ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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※急なご連絡ですが、あと数話で一度、休載させて頂きます。
 現実の都合で暫く執筆の時間を取ることが難しくなるためです。
 巧く行けば、半年ほどでまた時間を取れるようになるかと思います。

 まだ少し大丈夫ですので、一先ずの予定として。
 本話含めて数話を投稿。
 章替わりの、その章がおおよそどのような話になるかといった一話を投稿して区切りとし、暫く休載とさせて頂きます。

 併せて、この機会なので。
 感想や誤字報告に評価、お気に入り登録等々を頂きありがとうございます。
 何時の間にか総合評価が一万を超えていたことに気付き、かなり驚きました。
 急なご連絡でしたが、本話もお楽しみ頂ければ幸いです。



 えっ、流星のロックマンのコレクションが来年販売されるんですか?!
 参ったなぁ……半年で済むか分からなくなりそうですよ……





 083.5:かの起源

 

軍の幹部が死んだ。

当初は殺人。

続報にて自殺。

そのような通達だった。

 

妙。

その感覚を有しているのは、オレだけではないのだろう。

周囲へと目を向ければ時折合う目に、そう確信する。

そう。

妙なのだ。

 

「カーネル様」

「どうした」

 

掛けられた声に視線を向ける。

五体。

ネットナビが並んでいる。

しかし報告に来た以外の四体は、ジョー。

即ち、戦闘向けのネットナビ。

 

調査に来ているだけにも拘らず。

いやに厳重な態勢。

もっと言えば。

国防省から離され、オレが此処に居る事実。

それ自体が、コトの異常性を示してもいた。

 

「幾つか調査を行ったのですが…………」

「煮え切らんな。どうした」

「……その。メール等の連絡関連を念入りに削除した形跡等が見受けられました」

 

態度の理由は、ソレか。

通常のネットナビではどうしようもない。

散らばった残骸を集めて復元することが難しい。

 

普通ならば。

しかし、ハッキングに近しい解析能力を有するオレならば。

とまで行かずとも、相応の性能を持たねば難しいだろう。

性能を頼らざるを得ない作業と言う訳だ。

 

「だから復元は出来ない、と?」

「はい。ですがカーネル様であればと思い……お力をお借りしたく」

「良いだろう。案内しろ」

「ハッ!」

 

歩きながらも思考を巡らす。

同時に、発生した不審事。

我が創造主。

ワイリーの失踪。

 

老いがその身を蝕んでいるようにも見えていたのだが。

演技だったのか。

詳細は残念ながら知り得ていない。

バレルならば、と思わないでもないが。

 

生憎、オレとバレルは現在、半ば引き離されている。

バレルの軍事教育が成されてから。

そのような話ではあるが。

要するに、このカーネルが個人の所有になることを危惧しているのだろう。

そのような察しは付けられる。

 

無論、表面には出さない。

あからさまに表し、いよいよ以てバレルをも失うことになれば。

このオレも、冷静で居られるとは思えないからだ。

 

少なくとも。

ワイリーがオレにそのようなことを匂わせもしなかった。

失踪したにも拘らずボンバーマン達から一切の連絡がない。

その事実を繋ぎ合わせれば、想像が付く。

アメロッパ内に何某かの陰謀が渦巻いていたのだろうことは。

 

同時に、その陰謀。

軍か。

あるいは省か。

はたまた、国家か。

何れかと浅からぬ代物であろうことも、また。

 

しかし、関係のないコト。

オレはオレ。

キャスケット様のネットナビとしての役割を与えられた。

そして、そのご子息であるバレルへと引き継がれている。

 

その事実を維持することこそが肝要。

ワイリーの身に危険が迫っていただろうことは、管轄外だ。

バレルの身に危険が及ぶことでもない限りは。

いや、そもそも迫る可能性を考慮すること自体がアイツ等への侮辱か。

 

「……………………」

 

故にこそ。

メールの復元。

念入りに消されていたソレ等の復元に手古摺っているように見せ掛けながら、その実、密やかに吟味する。

 

周囲から目を向けられていようとも問題はない。

復元に集中している。

そう見えれば、そうなのだ。

事実、吟味しつつも復元の手自体を止めてはいない。

 

日常的な遣り取り。

ソレ等を流し、怪しげなメールのみを吟味。

更に精査を加えることで詳細を明らかにする。

 

メールの発信源を掘り進め。

不自然な言い回しから、隠された文言を見出す。

何事もないかのようでしかし、他のメールとは違った書き方。

先日、最後のメンテナンスの折にワイリーから加えられた情報。

持ち寄れるソレ等を元に紐解いていけば、

 

「…………なるほど」

「……如何されましたか?」

「復元は引き続き進める。ただ、少し時間を要する」

「承知しました。報告を上げさせて頂きます」

 

思わず漏れ出た言葉を誤魔化す。

早速オペレーターに連絡を入れているナビは一先ず、無視。

オレへの関心より、内容に注意を向けていた。

スパイではない、と見てだ。

 

そう。

内容は、大したことではない。

否。

大それたことではあるか。

 

かの連邦。

この人物が、そうだった。

それが分かった。

だが、それだけだ。

 

スパイ等と言うものは存在して当然。

前提条件とすら言える。

それが思いの外、入り込んではいたようだが。

だからどうした。

 

思わず首を捻りそうになるのを堪えながら、仕事を続ける。

残念ながら、これ以上は大した情報を得られまい。

そんなことを薄々と察しながら。

 

「カーネル様」

「……なんだ」

「少々、立ち会って頂きたいのですが……」

「……ふむ。では一先ず此方は止めにしよう。復元した内容の確認は一通り進めておいてくれ」

「了解しました!」

「案内を頼む」

「ハッ!」

 

思い悩んでいたのも束の間だった。

要望。

解析ではないソレに些かの不審を抱きはするが、頷く。

メールを漁っていても大した収穫を得られると思えなかったのもある。

 

先程のナビにそうとだけ言い置き、歩を進める。

距離としては、大したことはない。

個人のパソコンと言うこともあるが。

早々に、計十体のナビに囲まれている、件の場所に辿り着いた。

 

「…………ショートカットか」

「はい。ですが見て頂ければ分かると思いますが」

「……杜撰だな」

 

生きているショートカット。

だが、それはフェイク。

少し目を凝らせば分かる。

何かの上に隠すようにして存在していることは。

 

しかし、分かり易いにもほどがある。

いや注意していればすぐ分かる、程度か。

捜査として入っていなければ流石に見逃がす可能性はある。

 

現実世界のように言い表すなら。

その周りだけ少し見れば床の色が違う、だとか。

適当なモノの下にカーペットが敷かれている、だとか。

その程度の偽装だろう。

 

「今のショートカット自体は使用された最新の形跡は半年以上前でした」

「先の確認は……既に済ませた後か」

「はい。とは言え、何故そんな場所にと言うような僻地でしたので……」

「何某かあったのかもな」

 

例えば。

情報の遣り取りとか。

だが、それはいい。

 

「確認が済んだから、隠されたモノを見るという訳か」

「ないとは思いますが、万が一にもセキュリティが存在した場合は」

「対処しよう」

「ありがとうございます」

 

一礼をし、頭を上げて振り返ると共に手が振るわれた。

それが合図だったらしい。

五体が近付き、慎重に撤去作業を始める。

背後では計五体、ジョー達を含むナビ達が各々武器を構えてはいるが、特に何事もなく、

 

「…………ん……?」

「如何されましたか?」

「今………………いや、構うな。気の所為だ」

 

終わる刹那。

一瞬だけ感じた違和感。

何か、妙。

旧式のコードの中に何か真新しい記号が混じっていたような異質さ。

しかし目を凝らしてもそんなモノはない。

 

首を振り、先に進めるよう促せば、微かな視線を向けられこそすれどそのまま進んでいく。

引き剥がされたソレ。

下にあったモノもまた、ショートカット。

機能を失って久しいのだろう。

 

アイコンタクトと共に頷き、進み出る。

構造は単純。

機能も、単に絶たれているだけだが、

 

「………………復旧は出来る。しかし、出入りの痕跡は根本から外され、処分されている」

「! それでは」

「ないモノは戻せん――機能は復旧するが、構わないな?」

「よろしくお願いします」

 

出入りの痕跡を消すために、事前に丸ごと外しておく。

単純だが、良い手だ。

口にしたように、ないモノは戻せない。

メール機能のように普段使いするモノと違い、最早使わないのであれば。

 

しかしそれでは違和感がある。

ならば、だ。

何故、そもそもショートカット自体を処分しなかったのか。

 

「――復旧、完了」

「では偵察隊として我々がまず。三十秒以内に戻らなければ……」

「私が。上層部に連絡を」

「……」

 

武器を構えたままだった面々が前へと出る。

その様子を頷きながら、リーダーと思しき一体が手を挙げた。

否定する理由はない。

頷き、視線を向ける。

片手を開き、一つ、一つと指を折って行き、

 

「――!」

「「「「!」」」」

 

五体のナビがショートカットの向こうへと消えた。

距離を少し置き、ソードを現出させる。

微かな驚きの声が挙がっているが、無視する。

メモリ内でただ、秒数を数え上げる。

 

「戻りました」

 

しかし、僅か十四秒。

恐らくは向こう側を軽く確認しただけなのだろう。

リーダー格が戻って来てた。

眺める。

先程、入って行った存在に間違いない。

 

「……どうだった」

 

一息吐きながら構えを解く。

一言の問い掛け。

そこに、

 

「向こうに行った我々は後程、記録の削除が必要になりそうです」

 

思いも寄らぬ言葉が返って来たのだった。

 

 

 

緊急。

カーネルをも向かわせた事態。

その中の一報に、急ぎ、向かっていた。

 

緊急。

しかし、明確に言うことは出来ない。

してしまえば、万が一が有り得る。

 

何者かが勇んで侵入してくる可能性すらあると。

その事態は、好ましくない。

コトは、非常にデリケートなのだ。

 

アメロッパ国土保全省。

アメロッパ保全計画局。

サイバー部。

その初代部長であり様々な国家計画にすら携わるようになりつつあるこの私が直々に、足を運ぶ必要が生じるほどに。

 

「…………待たせたか」

「いえ、問題ありません」

 

件の現場。

その場を警護する兵士達と敬礼を交わし、奥へと進む。

血生臭い。

と言う雰囲気は、既にない。

 

即日処理を施され、最早痕跡すらない。

前任者。

件の裏切り者の痕跡は精々、置かれたままの物品ぐらいだろう。

それ等も、家屋含め、近日中には押収される手筈となっているが。

 

ともあれ。

既に用意の済まされた一角。

パソコンに繋げられた、PETが差し出されたのを受け取りその画面を覗く。

佇む、我が国の最高戦力。

 

「カーネル。待たせた」

『構いません。それより、閲覧されるのは貴方だけしょうか?』

「一先ずはそうなっている。詳しくは、押収してからになるだろうがな」

『了解』

 

ソードを携えている姿には、警戒心が見える。

私に、ではなかろう。

件の先。

画面に映ってもいる、ショートカット。

その奥に対する警戒。

 

先に入り込んだ偵察隊は既に、本日の記録データを削除されたと聞いている。

つまりはそれだけ、先にあるデータが危険という訳だ。

実際、私自身も微かな緊張がある。

 

この先に存在しているデータ。

細かくは、伺っていない。

しかし。

思わずして唾を飲み込む。

 

一瞥して来たカーネル。

だが、何も言わず。

無言でショートカットへと脚を踏み入れた。

 

瞬間、画面が移り変わる。

先程までの、パソコン内部の電脳だったろう世界。

それから、やや古惚けたように感じられる電脳。

無機質な、これと言って特徴の見当たらない世界へと。

 

しかし。

特徴がないのは世界それ自体だけだ。

他は、明らかな異質。

 

「………………なるほど、な」

 

呻くような言葉が口から洩れる。

かつての私であれば、「これがどうした」と鼻を鳴らした程度だろう。

だが、今は知っている。

 

ネットナビの危険性。

それを知ってから。

知識の収集を怠ったことは、一日たりともない。

 

世界的な電脳学者を自称する者の元に自ら足を運んだ。

慣れぬネットワーク技術の本を読み漁りもした。

中でも分かり易かったのはケイン博士の話だが。

ともかく。

そう言った事柄の中、当然、知るコトはあった。

 

Dr.ワイリー。

その技術力。

得意分野ではない中での、最高傑作であろうカーネル。

次いでストーンマンとボンバーマン。

 

それ等のデータは軍内部に保管されていた。

提出を求められ、応えた形だと。

しかし。

ワイリー自身の手で暗号化処理を施されていたため、誰も解読することは叶わなかったそうだが。

 

「ストーンマンに――――ボンバーマンの設計データか?」

『それ以外にも、かつてアメロッパ内部より強奪されていたとされるデータも複数』

 

散見する、ネットナビのデータ。

失敗したのだろう残骸。

雑に放り置かれた、ソレ等。

 

息を吐こうとして。

掠れた声となって抜ける。

これは。

とんでもないことだ。

 

件の主。

Dr.ワイリー。

彼は失踪した。

今、私が居る部屋の主。

ソレを殺して失踪した。

 

自殺のように、心持ち程度の偽装されてはいたそうだが。

所持記録のない拳銃が握られていれば、流石に違和感を持つ。

しかし、自殺として処理されている。

 

残されていた封筒。

その中に記されていた情報。

この部屋の主が、かの連邦のスパイであった証拠や遣り取りの記録。

秘密銀行への入金の明細等々と懇切丁寧に残されていたとあっては。

 

アメロッパの名誉のため。

秘密裏に処理することが望ましい。

そのような結論に至ったと聞いている。

聞いているが、

 

「コレは…………マズい」

『……』

 

目頭を押さえ、呻く。

首肯するカーネルが目に入る。

マズいのだ。

 

我が国の、それこそ暫く前のデータなんぞは、まあ良い。

モノとしては大したことはない。

そう、今ならば言える。

 

しかし、ストーンマンとボンバーマン。

ソレ等二体のデータは、マズい。

特にボンバーマン。

アレは先日、カーネルと引き分けたと聞く。

 

国家防衛の都合から見ても、マズい。

そのデータが他国に流れたと言う一事。

それは、アメロッパを揺るがす大事にも成り得る。

 

気付けば、目頭を押さえていた手が口元へと移っていた。

思わず零れる呻きを抑えるように。

万力で漏れ出ようとしている何かを抑え込もうとしているように。

口元に当てながら、我知らず視線が周囲へと蠢く。

 

どうする。

どうする。

どうする。

 

既に過ぎ去ったことではある。

しかし。

大統領閣下にお伝えするだけで済むことではない。

省庁、果ては府にまで連絡をやってもなお足りない。

 

まだ、起きてはいない。

だが全州に最大限の連絡をしなければ端から崩れ落ちる。

崩れ落ちてしまう。

我等のアメロッパが、

 

『………………データは完全なモノではない』

「…………なに?」

『暗号化は、何段階かの処理が施されていたのでしょう。恐らくは途中で失敗し、一部が無意味なデータとなっているようです』

 

カーネルからの言葉。

それに視線を向ける。

ストーンマンの設計図。

その脇で広げられているテキスト。

 

だが私では分からない。

勉強しているとは言っても詳しくはない。

一部、同じような文字列が延々と続いているようだが、その程度までだ。

しかし、カーネルがそう言うのならそうなのだろう。

 

『そもそも』

「そもそも?」

『……いえ』

「報告しろ」

『ハッ……此処にあるデータは、元のモノから手が加えられた後のようです』

 

それは、

 

「……どの程度の技術力があると推察出来る?」

『大したモノではありません。完全なネットナビを作れはしない程度でしょう』

「それは……」

 

話が変わって来る。

 

「つまり。暗号化を解いた者と、改造を加えていた者の二種が存在する、と?」

『…………今回、パソコンを調べた限り解読できる程の技術を有しているとは思えません』

「……一部の暗号化が解かれたモノを受け取った」

『恐らく』

 

それは。

まだ比較的マシな情報だ。

少なくとも、外に流出したデータの方は完全に解け切れなかった。

解かれた後のデータを、此処の主が受け取った。

そう言った流れなのだろう。

 

「………………完成させることは?」

『故人が漕ぎ付けた可能性は低いかと。ただ』

「手に入れている者はモチロン、コイツもゼロではない。そうだな?」

『ハッ――ただ、この様では恐らくバグ塗れの代物になるでしょう。しかしそれでも、居ないことが不自然です』

「…………」

 

そう。

そうだ。

思い返せば確か、『OS計画』初期の主導者の一角に名を連ねていたか。

途中で抜けていたようだが。

あとで残してある資料を見返すとしてだ。

 

主要なモノでは、ストーンマンやボンバーマンのデータ。

それの一部とはいえ受け取ったから必要がなくなった、か。

想像でしかない。

既に、本人も存在しない以上は想像に左右される。

だが、当たらずとも遠からずなのではなかろうか。

 

しかし。

そうなればカーネルの口にしたように。

何故、そのネットナビが存在していないのか。

それが不自然である。

 

『…………………………コレは……』

「何かあったか?」

 

黙考に浸る。

その中、不意に声が聞こえた。

片目を開けば、カーネルが何かを拾い上げている。

 

不用意な。

一瞬そんな感想が浮かぶが、カーネルにそれはないだろう。

それよりも、その何か。

一見する限りは、

 

「帽子か?」

『……ベレー帽。あるいは、ニット帽に近しい形状です』

「随分とハートのマークがあるな? それに、フリル?」

『そうです』

「何故…………そんなモノが此処に?」

 

何故、拾ったのか。

そう聞き掛け。

しかし、別の質問に変わる。

 

作り掛け。

あるいは失敗品。

様々なナビ未満の残骸が残っている。

そんな中で、何故、装飾品とでも言うべきモノが残っている。

 

しかも、だ。

赤を基本とした帽子全体。

小さくも薄い色合いのハート柄が所狭しと。

 

『分かりません。ですが』

「……」

『この帽子――――見覚えが』

 

首を捻る私に対して。

カーネルが視線を上げた。

些か、険しい。

そんな視線を。

 

 

 

あまり見られたくない。

しかし、一対一で会うことは望ましくない。

そんな思惑の末。

アメロッパスクエア。

そこに呼び寄せるのは深夜帯となった。

 

幸いだったのは一つ。

彼方にとっても、それが都合の良かったこと。

日差しのある時間帯。

その頃は、忙しなく動き回っている様子なのだ。

 

お互いにとって、都合が良い。

だから、そうなった。

スクエアの只中に立ち、ただ静かに乱れる思考を落ち着ける。

 

周囲には警備と称して散らばっている、ジョー達。

それ以外のナビの姿も僅かに見えるが。

万が一があれば、諦めて貰おう。

 

「………………」

 

ジョーの一体と、サム部長のPETは繋げていると聞いている。

探りを入れるつもりはない。

ただ、今回のコトの許可だけは得ている。

しかし実際、どうなるか。

それだけは、どうしても分からない。

 

佇むこと、暫く。

予定の時間。

それよりも、十分前。

その姿を現した。

軽く周囲を見渡し、手を振ってやって来る、

 

「――お待たせしましたにゃ~」

「時間よりも早い。気にするな」

 

パインを。

半ば睨むように見据えた。

その気はなかったが。

思わず、と言うヤツだ。

 

此方の様子が普段と違うことに気付いてしまったのだろう。

目を細め、止まった。

普段よりも遠い。

 

普段ならば平然と、ソードの間合いにまで近付いてくるが。

今は、一歩の踏み込みでは足りない。

だがそれで良い。

今回のコト。

距離が有るコトは、オレの方にも利があった。

 

「……なぁにかにゃ~?」

「――――早速だが、本題に入ろう」

 

露骨に。

あえてのことなのだろうが、しているように見せている。

そのパインに対し、背中とマントの陰。

其処から件の帽子を取り出して、

 

「この帽子――ッ!」

「――――」

 

跳んだ。

咄嗟に。

擦れ違い、距離が開く。

 

思わずソードを展開してしまった。

対峙。

反応は、あまりにも劇的だった。

 

細く開かれていた両目は完全に開き切り。

薄っすらとした笑みは、感情と共にその顔から消え失せている。

極め付けは、普段ならば決して有り得ない。

このオレに対して一切の躊躇もなく、《マジカルポテトスマッシャー》を握り締めた戦闘態勢への移行。

最早、確定と言って良いだろう。

 

「ソレ」

「――」

「何処で、見付けた?」

「――詳細は言えん」

 

全身を焼くような敵意。

それを犇々と感じるが。

あえて、展開してしまったソードを納める。

取り出した帽子を両手の上に載せるように前に出す。

 

たったそれだけ。

しかしそれだけで、敵意は消えた。

消し去るでもなく手の内からポテトスマッシャーが滑り落ち。

だが気にする様子もなく、ゆっくりと近付いてくる。

 

対して。

前に進む。

突き出すように。

パインにその帽子を。

 

震える腕が、恐る恐ると言った具合に。

あるいはその実在を疑うように添えられ、持ち上げられた。

ただ手に持ったソレを見詰め続ける姿に言葉を紡ぐ。

 

「ある調査が行われた中で、その帽子が発見された」

「…………」

「お前の被っている帽子とは色や模様の系統が違ったが……」

「……姿は」

「…………」

 

言葉での返答は、出来ない。

コトがコト。

ただ、首を横に振る。

 

暫くは見詰め続けていたが。

やがてその帽子を懐に抱えるようにし、俯いた。

そのまま背が向けられる。

 

「…………ありがとう。カーネル」

「その反応も調査の一つになる。気にするな」

「……ありがとぅ」

 

微かに濁った声。

それに気付かなかったように、ただ背を眺める。

ゆっくりと。

だが徐々に早まっていく足がやがてスクエアの外へと消えて行く。

刹那、

 

「    」

 

誰かの名を呼んだように聞こえた。

しかし、気の所為だろう。

そういうことにする。

 

『――あの反応。確定か』

「……そう見ても良いかと」

『だろうな』

 

佇んでいた中。

何時の間にか近付いて来ていた、ジョー。

それからPET越しに掛けられた、何処か普段よりも落ち着いている、その言葉に頷く。

 

残されていた帽子。

パインのあの反応。

そうであれば確定だろう。

 

ゆっくりと足を進める。

もっと長くなる。

そのような想定だったため時間に余裕を持たせられていたが。

丸ごと空いたのであれば、多少の休養を得ても問題はあるまい。

 

無言で後に付いてくるジョーを引き連れて、自販機に辿り着いた。

商品は、目新しいモノはない。

であれば。

徐に、初めて食したアイスを選ぶ。

それを二回。

 

「……これは?」

「オレが初めて食べたアイスだ。お前も味わうと良い」

「頂戴致します」

 

両手で恭しく受け取るジョーに渡し、残った一つを齧る。

冷たい。

それに、何とも染みる。

確かパインは、ワッフルコーンのモノが好きだと言っていたか。

 

『………………………何とまあ』

 

無為にそんなことを思い返しながら。

脇で流れているアニメを眺める。

自販機の横で流すため『MMM』の宣伝として高い効果を見込める。

等と言っていたが。

本当の狙いは恐らく、別にあったのだろう。

 

例えば、例えば。

そう。

離れ離れになってしまった誰かを探すため、だとか。

 

『――儘ならぬモノだ』

「えぇ……」

 

アニメの中で動き回る、二体。

パインと、もう一体。

気怠そうに、パインの対応をしている存在を見詰める。

まさしく、多くのハート模様のある赤っぽい帽子を被った、パインから「モモさん」と呼ばれている存在を。

食べ終わった後も何ともなしに、眺め続けていた。

 





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