ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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今話で暫く休載とさせて頂きます。

なお、暫くの休載ですが、それはそれとして。
形式としては外章。
ボンバーマンが関わらない本筋に近しい話と、本筋にもそれほど関わらない話になります。
お楽しみ頂ければ幸いです。



或る老人の手記
諸島での備忘録


 

 

 

マチガイダ ……

 

 

 

マチガイナノダ …… !

 

 

 

タダスベキ ……

 

 

 

マチガイナノダ ……

 

 

 

ソノチカラ ……

 

 

 

ソノスベテ ……

 

 

 

ワレラガタメニ ……

 

 

 

ワレラノタメニ …… !

 

 

 

ワレラ ……

 

 

 

ワレラガシュゾク フッコウノ タメニ …… !

 

 

 

 

 

 

 

目を覚まし。

ワイリーはまず溜息を吐いた。

眉間を軽く揉み、もう一度。

 

「…………はァ」

 

と。

憂鬱。

その内心を吐き出すように、深々と。

 

アメロッパ沖。

シンク島。

アトランピア文明。

 

その調査をする。

ずっと以前からソレを内心で決めていたワイリーだが、実の所、期待は全くしていなかった。

自身は別段、歴史家ではない。

己の持ち得る調査機械を持ち込んだ所で、調べられる事柄等、知れているだろう。

 

訪問は単なる、納得のため。

真に、そのアトランピア文明が驚くべき文明であるのならば。

ワイリーにとっての未知。

何かしら、当時の文明で考えれば思い付かないような何かが見付かれば良い。

そうすれば、少なくとも言葉に嘘はなかったという確信を得られる。

 

その程度の期待感でしかなかった。

何度でも言うが、ワイリーは期待していなかった。

この世に、己の頭でも考え付かないような事柄が存在する。

そのようなモノを発見し得る等と言うことは。

 

「………………やれやれ」

 

シンク島。

その一角。

金さえ払えば大抵のことは準備してくれる。

無法も、不法も問わず。

そう言った輩を通して荷物も持ち込んだ早晩、夢を見たのだ。

 

夢。

そう。

夢を。

何とも知れぬ雲霞のような存在。

得体の知れぬ存在が語り掛けてくる、夢。

 

疲れ。

環境の変化。

その類だろうと断じ、島の散策のみに一日を費やした翌晩も。

流石に不審を覚え、念のために自身の寝姿を撮影した翌晩も。

いよいよ、此処は何かあると考えざるを得なくなった翌晩も。

 

夢を見た。

何者かが語り掛けてくる。

ワイリー自身に対して何事かを求めてくる、夢を。

 

十回には満たぬ回数。

そのような夢を見ていたワイリーであったが、やろうとしていることに変わりはなかった。

遺跡を調べ、超古代文明の足跡を探る。

そのために海へと潜り、不思議と導かれるような心地で調査を進めていた中で、見付けたのだ。

 

盾を。

水底にて輝く太陽のように。

海中にあって曇り一つない。

燃えるような、黄昏。

黄金に輝く、円盾を。

 

「毎晩うるさい」

 

木箱を開け、そこに仕舞っていたその盾を一発拳骨を叩き付け。

何事もなかったかのように閉じる。

いや、少し痛かったのか手をヒラヒラと振った。

しかし間もなく、何事もなかったかのように軽く体を動かす。

節々から鳴る音に僅かばかり、眉間に皺を寄せながら周囲を見渡した。

 

ワイリーは、持ってきてはいた。

しかし、準備する予定はなかった調査用機械の数々。

それなりに高度な研究所であってもないような、目玉の飛び出るような金額の機器。

 

もっとも、殆んど自作改造しているため性能面だけの金額だが。

そう言った機械を使用しても、分からない。

持ち帰り、より精密な検査をする予定ではあるが無駄だろうと予感させている。

それが、この盾だった。

 

現状の如何なる調査の結果も未知。

知り得る、ありとあらゆる知識を以てしても不明。

強いて、ソレが何かと表現しようとするならば。

触れることの出来る、電波。

そう、形容するしかない奇妙な物体。

 

さしものワイリーも、その異様さには驚く他なかった。

完膚なき未知。

興奮のあまり二晩、寝ずに調査を進めてしまったほど。

遂にはここ十数日近くPET内の布団から動くどころか言葉を発しようともしていなかったナビからの苦言の言葉で、別に珍しいことではないのだが等と愚痴を言いながら、ようやく床に就いた。

 

そして。

夢を見た。

最近はよく見る。

確かな形を伴った、数多の人の形。

それ等が「己の文明を」「アトランピアを再興させろ」等と口にする夢を。

 

「…………さて」

 

起きてしまったものは仕方ない。

とでも言うような具合に、枕元に置いてあったPETを拾い、序でに着替えも軽く済ませて外へと出る。

薄暗闇。

どこまでも遠い水平線の向こうにもまだ、薄明りしかない。

 

ワイリーが空を仰いだところで、未だ輝いている星々しかない。

文明から離れた、島。

シンク島。

そこがかつて、大文明の栄えていた一角と口にされ、果たして誰が信じられようか。

 

ともあれ、夢の囁き。

その結果ワイリーがどうなったかと言えば。

何もない。

どうもなかった。

毎晩毎晩、飽きもせずに話し掛けてくるソレ等に辟易こそした。

 

しかし、アトランピア文明について。

文明を掘り起こすこと。

さも復興に協力的であるようなことを口にしてからはワイリーにとっては小煩さこそあれど、何とも扱い易い情報源となった。

 

さながら、ハチの巣からハチミツを絞り取るように。

曰く重要な場所だとか施設だとか、そう言った場所を積極的に聞き出しては地図と照合して調査を進める日々。

楽々と情報を集められたことは、僥倖以外の何物でもなかった。

最中、自国の開発したモノで滅んだという馬鹿みたいな理由を知って何とも言えない心持になった以外には。

 

「プルーン!」

『…………』

 

PETを覗き込み、その中へと声を掛けた。

中には、布団に横たわる大体が紫色の女性型ネットナビ。

それが面倒臭そうにワイリーを見、無言で布団を頭まで被った。

その有様を、ワイリーは特に何も言わない。

ただ軽くため息を吐くだけだ。

 

ボンバーマンにしてパイン。

自身の製造した問題作。

様々な事柄を片付け、ストーンマンことプルーンを引き取ると口にした後。

 

ワイリーはソレを断っていた。

理由はそう、大したことではない。

自分の子供に何もしてやろうと思わないほど、冷めていなかった。

ましてや己のワガママを通したために起きた事柄に対して。

自責と言うほど確かではなく、自裁と言えるほど重くもない。

 

自分のケツは自分で拭く。

その程度の感覚であったし実際、その程度のことでしかなかった。

それに別段、手を煩わされていることもない。

 

十日。

プルーンに手を加え続けただけの話だった。

己の心。

それと対話をするように。

 

ただ、ストーンマンを、プルーンを。

完全に元に戻らずとも。

その一心のみで二百四十時間の殆んどを向き合った。

 

結果は、見ての通り。

ただ立ち尽くすだけの所から、少なくとも寝るぐらいの動作をするようになった。

自傷を禁ずるように手を加え。

あと、ウイルスを利用して自傷しないようPET自体を他から切り離す。

それだけ。

 

それ以上はしなかった。

あるいは無理矢理にでも元のように戻せたかも知れない。

否。

ワイリーであれば戻せただろうが。

そのココロを思うがままにすることは、しなかった。

 

今や思考の整理も兼ねて、ワイリーはそこに声を掛け続けていただけだった。

序のようにアレコレしておけとデータの類を渡して、それだけ。

やってなかったとしても軽く文句を言うだけで済ませていた日々。

ポツポツとするようにはなって来ているが、

 

「ン……悪くない出来じゃ」

 

今日は当たりの日だったらしい。

寝っ転がったまま顔すら向けないプルーンだが、動かないまま掲示された資料にワイリーは頷いた。

昨今の調査資料。

夢の言葉に従い、彼方此方を調べて回った結果。

大災害によって変形したと思しき地形もあれば、そのまま変わらず、しかし海中に没した場所もあった。

 

現地に赴き、遺跡の有無を確認し、あるいは違う場所にあるモノを見付け。

そう言ったデータを纏めて大まかな変貌の様相を推測し、仮設を元に動き調べ上げた。

PETに表示されているのはそう言った代物。

結果を地図上に纏めた上で、想定されていた場所との乖離も記されたデータだった。

 

何の情報もないまま調べていれば、今の情報レベルに到達するまでワイリーと言えどもあるいは年単位の月日を必要としただろう。

しかし、情報源。

都度都度、乗っ取って来ようとする以外に大きな欠点のない情報源があった。

だからこそ。

一ヶ月と経っていないにも拘らず、凡そアトランピア文明の歴史学者が知れば血涙を流し兼ねない程の情報を既に有していた。

 

尤も、大半は海中。

潜水用具も自作し更に必要に応じて揃えていなければ、そして単身でなければ難航していただろう。

その上でも結果は、ワイリーから見ればだが、渋い物だった。

 

大半は海中。

そして電気を用いていた文明である。

電気を通すのは金属類。

ともなれば、在ったことこそ分かれど何が在ったのかまでは分からない始末。

 

大半は。

そう、大半は、だ。

辛うじて存在していた陸地。

未だに発見されていなかった遺跡もまた、ワイリーは発見していた。

 

とはいっても。

完全に金属扉で封鎖された場所であったりとすれば、流石のワイリーでも重機の類までは用意しない。

目立ち過ぎる。

故に、森林の一角や風雨に曝されているような場所が限界であった。

 

「………………潮時か。どう思う」

 

しかしそれでも。

二ホンの研究者が、かつて何者かの導きで手に入れたように。

ワイリーもまた、確信に足る、古代のデータ類を手に入れることは出来ていた。

同時に。

シンク島の何処か――例えば金属扉の奥だとか――には未だに生きた、古代のサーバーの類が存在しているだろう確信も。

 

『………………』

「フン!」

 

仮にそれを見付け出し、情報を吸い出すことが出来れば。

『環境維持システム』等と言う、凄まじい代物を創り上げた文明の遺物。

もしも本当に見付けられれば。

世界にとっては宝の山と言えよう。

何処ぞのネットナビが進めている文明進歩を一足飛びに越えてしまうだろう。

 

「…………潮時じゃな」

 

しかし、布団から微かに己を伺い見ているプルーンの姿に鼻を鳴らし、わざとらしく呟く。

世界のため。

そんなもの。

おおよそワイリーにとって、どうでもいい事柄でしかなかった。

 

古代文明。

どうでもいい。

どうやら自身の研究する方向とは違う。

これが仮に、ロボット文明的なモノであれば。

いや、何かしら機械的なモノが目に見える形で現存していればまた違っただろうが。

 

そうでなければ、既に滅んだ文明。

多少の知識にはなろう。

しかし、滅んだ馬鹿の真似をする気は微塵もない。

 

故に。

未来を行っていたであろう文明への興味を、あっさりと断ち切った。

とはいえ、だ。

 

「……………………」

 

ワイリーの脳裏に浮かぶのは、円盾だった。

見付けた代物をむざむざと捨て置く気もまた、ない。

しかし、それが非常に面倒臭い代物であることだけが、些かの憂鬱を誘った。

 

まあ、単に。

このまま持って帰ったとしても、非常に鬱陶しいだろうことが予見される。

流石に毎晩毎晩飽きもせずに睡眠を邪魔されるのは面倒。

その一心。

 

どうしたものか。

そう、内心独り言ちながらワイリーは首を捻る。

ハチの巣からハチミツを搾り取るような効率で情報を得られた。

しかし、終わってみればまさしくハチの巣のように面倒臭いモノにもなった。

どう、小煩いハチ共の音を黙らせるべきか。

 

腕を組み、唸る。

段々と水平線に昇って来る太陽を尻目に。

行儀悪く、その辺の木を背凭れに。

目を閉じて、ただただ。

 

やがて太陽が完全に地平線から姿を現した頃。

不意に、その両目が開かれた。

勢い良く立ち上がり。

そしてそのまま借家へと足早に戻る。

 

半ば扉をぶち壊す勢いで開いたその足のまま進み。

持って来ていたは良いが特に開きもしていなかった箱を探る。

おおよそ、数十秒ほど。

やがて身を起こしたワイリーが握っていたのは、小さなお守り袋。

 

 

 

 

かつて。

ある研究をワイリー達は行っていた。

研究名。

『ココロネットワーク』。

人々の心と心を繋ぐシステム。

 

そんな研究は中断された。

危険だからではない。

諸々様々な理由から進められなくなったためである。

 

しかし、研究の成果自体は存在していた。

人と人の心を繋ぐ研究。

生じ得る悪影響。

研究の最中、発生するかも知れない不具合。

それ等の影響を未然に防ぐためには何を用意すれば良いか、といった研究の成果もまた当然。

 

「……………………よう寝れたわ……」

 

ベットから起き上がりもせず。

ワイリーは小さく呟いた。

窓から差し込む光。

それが、既に朝の幾分かまで時間が過ぎ去っていることを証明していた。

 

ワイリーにとって、久方ぶりの熟睡。

毎晩毎晩鬱陶しく話し掛けて来る輩。

どうでも良かったが。

別段、安眠の邪魔でなかった訳ではなかったのだ。

 

寝過ぎたためだろうか。

欠伸をしながらその身を起こす。

そして、枕の裏を探り、そうしてすぐに目当てのモノを引っ張り出した。

 

お守り袋。

ソレは、ワイリーの。

いや、ワイリー達の。

かつての研究成果の一つが納められているモノだった。

 

『マグネメタル』。

という名の金属が存在する。

PET開発等に用いられる、強力な磁力を備えた鉱石。

 

ワイリーがニホンを飛び出す少し前には、オラン島と言う南の孤島にて採掘もされていた代物だった。

その島の今はどうか、ワイリーには然程の興味も湧かないような事柄だが。

ともかくとして。

そう言った鉱石が存在している。

 

しかし、その金属はPET等にのみ使える代物ではない。

知る者は少ないが。

否。

知る者など片手で数えられる程も存在しないが。

その特殊性故に、『ココロネットワーク』等と言ったある種の電波を遮断する性質を有している。

 

「……またアイツに手助けされる形になるとは」

 

自身の眼前に、精錬したその金属が入った袋を揺らしながら。

何処か忌々し気に呟く。

しかし裏腹、その表情は小さな苦笑い程度。

そのまま起き上がり、近くに備えおいていたPETを覗いた。

中で変わらず寝転んでいる、プルーンを。

 

「プルーン」

『…………』

「目途は付いた――マグネメタルを内側に仕込んだ箱でも用意すれば済むじゃろう。故に、そろそろ移る」

 

微かに動いた。

口元近くまで布団を被ってはいるが、視線だけを向けて来たプルーンに、ワイリーは小さく笑う。

内心、多少なりとも調子を取り戻していることに頷きながら。

 

「拠点にな」

『………………ぅぃ』

 

次なる目的地。

密やかに。

既に拠点を用意してある地。

ドンブラー湖へ。

 







キーボードを叩く。
そんな音が、暗闇に響く。
画面の光だけが光源としてある中。
ソレは黙々と手を動かしていた。

老人。
であった。
白眉白髭。

頭に髪はなく、顔に残っているのは長いソレ等。
あとは、左目に付けた片眼鏡。
動き回る文字を捉え、光を反射する。

だが、何よりも目立っているのは、老いの色だった。
顔は白い毛とは対照的に何処か黒々と。
手指の先までに巡った皺はその老人の重ねたであろう歳月を嫌と言うほどに語り聞かせる。
時折、呼吸に混じる湿った咳の音がまた。
誰かしらがその場に居れば些かの同情を誘うことだろう。

闇の中。
何時までも響くかに思われた音が唐突に止む。
長く。
息を吐き、そしてゆっくりと、あるいは祈るように、「Enter」を押した。

「――――――」

急速に画面の文字が移り変わる。
刹那に瞬くようにウィンドウが現れては消え。
様々な文字が駆け巡りは去る。
ただ、ソレ等をその老人は、何処か緊張した面持ちで眺めていた。

やがて結果は出る。
移り変わる画面。
その中。
佇む五つの影。

青。
橙。
桃。
紫。
緑。

顔に当たる部分から各々光を放つソレ等を見。
ようやく。
安心したかのように老人は息を吐き、笑う。
徐々に徐々にと笑い声を高らかに上げていく中、咳き込んだ。

誰にも見られていない。
とは言っても、気恥ずかしさが勝ったのだろう。
息を整え終えてすぐ、軽い咳払い。
そして佇む五体にその視線を向けた。

「――異常はないか?」
『『『『『ありません』』』』』
「目的は理解しているな?」
『『『『『ニホン科学省より、データの奪取』』』』』
「何よりも優先することは、件のデータを必ず持ち帰ることじゃ。ワシの元に! 必ず!」
『『『『『ハッ!』』』』』

淀みのない回答。
刻んだ目的の遂行に問題はない。
唯一の心配は、ニホンの科学省の防衛システム。
その強度。

しかし、老人には勝算があった。
破壊に優れたネットナビ。
そのデータがある。
故に、造った。

完全な解析こそ出来なかったものの。
それでも、既存のネットナビを優に超える戦闘能力。
破壊力を有するネットナビ。

一体ではあるいは難しいかも知れない。
だが、一体でなければ。
欠損していた部分を、己が手によって補完し、強化したネットナビ達。
ソレを、五体。

だからこそ、失敗は有り得ない。
コレ等の能力。
手に入れる科学省のデータ。
そして、自身の技術力を以てすれば。
必ずや目的を達せられるのだと、老人は確信していた。

「さあ行けぃ! ワシのために! 目的を果たせ! 我が、凶悪ボンバー五衆よ!」
『『『『『ハッ! プロフェッソール・ダムーシュニク!!!』』』』』

閃光のように消えて行く五体のネットナビ。
その様を見ることもなく。
老人はただ、高笑いを上げた。
上げ続けていた。
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