いつも通りアキナ×ミコトで付き合ってる設定。妄想と空想と幻想が次元断層を引き起こしております故、解釈違いを起こしそうな人は観覧注意です。
「そんな道理、私の無理で抉じ開ける!!」という方はスタンドアップしてどうぞ〜
よく晴れた土曜の昼下がり。
行き交う人々の中を右手に食材が入った買い物袋を下げた少年が歩いている。
「えーっと、食材は揃ったし……他に必要なものは────」
「やぁ、アキナ」
他に買うものがないか思案していた彼─────明導アキナは自身を呼ぶ声がする方へと振り向いた。
「クオン?」
視界に映ったのは少年────藍川クオンだ。
彼は運命大戦が終わってしばらく経った頃、アキナのクラスに転校してきて来た人物で、量子物理学で賞を取るほどの天才高校生である。
そんな彼は先の宿命決戦に於いて、無限の宿命者カードに選ばれた宿命者の1人でもあった。
シヴィルトの精神汚染により、アキナ達運命者と敵対する立場にあったのだが、宿命決戦が終わってからは良き友人の1人として関係を築いている。
「奇遇だな。何やってるんだ?」
「いま纏めてる論文の資料が足りなくてね。図書館に向かってる最中だよ。アキナこそ、制服のままで何してるんだい?」
アキナからの問いにクオンは右手に持った鞄を見せながら言うと、今度は逆に問い返す。
私服である彼の言う通り、アキナは制服姿のままだ。
問われたアキナは
「今日は家に泊まりでお客さんが来るからさ、夕飯の食材の買い出ししてたんだよ。一旦帰ってからだと時間勿体なくて」
先程のクオンと同じように手に下げた買い物袋を見せながら言う。
今日は万化の運命者カード所持者である西塔ミコトがアキナの妹である明導ヒカリに招かれてお泊り女子会を開催する事になっている。
他にももう1人誘われており、今朝冷蔵庫の中身を確認したところ食材が不足していると感じたアキナは学校が終わったその足で買い出しに出た次第なのだ。
因みにミコトは一度帰宅して荷物を纏め、ヒカリと合流してから明導家に向かい、もう1人は個人で訪れる手筈となっている。
「そうなのかい? なら、引き止めて悪いことしたかな?」
「そんな事ないよ。買い出しは粗方終わったし、足りない物も無さそうだから後は帰って出迎えの準備するだけだからさ」
「そう? ならよかったよ」
少々申し訳なさげにしているクオンにアキナは笑って返すと、彼は安堵の表情を浮かべた。
彼らは「また学校で」と告げてアキナは帰路に、クオンは図書館に向かおうとした────その時。
「あの……すみません」
不意に声をかけられた2人は足を止めて声の方へと視線を向けると、そこには猫の耳を彷彿とさせる黒のニットキャップを被ったボブカットの少女がいた。
「西園寺さんじゃないか」
「どうも、クオンさん」
少女────西園寺ユナはペコリと軽くお辞儀をする。
彼女は至高の宿命者カードに選ばれた宿命者であり、クオン同様に宿命決戦に参加していた1人である。
「奇遇だね。それとも、僕に用事でもあるのかな?」
声をかけてきた彼女にクオンがそう問うと、ユナは軽く首を振って
「いえ、その……クオンさんではなく……」
「俺??」
アキナを指差してきた。
まさか自分に用があるとは思ってなかった彼は驚きを隠せない様子で彼女に目を向けている。
それもそうだろう。
宿命決戦終結後、彼女は因縁の相手であったミコトや同じく時の宿命者カードに選ばれたヒカリと友達として交流をしてはいるがアキナとは顔見知り程度でしかない。
そんなユナがいったい自分に何の用があるのかアキナには皆目検討付かないのも無理はないだろう。
「えーっと、西園寺さん。俺に何の用があるのかな?」
「その……お話したい事がありまして。出来れば2人だけで。あまり時間は取らせませんので」
少々訝し気にアキナが訊ねるとユナはそう返してくる。
彼女の返答を聞いたアキナは考える素振りを取って
(二人だけで? いったい何なんだ? まぁ、買い出しは終わったしヒカリ達も家に行くまでまだ時間あるだろうし)
そこまで思考し、アキナはユナに目を向けながら
「そういう事なら構わないよ」
そう言って返す。
すると彼女は勢いよくアキナとの距離を詰め
「では行きましょう! すぐ行きましょう! この先の公園へ!」
空いている彼の左手を掴んで歩き出した。
「ちょ?! ひ、引っ張らないでくれ! じゃ、じゃぁまたな、クオン!」
そう言いながらアキナは彼女に引っ張られる形でその場を去っていく。
残されたクオンは2人の姿が遠くなっていくのを見送った後、徐に空いている左手でスマートフォンを取り出し
「……これは少し愉快な──────いや、厄介なことになるかもしれないね、アキナ」
意味深な笑みを浮かべながらスマートフォンを操作した後そう呟いた。
ところ変わって、アキナとユナは児童公園に訪れていた。
土曜ではあるが人の気配はなく園内は閑散としている。
「それで西園寺さん、話したい事って何?」
向かい合っているユナにアキナは訊ねると、彼女は辺りを見回し軽く深呼吸して
「では、単刀直入にお聞きします。貴方はみーたんとどういう関係なんですか?」
そう口にした。
「みーたん? あ、西塔さんの事か……どういう関係って──────」
思いもしなかった質問にアキナは疑問符を浮かべながら彼女を見る。
当のユナは真剣な表情で彼を見ながら返答を待っていた。
(なんでそんな事訊いてくるんだ? 理由はわからないけど、俺とミコトの関係は基本内密だし……ここは当たり障りのない返答で切り抜けるのが妥当……だよな)
彼、明導アキナと西塔ミコトは恋仲の関係にあるが、それはヒカリを始めとした特に親しい身内以外には秘密にしてある。
絶大な人気を誇るアイドルとして活躍しているミコトに恋人がいるなどと知れてしまえば炎上は避けられない。
そうなればミコトだけでなくアキナやその周りの親しい人達の生活にも大きな影響を齎してしまうだろうことは想像に難くない。
ユナが自分達の関係を探るような質問してきたその真意は図れないが、どうにもよくない予感がしたアキナは思考を巡らせ、この場はなんとか誤魔化してやり過ごすことを選択する。
「俺と西塔さんは同じ学校の先輩と後輩で、同じ運命者カードに選ばれた仲間だけど?」
怪しまれないように笑顔を見せながらアキナは先程の彼女の問いに対しての返答をする。
しかしユナは
「……本当ですか?」
訝しんだ様子でアキナを見ながら返してくる。
「ほ、本当だよ?」
何処か圧力のある視線にアキナは少々気圧されがちになりながらもそう返す。
すると彼女は徐にスマートフォンを取り出して操作。
手を止めて画面を突き出す形でアキナに見せた。
「じゃあ、これはどう説明するんですか?!」
「え──────??!」
彼女に見せられた画面には一枚の写真が写っている。
かなり遠めから撮ったもので画素が荒くはあるが、街灯に照らされた少年と少女二人が密着している姿がくっきりと刻まれていた。
青い髪の少年と長い黒髪の少女。
見間違うはずもない、自分自身と西塔ミコトその人だ。
(な?! え?! これってこの間の──────見られて……いや、それどころか撮られて??!)
これは一週間ほど前、すれ違いを起こしていた彼らが蟠りを解いて互いの気持ちを再確認した日の帰り道での出来事。
分かれ道で帰路に着こうとしたアキナを引き止めたミコトが彼に不意打ちで口付けしてきたのだ。
ユナのスマートファンに映る画像はまさにその場面。
想定外の事態にアキナの表情には動揺の色が浮かんでしまっている。
それをユナは見逃す事なく
「動揺しましたね? さぁ、説明してください。ただの先輩後輩、そして仲間同士って言うならどうしてみーたんにこんな事してるんですか? さぁ、教えてください今すぐに!」
画像を見せながらアキナに詰め寄る形で問いかけていく。
「い、いや……人違いじゃないか?! ほら、世の中には自分に似た人が3人はいるって言うし─────」
「ミョウガみたいなメッシュの入った特徴的な髪型してる男性なんて貴方くらいしかいないと思います。それに、どんな遠目だろうとユナがみーたんの事を見間違えるはずありませんので!」
アキナはかなり苦しい返答をするも、ユナにバッサリと切り捨てられてしまう。
(やっぱダメか……というか最後のどう考えても根拠なくない? 彼女がミコトのファンっていうのは聞いてるけどさぁ……)
アキナは彼女から目を逸らしつつ思考する。
彼女、西園寺ユナは至高の宿命者カードに選ばれた事以外はそこそこ普通の少女だ。
容姿は中々に可憐で成績は上位、さらにはスポーツ万能。
一年生であるにも関わらず生徒会に所属しており、まさに文武両道の優等生を地で行く少女。
そんな彼女であるが、実は熱狂的な西塔ミコトのファンでもあった。
その熱量はかなりのもので、心の中に
それ故に彼女はミコトを完璧な存在として神聖化しており、宿命決戦の際にはシヴィルトの精神汚染によってその気持ちから生まれた願いを歪んだ形で増幅させられてしまっていた。
宿命決戦でのミコトとのファイトにて、彼女に『あなただけの西園寺ユナにならなきゃ!』と言葉をかけられ、精神汚染が解けてからはミコトを神聖化するのはやめたようであるが、如何せん人間の根っこはそう簡単には変わらないものだ。
あの日は偶然、気まぐれに街を1人で散策して帰路に着いている最中だった。
自身がいる場所から離れた街灯の光に照らされたミコトを見かけた彼女は声をかけようとするも、アキナも一緒にいる事に気付いてすぐそばの街灯の陰に隠れた。
そのまま2人の様子を伺っていると、彼らがその距離を詰めていくのを目撃したユナは驚き、素早くスマートフォンを取り出しカメラモードにしてレンズを2人に向け倍率を操作。
決定的瞬間を逃す事なくシャッターを押して件の画像をスマートフォンに納めたのである。
画面を閉じて再び様子を伺うとミコトの姿はすでになく、しゃがみ込んだアキナの姿だけが目に入るユナ。
しばらくして彼は立ち上がってその場を離れていったのを確認すると、ユナは街灯の陰から出てきて再びスマートフォンを取り出し、先程納めた画像を見て思考を巡らせる。
(なんでみーたんと奇跡の人が? どういう事? まさか……まさかみーたん……あの人に拐かされてる?!?!)
神聖化するのはやめたがそれでもユナにとってミコトが憧れの存在である事には変わらない。
とはいえ辿り着いた結論は完全に斜め上のモノではあるのだが。
こうして彼女は事の真相を確かめる為に、本日アキナを探し出して問い詰める事を決めたのである。
「さぁどうなんですか? 答えられないって事はやっぱり……みーたんの事を拐かそうとしてるんですね!?」
「はぁ?!」
あまりにも理不尽かつ予想の斜め上な言い掛かりにアキナは素っ頓狂な声を上げてしまう。
「いやそれ完全な誤解だから! 俺はミ────西塔さんを拐かしてなんかないから!」
「いいえ、ユナは騙されません! みーたんの純潔はユナが護ります!」
誤解を解こうと言葉を口にするアキナだが完全暴走状態のユナは止まらない。
必死の形相で迫る彼女に対して後退りをするアキナ。
それを逃すまいとユナは彼の左足へと飛びついてしがみつく。
「ちょ! 離れてくれって!」
「嫌です! みーたんに手を出すのをやめると言うまで離しません! どうしても言うならユナが身代わりに身体を差し出しますからぁ! どうか! どうかみーたんにだけは手を出さないでく゛た゛さ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」
「人聞き悪すぎる事言わないで欲しいんだけど!!」
涙目なりながら、とんでもない事を口走りつつアキナへとしがみつくユナ。
彼はなんとか彼女を引き剥がそうと試みるも相手は女の子。
元々女性に優しい
そうして藻搔いているうちに足がもつれ
「うわ!」
「ひわぁ!」
アキナが尻餅をつく形で地面に倒れ、その反動で彼の左足から離れたユナが彼の上に乗る形になって飛び込んで来た。
ようやく解放されアキナは安堵の溜息を吐いた────その時
「なに、してるんですか?」
聞き覚えある声が聞こえてきたアキナとユナはその方向へと目を向けると
「さ、西塔さん?」
「みーたん?!」
長く艶やか黒髪を靡かせた少女────西塔ミコトの姿があった。
「な、なんで西塔さんがここに?」
彼女がここに現れた事を不思議思ったアキナが問いかけると
「ヒカリちゃんと合流して先輩の家に向かうとした時、藍川先輩からメッセージが届いたんです。ユナちゃんがアキナ先輩をこの公園に連れていったって」
笑みを浮かべながらミコトはそう返す。
「それで嫌な予感がしたので急いで来てみたら────こんな愉快な事になっててもう驚きました」
言いながら歩み寄ってくるミコトは笑っている。
そう、表情は笑っている。
だが、かけている眼鏡のレンズの向こうに見える翡翠の瞳はまったく笑ってはいなかった。
それはそうだろう。
今現在、地面に座り込んでいるアキナの上にユナが跨るように乗っている。
自分達の状態にようやく気付いたアキナからは冷えた汗が流れ、表情も一気に青ざめた。
ふと視線をミコトの後方に向けると、そこにはヒカリが立っておりこちらに目を向けてきている。
その目はまるでゴミでも見るかのようにとても冷ややかであり、軽蔑を孕んでいるのを察したアキナは
「ち、ちがっ! これは誤解! 不可抗力なんだって!!」
そう捲し立てながら弁明するも
「大丈夫です。ちゃーんとお話聞かせてもらいますから、ね? ユナちゃん? それに───ア・キ・ナ・先・輩?」
怒りを孕んだ笑みを浮かべながら言うミコトに
『は、はい……』
アキナとユナはただ頷いて返す事しかできなかった。
後に明導アキナはこう語る。
『蛇に睨まれた蛙の気持ちを理解した』、と。
場所は変わって明導家のリビングダイニング。
リビングスペースの一角にて、温情により私服に着替えさせてもらったアキナと連行されてきたユナが並んで正座させられており、その目の前には笑顔を貼り付けたミコトが腕を組み彼らを見下ろしている。
その様子を
「ふーん。それでアキくんまで正座させられてるんだねぇ」
「っていうか、なんでナオさんがうちに来てるんですか??」
リビングのソファーに座って苦笑いを零している女性────員弁ナオにヒカリが疑問符を浮かべながら訊ねると
「私が連れてきたのよ。ストレイキャットで買い物してたら偶然会って、今日の事を話したら『自分も参加したい』って。飛び込みだけどお兄ちゃんなら了承してくれるだろうし、貴女やみーたんも別に拒みはしないと思ったから」
返してきたのはヒカリと瓜二つの────いや、ほんの少し大人びた顔つきの少女が応えた。
彼女の名は『明星エリカ』。
その正体は運命大戦でアキナが呼続スオウに敗北し、彼の『何もいらない』という願いに巻き込まれて命を落とした世界、その3年後の未来からやってきた明導ヒカリその人である。
兄の死の運命を変えるため、その世界で起こった2度目の運命大戦を制して時を遡り、彼女はこの時代までやってきたのだ。
本来、時を超える行為は自然の摂理に反しており、膨大な
そして宿命決戦後、そのシヴィルトも消滅し今度こそ彼女は時の矯正力によって消滅するはずであった。
しかしシヴィルトと同様の人智を超えた存在であるガブエリウスが彼女に宿り、眠りにつく事で存在の消滅を回避。
この世界で生きる事となった彼女は新たに『明星エリカ』と名を改め、現在は清蔵グループの元で世話になっているのであった。
エリカの説明にヒカリは納得した表情を見せた後、次いで現在進行形で重い雰囲気を漂わせている3人に目を向けた。
「さて。先輩からは後で事情を聴くとして……ユナちゃんはアキナ先輩と公園で何をしてたのかなぁ? どういう事か、説明してくれるよね?」
「は、ははは、はい! その、ですね……あの……」
「簡潔に。要点を纏めて言ってね?」
笑顔で放たれる言葉は側から見ているヒカリ達でさえ息を呑むの
ユナは若干涙目になりながら
「こ、この人がみーたんを拐かしそうとしてるのを辞めさせようとしてたであります!!」
叫びながらアキナを指差すと、ミコトを始めヒカリ達は困惑の表情を見せた。
当のアキナは『もうどうとでもなれ』という諦めの表情になっている。
「は? 先輩が私を? 拐かす?? ごめん、ちょっと何言ってるのかわからないんだけど???」
「ユナはこの目で見たんです! この人がみーたんに迫っていく瞬間を! 証拠だってあるんです!!」
言いながらユナはスマートフォンを取り出し、件の画像を表示した画面を未だ宇宙猫な表情をしているミコトに見せると、彼女の顔から血の気が引いていった。
かと思えば一瞬で茹蛸のように顔を真っ赤に染め上げて
「え?! な??! なんで?! だってちゃんと周り確かめて────!!?」
百面相をしながらワタワタし始めるミコトの様子を不思議そうに見るヒカリ達。
「みーたん、どうしたの?」
「突然百面相しだすなんて、変ね」
「ふーむ。ね、ユナちゃん。私達もソレ見せてもらってもいいかなぁ?」
するとナオが閃いたようにニヤリと笑ってユナに問いかけると
「あ、はい。どうぞ」
彼女はなんの疑いもなく了承してスマートフォンをナオ達に向かって差し出した。
「あー! ダメダメ見せちゃダメぇぇぇ!!!」
ミコトは慌てて止めに入るも一歩遅かったようで
「え? これって……」
「うわぁ……みーたんってば大胆……」
「いやー、アキくんも大概だけど……ミコトちゃんもブレーキぶっ壊れてるよねぇ?」
映し出された件の画像はばっちりと彼女達に見られてしまう。
ヒカリ達の反応は感心半分、呆れ半分といった様子だ。
「あぁぁ……見せないでって言ったのにぃぃぃぃ」
羞恥に悶え、床に座り込みながらミコトは嘆きの言葉を口にする。
顔を真っ赤に染め上げ、かつ半分涙目になりながら彼女はアキナに目を向けた。
「えうぅぅぅ……あきなせんぱいぃぃぃ」
「まぁ、そういう事なんだ。今後は気をつけようね?」
座り込んで半泣き状態の彼女にアキナは正座を崩して近付き、ミコトの頭を撫でてやる。
「はい……誤解してすみませんでした……」
項垂れ気味で頷くミコト。
「俺も軽率だったし、気にしないで? ともかく、西園寺さんの誤解を解かないといけないんだけど……こうなった以上、俺達の関係を彼女にも話した方がいいと思うんだ。元々エリカにも話す予定だったし」
そう、今回のお泊り女子会にはアキナとミコトの関係をエリカにも話しておくという目的があった。
運命者の仲間の中で、二人の関係を明かしてないのはエリカと禁忌の運命者カードの所持者である伊勢木マサノリの二人だけである。
もっとも、この胡散臭い男は言わずとも気付いている可能性が極めて高いのであるが。
アキナの提案にミコトは難しい表情をしながら
「そう……ですね。それ以外方法はないですよね……本音を言うと、ユナちゃんには時間をかけてゆっくり教えていきたかったんです。今回みたいに暴走すると思ってましたから」
「あー……」
遠い目で言うミコトにアキナは納得したように声を漏らす。
先程の公園での彼女の行動や言動を体験した故、それが容易に想像できるからだ。
「どうする? 俺から話そうか?」
「いえ、ユナちゃんはもう私の友達ですし、私が話します」
そう言うとミコトは立ち上がって軽く深呼吸をすると、未だ件の画像を見ながらアレコレと話しているユナ達に近づいていき
「ユナちゃん。それとエリカちゃんにも聞いてほしいんだけど」
「は、はい?! なんでしょうか?」
「なに、みーたん?」
声をかけられたユナとエリカが疑問符を浮かべながらミコトに目を向けた。
彼女は小さく息を吐いて口を開く。
「まずはユナちゃん。あなたは誤解してるの。アキナ先輩は私の事を拐かそうとしてないの。その写真もね、先輩から迫ってるとかじゃなくて……その……私から先輩に迫ってて……」
恥ずかしくなってきたのか、紡いでいく言葉は段々と歯切れが悪くなり顔が俯き気味になっていく。
その様子にユナの疑問符は増えていくばかりだ。
このままでは埒が明かないと判断したミコトは意を決して顔を上げ
「その……私と先輩はね、お……お付き合いしてるの!」
核心の言葉を口にする。
それを聞いたユナは
「はい????」
目を丸くしながら聞き返してきた。
「だから! お付き合いしてるの! アキナ先輩は私の恋人なの!!」
半ばヤケクソ気味になって叫ぶミコト。
その顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。
「ふーん。やっぱりそうだったんだ」
不意に口を開いたのはエリカだ。
「もしかして……気付いてたのか、エリカ?」
特に驚く様子を見せないエリカにアキナが訊ねると、彼女は頷いて
「確信したのはさっきの写真を見てだけど。というか、2人とも雰囲気が甘いからわかりやすいんだよね」
言いながら半ば呆れた表情を見せている。
彼女の言葉に対し、アキナは僅かにだが赤みを浴びている頬を指で掻いた。
「そういう事だから、先輩が私を拐かすとかいうのはユナちゃんの勘違いで……ユナちゃん?」
一方、誤解を解こうとミコトはユナに言葉を投げかけていたが、彼女の様子がおかしい事に気が付いた。
俯いて何やらブツブツと呟いている。
アキナ達もそれに気付き、ユナに目を向けた────次の瞬間
「こ、ここここここここ、こいこいこいこいこいこい、恋人ぉぉぉぉぉ?!?!?! え?! だって!?! みーたんはアイドルで?! なのに?! お、お付き合いぃ?!?」
大絶叫が放たれた。
その形相はとてもじゃないが年頃の少女がしていいものではない。
半ば踊り狂うようにワタワタしながら交互にアキナとミコトを見て
「有り得ないでしょ?! だって! だってこの人! そこの員弁さんがシヴィルトに乗っ取られてた時『大切な人だ!』って豪語してたじゃないですかぁ!!────はっ! ま、まさか……」
ナオを指差しそう言った後、再度アキナに目を向けて
「二股ですか!! この下衆奇跡!!」
「それは流石に酷すぎない?! ないからそんな事実!!」
放たれた有らぬ疑いに、アキナは声を荒げ全身全霊を持って否定する。
するとナオが態とらしく後退り
「そ、そんな! 私との事は遊びだったのアキくん!」
「収集が付かなくなるのでナオ先輩も悪ノリしないでください!!」
宣う彼女にアキナは勘弁してほしいとばかりに叫んだ。
流石に悪ふざけが過ぎたので
「ごめんごめん。ユナちゃんや。確かにアキくんは私の事を大切な人って言ったけど、それはあくまで先輩としてって事だから。それに私自身の気持ちもとっくにケジメは付けてるんだよねぇ」
と、フォローを入れるナオ。
するとユナはほんの僅かに落ち着きを取り戻したのかミコトに目を向けて
「じ、じゃあ本当にみーたんはこの人と?」
「うん。本当に、真剣にお付き合いしてるの」
問いかけると彼女は頷いた。
「で、でもでも、みーたんはアイドルじゃないですか! なのに、なのに恋人なんて……」
やはり納得いかないのかユナは食い下がるように言う。
そんな彼女にミコトは小さくかぶりを振って
「確かに、ファンのみんなを裏切る行為だってわかってる。けど、それでも私は、アキナ先輩を好きな気持ちを偽れない。先輩を好きな私も、『本気で本当の私』だから」
真剣な眼差しを向けながら言葉を紡ぐ。
一切の迷いも持たないその目に、言葉を詰まらせユナは俯いてしまう。
数秒の沈黙。
だが、ユナは再び顔を上げると
「……みーたんが本気なのはわかりました。でも、やっぱり納得出来ません!」
言いながら今度はアキナを指差して
「だって、この人は普通の高校生────ただの一般人じゃないですか! アイドルとして活躍して世間から注目されてるみーたんとでは釣り合わないですよ! それなら、同じ芸能界の有名どころの方がまだ理解出来ます!」
そう捲し立てた。
「それにみーたんが本気でも、この人もそうとは限らないじゃないですか! もしかしたら『アイドル』としてのみーたんと一緒にいてステータスにしてるかも────」
「違う!」
捲し立てるユナの言葉を、ミコトは遮るようにして声を荒げる。
「アキナ先輩はそんな人じゃない! 私の好きな人の事を、そんな風に悪く言わないで!!」
悲しげな表情を浮かべ、彼女はユナにそう言った。
ユナとはネットヴァンガードで毎月上位争いをする仲だが、リアルでは交流を始めてまだ間がない。
しかし、そんな事は関係なくミコトはユナを大事な友達だと思っている。
『彼女なら、ユナならきっと自分達の事を祝福してくれる』。
心の底からミコトはそう思っていた。
本気でそう思っていただけに、彼女が自分の大切な人を悪く言う事に悲しみが湧いてくる。
今にもユナに掴みかかりそうな雰囲気のミコトを、流石にマズイと判断したナオが止めに入ろうとした────その時
「ミコト、ダメだ!」
それより早くアキナが彼女の肩に手を置いて声をかけた。
「先輩っ……でも!」
制止させられた彼女は納得いかない様子でアキナの方へ振り向く。
彼を悪く言われたのが余程悲しかったのか、振り向いた彼女の目には涙が滲んでいる。
「いいから。落ち着いて。ね?」
溢れそうな涙を指で拭い、安心させるように彼は優しく笑いかけた。
その笑みを見て少し落ち着いたのか、ミコトは素直に頷いた。
アキナは軽く息を吐き、ユナに視線を向けて
「西園寺さん。結局、君はどうしたいんだ?」
そう問いかける。
目を逸らす事なく見据えてくるアキナにユナは少々狼狽えるも、振り払うように首を振り
「……ユナと、ユナとファイトしてください!」
自身のデッキを取り出し、彼に突き付けながらそう口にする。
「あなたが本当にみーたんに相応しい人なのか、みーたんのファンの1人としてユナが見極めます!」
「それで君は納得するのか?」
「……あなたが勝ったら、ユナはもう何も言いません。お二人の事も口外しませんし、あの写真も消します。でも、ユナが勝ったら─────」
そこで一度区切り、ユナは息を吐く。
そして真っ直ぐにアキナを見据えて
「────ユナが勝ったら、みーたんと別れてください!」
そう告げてきた。
彼女からのとんでもない条件に、ミコトだけでなくヒカリ達も目を見開いてユナを凝視する。
しかしアキナは動じる様子もなく
「わかった。ファイトは受けるよ」
そう返して自身のデッキを取り出した。
なんの躊躇もなくファイトを受ける事を決めたアキナにヒカリ達はただただ絶句する。
「先輩っ! なんでっ!? こんなファイト受ける必要───っ」
彼のシャツを掴み、ミコトは声を荒げた。
が、そんな彼女にアキナは
「大丈夫。俺の事、信じてほしい」
そう言って真剣な眼差しを向けてくる。
その迷いない目を見たミコトは
「……先輩、ズルい……私、何も言えないじゃないですか……」
言いながら彼のシャツを掴んでいた手を離して一歩後退する。
滲んでいた涙を拭い、アキナの顔をジッと見つめ
「……わかりました。アキナ先輩を信じます」
「ありがとう、ミコト」
告げて来た彼女に、アキナは優しく微笑んで返した。
「このファイトの立会人は私が務めるよ。いいよね、アキくん?」
「はい。お願いします、ナオ先輩」
話が纏まったところでナオがファイトの立会人を申し出て来たのをアキナは快く了承した。
アキナとユナはダイニングテーブルへシャッフルしたメインデッキをセットし、次いでライドデッキをセット。
最後にファーストヴァンガードを裏返してセットした。
「それでは、始めましょう」
「ああ」
互いに裏返したファーストヴァンガードに手を添えて
『スタンドアップ! ヴァンガード!!』
ファイト開始の宣言を口にする。
譲れない意地を賭けた
to be continued
まさかの次回持ち越し。
はたして、勝つのはどちらだ
どんな話を書いてほしい?
-
ほのぼのした話
-
甘くイチャつく話
-
アキミコ以外の話
-
ファイト話