運命者達の軌跡   作:藤崎葵

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ファイト描写って書くの楽しいけど頭ショートするよね。

という事で続き書けました。至高VS奇跡。勝つのはどちらか?
いつも通りアキナ×ミコトで付き合ってる設定。妄想と空想と幻想が時空振(クロノ・クエイク)を引き起こしてるので苦手な方は回れ右推奨ですら。

「この気持ち! まさしく愛だ!!」という方はスタンドアップでどうぞ〜


至高の猛追 試される奇跡

 

 

 

西園寺ユナの誤解を解く為に、自分達の関係を明かした明導アキナと西塔ミコト。

それは誤解を解くどころかユナのファンとしての情熱の炎に油を注いでしまう形となってしまい、意地になった彼女はアキナにファイトを申し込んだ。

だが、このファイトにはアキナが勝てばもう何も言わず2人の事も口外しないが、ユナが勝てばミコトと別れろという理不尽な条件を付けられていた。

しかしアキナは臆する事なくこのファイトを受ける事を決め、員弁ナオの立ち合いの元でファイトが行われる事となったのである。

 

『スタンドアップ! ヴァンガード!!』

 

ファイト開始の宣言と共に、互いにファーストヴァンガードが表替えされた。

 

「ういんがる・ぶれいぶ!」

 

「ルーセントスイート ミリス!」

 

現れた2人のファーストヴァンガード。

 

「あれ? お兄ちゃんのファーストヴァンガード、ソエルじゃない?」

 

彼のファーストヴァンガードを見たヒカリが疑問符を浮かべながら言う。

宿命決戦時までアキナファーストヴァンガードは『大望の翼 ソエル』であったが、今回姿を見せたユニットは『ういんがる・ぶれいぶ』。

まだ『惑星クレイ』に『クラン』が存在していた遥か過去に活躍した『ロイヤルパラディン』の邂逅ユニットである。

 

「お兄ちゃん、ライドライン変えたって事?」

 

「邂逅ユニット。という事はグレード2までは間違いなく変わってるはずよ」

 

ヒカリの言葉に応えたのはエリカだ。

ライドラインが変わるという事は今までとは違う動きになるという事なのだが、長くヴァンガードに触れているナオにヒカリやエリカ、そしてネットヴァンガードで知識のあるミコトとユナも彼のライドラインがどのような動きをするかは予想が出来ているようだ。

 

「俺の先攻。ドロー」

 

アキナの先攻でターンがスタート。

1枚引いて、彼は手札の『ブレードフェザー・ドラゴン』を手に取り

 

「ライドフェイズ! 手札のブレードフェザーを捨てて、『小さな賢者 マロン』にライド!」

 

ブレードフェザーをドロップに置いて、ライドデッキから『小さな賢者 マロン』にライドする。

 

「『エネルギージェネレーター』をセットして、ターンエンド」

 

ヴァンガードは先攻最初のターンでは攻撃が出来ないルールとなっている。

通常ライドフェイズの次はメインフェイズなのだが、特にユニットを展開する理由もない為、彼はターン終了を宣言してユナへとターンを渡す。

 

「ユナのターン。ドロー」

 

1枚引き、手札の『想いを一緒に踏み込んで シェンクル』を手に取り

 

「ライドフェイズ! シェンクルを捨てて『クーレストグランス ヴィレア』にライド! エネルギージェネレーターをセットしてEC(エネルギーチャージ)3!」

 

シェンクルをドロップに置いて『クーレストグランス ヴィレア』へとライド。

エネルギージェネレーターがセットされ、後攻スタートではECが行われる為エネルギーカードが3枚ジェネレーターの上に重ねられた。

 

「ミリスの効果! このユニットがライドされた時、後攻なら1枚ドローする」

 

ファーストヴァンガードは共通して後攻時にライドされた場合1枚ドローする効果を有している。

効果によってユナは1枚ドロー。

 

「メインフェイズ。ですがスキップしてバトルフェイズに入ります!」

 

続けてメインフェイズに入るが、リアガードにユニットを出す事なくユナはバトルフェイズ開始を宣言。

ヴァンガードサークルのヴィレアに手を添え

 

「ヴィレアでマロンにアタック」

 

レストして攻撃を宣言。

このアタックに対し

 

「ノーガード」

 

アキナはノーガードで攻撃を通す。

 

「ドライブチェック────ノートリガー」

 

ヴァンガードの特権、ドライブチェックによって捲られたのは『透き通るキラメキ アウラ』だ。

トリガーゾーンからユナの手札に加わり、次いでアキナのダメージチェックが行われる。

 

「ダメージチェック────ノートリガー」

 

捲られたのは『奇跡の運命王 レザエル・ヴィータ』。

宿命決戦にて『奇跡の運命者 レザエル』が王へと進化した姿であり、アキナの切り札でもあるユニットだ。

最大投入数4枚のうちの1枚を開始早々ダメージに落とされたのは中々の痛手である。

 

「いきなり運命王が落とされちゃったよ……」

 

「ユナさんのファンとしての圧力は王すらも逃げ出させるのかもしれないわね」

 

ヒカリの言葉にエリカが言うと、ヒカリと立会人のナオがほんの少しだけ吹き出し笑いを零した。

かなりシュールな絵面を想像(イメージ)したのだろう。

そんな中、ミコトだけはその表情に不安の色を滲ませている。

アキナの事は信じているが、それと同じくらいに彼女はユナの強さを知っている。

彼女とはネットヴァンガードで何度もランキングの上位争いをしてきた間柄だ。

それ故にどうしても不安が拭いきれないのだろう。

 

「ターンエンドです」

 

ユナがターン終了を宣言し、アキナへとターンが返ってきた。

 

「俺のターン。ドロー。ライドフェイズ開始時、ジェネレーターの効果でEC3! 覚悟の刃、道を切り拓く! ライド! 『ブラスター・ダーク』!!」

 

1枚引いてジェネレーター効果でエネルギーが3枚置かれる。

そして手札から『ペインキラー・エンジェル』がドロップに置かれ、ライドデッキから『ブラスター・ダーク』がその姿を現した。

 

(やっぱりそのユニットだよねぇ。さて、どう展開していくのか……見せてもらうよアキくん)

 

現れた彼のグレード2の邂逅ユニット『ブラスター・ダーク』を見てナオが思考する。

 

「マロンのスキル! このユニットが『ブラスター』と名の付くユニットにライドされた時、山札の上から7枚見て『ブラスター』を含むグレード2を1枚選んで公開し、手札に加え山札をシャッフル。公開しない場合はシャッフル後にソウルから『ういんがる・ぶれいぶ』を選んでリアガードサークルにコールする! 俺は公開しない事を選択するのでソウルからういんがる・ぶれいぶをスペリオルコール!」

 

マロンのライドされた時のスキルが発動。

アキナはデッキの上から7枚を確認した後、それを戻してデッキをシャッフル。

その後、ソウルにあるういんがる・ぶれいぶをコールした。

 

「続けてブラスター・ダークの登場時スキル発動! このユニットがヴァンガードサークルかリアガードサークルに登場した時、CB(カウンターブラスト)1とリアガードを1枚選んで退却させる事で、相手のリアガードを1枚退却させ、このターン中ブラスター・ダークのドライブを+1する!」

 

宣言と共にダメージを1枚裏返し、リアガードのういんがる・ぶれいぶがドロップへと送られた。

ユナのフィールドには現在リアガードが存在しないので退却自体は行われないが、ブラスター・ダークのドライブ回数は1加算される。

 

「メインフェイズ! 手札から、『せるがおん』をヴァンガードの後列にコール!」

 

メインフェイズに入り、アキナの手札から『せるがおん』がリアガードとしてコールされた。

 

「バトルフェイズ! ブラスター・ダークでヴィレアにアタック! せるがおんのスキル発動! このターン中、オーダーを使用しているか相手のリアガードより自分のリアガードが多いなら、このユニットのパワー+5000! 合計パワー23000!」

 

「ノーガードです」

 

ブーストとスキルによってパワーが上がったブラスター・ダークの攻撃に対してユナはノーガードを宣言する。

 

「ツインドライブ! ファーストチェック────ノートリガー」

 

スキルによりドライブが1加算されているのでグレード2であるにも関わらず行われるツインドライブチェック。

1枚目はノーマルユニットの『迅弓の騎士 ニルベリス』だ。

 

「セカンドチェック────ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てブラスター・ダークへ!」

 

2枚目はクリティカルアイコンを待つトリガーユニットの『しゔぁるみゃー』だ。

効果の付与先であるブラスター・ダークのパワーが+10000され、さらにダメージを与えるクリティカルが1増加した。

 

「ダメージチェック。1点目───ノートリガー。2点目───ノートリガー」

 

捲られたダメージは2枚ともノーマルユニット、『ダズルバブルパラダイス プレセア』と『シャボンスプラッシュ リビェナ』。

ダメージゾーンへと置かれ、彼女のダメージ数は2となった。

 

「せるがおんのスキル! バトル終了時、自身を退却させる事で山札の上2枚を見て1枚を手札に、残りは山札の下へ置く」

 

バトル終了時のせんがおんの効果が発動。

アキナはデッキの上2枚を確認してその内の1枚を手札に加えてもう1枚をデッキの下に置く。

 

「ターンエンドだ」

 

彼はターン終了を宣言してユナへとターンを返す。

 

「ユナのターン。スタンド&ドロー! ライドフェイズ開始時、ジェネレーターの効果でEC3。ライド! 『マチュアルアーズ ルティカ』!」

 

レストしていたユニットをスタンドし1枚ドロー。

ジェネレーターの効果でエネルギーが3枚置かれ、そして手札から『甘い誘惑 アンフィ』をコストとしてドロップに送り、『マチュアルアーズ ルティカ』へとライドする。

 

「ヴィレアのスキル! ルティカにライドされた時、1枚ドローしてリアガードか手札から1枚を選んでソウルに置き、ルティカのパワー+5000! ソウルには手札からシェンクルを置きます」

 

発動したヴィレアのスキルによって1枚引いて手札からシェンクルがソウルに置かれる。

そしてルティカのパワーが5000増加して単騎15000となった。

 

「メインフェイズ! 手札からメルティをコール! スキル発動! このユニットがメインフェイズにコールされた時、CB1で自身のヴァンガードのグレード以下のユニットを1枚手札からコールする。コールしたら1枚ドローする。手札からアウラをヴァンガード後列にコールして1枚ドロー!」

 

コールされた『Hotping'Stellar メルティ』の効果でコストが支払われ、ユナは手札からアウラをヴァンガードの後列にコールして1枚ドローした。

 

「バトルフェイズ! メルティでブラスター・ダークにアタック!」

 

「プロロビでガード!」

 

メインフェイズを終了して移行したバトルフェイズ。

ユナはまずリアガードのメルティからアタックを開始した。

レストして行われた攻撃をアキナは手札から『加護の魔法 プロロビ』をガーディアンサークルにコールしてガードを宣言。

メルティのパワー10000に対してダークのパワーは15000に上昇したのでガードは成功した。

ガードに使用したプロロビはドロップへと送られる。

 

「アウラでブースト! ルティカでブラスター・ダークにアタック! 合計パワーは21000です!」

 

「……ノーガード」

 

パワー6000のアウラによるブーストを受け、ルティカのパワーが21000に上昇。

アキナは一瞬だけ思考するもノーガードを宣言した。

次いで行われるドライブチェック。

 

「ドライブチェック────ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てルティカに!」

 

捲られたのはトリガーユニットの『郎らかな陽の下で ウォリス』。

効果は全てルティカに与えられ、パワーとクリティカルが増加する。

ノーガード宣言をしたアキナは2点受ける事となる。

 

「ダメージチェック。1点目────ゲット! ドロートリガー! パワーをブラスター・ダークに与えて1枚ドロー! 2点目────ノートリガー」

 

行われるダメージチェック。

1点目はトリガーユニットのプロロビだ。

ドローアイコンを待つこのユニットは1枚ドローする効果を持つ。

パワーがブラスター・ダークに与えられアキナは1枚引く。

そして2枚目はノーマルユニットのニルベリス、これでアキナのダメージは3となった。

 

「アウラのスキル発動! このユニットがブーストしたバトル終了時、アタックがヒットしているなら、このユニットを退却させる事で山札からオーダーカードを1枚探し、相手に公開して手札に加える。『これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』を手札に加えます」

 

ダメージチェックが終了したところでユナがスキル発動を宣言。

アウラをドロップに送り、デッキは1枚のオーダーカードを探してアキナに公開した。

オーダーカードとはターン中に一度だけプレイ出来る特殊なカードだ。

種類は様々で、メインフェイズに使用出来る使い捨ての『ノーマルオーダー』、オーダーゾーンにセットする事で効果を発揮する『セットオーダー』、ガード時に使用する事が出来る『ブリッツオーダー』が存在する。

ユナが公開したオーダーカードはノーマルオーダー。

公開した『これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』を手札に加えた後、ユナはデッキをシャッフルする。

 

「ターンエンドです」

 

ターンを終了してアキナへとターンが返ってきた。

 

「俺のターン。スタンド&ドロー! ジェネレーターの効果でEC3。救聖の翼、天よりここに! 『奇跡の運命者 レザエル』に、ライド!!」

 

手札からしゔぁるみゃーがドロップに置かれ、彼の分身である『奇跡の運命者 レザエル』がVサークルへと降臨。

 

「メインフェイズ! ノーヴィアをコール。スキル発動! このユニットが登場した時、『レザエル』を含むヴァンガードがいるならCB1で山札の上から3枚見て、1枚を選んでコールする。エーリアルをヴァンガード後列にスペリオルコール!」

 

メインフェイズへと移行し、彼の手札からコールされた『優麗の騎士 ノーヴィア』の効果が発動。

コストが支払われ、デッキの上3枚を確認したアキナは『エーリアル・セージ』を選択してヴァンガードの後列にコール。

残りの2枚を山札の下に置き

 

「さらに手札から、ニルベリスとペインキラーを同じ縦列にコール!」

 

手札からさらに2体のリアガードをコール。

コレにより彼の攻撃態勢が整った。

 

「バトルフェイズ! ペインキラーのブースト、ニルベリスでルティカにアタック! 合計パワー18000!」

 

「メルティでインターセプト! さらに手札からネリネアでガード!」

 

ペインキラーのブーストを受けたニルベリスの攻撃はパワー18000。

その攻撃に対してグレード2固有能力の『インターセプト』によって前列からガーディアンに移動したメルティと、手札から切られた『クローバー・ハーツ ネリネア』がコールされた。

どちらもシールド値は5000。

ルティカの合計パワーは20000となりガードは成立し、メルティとネリネアはドロップゾーンへと送られた。

 

「ニルベリスのスキル! バトル終了時、『レザエル』を含むヴァンガードがいるなら、EB(エネルギーブラスト)3と自身をソウルに置くことで1枚ドロー。さらに山札の上を確認して────」

 

ニルベリスのアタックが終了したと同時にスキルが発動。

エネルギーを3消費しニルベリスをソウルに送ったアキナは1枚ドロー。

そしてデッキの1番上を確認。

少し思案してから

 

「山札の上へ置く」

 

確認したカードをデッキの上へそのまま戻す。

それを見たユナは

 

(確認したカードを上に置いた……という事はトリガーユニット?)

 

彼の山札の上にあるカードがトリガーだと予想する。

しかし

 

「続けてペインキラーのスキル! このユニットがブーストしたバトル終了時、SB(ソウルブラスト)1と自身を退却させる事で1枚ドロー!」

 

続けて発動したペインキラーの効果によりアキナは先程デッキの上に戻したカードをドローして手札に加えた。

 

(ドローした?! という事はさっきのはトリガーじゃなくて手札に確保したいカードだったって事!?)

 

思考を巡らせるユナ。

確かにトリガーならばペインキラーの効果を発動させる必要はない。

そうなれば手札に確保しておきたいカードだったと考えるのが自然だろう。

 

「エーリアルのブースト、レザエルでルティカにアタック! エーリアルのスキル! このユニットがブーストしたバトル中、『レザエル』を含むグレード3がいるならパワー+5000! さらにレザエルのスキル発動! このユニットがアタックした時、CB1で自身のダメージ枚数と同じグレードになるよう、ドロップから異なるグレードのユニットを2枚まで選んでスペリオルコール! ニルベリスとせるがおんを同じ縦列にスペリオルコール! ニルベリスのスキル! このユニットがグレード3以上のヴァンガードの効果でリアガードに登場した時、ターン中パワー+10000!」

 

続けて行われたのはエーリアルのブーストを受けたレザエルによるアタック。

エーリアルはスキルで自身にパワーを+5000し、次いで発動したレザエルの効果。

ダメージの枚数と同じグレードになるように異なるグレードのユニットをドロップゾーンから復活させる展開能力である。

現在アキナのダメージは3

彼が選んだのはグレード2のニルベリスとグレード 1のせるがおんだ。

同じ縦列にコールされた事で攻撃回数がさらに増え、さらにはニルベリスも効果によってパワーが増加しているので先程よりも高い火力で攻めることが出来るようになった。

ルティカに剣を向けるレザエルのパワーはエーリアルの13000ブーストを加算して合計26000。

 

「ノーガードです!」

 

この攻撃に対してユナはノーガードを宣言。

 

「ツインドライブ! ファーストチェック────ノートリガー。セカンドチェック────ゲット! クリティカルトリガー! クリティカルはレザエルに。パワーはノーヴィアに!」

 

行われたツインドライブ。

1枚目はノーマルユニットの『通貫の騎士 キャドワラ』が捲られ、次いで行われた2枚目はトリガーユニットのしゔぁるみゃーが捲られた。

相手がノーガードを宣言しているので、アキナはクリティカルをレザエルに与え、パワーはノーヴィアへと振り分けた。

ツインドライブで捲った2枚を手札に加え、ノーヴィアのパワーは単騎20000となり、レザエルのクリティカルは2へと上昇。

 

「ダメージチェック。1点目────ゲット! ヒールトリガー! ルティカにパワー+10000! こっちのダメージ数が少ないので回復は行いません」

 

攻撃がヒットした事で行われたユナのダメージチェック。

1点目はトリガーユニットの『ほっと一息 ファビオラ』、回復効果を待つヒールトリガーだ。

現在ユナのダメージは2点。

アキナのダメージ3点を下回るので回復効果は発動させれず、パワーのみが選択したルティカに振り分けられた。

これでルティカのパワーは20000へ上昇。

 

「2点目────ノートリガーです」

 

次いで捲られた2点目はノーマルユニット『ふらこことゆれ バラティアル』。

捲られたカードがダメージに置かれ、ユナのダメージは4となった。

 

「せるがおんでブースト、ニルベリスでルティカにアタック! せるがおんのスキル!自身のリアガードの数が相手より多いのでパワー+5000! 合計パワー33000!」

 

「ファビオラでガード!」

 

続けてニルベリスによる攻撃が行われ、これに対してユナはファビオラをガーディアンサークルにコールした。

シールド値は15000。

ルティカのパワー20000に足して35000まで上昇したのでガードが成立。

 

「せるがおんのスキル! バトル終了時、このユニットを退却させ山札の上2枚を確認して1枚を手札に加えてもう一枚を山札の下に。続けてニルベリスのスキル発動! EB3と自身をソウルに置くことで1枚ドロー。山札の上を確認して────山札の下へ」

 

攻撃が終了したと同時にせるがおんのスキルが発動し、アキナはデッキの上2枚を確認して片方を手札に加え、残った1枚をデッキの下へと置き、続けて発動したニルベリスのスキルによって1枚ドロー。

デッキの1番上を確認した後、一瞬だけ思案して確認したカードをデッキの下へと置く。

 

「ノーヴィアでルティカにアタック!」

 

「ノーガードです。ダメージチェック───ノートリガー」

 

行われたノーヴィアによるアタック。

これに対してユナはノーガードを宣言。

攻撃は成立し、ダメージとして捲られたノーマルユニットの『あの輝きをもう一度(ブリリアンス・リステージ) エルベリーナ』がダメージゾーンへと置かれる。

これでユナのダメージは5となった。

 

「ターンエンド」

 

先のノーヴィアの攻撃が最後のアタック。

これ以上アキナに出来る行動はない為、ターン終了を宣言してユナにターンを返した。

現在、アキナのダメージは3、エネルギーは0、手札は9枚である。

 

「お兄ちゃん、手札を貯めにきたね」

 

「そりゃそうでしょう。次のターンで猛攻を仕掛けてくるのはほぼ確定だろうから」

 

ファイト展開を見守っていたヒカリの言葉にエリカがそう返す。

すると同じくファイトの展開を見守っていたミコトが

 

「ううん。仕掛けるどころか、次のターンで一気に決める気だと思う」

 

向かい合っている2人のフィールドを見ながらそう言った。

 

「でも、まだ3ターン目だよ? お兄ちゃんのダメージは3だし、詰めの準備を兼ねて手札を削りに行くならわかるけど……」

 

ミコトの言葉にそう返すのはヒカリだ。

確かに彼女の言う通りアキナのダメージは3、そして手札も蓄えがある。

かなりの余裕を持っているアキナを次のターンで決め切るには些か厳しい。

だが、ユナの目から確実にここで決めるという意思をミコトに感じさせていた。

それはアキナも同様なようで、その表情は決して楽観的なものではなかった。

 

(明導アキナさん……まだヴァンガードを始めて間がないってヒカリ殿から聞いてるけど、宿命決戦やシヴィルトとのファイトでみた以上に強い。プレイスタイルは荒いところがあるけどユニットの展開の仕方はかなり的確だと思う……)

 

目の前に立つ彼を見据えながらユナは思考を巡らせていた。

ここまでの立ち回りでアキナの実力を測っていたようだが、自身の想定以上の強さを見せるアキナに彼女は素直に感心している。

アキナがヴァンガードを始めたのは運命大戦が始まってからだ。

ファイターとしての経験値は1年も無いにも関わらず、ネットヴァンガードで上位に入る程の実力を待つユナと肉薄したファイトを繰り広げている。

ユナは彼の手札とフィールドを見た後、チラリとミコトの方へと目を向けた。

 

(……みーたん……本当は、ユナだっておめでとうって祝福したい。でも、ユナはこの人のことをなにも知らない……この人が本当にみーたんを真剣に想ってくれているのかわからない。だから、このファイトで見極めるんだ。この人が本当にみーたんに相応しいかどうか。だって……みーたんには、推しには幸せでいてほしいから!!)

 

思考を切って視線をアキナへと戻し、ユナは軽く息を吐いて

 

「ユナのターン! スタンド&ドロー!」

 

レストしているルティカをスタンドさせて1枚ドロー。

 

「ジェネレーターの効果でEC3! 目指すは究極の唯一無二! 『至高の宿命者 リシアフェール』にライド!」

 

手札のウォリスをドロップに送り、彼女の分身『思考の宿命者 リシアフェール』がその姿を現した。

 

「ルティカのスキル! リシアフェールにライドされた時CB1かEB3で1枚ドローしてSC(ソウルチャージ)1する! ユナはEB3でコストを支払います」

 

9枚になったエネルギーが6枚に減少し、ユナは1枚ドローしてデッキの上のカードをソウルへと送る。

置かれたカードはバラティアルだ。

ライドフェイズが終了しメインフェイズへと移行すると、彼女は手札から1枚のカードを手に取り

 

「オーダーカード! 『これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』を発動!」

 

後攻2ターン目に手札に加えたオーダーカードの使用を宣言した。

 

「このカードはヴァンガードが『リシアフェール』を含むならCB1で発動出来る! コストを支払いEC2。そしてヴァンガードを1枚選んでこのターン中『自分の前列のユニット全てのパワー+5000』を与えます!」

 

これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』がドロップに置かれ、CB1を支払い効果が発動。

6になっていたエネルギーが8に増加し、リシアフェールに前列のパワーパンプ効果が付与される。

 

「続けてネリネアをコール! スキル発動! ヴァンガードがリシアフェールならCB1でソウルからこのユニットとは別名の『守護者』を持たないグレード2以下のノーマルユニットを手札に加える! ユナはバラティアルを選択します。加えた後SC1します」

 

右後列にコールされたネリネアの登場時効果によって、ソウルからバラティアルが手札に加えられ、その後行われたSCで山札の上からリシアフェールがソウルへ送られていく。

 

「続けてアンフィを左前列にコール! スキル発動! ヴァンガードがリシアフェールならCB1で1枚ドローしてこのユニットのパワー+5000! さらに左後列にバラティアルを、右前列にエルベリーナ、そしてヴァンガードの後列にリシウスをコール! リシウスのスキル! このユニットが登場した時、他のユニットを選んでパワー+10000! ユナはリシアフェールを選択します!!」

 

続けてコールされたアンフィの効果で1枚ドローと自身にパワーを+5000し、さらにバラティアル、エルベリーナ、『青髪の異才 リシウス』がコールされ、その効果が発動。

ユナはリシアフェールを選択してパワー10000を付与させる。

先ほどのオーダーの効果を含めれば、リシアフェールは現在単騎で28000までパワーを上げている。

さらには盤面も完全に埋まりきり攻撃態勢が完全に整った。

 

「バトルフェイズ! エルベリーナ単騎でレザエルにアタック! エルベリーナのスキル! ヴァンガードがリシアフェールなら自身のパワーを常に+5000! オーダーの効果でさらにパワー+5000! 合計パワー20000です!」

 

「ノーヴィアでインターセプト! せるがおんでガード!」

 

最初に行われたエルベリーナのアタック。

アキナはリアガードのノーヴィアをインターセプトでガーディアンに移動させ、さらに手札からせるがおんをコールする事でガード。

どちらもシールド値5000なので合計シールド値10000となり、レザエルのパワーと足して23000まで上昇。

エルベリーナのパワーは20000なのでガードが成立し、ノーヴィアとせるがおんはドロップへと送られた。

 

「バラティアルのブースト、アンフィでレザエルにアタック! バラティアルのスキル! このユニットがブーストしたバトル中、リシアフェールを含むヴァンガードがあるならパワー+5000! オーダーの効果とアンフィ自身の効果を合わせてパワー36000!!」

 

「ブレードフェザー、しゔぁるみゃーでガード!」

 

続けてアンフィの攻撃。

この攻撃もアキナは手札からしゔぁるみゃー、ブレードフェザーをそれぞれガーディアンサークルにコールする事でガードした。

共にシールド値は15000。

レザエルのパワーは43000まで上昇し、アンフィのパワー36000を上回ったのでガードが成立。

 

「リシアフェール単体でレザエルにアタック! リシアフェールのスキル発動! このユニットがブーストされないでアタックした時、EB3と自身のリアガードを2枚以上選んでソウルにおく事でこのターン中、リシアフェールのドライブ+ 1! さらに効果でソウルに置いたユニットの数の分リシアフェールのパワー+5000! ユナはアンフィとバラティアルとリシウスを選択します!」

 

リシアフェールがレストされ、スキル発動の為のコストが支払われた。

エネルギーが8から5に減少して選択したリアガードが3枚ソウルに置かれた事でリシアフェールのドライブが+1され、パワーに15000が加算される。

これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』のパンプ効果、そしてリシウスによって加算されている+10000を合わせリシアフェールのパワーは43000まで膨れ上がった。

しかしまだ終わりではない。

ここからさらにスキルが連鎖していく。

 

「バラティアルのスキル発動! このユニットがリシアフェールの効果でソウルに送られた時、1枚ドローしてこのターンCC(カウンターチャージ)していないならCC1します! さらにアンフィのスキル! リシアフェールの効果でソウルに送られた時、ヴァンガードにパワー+5000!」

 

ソウルに送られたバラティアルとアンフィの効果が発動。

まずはバラティアルの効果で1枚引きダメージゾーンの裏のカードを1枚表返し、次いでアンフィの効果によってリシアフェールのパワーに+5000される。

これでリシアフェールのパワーは48000に上昇。

そしてさらに

 

「エルベリーナのスキル! リシアフェールがアタックした時、自身の前列に他のリアガードがいないならCB1でエルベリーナをスタンドし、このターン中パワー+10000!」

 

右前列にいるエルベリーナが自身のスキルによってスタンド。

さらにはパワーを増加させて再び攻撃体勢を整えてきた。

スキル連鎖が終了した為ガードステップに入ったアキナは、自身の手札とダメージを見た後

 

「ノーガード!」

 

攻撃を通す事を宣言。

彼のダメージは3。

故に無理にガードせずに温存する事を選んだのだろう。

しかし観戦しているミコト達の表情は固い。

なぜならリシアフェールはスキルによってドライブが 1加算されトリプルドライブになっているからだ。

ドライブチェックの回数が増えるという事はそれだけトリガーを引き当てる確率が上がるという事。

もしクリティカルを2枚引かれればアキナの敗北はほぼ確定する。

皆が息を呑む中、ユナはデッキに手を添えてドライブチェックを開始。

 

「トリプルドライブ! ファーストチェック────ゲット! クリティカルトリガー! クリティカルはリシアフェールに、パワーはエルベリーナに!」

 

1枚目はクリティカルアイコンを持つトリガーユニット『珠玉の一曲 エドウィージュ』だ。

クリティカルはリシアフェールに与えられ、パワーはエルベリーナへと振り分けられる。

 

「セカンドチェック────ノートリガー。サードチェック────ゲット! ヒールトリガー! パワーをエルベリーナ与えて、ダメージを 1回復します!」

 

捲られた2枚目はノーマルユニットのリビェナ。

そして3枚目はヒールトリガーのファビオラだ。

先程とは違い、ユナのダメージは現在アキナより多い。

その為ヒールトリガーの真骨頂である1点回復が行われ、ユナのダメージは4へと減少。

パワーはエルベリーナへと与えられた。

これでエルベリーナのパワーは自身の効果とオーダーの効果も含めて50000まで上昇。

ノーガード宣言をしていたので、クリティカルが2に上昇したリシアフェールの攻撃が通りダメージチェックが行われる。

 

「ダメージチェック。1点目────ノートリガー。2点目────ノートリガー」

 

捲られたカードはどちらもトリガーではなくノーマルユニット。

1枚目は『パラディウムジール・ドラゴン』、2枚目はレザエル・ヴィータ。

ダメージトリガーが出なかった事も痛いが、またもや切り札がダメージへと落とされた事にアキナの表情が苦いものへと変わる。

これで彼のダメージは5となり、最早1点も受けられなくなった。

ついに後がなくなったアキナに追い討ちをかけるように

 

「ユナのライブはここからがクライマックス! 至高到達────ディヴァインスキル発動!!」

 

運命者、そして宿命者が待つファイト中に一度しか使えない強力無比な能力が発動された。

 

「このユニットがグレード3以上にアタックしたバトル終了時、ソウルが6枚以上ならCB1でこのユニットをスタンドしてドライブ−2! さらにこのファイト中『リシアフェールを含むヴァンガード全てのパワー+5000、クリティカル+ 1』を得る!!」

 

彼女のソウルはすでに8枚貯まっており、アキナのヴァンガードもグレード3。

条件が満たされているのでコストが支払われ、リシアフェールは再び立ち上がり、ドライブを−2して再攻撃の資格を得た。

それだけではない。

リシアフェールは自身、相手のターン問わずパワーとクリティカルが増加する効果を得ている。

故にリシアフェールのパワーは53000に上昇し、さらにはトリガーによって2だったクリティカルも3へと増加。

超高火力によるヴァンガードの怒涛の連続攻撃。

しかもまだリアガードのエルベリーナの攻撃がブースト込みで控えている。

 

「まさか後攻3ターン目でここまで動くっていうの?!」

 

「みーたんの言った通り、ユナさん本気で決めに来てるよ!」

 

鬼気迫る勢いの連続攻撃にヒカリとエリカからも驚愕の声。

立会人として間にいるナオも、ユナの気迫に息を呑んでフィールドを見ている。

 

「……アキナ先輩」

 

彼の名を呟き、ミコトはアキナへと目を向けた。

視界映る彼の表情は険しくはあるが諦めに染まってはいない。

ユナは再びリシアフェールに手を添え

 

「リシアフェールで、再びレザエルにアタック!!」

 

攻撃宣言をしてカードをレスト。

アキナは手札の1枚を手に取り

 

「パラディウムジール! 完全ガード!!」

 

『守護者』である『パラディウムジール・ドラゴン』をガーディアンサークルにコール。

コストとしてキャドワラがドロップに置かれ、完全ガードが成立した。

 

「っ! ドライブチェック────ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てエルベリーナに!!」

 

防がれた事に多少驚きつつも行ったドライブチェック。

捲れたのはトリガーユニットのエドウィージュだ。

攻撃は通らないので控えているエルベリーナに全ての効果が与えられ、エルベリーナのパワーは60000、クリティカルが2に増加する。

リシアフェールの攻撃を凌ぎきるも、安堵の息を吐く間もなく

 

「ネリネアでブースト! エルベリーナでレザエルにアタック! ネリネアのスキル発動! このユニットがブーストした時、『リシアフェール』を含むヴァンガードがいるならSB2する事でパワー+10000!!」

 

残されたエルベリーナによる攻撃が行われる。

ブースト要員であるネリネアのスキルによってソウルからアンフィとルティカがドロップへと送られ、エルベリーナはさらにパワーが加算されて合計パワー78000へ上昇。

さらにはトリガー効果でクリティカルは2となっている。

 

「パワー78000?!」

 

「しかもトリガーでクリティカルも2に上がってるし! これ絶対受けられないよ!!」

 

圧倒的パワーによるアタックに観戦しているヒカリ達から再度驚愕の声。

迫り来る超パワーの攻撃。

アキナは目を見開き

 

「しゔぁるみゃー! ブレードフェザー! さらに─────アマルティノアでガード!!!」

 

手札からトリガーユニットであるしゔぁるみゃーとブレードフェザーをガーディアンサークルへとコール。

さらにもう一枚、デッキに1枚しか入れる事が出来ない(オーバー)トリガー『栄典の光神竜 アマルティノア』がコールされた。

(オーバー)トリガーは50000という高いシールド値を有している。

共にシールド値15000のしゔぁるみゃーとブレードフェザー、そしてアマルティノアの50000をレザエルのパワーに加算し、合計パワーは93000まで膨れ上がった。

エルベリーナのパワーはネリネアのブーストを込めても78000。

相手のパワーを大きく上回った事によりガードが成立した。

 

「ふ、防いだぁぁぁ!!」

 

圧倒的パワーによる攻撃をアキナが防ぎ切った事にヒカリが大絶叫。

全ての攻撃を凌ぎ切られたユナも驚愕の表情を浮かべていた。

それもそうだろう。

彼女はこのターンで確実にアキナを差し切るつもりだったのだから。

しかし全ユニットのアタックが終了した今、彼女に出来る行動はただ一つ

 

「……ターンエンドです」

 

ターン終了を宣言して彼にターンを返す。

凌がれた事に驚きつつも、ユナは自身の手札を見て

 

(まさか凌がれるなんて……でも、ユナの手札は10枚まで増やしましたし、相手の手札は1枚。ダメージも5まで追い込んだし、次の攻撃を凌げばユナが───?!)

 

思考を巡らせながら次いでアキナの方に視線を向けると、予想外の光景を目にして息を呑む。

そう、視線の先にいる彼は笑っていたのだ。

手札は削られダメージも5まで追い込まれているこの状況で、だ。

ユナは信じられないモノを見るような目で

 

「……なんで……笑ってるんですか?」

 

問いかけた。

 

「もちろん楽しいからさ。こんな強い相手とのギリギリの戦い……俺、すっげぇワクワクしてる」

 

問いかけに対し、アキナは笑みを崩す事なくそう返す。

返って来た言葉にユナはますます信じられないようなモノを見る目で

 

「ず、随分と余裕ですね? あなたの手札は1枚。ダメージも5だから後もないんですよ? 次の攻撃を凌ぎ切ればユナの勝ちは揺るぎないんですよ?」

 

再度問いかけると、彼は小さくかぶりを振り

 

「別に余裕ぶってる訳じゃないよ。けど、こんなのはただのピンチだ。ヴァンガードは最後のダメージが決まるまで何が起こるかわからないよ」

 

そう返す。

 

「……覚えてないんですか? このファイト、ユナが勝ったら────」

 

どこまでも冷静に返してくるアキナに、ユナは僅かに苛立ちを覚えたように表情を顰めながら言うが、それを遮るように

 

「ミコトと別れろ、だったよな? 覚えてるよ。けど、俺は負ける気はないし、それ以前に────たとえ負けたとしても、俺は彼女と別れる気はないんだ」

 

アキナはそう言って返した。

それを聞いたユナ────否、彼以外の全員が

 

『は────はぁ?!?!?』

 

素っ頓狂な声を上げる。

それもそうだ。

発せられた彼の言葉はユナだけでなくミコト達も予想外のモノだったのだから。

 

「な、なに言って?! だって、あの条件でファイトするって────」

 

「俺は『ファイト()受ける』とは言ったけど、『条件を呑む』とは一言も言わなかったはずだ」

 

『なに言ってんだコイツ?』という表情で声を荒げるユナに、アキナはそう言って返した。

それを聞いてヒカリ達は改めてファイトする前の彼らのやり取りを思いかえしてみる。

 

「……確かに、お兄ちゃん『ファイト()受ける』とは言ってたけど……」

 

「い、いくらなんでも屁理屈が過ぎる……」

 

ヒカリとエリカは呆れた表情をしながら呟いた。

当然と言えば当然だ。

ファイトを受けた時点で条件を呑んでると判断されてもおかしくないモノを、事もあろうか『条件を呑むとは言ってない』で押し通そうと言うのだから。

 

「は、初めから条件を守る気はなかった……? なら、なんでユナとのファイトを受けたんですか?!」

 

とんでもない屁理屈で返してくるアキナにユナは困惑の表情で再度声を荒げる。

 

「もちろん、ファイトを受けない選択肢もあったよ。けどこれが1番、君が納得出来て、俺の事を知ってもらえる方法だと思ったからだ」

 

ユナの問いかけにそう返すアキナ。

彼からの返答に彼女はますます『訳がわからない』という表情になる。

 

「西園寺さんの言う通り、俺は普通の高校生────なんの影響力も持ってないただの一般人だ。おまけに、未だに『自分だけの願い』もまともに見つけれてない中途半端な奴なんだ」

 

そんな彼女に、アキナは苦笑いを浮かべて言葉を紡ぎ出した。

しかしそれを聞いているミコトやヒカリ達は苦い表情を浮かべている。

彼は別に自嘲している訳ではない。

あくまでも冷静な自己分析による言葉だ。

だが彼の人となり、その在り方をよく知っている彼女達からすれば聞いていてやりきれない気持ちがあるのだろう。

 

「そんな俺が、アイドルとして世間で注目されて認められているミコトの恋人なんて言われたら、そりゃ納得も出来ないだろうし、釣り合わないって言われるのも仕方ないって思ってる。彼女のファンで友達でもある君なら尚更そう思うんだろうな。けど────」

 

彼はそこで言葉を区切り、一度息を吐いた後

 

「俺にとって、それは彼女と別れる理由にはならないんだよ」

 

ハッキリと言い切った。

 

「釣り合うとか釣り合わないとか、それを決めるのは他の誰でもない、俺とミコト自身なんだ。それに、俺は良いところも悪いところも全部引っくるめた『西塔ミコト』って女の子を好きになったんだ。決して『アイドルの西塔ミコト』だけしか見てないわけじゃない。だから彼女と別れる選択肢なんて俺には無いし、あっても選ぶ事なんて有り得ないんだ」

 

浮かべていた苦笑いはすでに消えており、穏やかな表情でアキナは言葉を紡いでいく。

 

「く、口ではなんとでも言えますよ……」

 

彼の言葉と表情、そして冷静さにユナは僅かに動揺した様子でそう返すと

 

「なら、俺も西園寺さんに訊きたい。もし誰かに『分不相応だからミコトのファンを辞めろ』って言われたら、君は素直に彼女のファンである事を辞めるのか?」

 

アキナは彼女をまっすぐ見据えながら問いかけた。

問いかけが耳に届いた瞬間、彼女が見せていた僅かな動揺の表情が崩れ

 

「ふ、ふざけないでください! なんでそんな事を言われたくらいでユナがみーたんを推すのを辞めないといけないんですか!! ユナのみーたん(推し)に対する情熱はそんな簡単で軽いものじゃありません!!!」

 

声を荒げながらそう返した。

すると彼は笑みを浮かべ、ユナから視線を逸らすことなく

 

「なら、俺も同じだ。釣り合わないから別れろなんて言われて離れられるほど、俺のミコトへの気持ちは簡単で軽いものじゃない。だから、誰に認められなかったとしても、なにを言われたとしても、俺は彼女を想い続ける。掴んだこの手を─────絶対に離したりはしない!!」

 

迷い無い声でハッキリと言い切った。

それを聞いたユナは改めて彼を、アキナの目をジッと見る。

視線の先にある赤の瞳には一切の揺らぎはない。

それだけでユナはわかってしまった。

 

 

 

─────この人、本気だ。

 

 

 

彼の───アキナの言葉と覚悟の真剣さを。

すると立会人としてファイト展開を見守っていたナオが

 

「いいね、そのブレの無さ。それでこそアキくんだよ」

 

言いながら笑みを零した。

さらに同じようにエリカとヒカリも呆れたような笑みを浮かべながら

 

「って言うか、今のって」

 

「うん。もうプロポーズも同然だよ。ね、みーたん?」

 

「あぅぅぅ……」

 

そう言い、ミコトの方に視線を送る。

当の彼女は茹蛸のように顔を真っ赤に染め上げ、尚且つ満更でもなさげな表情で俯いている。

 

「俺のターン。スタンド&ドロー」

 

言いたい事を言い切ったアキナはレストしているレザエルとエーリアルをスタンドさせてカードを引いた。

ドローしたカードを確認して、僅かに笑みを浮かべながら

 

「西園寺さん。君はまだ半信半疑だと思う。だから証明するよ、俺の言葉と覚悟が本物だって事を。だから、共に翔ぼう────俺の分身!!」

 

力強い声で言い

 

「ジェネレーターの効果でEC3。救聖の翼、再びここに! ペルソナライド! 『奇跡の運命者 レザエル』!!」

 

彼の分身であるレザエルへと再びライドし、4枚の翼を広げてヴァンガードサークルへと舞い降りた。

同名にライドした事によりペルソナライドの効果が発動する。

 

「ペルソナライドの効果により1枚ドロー! そしてこのターン中、常に前列のパワー+10000! 続けてメインフェイズ! ノーヴィアをコールしてスキル発動! CB1で山札の上から3枚見て、ニルベリスをスペリオルコール!! 残りのカードは山札の下へ。さらにニルベリスの後列にエーリアルをコール!」

 

ペルソナライドの効果で1枚ドローした後、突入したメインフェイズ。

彼は左前列にコールしたノーヴィアのスキルによって右前列にニルベリスを呼び出し、さらに残っていた最後の手札であるエーリアルをニルベリスの後列にコール。

手札の全てを使い切りリアガードを再展開した。

だが、まだ終わりでない。

 

「わずかな光でも、手を伸ばした者にのみ、奇跡は舞い降りる! 奇跡降臨─────ディヴァインスキル発動!!」

 

レザエルのディヴァインスキル発動を宣言された。

 

「SB1する事で、ドロップゾーンのクリティカルトリガーを全て山札に戻し、このターン中レザエルのドライブを+1する! 俺が戻すトリガーの枚数は─────6枚!」

 

コストを支払い、彼はドロップゾーンに送られていた6枚のクリティカルトリガー、しゔぁるみゃー3枚とブレードフェザー3枚の計6枚をユナに見せて山札へと戻してシャッフルする。

 

「なっ?!」

 

戻されたトリガーの枚数に驚くユナ。

しかし、それを見ていたナオは

 

(ユナちゃんは気付いてなかったみたいだね。布石は最初から打たれてた。ライドラインの変更とドローソースの大量投入でドライブの回数とドローを増やして少しでもダメージにクリティカルトリガーが落ちないよう手札に確保する為の戦術だね。そうやって確保したクリティカルを惜しみなく防御で使用、回ってきた自分のターンに通常よりも多くドライブチェックとドローした分薄くなってる山札にドロップで肥やしたクリティカルを戻して圧縮する事でトリガー率を大幅に上げる。これまでの耐久とは違う、攻撃に特化したディヴァインスキルの使い方────見事なプレイングだよ、アキくん!)

 

アキナに視線を向けて思考を巡らせた。

ナオの考えている通り、彼のライドラインの変更とドロー要員の連続コールはまさにこの状況を作るための布石だったのだ。

彼はディヴァインスキルを耐久で使う事が主だった。

追加効果である『自身のダメージが5の時、ダメージチェックでヒールトリガー以外のトリガーを引いた場合、ダメージを1回復する』という奇跡再臨によって相手の猛攻を耐え凌ぎ、返ってきたターンで勝負に出るというスタイル。

だが今回はその追加効果に頼る事なく、ディヴァインスキルを攻撃に特化して使用する戦術を彼は用いたのである。

 

「バトルフェイズ! ニルベリス単体でリシアフェールにアタック! ペルソナライドの効果で合計パワー20000!」

 

攻撃態勢を整えたアキナの攻撃が開始。

最初のアタックは右前列のニルベリスによるの単体アタックだ。

 

「エルベリーナでインターセプト!」

 

これに対しユナはリアガードのエルベリーナをインターセプトでガーディアンサークルに移動させた。

現在、リシアフェールはディヴァインスキルの効果で自身、相手ターン問わずにパワーが5000加算されて18000まで上昇している。

エルベリーナのシールド値5000を足して合計23000となり、ニルベリスの攻撃はガードされる。

 

「ニルベリスのスキル! アタック終了時EB3と自身をソウルに置くことで1枚ドロー! さらに山札の上を確認し────山札の下へ」

 

攻撃終了と同時にニルベリスのスキルが発動。

コストを支払ってアキナは1枚ドローし、デッキの上のカードを確認してデッキの下へと置いた。

続けてノーヴィアに手を添え

 

「ノーヴィアでリシアフェールにアタック! スキル発動! SB1でパワー+10000! 合計パワー30000!」

 

レストしてアタック宣言。

さらにスキルを発動。

先程ソウルに送ったニルベリスをコストに使いパワーを上げていく。

 

「ベトレア、プレセアでガード! ベトレアのスキル! 相手ヴァンガードがグレード3なのでシールドパワー+5000! さらにプレセアのスキル! このカードがガーディアンサークルに開かれた時、CB1またはEB3する事で1枚ドロー! ユナはコストとしてEB3を支払います!」

 

ノーヴィアの攻撃に対してユナは手札からトリガーユニットである『澄み渡る雪夜 ベトレア』とノーマルユニットのプレセアをガーディアンサークルにコール。

どちらもシールド値は5000だが、ベトレアの永続スキルによりさらにシールド値が5000加算される。

これによってリシアフェールの合計パワーは33000となり、パワー30000のノーヴィアの攻撃は完全に防がれた。

さらにプレセアのガード時スキルも発動。

支払うコストにEB3を選択し、5になっていたエネルギーが2に減少。

ユナはカードを1枚引いて確認すると、ほんの僅かにだが苦い表情をする。

 

「エーリアルのブースト! レザエルでリシアフェールにアタック! エーリアルのスキル! このユニットがブーストした時、ヴァンガードがレザエルならパワー+5000! さらにもう一つのスキル発動! レザエルをブーストした時、手札を1枚捨てる事でCC1し、このユニットのパワー+2000!」

 

続けて彼の分身たるレザエルがエーリアルのブーストを受け攻撃を開始。

アタックと同時に、二つのスキルが処理される。

パワー+5000の永続効果を宣言した後、もう一つの自動効果が発動。

先程ニルベリスの効果によって引いたカードをドロップに送り、裏返っているダメージ4枚のうち1枚を表返してコストを回復。

さらにパワーを2000加算した事でレザエルの合計パワーは38000に上昇。

 

「レザエルのアタック時スキル! CB1で、ダメージの枚数と同じになるように、ドロップから異なるグレードのユニットを2枚まで選んでコールする! 俺はノーヴィアと─────『聖竜 ガブエリウス』をスペリオルコール!!」

 

さらにレザエルのアタック時スキルが発動する。

先程表返したダメージを裏返し、アキナはドロップからノーヴィアと『聖竜 ガブエリウス』を選択し、それぞれを前列へとコールした。

『聖竜 ガブエリウス』は運命大戦を開催した、ぬいぐるみを憑代としていたあのガブエリウスの本来の姿である。

先程ニルベリスの効果で引いたのは正にこのカードであり、エーリアルのスキルコストでドロップに送られ、レザエルのスキルによりフィールドへと舞い降りたのである。

 

「ガブエリウスの登場時スキル発動! SB1で山札の上を確認し─────山札の上へ置く!」

 

コストを支払い、アキナはデッキの上のカードを確認。

それをデッキの上へと置く事を選択する。

 

(デッキの上─────間違いなくトリガー?!)

 

アキナのスキル処理を見たのと同時に思考を巡らせたユナは迷う事なく手札の1枚を手に取り

 

「リビェナ! 完全ガード!!」

 

守護者であるリビェナをガーディアンサークルへとコールし、コストとして『これこそ(スウィーテスト)()至高の甘味!(スイーツ!)』がドロップゾーンへと送られる。

 

「トリプルドライブ! ファーストチェック────ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てガブエリウスに!」

 

ディヴァインスキルの効果によってドライブが 1加算されたレザエルのトリプルドライブが開始。

捲られた最初のドライブチェックはトリガーユニットのしゔぁるみゃー。

完全ガードが成立しているので効果の全てがガブエリウスに付与され、ペルソナライドの効果も含めパワー33000、クリティカルに上昇。

 

「セカンドチェック────ノートリガー。サードチェック────ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てノーヴィアに!」

 

次いで捲られた2枚目はノーマルユニットのパラディウムジール。

そして3枚目はトリガーユニットのブレードフェザー、クリティカルトリガーだ。

その効果はノーヴィアへと付与され、パワー30000、クリティカル2へと上昇。

これによって左右どちらのリアガードもクリティカルが2となり、ダメージ4のユナは攻撃を通すという選択肢を潰されてしまう。

 

「エーリアルのブースト、ノーヴィアでリシアフェールにアタック! スキル発動! SB1でパワー+10000! さらにエーリアルのブースト時スキルでパワー+5000! 合計パワー53000、クリティカル2!」

 

「エドウィージュとウォリス、メルティとエルベリーナでガード!!」

 

2体目のエーリアルのブーストを受けたノーヴィアの攻撃。

スキルによって53000まで増加したこのアタックに、ユナはトリガーユニット2枚とノーマルユニット2枚の計4枚でガードする。

シールド値15000が2枚と、シールド値5000が2枚の合計シールド値40000がリシアフェールのパワーに18000加算されて58000まで上昇。

リシアフェールのパワーがノーヴィアのパワーを上回ったのでガードが成立した。

 

「ガブエリウスでリシアフェールにアタック! スキル発動! このユニットが『運命者』を含むヴァンガードの能力で登場していて、このターン中リアガードがドライブチェックを行っていないなら、CB1でこのユニットのパワー+10000、ドライブ− 1してドライブチェックを行う! パワーは43000!!」

 

最後に残されたガブエリウスをレストし、アタック時スキルが発動する。

ダメージゾーンにある最後の表カードがコストとして裏返され、ガブエリウスはそのパワーを上昇させ、さらにドライブチェックが可能となった。

その合計値はペルソナライド効果とトリガー効果を合わせ43000。

さらにはクリティカルも2に増加している。

ユナは自身の手札を見て

 

(残りは3枚……内1枚はシールド値のないG3のリシアフェール……あとの2枚はトリガーユニットだからガードは出来るけど……ガブエリウスにはドライブチェックがある……)

 

そうユナの残り手札3枚のうち1枚はシールド値を持たないグレード3のリシアフェール。

もう2枚はトリガーユニットのエドウィージュとファビオラ、共にシールド値は15000。

ディヴァインスキルで常時パワー+5000されているリシアフェールのパワー18000に足せば合計は48000となりガードは可能だ。

しかしガブエリウスはスキルによってドライブチェックを行う権利を得ている。

このドライブチェックでトリガーが出れば攻撃は貫通し、ユナは2ダメージを受ける事になるだろう。

ユナは一瞬だけ迷うも意を決して

 

「エドウィージュ! ファビオラでガード!!」

 

手札からトリガーユニット2枚をガーディアンサークルへとコールした。

それを見ていたヒカリ達は

 

「トリガーユニット2枚だけ? もしかしてユナさんガード値が足りてない?」

 

「残ったもう1枚を出さないって事はそうなんでしょ。トリガーが出ない事にユナさんは賭けたんだ」

 

そう口にした。

ミコトは自身の両手を祈るように握り、目を逸らす事なくアキナを見つめている。

このドライブチェックで全てが決まる。

緊張が奔る中、アキナはデッキの上に手を添えた。

軽く息を吐いて

 

「ドライブチェック!」

 

最後のドライブチェックを行った。

 

「─────ゲット! クリティカルトリガー!! 効果は全てガブエリウスに!!」

 

捲られたカードはトリガーユニットのしゔぁるみゃー、クリティカルトリガーだ。

その効果は全てガブエリウスに与えられパワーは43000から53000に上昇、リシアフェールのパワー48000を上回り防御は貫通。

さらにはダメージを与えるクリティカルも3に増加。

これによってユナは3回のダメージチェックを行うこととなる。

 

「ダメージチェック。1点目───ノートリガー。2点目────ゲット! ヒールトリガー! リシアフェールにパワー+10000与えてダメージを回復!」

 

行われるダメージチェック。

1点目はノーマルユニットのネリネア。

そして2点目はなんとヒールトリガーであるファビオラだった。

現在互いのダメージは同じ5点。

ヒールトリガーの効果が発動してユナはダメージを1回復し、リシアフェールにパワー10000を与えた。

だが、まだあと一回ダメージチェックは残っている。

 

「3点目────っ!」

 

微かに震える手で捲られた最後のダメージは

 

「ノートリガー……ユナの、負けです……」

 

彼女の分身たる『至高の宿命者 リシアフェール』。

ダメージゾーンへと置かれ、これでユナの6点目が確定。

 

「それまで! 勝者、アキくん!」

 

最後のダメージが置かれた事を確認したナオがそう口にする。

彼は小さく息を吐き、ついでに右拳を握りしめて

 

「よし!」

 

勝利の実感を噛み締めた。

 

「すっごい接戦だったね……」

 

「ええ。けど、いいファイトだったわ」

 

ファイトが終わり緊張の糸が解け、気の抜けた声で言うヒカリにエリカがそう応える。

同じようにミコトも安堵の息を吐いて

 

「アキナ先輩!」

 

ファイトを終えたアキナに声をかけると彼は振り向き、無邪気に笑みを返してきた。

釣られたように彼女も笑みを零し、次に項垂れているユナへと視線を向けた。

目が合った瞬間、目を逸らすユナ。

あれだけ暴走した上に理不尽な条件を付けたファイトを彼女の大切な人にさせた故に気不味いのだろう。

そんな彼女に対して、ミコトが声をかけようとするも

 

「西園寺さん」

 

それより速くアキナが彼女に声をかけていた。

ユナはビクリと身を震わせながら恐る恐る彼の方に目を向ける。

 

「このファイトは俺が勝ったけど、きっと君はまだ納得出来てないと思ってるんだ。だから────」

 

そこで一度アキナは言葉を止める。

ユナは怯えた小動物(チワワ)のようにプルプルと震えながら彼を見ている。

彼に理不尽な行動をしでかした自身にどのような沙汰が下されるのかを考えているのだろう。

そんな彼女にアキナは

 

「またファイトしよう。君が納得出来るまで何度でも。俺はいつでも、真正面から受けるからさ」

 

言いながら笑いかけた。

予想とは違うアキナの言葉に、ユナは拍子抜けた表情になりながらも、先ほどのファイト中と同様に彼の目をジッ見る。

揺らぐ事のない赤の瞳。

 

(……この人はどこまでも真っ直ぐなんだ。どんな事でも、どんな人相手でも、正面から真摯に受け止める人なんだ……そっか……みーたんはこの人のこういう処に惹かれたんだ……)

 

思考が巡り、彼女は腑に落ちたような表情になる。

小さく息を吐き、改めて彼に目を向けて

 

「いえ……もう充分に納得出来ました」

 

そう口にする。

返ってきた彼女からの言葉にアキナは呆けた顔になるも、ユナは構わずに続けた。

 

「約束通り、お二人の事は口外しませんし写真も消します。失礼な事ばかり言ってすみませんでした」

 

ペコリと頭を下げ、これまで彼に取っていた自身の行動と言葉を謝罪した後、ユナはスマートファンを取り出し件の写真を消去する。

そして今度はミコトの方に目を向けて

 

「みーたんにもごめんなさい。ユナ、自分の気持ちばっかりでみーたん(推し)の気持ちを考えてませんでした……みーたんの大事な人の事、沢山悪く言ったりして……ごめんなさい」

 

先程と同様に深々と頭を下げて謝罪するユナ。

するとミコトはかぶりをふって

 

「ううん。私の方こそ、怒鳴ったりしてごめんね。それとアキナ先輩の事、理解してくれてありがとう」

 

頭を下げたままのユナに言いながら歩み寄る。

恐る恐る顔を上げると、視界に映るのは自分に笑いかけているミコトの姿があった。

 

「あの……ユナ、いっぱい迷惑かけましたけど……まだ、みーたんの友達でいて……いいんですか?」

 

「もちろんだよ、ユナちゃん」

 

おずおずと訊ねるとミコトは満面の笑みでそう返した。

するとユナは感極まったのか涙目になり、その身をプルプルと震わせた。

 

「み……み……みぃぃぃぃぃたぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 

「へ? うきゃぁ?!」

 

かと思えば突如として奇声を発しながら勢いよくミコトへと飛びつくユナ。

あまりにも突然の行動に呆気に取られたミコトは避けることも出来ずにしがみつかれてしまう。

 

「みーたんはやっぱり聖母です! 天使です! 女神様ですぅぅぅ!! その海よりも深い慈悲の心にユナは! ユナは感謝感激や゛ま゛あ゛ら゛し゛て゛す゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!」

 

「ちょっ、わかったから離れて! や、だめ! スカートに鼻水つけないでぇぇぇぇぇ!!!」

 

鼻をズビズビ啜りながらしがみつくユナに対し、ミコトから憂ある絶叫。

慌てた様子でヒカリとエリカがユナを引き剥がしにかかるが、彼女はその華奢な身体には似合わない力でしがみつき続けている。

その様子をアキナは苦笑いで見ていると

 

「お疲れ様、アキくん。いいファイトだったよ」

 

「ナオ先輩。ありがとうございます」

 

ナオが労いの声をかけてきた。

その言葉にアキナは軽く頭を下げながら返す。

 

「よかったね、ユナちゃんに認めてもらえて」

 

そう言われたアキナはまたも苦笑いを零して

 

「……正直、認めてもらえるかどうかはどっちでも良かったんです。それよりも、せっかく友達になれた2人が喧嘩してギクシャクしてしまう方が嫌だったので」

 

言いながら彼は未だユナにしがみつかれているミコトに視線を向けながらそう言葉を紡ぐ。

その表情はとても穏やかで、向けている眼差しからも彼女への想いを感じ取れた。

 

「なるほどねぇ。あくまでもミコトちゃんの為で、認めてもらうのはそのついででよかったって事か。ホント、アキくんは何処までも『誰かの為』なんだねぇ。けど、それでこそアキくんって感じだよ」

 

「それ褒めてないですよね?」

 

「褒めてるよー。そのミコトちゃんへの深ーい想いに免じて、『詰めヴァンガード千問の刑』の残ってる問題は取り下げてあげようじゃない」

 

ニンマリと笑いながら言うナオに、アキナは小さく苦笑いを零す。

こうして、至高の君(ユナ)の暴走による奇跡(アキナ)への猛追劇は幕を閉じた。

その後、ユナもお泊まり女子会に参戦する事が決まり、彼女達は楽しい時間を共に過ごしたのだった。

 

 

 

 

またこの日の夜、同じミコトを推す者同士という事でヒカリとユナは意気投合し、『みーたん(推し)の幸せを護り隊』という同盟を結成したというのは別の話である。





20000字超えるなんて思うてなかったです。先攻1ターン目から書くとこんなにかかるんですなぁ……
今回のデッキも主の持ちデッキを使用しました。万化VS無双同様に魅せるファイトを意識したのでプレイング等は突っ込まないでくれると助かりんこなのです。

どんな話を書いてほしい?

  • ほのぼのした話
  • 甘くイチャつく話
  • アキミコ以外の話
  • ファイト話
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