ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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084:祭りの後

 

祭りが終わった。

そう、称そう。

ワイリー様の怨念。

燃え盛っていたソレを鎮めた祭りが。

 

ソレが終わったのだと。

であれば何があるか。

そう。

後片付けである。

 

規模が大きければ大きい程、後に残す影響は大きい。

幸か不幸か。

今回の祭りの後片付けはアメロッパに大体押し付けれている。

ワイリー様に害を及ぼそう等と考えていたのだ。

当然どころかなお不足している。

 

その辺りは追々地獄を見て貰うとしても、だ。

大体は押し付けれた。

と言うことは。

一部は此方でも片付けておく必要があると言う訳だ。

生憎、別れたワイリー様の方はソレをするつもりはないらしい。

 

恐らく今頃は、そう。

ドンブラー湖か。

アメロッパ沖か。

どちらかの水でも眺めておいでではないだろうか。

あるいは、だが、ワタシには関係のない話だ。

 

 ――好きにしていろ。何かあれば呼ぶ

 

そう、直々に言われている。

命令と解釈して差し支えはないだろう。

なればそう。

予定通り、好きにさせて貰うことにしている。

 

まあ、元々が元々だ。

ワイリー様が何某かの活動をされるのなら資金的なバックアップをするつもりだった。

幸い、それはワイリー様の一番弟子であるタレル博士がすることになっている。

何の気兼ねもなく動くことが出来る。

今後が捗ると言うモノだろう。

 

等と。

思いはしても、だ。

それよりも先にすべきことがある。

すべきだろう、と。

思っていることがある。

 

コレで運命の筋書きが大きく変わるとは思っていない。

変わるのならば儲け物だが。

そう言ったつもりで動いているのではない。

 

ただ、一つ。

知っておいて貰いたい。

それだけなのだ。

それだけの、何てことのないエゴ。

 

その程度のためにワタシは密やかに。

ウラインターネットを潜り、世界を渡った。

言い過ぎか。

海を渡った。

その程度の話だ。

 

たった一つ。

大したことのない目的のため。

言うならば、

 

「――ワイリー様は離れタくて離レた訳じゃネぇ。コレだケは伝えタかった」

 

その程度の言葉を伝えるために。

ワタシは。

会いに来た。

 

『――――――』

 

リーガルに。

開口一言。

その言葉で、モニターに映っていただろうワタシを凝視し、半ば掴み掛るように近付けて来ていた顔が遠ざかる。

目元には隈があり、数週間と経っていないが中々の苦労があったのだろう。

察して余りある。

 

それを踏まえた上でだが。

セキュリティの構築は、見事。

その一言に尽きる。

 

ワイリー様がリーガルに残された様々なデータ群。

ソレ等を、誰にも盗れないようにするために施されたであろう

単独で抜けるには、些かの時間を要しただろう。

それこそ、もう数ヵ月程度は。

 

『――レーザーマン』

「申し訳ありません」

 

ゆっくりと。

そして大きく。

息を吐きながら出された言葉に、隣のレーザーマンが深々と頭を下げた。

 

簡単な話。

半ば程度まではセキュリティを抜けたものの、準備をし直さなければどうにも行けそうにない。

そう、頭を掻いていたワタシの元に姿を見せたのがレーザーマンだった。

そのまま奥まで案内してくれたのだ。

 

お陰様で、こうして会えている訳だ。

リーガルのため。

何も言わずに。

 

だがソレはソレ。

オペレーターに許可を取らず通すのが、良かろうハズがない。

分かっているからこそ、謝罪の言葉と態度のみ。

それ以上の言葉を加えず、下げ続けている姿を、食事しながら眺める。

 

何の言葉も掛けず。

おおよそ一分ほどか。

経ってから、その目が此方を向いた。

細められ、何とも言えないモノを見るように。

 

『――――――何をしている?』

「ピザ食っテる」

『…………そうか』

 

よくある宅配ピザっぽい容器。

さっきまでレーザーマンと食べていたので一つは空になったから爆発処分。

残りはテーブル上の開けていないモノと食べつつ抱えているモノ。

その半分と少しだけだが。

 

改めるように一瞥して、眉間を揉み、溜め息を吐かれた。

そのまま手近な椅子を引き寄せるようにして、深々と腰を下ろした。

まあ、疲れてもいるのだろう。

今の時刻は、既に夜半。

 

キングランドの生活だけでない。

アメロッパからの何某かもあったのだろうと考えれば大変なのだろう、と言う想像は付く。

何やら現実世界の動きも臭そうだが、世界を隔てられた向こう側。

流石に分からないことは突っ込みようがないから詳しくは知らない。

 

『……何時ぞやの意趣返しだな?』

「オー、覚えテたか」

『忘れるかよ』

 

チーズに糸を引かせながら、分かるかどうかだが、笑って見せればもう一度溜め息を吐かれた。

ピザ自体に対しては関心が薄いらしい。

まあ、何だ。

ワタシとパインとで交流があるのはご存知だろう。

深く突っ込む気はないと言う訳か。

 

ただ、顎で先を促すように示してくる。

肩を竦め、一息に手持ちは喰い切り、残りは容器ごとレーザーマンの背中に置いた。

目元を光らせながらワタシに視線を向けて来るが無視。

 

こうすれば、後々リーガルがお仕置きなんかすることはないだろう。

実際、窺うような視線を向けられてもワタシ同様スルーしている。

何だか悲しそうに体の光が青白く点滅しているが。

此処は後々の苦難がなくなるよう心を鬼にして耐えて貰う。

 

「マあ大前提とシて? ワタシは話ス許可を頂いテない」

『ならどうやって来た?』

「会イに行くコトを禁じられテはない。まダ、な」

『命令の穴を突いてわざわざ来たのか? ご苦労な事だ』

 

残念ながらそうでもない。

話す許可を頂いてないが、禁じられてもいない。

会いに来るのもまた同様。

とはいえ、この辺りは誤解しておいて貰う方が楽なので素知らぬ顔で流す。

 

「罪を犯されタ」

『…………キングランドに来る、という手もない程にか?』

「犯罪者引渡条約がアるだロ?」

『それほどの罪か』

 

黙って。

黙って己が首元で指を引く。

首を掻っ切るように。

リーガルの表情は、特に変わらず。

 

成程。

やはり薄々、勘付いてはいたのだろう。

裏で何かがあったことは。

それが想像以上のことではあっただろうが、想定外と言うほどではなかった、と。

 

ならばこの、隈が出来る程の焦燥。

単に、確信が欲しかったのか。

捨てられるべくして捨てられた。

等という訳ではない、と言った。

ならば追加で伝えておくべきは、

 

「――目的のタめだけジゃあネえ。アメロッパ自体も、色々とアってナ」

『……色々?』

 

不審に、微かに顔を歪ませている姿を見、逡巡する。

言うか。

言わないか。

 

うん。

別に言っても良いだろう。

庇う理由もない。

 

「ワイリー様を、コう、な――そウいう計画があっタ」

 

口にしながら再度、首を切るジェスチャーを見せる。

目が僅かに見開き。

対し、開かれ掛けた口は慌てたように閉じた。

 

そして。

さしものレーザーマンもこの内容は些かの驚きがあったのだろう。

ピザの容器が揺れ、背中から滑る。

寸前に両肘で挟んで落ちることを防いでいた。

 

もう良いだろう。

此処まで話して、ワタシ達がワイリー様から伺った内容のどれかしらに行き着かないリーガルではあるまい。

さっと容器を掴み上げ、ピザを一切れ食べる。

 

ちなみにこの容器。

開けない限り熱を保つ簡易プログラムを付けていた。

のだが、開けてからそれなりに経っているので些か固い。

まあそれでも、チーズとサラミ、タマネギの食感が何とも美しい。

 

そんなワタシに対して姿勢を正し、目を光らせながら向けて来ているレーザーマン。

容器を伸ばすように示せば、一切れ受け取った。

そのまま何も言わず、ただただ目を点滅させて来る。

 

いや、光る長さのパターンが二つ。

なるほど。

信号。

内容は、「詳細」と。

手を開けたり閉じたりで、「無理」と返答。

 

そんな風に、傍から見ればピザを食べているだけの風景を醸し出しながら。

額を押さえ両目を閉じた、リーガルの反応を待つ。

だが、食べ終わった。

追加を開けるか。

空容器を《ミニボム》で消し飛ばしながら首を捻れば、同時にその目がワタシを捉えた。

 

『――――――何も言えないか?』

「…………」

 

何も答えず。

ただ、視線を明後日の方向に流す。

計画について話すことを禁じられていたのは、フェイクマンだけだ。

 

だが計画者については残念ながら、ワイリー様から他言無用のお達しがあった。

だから話す訳には行かない。

そうでもなければ流しても。

いや、ダメか。

 

流したら殺し兼ねない目を、リーガルもしている。

これは喋れない。

二つの意味で。

 

「………………マ、こンな所ダ。改めテ言ウが」

『分かった分かった。親父は離れたくて離れた訳じゃない。そうだな?』

「ソうダ。ワイリー様は恨まれテも仕方なイ位の考えみテえダったが、ワタシとしテは、なァ」

 

さて、と区切るように無意味に腕を伸ばす。

ワタシのエゴはここまで。

これでお終いだ。

これ以上の言葉を重ねても大した意味があるとは思えないし、大した重みにもならないだろう。

 

高望みするなら。

これが切っ掛けでネビュラの創設なんかを諦めて貰いたい所だが。

この程度でソレを諦めるとも思えない。

ワタシ自身もこれから暫く、パインとしての活動に重きを置くことになると考えれば。

 

ワタシがボンバーマンである。

そうである以上、最悪、最早会うこともなくなる可能性はある。

ある、が、

 

「ジゃ、リーガル、レーザーマン、まタな」

 

口だけでも。

そう言葉にし、背中を向けた。

 

 

 





『如何なさいますか?』

その言葉に、思考の海から意識を浮上させる。
直立不動。
ただ反応を伺うように此方を見ているレーザーマンに頷く。

「――まあ、良いだろう。このまま帰してやれ」
『よろしいのですか?』
「ああ、構わん。ノコノコとやって来たんだ。締め上げても良かったかも知れないが――」

そう、口にはする。
するが、それ以上は出ない。
ボンバーマン。
アイツめ。
親父の命令を勝手に解釈して、わざわざオレの元までやって来たのだ。

特に意味もなく。
ただ、親父はオレを見放した訳じゃない。
そんな分かり切ったことを伝えに来るためだけに。

お人好しにもほどがある。
呆れるほどだ。
そんなヤツを締め上げるのは流石に、あえて言うならば、良心が痛むとでも言おうか。

「――レーザーマン」
『ハッ』

椅子が軋む。
背凭れに体重を掛けた所為だが。
何処か、心中を表しているように感じられ、余計に苛立ちが募る。

「予定は変更とする」
『承知致しました――如何様に?』
「残して行ったデータの解析を優先する。次点にアメロッパの調査を追加しろ」
『今回の?』
「そうだ」

ふざけた真似を。
と、思う気持ちはモチロンある。
親父がオレをアメロッパの外に出そうと考えていた真相の一端はコレか、と。
苛立ちは募るが、著名では済まないワイリー博士としての危険性単独で考えれば、どうか。

納得する部分もある。
理解も出来る。
しかし、頷いてやる義理も道理もない。
バレルには悪いと思うが。

「ああ、そう、捜索は五番目に下げておけ」
『残しはするのですか?』
「アッチに会う気がないのは勝手だが、コッチもはいそうですかと頷いてやる必要もない。違うか?」

また頭を下げるレーザーマンに頷く。
親父が勝手にやっているんだ。
オレも勝手にやらせてもらう。

それよりも。
「また」か。
思わず、苦笑が口元から漏れる。
本当に呑気なヤツだ。
同時に、油断ならぬヤツでもあるが。

「――――――レーザーマン」
『ハッ』
「これからも、よろしく頼む」
『勿論です』

何れ。
また会った時に。
オレ達が勝たせて貰う。
だからレーザーマンが居なければ約束は果たせない。
その程度の話でもある。

「それと」
『ハッ』
「そのピザ……フッ……好きに片付けておけ」
『ありがとうございます』

何処か喜色を言葉に滲ませている様に、思わず苦笑する。
しかしそれ以上は何も言わず、モニターを切る。
何ともなしに、軽く伸びをして。
ベットへと足を向けた。
久し振りに、ゆっくり休めそうだ等と思いながら。
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