ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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009:拘束

 

今回も警戒線が敷かれた。

「またか」と言う空気。

今度も、ニホン。

何処か慣れた雰囲気。

と言うことで若干呆れた空気が流れていたが、今回は映像データがあった。

 

「嘘だろ……」

「カーネルなら勝テるんじゃネえか?」

「………………」

「そもそも入れないようにしないとマズいだろ、コレ……」

「前と同じように封鎖措置に入るべきだろうが……上次第か」

 

その一つだけで、今回の存在がどれほどの脅威であるかを証明するには十分だった。

プロトのような数の脅威じゃあない。

絶対的な、個の暴威。

 

ワタシが実質的に手も足も出ず何とか逃げ帰ってきたと言う情報が、ナビ達の気を引き締めさせるには十分な情報となった。

つくづく評価が高い。

いや、分かってはいるのだ。

現状のアメロッパ国内では二番目に強いナビと言うことになっていることは。

『プロトの反乱』騒動で目に見える功績があった訳だし。

 

しかし。

ワタシの記録にある後の世の上澄み達のえげつなさを考えると、ワタシの実力は弱くはないが大したモノではない。

あくまでも、今だから受けられる賞賛だと割り切っておくべきだ。

少なくともワタシ程度が調子に乗って良いことはない。

サイコロかハチの巣にされてしまう。

そんな風に気を引き締めているのを他所に、コトは進んでいたようだった。

 

『……ボンバーマン。少し見て欲しいデータがあるのじゃが、来れるか?』

「勿論ダ」

 

日課のパトロールを終えたワタシを、ワイリー様がお呼びになられた。

であるならば向かうのは当然。

ワイリー様の研究所。

そのプライベートエリアに入る。

何時見ても流石のセキュリティシステム。

バグ一つ発生しないよう手入れの行き届いた空間。

軽く見渡してもウイルスが一体も居ない。

 

「ゴゴゴ」

「ヨう」

 

エリアの端に佇んでいたストーンマン。

守護者として立っているのに寄って挨拶を済ませ、先に進む。

何かのデータを眺めているだけで相変わらず動く気配もない。

しかし、何を見ていたのか。

一瞬気にはなったがプライベートに踏み込む気はないので思考を断った。

 

お呼び出しされたが、別に慣れたルート。

現実世界で言うと廊下に当たるか。

ワイリー様がご用意して下さっているワタシ達のプライベートルームにそれぞれ繋がっている。

 

ワタシの場合、バグの欠片なんかを保管している場所だ。

お呼びになられたのはワタシの部屋なのだから、別にお呼び出しされるまでもなく帰るのだが。

今更ふと覚えた違和感に振り返った。

 

「……なんダ?」

「……ゴゴ」

 

ストーンマンと目が合った。

声を掛けると視線を逸らされたが、怪しさが増した。

とは言っても行かない訳にも行かない。

バナーに乗った刹那、再びストーンマンと視線が合った気がした。

 

『――うむ、よく来た』

「まァ、ワタシの部屋ダしな」

 

肩を竦めながらも堂々と進む。

疑念はある。

だがワタシに何かしようとされているとしても、それを断ると言う選択肢は端から持ち合わせてはいない。

それでも何となくの警戒だけはしながら居ると、何度か頷かれたワイリー様のお姿が画面から消えた。

 

首を傾げるワタシを他所に、何やら動き回っている音だけが聞こえて来る。

此方に分かる動きはないが、それが余計に不安を煽る。

何か拙いことをしてしまっただろうか。

そう言う考えを巡らせても当然、ワイリー様に取って不利益になることはしていないはずだが。

 

『――――よし、終わったわい』

「はア……? デ、なんダよ?」

『簡潔に言おう。お前は暫く出入り禁止じゃ』

「なン……?!」

 

まさかと振り返る。

バナーから光が消えている。

乗っても当然、反応がない。

思わず電脳世界の中に視線を走らせるが、他に出入り口がないのは普段から使っているワタシ自身が一番よく知っていることだ。

ゆっくりと画面に顔を向け、口を開かれるのをただ待つ。

理由もなくそんなことをされる訳がない。

 

『………………何も言わぬのか?』

「ワイリー様もオ考えあってのことダろ? デ?」

 

深々と息を吐かれるワイリー様。

言わんとすることを整理しているように見える。

だが。

その目が徐々に血走り始める。

額に血管が浮かび、剝き出しにされた歯から力が入り過ぎて不気味な音を鳴らしているようにすら思われた。

 

『――――ニホンから! お前を貸せと、アメロッパに連絡があった!』

 

吐き捨てるような言葉。

それに頷く。

まあ、分かる話だ。

ニホンの有する科学省の『ナビ精鋭部隊』。

それ等は枷の付けられていた上、まだウラインターネットでの戦闘を行ってもいない『フォルテ』一体に優勢が取れる程度だったらしい。

これはアメロッパ軍属のナビからコッソリ聞いたことだから恐らく間違いはない。

 

後の最強。

今はまだだろうが、現段階でもその性能は決して低いモノじゃないだろう。

電脳世界において性能の差は確かに大きい。

 

だが、だ。

プロトの反乱と言うイレギュラーの中だったかも知れないが、囲っておいてなお枷付きのナビ一体を圧倒出来ないんじゃあグレイガとまともな勝負も出来やしないだろう。

ワタシ単体ではカーネルに勝てる見込みはないが、味方のナビが十体も居れば流石にデリートくらいは狙える。

多分。

 

そう考えると結構ギリギリかも知れない。

いや流石にフォルテとカーネルじゃあ、性能的にカーネルの方が上だろう。

少なくとも、現時点では。

 

「ふゥん……」

 

しかしワタシの実力を本当の意味で知っているならカーネルならともかく、わざわざ声を掛けてくるか。

まさか、ワイリー様への嫌がらせが目的か。

それとも。

 

不意に、イヤな考えがメモリを過ぎる。

あの時グレイガに挑んでいたナビ達が精鋭部隊とでも言うんじゃあないだろうか。

そうであればワタシの実力を過剰に評価していてもおかしくはない。

一瞬だけでも戦闘の体を成していたようには見えただろうし。

 

だったら猶更。

ニホンは随分とマズい状況下にある。

本来、頼みの綱になるべき光正は不在。

精鋭部隊と言えるようなナビ達もまだまだ発展途上も良い所。

お話に成りやしないだろうが、それは流石に悲観的な予想に過ぎない。

 

「……マ、道理ダな」

『ッふざけるな! ふざけるなっ! ふざけるなアッ!!! ワシを追い出しておきながら、恥も何もないのか!!!』

「ダがワイリー様、おめえの力を示す絶好の機会ダろ? カーネル共々ワタシを派遣してアレをデリート出来りゃ良イ面の皮ダ」

 

それはそれとして。

算盤を弾く。

ワタシ単独じゃあ厳しかろうが、カーネルも居るなら多少の勝算も出て来る。

一桁パーセント程度。

追加で《ファイターソード》持ちも来てくれればなおのコト。

成功すれば、ニホンはワイリー様とアメロッパに対して一層の借りが出来上がり。

失敗しても、最低限の義理は果たしたモノとして引っ込んでも文句は言われまい。

 

ワタシとしては。

まあ最悪、《エスケープ》で何とか離脱の算段を立てられるだろう。

多分、脅威としてはカーネルの方が見られるだろうし。

そんな適当な計画を口にはしても、ワイリー様の反応は芳しくない。

ただただ大きく、息を吐くばかり。

むしろ、目の充血は増して真っ赤に染まりつつあった。

 

『……フゥー…………そう言うと思ったからこうしておるんじゃ!』

「エぇ…………勿体ネえな」

『とにかく! 行く必要はない! 行こうと思う必要もじゃ! 精々ニホンのお手並み拝見と行こうではないか! くくく――ワハハハハハハハハハ!!!』

 

ブツン、と。

音を立ててワイリー様からの通信が切れた。

此方から連絡をを入れようとしてみても、反応がない。

まさか連絡用の機器を興奮し過ぎて壊されたんじゃあ。

そんな考えが過ぎるほど、普段から掛け離れたご様子。

 

いや。

有体に言えば、狂気か。

ご友人のキャスケット様によって抑えられていたハズの科学省、引いてはニホンへの怨念が表出していた。

 

思わず息を吐きながら額を抑える。

お労しや。

あのご様子では科学省自体が何かしら対策を立てるまで外に出られそうにもない。

まあ、そこは良い。

やっておきたかったことは多くあるのだから。

 

ただ、心配だ。

暫くはワタシの事で突かれ続けることだろう。

徒らに怨念を触るようなことは、あのキャスケット様がされるとは思わないが、しかし。

 

「………………ワイリー様」

 

どうか、その御心が安らかであれますよう。

無理だろうけど。

 

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