夏季甲子園予選大会ベンチ入りメンバー20枠をかけた競争がスタートして半月、対外試合の勝率は6~7割で推移。学年問わず試合に出場していることもあり、格上相手に金星をあげることもあれば、格下相手に取りこぼすこともしばしば。
それでも、徐々にではあるが安定して試合を進められるようになってきた。そしてそれは、安定した試合を行えるメンツが固まってきたことを意味している。
「はい、ショートっ!」
「オーライっと」
「アウト! スリーアウトチェンジ!」
他県へ出向いての対名門校戦。先発のみずきは、今年の春甲子園出場した相手に四回2失点、好投と言っていい内容の投球。試合は両校四回の攻守を終えて1対2、1点ビハインドで聖タチバナ五回表の攻撃を迎える。
「ふぅ、さすがに一筋縄にはいかない相手だな。二巡目からはきっちり対応してきた」
「慎重になりすぎ。また悪いクセ出てるわよ。対応してくるなら対応出来ない攻めで勝負するまでよっ。クレッセントムーン"バージョン2"(仮)もっと使うとかしてさ」
「投げたいだけだろ。そもそも実戦で使える精度があるそうしている。それは、みずきが一番理解してると思うが」
「むむっ、痛いとこ突いてくるわね」
みずきと聖、二人のやり取りを聞いていた和花は試合中付けていたノートを閉じる。
「どうであれ、当初の予定通り橘さんはここまでです」
「まだまだ全然行けるわよ。どんだけ走り込んできたと思ってんの」
「知っています。ですが、名門との実戦経験は貴重ですから」
「まーねぇ。じゃあ、着替えてくるから」
「次回は中軸に回るぞ、どうする?」
みずきはベンチ裏へ。聖に問われた和花は、二年の
「そちらも予定通り、漆原さんで行きます」
「そうか。和花、準備しておいてくれ」
「わかりました」
今日の試合ベンチスタートの和花はブルペンへ行き、漆原に投手交代を告げて自らも肩を作り始めた。聖タチバナ五回の攻撃は三者凡退。裏の守備。みずきに代わって、漆原がマウンドに上がる。投球練習を終え、この回の先頭打者と対峙。
「(打順は右打者の二番バッターから⋯⋯初回はバント、二打席目は内角を強引に進塁打にした。まともなバッティングは見ていないが、構えからして大物打ちではないとは思うが)」
念を入れて、外の変化球を要求するも甘いコース入った。
しかし様子見を決めていたバッターは見逃して、ストライク。聖は同じ球種、同じコースを要求。今度は要求したコース近くに来た。ストライクからボールになるスライダーにバットが出かかるもノースイング。
「(――思った以上に反応した、十中八九狙い球は外角。ストレートで勝負したい気持ちは
三球目、内角のストレート。
思いきり引っ張った打球は三塁側へのファウル。
「(⋯⋯引っ張られた。これが名門の上位打線かよ)」
「(気にするな。今のは、ただのはったりだぞ。長打があるバッターならフェアゾーンに飛ばしてる。真っ直ぐは前より走ってる、これなら充分勝負出来るぞ。問題は中軸、特に四番はストレートに滅法強い。そのために今はやれることをやるんだ)」
ランナーを置いた場面で四番を迎えたくないため、勝負を急がず慎重に組み立て、ストレートを見せ球にして最後はカーブで狙い通りの打球を打たせるものサードへの内野安打で出塁を許してしまった。それでもバックの好守に助けられながら二回を無失点で投げきった。
対照的に三番手の椋梨は二回途中でマウンドを降り、残りは和花が投げて共に1失点。試合は五回からマウンドに上がったエース相手に散発の4安打に抑えられ、2-4でゲームセット。
後日、この日の試合内容を踏まえて6月以降の試合の基本的な起用方針が発表された。
* * *
背番号一桁が事実上発表されてから数日が経過したあとの練習はピリついていた。
主な理由は、ふたつ。
ひとつは残りの枠を争う競争が激化したため。もうひとつは――。
「そろそろかしらねー?」
「あれほど煽ったのですから、行動を起こしていただけれなければ困ります」
「うむ。噂をすれば、だな」
練習後の女子更衣室。
神妙な面持ちの二年生マネージャーが同級生に頼まれ、三人の元を訪れた。内容は、中継ぎ待機を命じられた二年生投手漆原を中心とした一部二年生からの異議申し立て。
「ったく、文句があるなら自分で来なさいっての」
「ご苦労さまでした、後は私たちで対処します」
「話し辛かっただろう。これを持っていけ。他のみんなには内緒だぞ」
「塩大福? ありがとうございます。失礼します」
深々と頭を下げて、マネージャーは更衣室を後にした。
三人はアンダーシャツを着替えてから部室を出ると、ベンチ前でたむろっている二年生たちの下へ向かった。
「んで。何がそんなに不満なわけ?」
漆原が一歩前に出る。
「どうしてオレが中継ぎ待機で一年の椋梨が先発起用なんですか? 前の試合だって、オレだけはゼロに抑えたんだ、それなのに――」
「投球内容を踏まえ、現状では椋梨さんの方が巧者と私が判断しました」
「――なっ!?」
言い切る前に、和花はピシャリと言い放つ。面と向かって遠慮なしにはっきり言われた漆原は、まるで狐につままれたように固まってしまう。
「言葉で説明しても納得しないでしょう。証明しましょう。マウンドに上がってください。茅野さん、キャッチャーをお願いします」
「は、はい!」
マウンドで投げ込む中、他の部員たちがグラウンドに集まってきた。一、二年生たちは落ち着かない様子で、三年生はいたって冷静に見守っている。
「準備出来たー?」
みずきの問いかけに和花、漆原、守備についたレギュラー陣も頷く。
「分かり易くいきましょう。あの時と同じ状況――一死二塁から無得点で乗り切ることが出来れば起用法を見直します。それでいいですね?」
「はい」
「配球は"ご自身"で考えてください。こちらは私と⋯⋯誰でもいいのでネクストに入ってください」
本人には悪気は一切ないが、挑発と取れる和花の発言に漆原の顔付きが歪む。キャッチャーに指名された茅野がどうにか落ち着かせ、勝負が始まる。
「(なんとか収まったけど。どういうつもり何だろう? 先輩たちは⋯⋯)」
「おい、いくぞ!」
「あ、うん。いいよ!」
頭の中でシミュレートを重ねてきた漆原の投球を思い浮かべながら和花は左打席に入る。そして、バッテリーのサイン交換が終わった。
「(ストレートに自信を持つ漆原さん自身が組み立てをしている訳ですから、初球は8割以上の確率で外角のストレート⋯⋯ですが)」
「チッ!」
初球の外角のストレートは外れて、ワンボール。
「(力み過ぎですね。次もストレート、今度は少し肩の力が抜けて投げられるでしょう)」
140キロ近いストレートに振り遅れて、空振り。カウント1-1に戻した。
「(これで次は――)」
「スライダー。ほんっと分かり易いわよね~」
「ここのスライダーは問題じゃないぞ。問題は次だ」
内角低めのスライダーを見送って、ボール。
そして、カウント1-2からの四球目――。
「ふっ!」
「せ、セカンッ!」
1-2からカウントを整えに来たストレートを狙い打ち。打球はセカンドの頭上を越えて右中間を破った。セカンドランナーは悠々とホームイン。勝負は決した。
二球目の振り遅れを見て、多少落としても打たれないと思った自慢のストレートを右中間へ弾き返され、マウンド上で呆然と立ち尽くす漆原にみずきが声をかける。
「わかった? 140キロくらいなら女子だって打ち返せんのよ」
声を出せないでいる漆原を見て、みずきは大きなため息をついた。
「それでもあんたの武器はストレートでしょ。なら、
「オレの真っ直ぐを最大限活かす方法⋯⋯」
「考えるのはキャッチャーの役目でもあるぞ。茅野」
みずき、聖に続き、和花が二人に語りかける。
「あなたたちは漠然とプレーしています。もっと考えてプレーすべきです」
「か、考えてます。だけど――」
「間を取るなど配球面以外での関与はいくらでもやりようはあったはずですが?」
「そ、それは⋯⋯」
「はい、ちゅーもくっ!」
手を叩き、みずきは全員の視線を自身に集めた。
「一、二年しっかり聞きなさい。いい? 練習の基礎は優花先輩が残してくれたメニューを参考にしてるけど、個別練習に関しては全部和花がひとりで考えたものよ。どういう意味かわかるわよね? 私たちは、この夏で引退するの。三年は全員受験生だから練習は見てあげらんないし、顧問の先生は進路担当だから今以上に忙しくなる。私たちが引退したあとは全部自分たちで考えるしかないの。だから、あと長くても三ヶ月弱死ぬ気で取り組みなさい。わかったっ?」
みずきの言葉を聞き、下級生たちは「はい!」と声を揃えて答えた。
「わかればよし。じゃあ解散!」
振り返ったみずきを、漆原が引き止める。
「なにー?」
「えっと⋯⋯」
「はぁ、アンタがストレート拘ってたのはチームのためを想ってなのは知ってるわよ。きっかけは去年の夏、恋恋高校と対戦した時――そうでしょ?」
「⋯⋯はい」
恋恋高校の同学年の片倉が上級生を相手にストレートで押す堂々としたピッチングを披露したのをきっかけに、自らもストレートの強化に取り組んだ。
「無いものを入れる、その考えは間違ってはいないぞ。同じような色だけでは幅は狭まるからな。間違っていたのは、ひとつ考えに固執して他の可能性を狭めてしまったことだ」
「あなたもですよ、茅野さん。試合は生き物です。教科書をなぞるだけでは対処できないことは幾度となく起こります。そのためにありとあらゆることを想定しておかなければなりません。練習のための練習では意味がなんです」
「そういうこと。やり方は乱暴だったけど、こうでもしないと聞かないしね。ほら、これからはアンタたちがチームを引っ張っていくんだからしゃきっとなさいっ!」
後ろに回ったみずきは二人の背中を手のひらで叩くと、聖と和花と一緒に女子更衣室へ戻っていく。
「オレのストレートさ、スライダーの後は腕が若干下がるクセがあるんだってさ。和花先輩に言われた」
「マジ? そっか、それで内角が少し中に入って――」
「スゲーわ、あの人たち⋯⋯」
「⋯⋯そうだね」
時折笑い声が聞こえる三人娘の自分たちよりも小さな背中も、二人にはとても大きく映っていた。
そして、いよいよ、夏予選大会が始まる。
* * *
照りつける太陽、額から流れる汗。
ブラスバンドの演奏が響く梅雨の合間の蒸し暑い夏の青空の下、聖タチバナ学園野球部は県大会ベスト16進出をかけた一戦に臨んでいる。回は七回。10点リード。マウンドを任されているのは、二回戦で好投した二年生バッテリー。
『聖タチバナ学園バッテリー、緩急を駆使しバッターを追い込んだ! 最後のバッターになるわけにはいきません、意地を見せられるか!?』
サイン交換を終え、ヒットで出塁を許したファーストランナーに注意を払いながら投球モーションに入る。
『最後は高めのストレート! 空振り三しーん! 聖タチバナ学園去年に続いて二年連続でベスト16進出を決めました。実況は、轟ハルカでお送りしました』
7回コールドゲームで二年連続のベスト16進出を決めた聖タチバナ学園ナインは、応援席に向かって挨拶をして、球場を後にする。
「ベスト16。これで甲子園まであと4つかぁ」
「気が早いぞ、みずき。この先はシード校が続くんだ、今までのようにはいかない」
「わかってるって。さてと、次の相手は~」
バスの一番奥のシートに座って、他球場の結果をスマホで確認。番狂わせは無し、シード校が着実に勝ち星をあげている。そして、聖タチバナ学園の次戦の相手が決まる試合がちょうど決した。
「来たわねー」
「やはりか」
「帝光学院ですね」
次戦の相手は、みずきと聖の中学時代のチームメイト鈴本大輔が在籍する帝光学院。こちらも聖タチバナ学園と同じく、7回10点差コールドゲーム。チームの主砲・鏡空也を初めとした中軸三人がそれぞれホームラン打ち、エース鈴本は5回無失点、被安打2、奪三振8個とほぼ完璧な内容でリリーフへ繋いだ。
「奪ったアウトの半分が三振で。8個中5個が、ナックルボール⋯⋯不規則に揺れる変化球か。厄介な相手ねぇ」
「まさに現代の魔球、今や鈴本は関東ナンバーワン投手だ。攻略は簡単じゃないぞ」
「ですが、ベスト16で当たるのは私たちには幸運です。試合まで1週間あります。対策を練りましょう」
「よしっ。学校戻ったら反省会やるわよ!」
学校に到着後、空き教室で今日の試合を振り返りながらの反省会。本来であればこれで解散になるところだが、次戦の相手が優勝候補筆頭というこもあり、反省点を振り返りながら軽めの練習を行う。
「今日の配球面についてなんですけど」
今日先発のマウンドを任された二年生バッテリー、
「そうだな。緩急を気にし過ぎだったぞ。今日の相手は、漆原のストレートをまとも打ち返せる打者はいなかった。配球はあくまでも打者を抑えるための戦略のひとつだ。以前単調になりやすいところを指摘したが、だからといって手段が目的化しては本末転倒だぞ」
「つまり、相手を見て組み立てなさいってこと」
「緩急を使うも使わないも相手次第⋯⋯」
「そーゆーこと。相手が合ってないって感じたなら、どんどんストレートで押せばいいのよ」
「これらも全て経験です。無駄にしてはいけませんよ」
投球のクセを指摘されて以来ストレート以外にも変化球の精度を意識して練習を積んできた。練習試合で積極的に使用してきたとはいえ、緊張感のある一発勝負の公式戦とでは雲泥の差があることを肌で感じた漆原は、和花の言葉に真剣な面持ちで頷いた。
「次戦はライトで先発予定です。中軸として期待しています」
「はい!」
「あの。帝光の配球データ送ってもらえますか?」
「構いませんよ。後ほど送っておきます」
「ありがとうございます」
「はい、話しはそこまで。しゅーごー!」
練習終了の予定時間。ナインをベンチ前に集めたみずきは、明日の休養日開け後のスケジュールを口頭で伝え。全員で手分けしてグラウンド整備を行い、この日は解散。
そして、翌日。みずきと聖は、地元から一駅の東京へ気分転換で訪れていた。
「ちょっと、聞いてんの?」
「ん? なんだ?」
「やっぱり聞いてないし。どうせナックル対策考えてたんでしょ」
「みずきも人のことは言えないぞ。ことある度にスマホを見ていただろう」
夏物の洋服を見たり、小物を見たりしてはいるが、彼女たちの頭の中には常に次戦のことでいっぱい。
「⋯⋯お昼行くわよーっ!」
「あ、みずき――」
「うっさいわね――わっ!?」
聖にくるっと背を向けて歩き出したみずきは、前から歩いて来た女性と出会い頭で軽くぶつかってしまった。
「す、すみませんっ!」
「まったく、しっかり前を見ないからだ⋯⋯ぞ?」
「どうし⋯⋯あっ、あーっ!」
「ん? あれ? キミたち、もしかして――」
みずきがぶつかった相手は、三つ編みのお下げ髪が特徴的な女性――"
* * *
去年の秋。球界のレジェンドが主催する試合で同じ女子日本代表をユニフォームに袖を通した三人は、偶然の再会を果たした。これも何かの縁⋯⋯ということで近くの食事処へ移動し、テーブルを挟んで早めの昼食を食べながら話す。
「なるほど、ナックルボールかぁ」
「そうなんですよー。次の相手が、ナックルの使い手で⋯⋯うまっ」
「みずき、行儀が悪いぞ」
二人のやり取りを見て、クスクスとあおいは笑顔を見せる。
「良い案は思いついたの?」
「春季で鈴本を打ち崩したチームの知り合いに連絡を入れてはみたが⋯⋯」
「挑発された上にテキトーにはぐらかされたんです、酷くないですかー?」
「あはは、因みにどんな返事だったの?」
討総学園の佐渡至皇理からの返事は丁寧な文章でありながら小バカにするような発言が大半を占め、唯一助言と思えるのも「振ればよろしいのでは?」の、ひと言のみだった。
「あのエセお嬢さまめ」
「別県とはいえ、敵に塩を送るようなマネはしないだろう」
「ん~、そっか。ちょっとゴメンね」
二人に断りを入れ、あおいは席を立つ。
「いっそのこと至皇理に投げてもらうとかどう? ナックル」
「みずき、真面目に考えろ」
「文句あるなら対案提出しなさいよ」
10分ほどで戻ってきたあおいは、自分のスマホを二人に向けて置く。
「お待たせ。はい、これ」
「これは⋯⋯」
「見せて。疑似ナックルボール?」
「うん。ボクたち去年の夏、高速ナックルボーラーと対戦したんだ。その時使ってた細工したボールの詳細だよ」
「こ、高速ナックルっ!? なにそれっ!」
「ナックルボーラー相手にいったいどのような作戦をっ?」
「うーん、ボクは次戦のあかつき戦に合わせてたから詳しいことは分からないけど、低めは全部捨ててたよ。試合は10個以上見逃し三振してた。それから、恋恋の元キャプテンから伝言――"ナックルに拘らない"こともひとつの考え方だって」
伝言を聞いたみずきと聖は、顔を見合わせた。
あおいと別れた後の夜。聖タチバナ三人娘は、各々自宅の自室で通信機器を立ち上げて話し合い。至皇理の助言、あおいからもたらされた"疑似ナックルボール"と伝言を聞いた和花は、鈴本の投球データを画面横に貼って話す。
「おそらくですが、鈴本さんが純粋な"ナックルボーラー"でないことが理由と思われます。決め球にナックルを多用するのは確かですが、基本的な組み立てはストレートとスライダーですので」
速球系で追い込み、決め球はナックル。
これが、鈴本の基本的なパターン。これはランナーを背負った状況でも変わらない。
『早打ちが攻略法ってコト?』
『早打ちといっても、鈴本の制球力は抜群だ。そう易々とはいかないだろう』
「ボール球を打たされるのが関の山ですね。今は、出来ることをしましょう」
『そうだな。明日の練習から取り入れよう』
そうして、鈴本対策に重点を置いた練習メニューが組まれることとなった。
そして、対帝光学院に向けた練習を始めて三日。疑似ナックルボールを使用したバッティング練習は日に日に快音を響かせることが多くなった。
「行けー! いよっしゃーッ!」
漆原の放った打球は、センターのフェンスを悠々飛び越えた。その力強い打球に引っ張られるように、他の選手たちも鋭い打球を飛ばす。
「やるじゃなーい。うちの打線も捨てたもんじゃないわねっ。いっそのこと、ナックルだけ狙い撃ってみる?」
「全員が長打が狙える打線ならありな作戦だな。討総学園のようにな」
「ハァ、止めとこ。ひじりー、肩作るの手伝ってー」
「私が手伝います。六道さん、後はお願いします」
「ああ、わかった」
ベンチ横のブルペンで肩を作っている最中、みずきはとある違和感を覚えた。制球力のある和花が投げるボールの軌道が時折安定しない。
「あんた、なんかしてる?」
「少し細工を。使えるものは多いに越したことありませんので」
「ま、あんたがいいなら別にいいけど」
時間は瞬く間過ぎ去り。
いよいよ、帝光学院戦当日を迎える――。