目。

 

等と大業に称しはしたが、ワタシとしてはそれほど異質と感じない。

むしろ。

モノアイ。

全身緑色。

この二つが合わさると、機動戦士的なヤラレ役なイメージが強い。

出始めた当初は無双の働きをしていたとか何とか聞いたのと併せて。

 

「ジョーマンは通常のネットナビとは異なり、戦闘性能に偏重させて頂いてますにゃ」

『具体的に、どう言った意図でだ?』

「軍の方々であれば肌身に染みてご存知でしょうが、技術と言うモノは日進月歩! 今のハイエンドモデルが未来のローエンドモデルに性能で負けるなんてこと、当然あり得ますにゃ。目的に特化されていなければ」

『……特化することで遅らせると?』

「はいにゃ」

 

そう頷きつつ、幾つか追加すれば、

 

「人間は万能です。皆さんのような軍人から、手伝って頂いているエンジニアの方々まで……ですが、なぜ仕事を分けて働いていますか?」

『…………』

「その方が効率が良いから」

 

沈黙のようなので、代わりに答えを口に出す。

情報収集と言う観点からすれば。

自身の仕事に関係する事柄がハッキリしていれば、情報の収集もし易いだろう。

 

ストーンマン辺りはそうだ。

特定の役割を与えられなかった、ただの門番程度の存在だった。

しかし今、人間の生命を救い得ることをアイデンティティとして医療情報を読み漁っている。

読み漁っているだけで、全く動いてはいないけれども。

様々な情報を得られる立ち位置に居て、確かな目的があるからこそ取捨選択が出来ている。

 

作業と言った観点から見ても。

新しい事柄を覚えるよりも、慣れている事柄の方がやり易い。

増えるにしても、関連する事柄の方が同様だ。

 

もっと分かり易く言うなら。

炎属性のナビに水源の管理を任せるか。

水属性のナビに電線の整備をやらせるか。

その程度のことでもあるが。

あとは、

 

「……通常のネットナビはオペレーターの補助を担当する分、其方にも能力が割かれる――それは容量と言うより、将来性と言って良いかも知れませんねぇ~?」

『将来性?』

 

ワタシの言葉に、僅かばかり不快感を覚えた人物が居たのだろう。

疑念と共に漏れ出た言葉。

視野を広げれば、眉間に皺を寄せている人物等が見受けられる。

だが、あえて無視して言葉を続ける。

 

「オペレーターに併せるのは利点であり、欠点にゃ。ネットナビとオペレーターが助け合うことで相互理解が深まり、オペレーティングは確かにスムーズに進むでしょう――ですが」

 

しかし、

 

「それは汎用的と言えるでしょうか?」

 

一個人に依るのならば問題ない。

だが、組織に依るのであれば問題になる。

特に軍隊組織において、

 

「軍にて使用されると言った意味では、オペレーターである一個人に併せた動きをするネットナビ――言い換えれば、個性的なネットナビと言うのは如何なものでしょうかにゃ?」

 

数秒程度の沈黙。

納得出来るかは別だろう。

しかしそれが返答であると断じ、更に続ける。

 

「……もっと言えば、オペレーターの補助を減らすことで将来的に反映し得る参考データの容量も増やせます。誰からの命令であっても一定の成果は見込めるんじゃにゃいでしょうか?」

『誰からでも?』

 

疑念の声が挙がった。

それには頷きつつ、手を振るう。

画角の外に居たジョーマン達が二体ずつ。

左右から姿を現し、総計五体が立ち並んだ。

 

「チーム。あるいはツーマンセル以上」

 

ワタシの言葉に併せて動く。

二体と三体、ワタシの左右に別れる姿を後ろに、

 

「オペレーターとネットナビによるツーマンセルではなく、ネットナビ同士によるツーマンセルによって格上に対抗出来るようにする――半自立稼働を想定した運用。それがジョーマン。兵隊にゃ」

 

ジョーマン。

即ち、兵隊。

個々ではなく、群で運用するという考え。

 

元より、フォルテ等の超高性能ネットナビに対して殆んど無力に等しい。

しかしそれでも、対抗するにはどうすれば良いか。

群による連携で個の性能を凌駕する。

ワタシがスタッフマン達を運用しているある種、根本的な考えである。

 

スタッフマン達より性能は元より、連携の精度なんかも間違いなく低い。

だが。

そう言った運用であれば軍の上層部なら。

いや、軍の上層部だからこそ。

理解出来るのではないか、と思う。

 

『…………誰であっても、か』

「老若男女関係なく、命令さえあれば。にゃのでどの程度の方々まで権限を良しとするかの判断は出来ません……その辺りは運用しつつ考えて頂けると」

『質問だ。複数での行動を基準に考えているのなら、個別での性能は低いと言うことか?』

「そこはご安心を! 特化させてる分、相応の性能は保証しますにゃ!」

 

待っていましたとばかりに両の手を叩く。

軽やかな音と共にワタシの後ろ。

映っているだろう画面で見れば、奥の方でスタッフマン達が動き出す。

 

ジョーマン達のすぐ後ろを横切るように白いラインを一本引き。

的、と言われれば思い付くような白黒の的にカカジー、もとい只のカカシが設置され。

所々には障害物となるよう《ストーンキューブ》は配置され、カカシはその陰に隠される。

 

一瞬だけ後ろを向いて確認。

一つ頷いて見せて戻し。

視線を全体に向けるように横切らせ、片手を頭の横に掲げた。

 

「――――それでは」

 

瞬間、控えていたジョーマン達が一斉に白のラインに並ぶ。

右腕を同時に変形させ、銃身へと。

しかし銃口は真上に向けるように、構えた。

 

始まる事柄を予期したのだろう。

人々が僅かに、身を乗り出すようにしたのを確認。

歯を見せるように微笑みながら、

 

「スタートにゃ!」

 

振り下ろした。

同時に点灯する的。

五つ。

間髪を入れず撃ち抜かれる。

 

「基本装備は《メットガード》から防御性能のみを抽出した《シールド》、近接戦闘のための《ソード》、それに」

 

次々と点灯していく的。

そして、カカシ。

《ストーンキューブ》に隠れたカカシにも、

 

「《ショットガン》」

 

問題なく、その後ろへと誘爆したエネルギー弾がそれを撃ち抜く。

そのまま点灯していく的もカカシも、次々と、

顔を向けずとも確認出来るそれらを感じながら言葉を続ける。

 

「障害物に対しては有名所ならボム系なんかもありますけど、速攻性に欠けて使い勝手が悪いにゃ。単独なら避けれる――――だからこそ、隠れた相手に対して手頃なのは《ショットガン》」

 

《ショットガン》が一番良い、とは言い難い。

《スプレットガン》辺りを組み込めれば良かったのだが。

彼方をレア度で表せば、五段階の二段目。

 

チップ容量は倍とまでは行かずとも、ナビ自体に組み込もうとするとそれなりに重くなる。

それ以外にも、範囲が広いからその分だけ味方を巻き込む恐れもある。

まあ全体的に低く抑えようとするなら除外される。

 

もっと上を求められれば、その時に対応すれば良い。

最低ラインを攻めつつ、しかし納得させれるレベル。

それがジョーマンであるのだから。

まあ、実際の販売はゼフラム社がするのだけれど。

 

時間にして一分と掛からず。

それこそ、あっと言う間に全ての的とカカシが射抜かれた。

一糸乱れぬ姿で銃口を上へと構え直したジョーマン達。

しかし、

 

「――――それでは」

 

振り向き。

ワタシへとそれら、五つの銃口が同時に向けられ、

 

「第二ラウンド開始ぃ!」

 

発砲。

同時に跳ぶ。

回転しながら跳び越える。

 

今まで画面に映っていた正面映像は同時に、俯瞰的なモノへと変わったことを状況から確認。

その撮影元となっている三ヶ所。

カメラマンとして《ストーンキューブ》を十段積みした上に立っているスタッフマン達に目配せしつつ、

 

「《パインボム》!」

 

空中でボムを無秩序に生成。

通常の《ハイパーボム》をだ。

ワタシを追って視線を上へと向けていたジョーマン達が即座にそれに気付き密集。

真上から落ちて来るボムは、内の中心に立った一体が真上に向け展開した左腕の《シールド》で弾き飛ばし。

残りの四体は四方を向き、爆発の直前に展開することで爆発から味方諸共に自身も守った。

 

それを背後に確認しつつ、着地と同時にワタシは駆け抜ける。

奥へ。

奥へと。

 

通り抜けた脇。

映らないように端に寄って貰っていた、スタッフマン達じゃあない、保護し働いて貰っているネットナビ達が各々構えつつ姿を現す。

数にすれば、二十体ほど。

 

装備の更新とかもして上げると言っていたんだけど。

大体は現状に満足しているため、チャージショットだとかの一般的な最低限の武装である。

全員が全員、通常のショットではなく《バスターボム》とかでも組み込まれてるのか風変りな代物のナビも居るが。

ともかく。

各々が設置されてあった《ストーンキューブ》に隠れる等の準備は済んだ。

 

それと殆んど時を同じくして、《パインボム》で巻き起こっていた爆煙から現れる無傷のジョーマン達。

油断なく構えながら姿を見せる。

ある種の演出でもあるが、中々に格好良い。

等と呑気に考えながら口を開く。

 

「ジョーマン五体に対し、通常のネットナビ二十体のバトル開始にゃ~!」

「いくぞォ!」

「「「「ォォオオオオオオオオオオ!!!」」」」

 

気合の入った幾らかが叫び。

同時に、各々の獲物を手に突撃を敢行。

放たれるバスター等と言ったエネルギー弾の光明。

ジョーマンから見れば、前方一帯から襲い掛かって来る光の奔流とでも言えるのではなかろうか。

 

しかし、何の問題もない。

ワタシの作った戦闘用ネットナビである。

二体。

瞬時に前へと出、《シールド》を展開した仁王立ち。

その陰に隠れた三体含め、第一波を見事に凌いで見せた。

 

現実世界で感嘆の声が漏れたのが聞こえる。

だが本番はむしろ此処から。

援護射撃を背に一斉に距離を詰めたナビ達がそのまま襲い掛かる。

 

《ダッシュアタック》。

《ロングソード》。

《ビッグパンチ》。

《フットスタンプ》。

《ブレイクハンマー》。

 

近接攻撃のバーゲンセール染みた攻勢。

ソレ等を。

躱し鍔迫り斬り裂き破る。

 

刹那の閃き。

《ダッシュアタック》で文字通り突撃して通り過ぎたナビ以外の体が一瞬の内に《ソード》で捌かれ。

四体は無残にもログアウトとなった。

そう、傍からは見えただろう。

 

事実。

《ダッシュアタック》は全員が回避を選択し。

《ロングソード》は一体が鍔迫り合う間にも残りが切り裂き。

《ビッグパンチ》と《フットスタンプ》は迫り来ていたナビ達へと差し込み。

《ブレイクハンマー》の鈍重な動作は文字通り、絶好の隙でしかなかった。

 

とは言っても《ダッシュアタック》を選択したナビの手は緩んでいない。

勢いそのまま後ろ側に回ったことを利用して更に距離を置きながらもバスターを展開。

注意を前後に向けさせる方向に移行した。

賢い。

花丸を上げよう。

 

惜しむらくは性能差。

あのナビ達は追々改造してあげることも視野に入れることを決心しつつ、戦況を眺める。

血気盛んな五体。

言い換えれば、ヤル気があった少数の内の四体が早々にログアウトさせられたことで一気に戦況が傾いた。

傾いてしまった。

 

大して意味がないと初撃で分かっているハズの弾丸。

ソレ等が飽きもせず放っては、文字通り盾として受ける二体に阻まれている。

ジョーマンの方と言えば、控えている三体の内の二体は《ショットガン》で牽制。

最後の一体は、後ろに回ったナビと射撃戦を繰り広げている形。

 

折角、一対一で抑えてくれていると言うのに。

あまり戦闘向きじゃないと分かってはいる。

いるが、それでも若干の失望を禁じ得ない。

まあ、良い。

 

そのまま一番奥で戦闘用BGMを歌い流しているワタシを他所に。

戦況は変わり映えすることはなし。

最後まで粘っていたのは、背後を取ったナビのみ。

想定通りとは言え、至極あっさりと片付いて終わった。

 

「………………」

「はい、それでは~……」

 

ワタシの前に並んだジョーマン。

その姿を見やり、歌うのを辞める。

映像がワタシを映すことに集中しているのを確認。

次いで《アイスキューブ》を生成。

軽く跳び乗り、くるっと回転。

 

映像を見ている向こう側の様子は。

まあ、それなりに感心しているようではある。

なので最後。

派手に行きましょう。

 

「……特別ゲストを交えたぁ~」

 

土曜日。

それは至極都合が良かった。

役所機能が停止している。

民間の仕様が少ない。

諸々の理由から、緊迫の仕事がなかった。

 

だから声を掛ければ、遠くではないからと言う理由で来てくれた。

最近は国防総省からあまり離れられないとか何とかで。

しかし、未来の同僚に成り得るネットナビ。

その性能を確かめる機会でもあると言えば。

 

「最終ラウンド!」

 

映像がワタシから、ラインを引いていた遠く。

ただ立つ、彼を映す。

どよめきが上がる。

流石に予想外だろう。

実際、ケツアゴも微かに口元を開き、震わせている。

 

「VSカーネル! 彼がワタシの元に来るまでどれだけの時間を稼げるか!」

 

だからこそ、効果がある。

どの程度、使えるか。

デモンストレーションとしての効果が。

 

止めるのは無理。

なら、時間を稼ぐ、

それに限ればそう難しくはあるまい。

カーネルにお願いしている条件は、ジョーマン五体の撃破。

その上でワタシの足元の《アイスキューブ》を切り捨てることのみ。

 

「よ~い」

 

一本、指を掲げる。

同時にワタシの後ろにデカデカと数字が現れる。

ゼロの並んだ数字。

時間経過を分かるようにした指標。

 

ソレが見えているだろうに。

気にする様子もなく、構えも取らない。

ただ悠々と歩み寄る。

その姿勢を崩さないと示すかのように。

 

一般ナビに対する戦闘データ。

それをどの程度入手出来るか。

そもそも有益な物を取れるか。

愉しみにしながら、

 

「スタートにゃ!」

 

腕を振り下ろした。

 

 

 

結果。

まあ、語るまでもない。

普通に五体ともデリート。

もといログアウトとなった。

 

ワタシがお立ち台代わりにしていた《アイスキューブ》も。

カーネルの通り去り様の一閃でズンバラリン。

ゆっくりと斜めに滑っていく、まさにアニメのような技前。

いやはやお見事と言うしかあるまい。

 

等とカーネルの性能を魅せ付けるだけに終わった。

と言う訳でもモチロンない。

ジョーマン五体。

その戦果も、悪くはなかった。

 

カーネル相手に大体五分。

カーネル自身がどうやらノーダメージ縛りを自身に課していた様子だが。

それでも。

それだけの時間を持たせることが出来たのだ。

これを立派と言わず何と言う。

 

一体で一分。

確かにこれは傍から聞くだけならまあ、短いだろう。

だが、極まったネットナビであれば一体デリートするのに三十秒と掛からない。

具体的には。

バスティングレベルが最高のS評価になるか半分以下の評価になるかぐらいに違って来る。

 

実際ワタシ達が防衛本庁を訪ねた時のスピード感で言えば、常にS評価を取れるようにと突き進んでいたのだ。

それと比べれば。

あくまでソレと比べればだが、大分持った方だろう。

 

「どうだったかにゃ?」

 

事実、カーネルからの評価は悪くなかった。

《アイスキューブ》を切り捨て、去っていく背中。

そこに「評価は如何に」と問えば、返って来たのは「悪くはない」との言葉。

 

一聞の限りでは良い評価ではない。

ワタシ自身へのモノならば単なる「可」と捉える所。

しかしカーネルの「悪くない」だ。

軍の方々からすれば、重みもまた違ったのだろう。

 

熱心な質問が飛んで来て、それ等に答えている間にも随分と時間が経ってしまった。

そうして少しずつ。

資料を持って帰って頂いた終わり。

ワタシは、彼女に声を掛けた。

彼女。

 

『………………なにがですか?』

 

コサック博士にしがみ付いている。

一人娘。

カリンカちゃんへと。

 

半目でワタシを見詰めて来ている彼女にはただ、微笑みを返す。

沈黙はしばし。

やがてプイっと音のしそうな具合に顔を逸らされてしまった。

 

『…………………………お父様がすごい科学者なのはずっと前から知ってます』

『!』

 

露骨に表情を変えたコサック博士だが、まあ其方は別に良いか。

それよりも、ある意味で今回の主賓の一人。

空いている椅子に座っていたケツアゴへと視線をやる。

 

気付いたらしくすぐに立ち上がり、わざわざ大モニターの前までやって来るのをゆっくりと待つ。

大股に。

しかし似合わず何やら思案深げにしながら足を止め、

 

『…………何だ』

「ジョーマン――――いえ、ジョー、でしたかにゃ? あの子達はいかがでしたか?」

 

ジョー。

ジョーマンのままでは、ショーマン、つまりは芸人に近しい。

そう名前に難癖を付けて来た者が居たので急遽そうなった。

ともあれ、

 

『動きのアレコレなんぞ私には分からん』

「性能面はいかがでしたかにゃ?」

『数値等、知るか。大凡の運用方針も分かったが、知りたいことは一つだ』

「はい」

 

顔を動かす。

ワタシの後ろで何やら話し込んでいる、今回の参加ナビ達。

言っても反省だとか立ち回りだとか。

あと、スタッフマン達はカーネルの動きを熱心にジョー達に聞いているぐらいだが。

それを軽く示し、

 

『ジョーを揃えたとして、カーネルを止めることは出来るのか?』

「難しいでしょう」

 

ワタシの返答に、「やはり」とでも言うようにあっさりと頷いた。

理解が早い。

まあ、見ていれば分かったことだ。

 

どれだけ派手に、戦えているように見えていたとしても。

カーネルは無傷。

そして、五対一で五分程度しか持たなかった。

その事実は覆せない。

だから今回の事柄を「ショー」と言われてもワタシは何ら否定出来ない。

 

『……コストの問題か?』

「単純に性能の問題ですにゃ。現状、ワタシの作り得るナビが単独でカーネルと対しても勝てないでしょうし」

『単独なら、か』

 

おや鋭い。

だがそこに深く突っ込む気はないようでもある。

軽く鼻を鳴らし、口を開いた。

 

『対策はどう考える?』

「現実世界を噛ませるのが一番にゃ。核のスイッチは最終的に現実世界の方が押さないと起動しない――みたいなの、あるでしょ?」

『フンッ! ……接続は?』

「物理的に切断出来るようにするのがベターかにゃあ?」

『なるほどな……』

 

目を横一本線みたいにしながら答えれば、渋そうな顔で頷いた。

ネットナビは何処まで行っても補助。

そうした方が良いと分かってはいても、まあ難しいだろう。

 

便利。

簡単。

何か問題が起きても後から対処する。

 

分からないでもないけど、エグゼ世界でそれをしようものならどれだけ被害が広がった後になるか。

アメロッパはまあ、多少の危機感はあるだろうけど。

他国は、無理だろう。

 

『……製造はゼフラム社だな?』

「はい。カリキュラマンもですけど、ジョーも含めてライセンス契約になってますにゃ」

『それも理由の一端か?』

「何のことやら?」

 

惚けるが、意味はないか。

『W2』とは違い、ライセンス契約。

今回のソレは、出た利益の二割近くをワタシもとい『ドルプロ』が受け取れることになっている。

普通の例では一割でも相当高いらしいから、かなり破格の契約内容であろう。

 

別にワタシが吹っ掛けた訳ではない。

ゼフラム社が言い出したことだ。

通常の、専門的な分野で高くて一割。

その倍を提供してくれる。

 

理由は単純に、『W2』同様に学べる部分があるから。

見方を変えれば、ワタシの技術がゼフラム社に取られる。

今までのモノであれば特に何とも言わない。

 

だが、だ。

現在のワタシが保有する最大戦力。

即ち、ボンバー達に匹敵するレベル。

そのナビ本体の技術までは、幾らゼフラム社と言えども流すつもりはない。

 

流石に冗談抜きで世界がぶっ壊れかねないので。

エグゼ治安だし。

あと完全にワタシ由来の技術に汚染されるのもよろしくない。

技術の選択肢は多いに越したことがないのだから。

 

なので正直に言えば、とても期待しているのだ。

『OS計画』。

『Σ計画』。

そこから見えるだろう様々な技術領域には。

 

あるいはワタシでは。

及び付かないような技術。

考え付かないような機構。

そう言ったモノを観測出来るのではないかと。

 

「…………例の計画ですが」

 

まだ、人はそれなりに居る。

どの程度の範囲が知っているかは流石に分からない。

ので、少し言葉を濁しながら呟く。

反応するように、目を閉じていたケツアゴの瞼が半ば開いた。

 

「今のワタシ達が製造出来る範囲で最高峰の器なら用意するにゃ」

『『『!』』』

『『『?!』』』

 

聞き耳を立てていたらしい一部。

ソレ等を含めたあらゆる目がワタシへと集まった。

「達」にすることでさり気なくコサック博士も関わる風にしているが。

 

コサック博士。

彼はカリンカちゃんの頭を撫でるのに夢中のようなので此方に目を向けてきてすらない。

カリンカちゃんからちょっと鬱陶しそうな目を向けられているのに気付いてもない。

 

ともかく、ナビ。

その器。

その躯体。

要するに、技術を詰め込むためのガワ。

それなら用意しても良いと考えている。

 

『…………良いのか?』

 

訝し気な声に頷く。

すごい技術が出来た。

容量不足で入らない。

では、馬鹿らしい。

 

せめて還元したいのだ、此方は。

だからこそ、今現在の最大限。

かつてワタシが垣間見、しかし理解し切れなかった、核から異なるワタシ自身の躰。

アップデートしながら少しでもソレに近付き、越えようと研究開発を進めている体。

その一端を『Σ計画』にくれてやる。

 

「構いませんにゃ。ケイン博士が参加されてるんにゃら、彼が余計な仕事に携わるのも良くないでしょうしにゃぁ……コサック博士」

『…………ん? ああ? 私かい?』

 

ワタシの呼び掛けに、僅かな間を置いて気付いたコサック博士の顔が此方を向いた。

手が止まった隙を突いてカリンカちゃんが手元から抜け出したのを一瞬、寂し気に追い、しかしまたワタシの方へと戻る。

別にコサック博士の言葉は必要じゃないけど。

小さく目で礼して来るカリンカちゃんに微笑みを一瞬向けてから、言葉を紡ぐ。

 

「コサック博士から見て、ケイン博士は優秀な方でしょうか?」

『……ああ。モチロン優秀だ』

「ありがとうございますにゃ。あ、それだけですので」

 

頭を下げる。

これで良し。

元同僚。

しかし、ゼフラム社が認める技術者。

コサック博士が認めるケイン博士を、アメロッパが認めないことはないだろう。

 

「ですが、『電脳獣ファルザー』の件もあるにゃ」

 

だが『電脳獣ファルザー』。

その遺した爪痕を考えれば、彼のみに任せられるとも思えない。

思わない。

そして彼自身もまた、流石にそれを良しとはしないだろう。

 

「彼のみに全てを任せる訳にも行かないでしょうし、アメロッパとしてもそう出来ない。でしょ?」

『…………まあ、あくまでも一端を担って頂くのが精々だろうな』

 

ゆっくりと、考えるようにしながらケツアゴが頷いた。

だからこそ身体は、ワタシが提供する。

一番の見てくれ、見た目。

どれだけ作り込まれようとも、最終的に一番目立つ部分はそこだ。

それに、

 

「それにそもそも、疑似人格やらのプログラム全般の中身はワタシが関わらない方が良い。でしょ?」

 

揶揄するように笑う。

ワタシを殺すネットナビ。

それの中身にまでワタシが関われば、危害を加えられないよう手を入れられるかも知れない。

アメロッパはそれを望まないだろう。

 

『配慮、感謝する』

「にゃはは。なので追々、体は用意してお持ちしますにゃ――あ。暗号化はさせて頂きますよ? 流石に」

『………………まあ、そこは仕方あるまい』

「追々、ワタシのご用意させて頂く器以上のモノが出来るようになったら入れ替えればよろしいにゃ」

『うむ――有意義な一日だった。ありがとう』

「此方こそ」

 

改めて。

笑った。

作ってやりましょう。

揶揄ってやりましょう。

ヤラレ役に相応しい、姿形を。

 







念のため。
《ビッグパンチ》なるバトルチップはありませんが、ガッツマンが居ないのに《ガッツパンチ》も変なので捏造です。
《コールドパンチ》がありますので似たようなのはあるでしょう、多分。

ちなみに《フットスタンプ》はややマニアックですが存在します。
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