唐突に降って湧いた京都旅行。果たして彼らはどんな景色を見て経験をするのでしょう? 相変わらずアキナ×ミコトで付き合ってる設定。妄想と空想と幻想をコウテイペンギンの雛がコネコネと混ぜ込んでますので解釈違いを起こしそうな方は観覧注意。
望むところという方はスタンドアップしてどうぞ〜
「いやぁ、まさか特賞を引いちゃうなんて、さすがはミコトちゃん。ここぞという時の引きは抜群だね?」
「嬉しいのは嬉しいですけど……これ、どうしましょうか?」
員弁ナオの言葉に対し、西塔ミコトは複雑な表情をしながら手にしている特賞と書かれた封筒を見てそう言った。
現在、彼女達はとある中華飯店に訪れている。
皆に触発されてヴァンガードを始めたばかりの友人、竹松ケントにデッキの組み方や細かいルール等を教える為に訪れたストレイキャットにてショップ主催の大会が行われ、それに参加したミコトが決勝で当たった明導アキナと激戦を繰り広げ見事優勝。
ケント以外の皆で夕飯を食べて帰ることになり、その前に賞品として得た福引券5枚を大会に参加出来なかった者にも分けて福引チャレンジを行ったところ、ミコトが最後の1枚にして特賞である『京都温泉旅館宿泊券ペアチケット2枚組』を入手して今に至っている。
「まぁ、いきなり温泉旅館の宿泊券なんて手に入ったら戸惑うよなぁ」
「確かにね」
苦笑いを溢しながら少年─────明導アキナはそう言って自身が注文した五目炒飯をレンゲで掬って口にする。
その隣で青椒肉絲を食べていた少年─────藍川クオンも箸を止めて同意するように頷いた。
彼らの言葉に酢豚を摘んでいた2人の少女─────明導ヒカリと西園寺ユナも苦笑いだ。
ただ1人、呼続スオウのみ関心が無いのかクオンの隣で黙々と天津飯を食べ続けている。
それぞれ多様な反応を示す中、ナオはミコトの言葉に対し
「どうって、そりゃ行けばいいんじゃない? アキくんと一緒にさ」
あっけらかんとそう言いながら目の前の餡掛け炒飯をレンゲで救って口に頬張った。
「ちょ、ナオ先輩?!」
「そんな簡単に?!」
咀嚼しながら表情を綻ばせるナオに対し、当然の事ながらアキナとミコトは顔を赤くしながら声を荒げるが、当の彼女はどこ吹く風だ。
「なぁにそんなに慌ててんの? そのペアチケット、男女ペアじゃないと使えないんでしょ? そしてそのチケットを当てたのはミコトちゃんなんだし、アキくんはミコトちゃんの彼氏なんだから当然でしょ?」
嚥下したナオは手に持つレンゲをクルクル回しながらそう言った。
ミコトが手にしているペアチケットはナオの指摘通り男女ペアでのみ使用可能となっている。
そしてまたナオの言う通り当てたのは他ならぬミコト自身であり、使用するなら彼女自身と恋人であるアキナが妥当である事は間違いではない。
「いや、家への泊まりならまだヒカリちゃんのお誘いって事で誤魔化せますけど……」
「圏外への旅行となると流石に……」
ナオの言葉に2人は言い淀んだ。
2人は恋人関係にあるがミコトのアイドルとしての立場がある故、その関係は親しい間柄であるナオ達以外には秘密にしている。
ローカルとはいえミコトの人気は絶大なもので、活動復帰してからはさらにその人気は上昇している状態だ。
明導家への泊まりはヒカリからの誘いが基本なので誤魔化す必要もないのだが、旅行ともなれば話は変わってくる。
2人だけで旅行などに出て、その姿を目撃されようものならば彼らの関係を詮索する輩は必ず現れるだろう。
万が一にでも2人の関係がバレてしまえば彼らの生活に多大な影響を出してしまう事は想像に難くなく、2人が躊躇してしまうのは無理もない話である。
「別に2人だけで行きなさいとは言ってないでしょ? ペアチケットは2枚あるんだから1枚はアキくんとミコトちゃんで使って、もう一枚でこの中から別の男女ペア作って一緒に行けばいいんだよ。そうすれば友達同士の旅行って事で誤魔化せるでしょ?」
そんな事は想定済みと言わんばかりにナオはウインクして見せた。
確かに彼女の言う通り、それならば友人同士での旅行として誤魔化すことは可能だろう。
「それは……そうかもしれませんけど」
しかし未だ踏ん切りがつかない様子のアキナ。
そんな2人にナオは苦笑いを溢し
「もー、ホント真面目だね。高校生で外泊旅行、しかも京都なんてそう行けるもんじゃないんだし、せっかくのチャンスなんだから活用しちゃいなよ。ね?」
そう言ってアキナとミコト、2人それぞれに視線を送る。
ナオの言葉にアキナがどう返すか迷っていると
「……私、アキナ先輩と京都旅行……行きたいです」
「え?」
ミコトがおずおずとそう申し出てきた。
僅かに頬を赤らめながら、アキナに目を向けて
「先輩は……行きたくないんですか?」
そう訊ねてくる。
ほんのりと熱を込めた翡翠の瞳で自分を見てくる彼女に、アキナは気恥ずかしくなったのかミコト同様に頬を僅かに赤く染め
「そんなわけ────ないよ。俺だって、行きたいに決まってる。だから、行こうか、京都旅行」
「っ! はい!」
それでも目を逸らさずに微笑みながらそう言うと、ミコトも満面の笑みを浮かべて頷いた。
2人の様子を見てナオはウンウンと満足そうに頷き
「やっぱ人間は素直が1番だよねぇ。で、日取りはどうするの? あとチケットも有効期限あるよね?」
「えっと……期限は後2ヶ月ですね」
訊ねられたミコトが封筒からチケットを取り出して確認。
有効期限の欄には確かに2ヶ月後の日付が記載されていた。
「けっこう短いね。となると……」
「もうすぐ3連休がありませんでしたか? その時に決行してもいいのでは?」
ナオが腕を組んで考える仕草を取ると食事の手を止め、スマートフォンを片手にユナが告げてきた。
ナオ達もスマートフォンを取り出してカレンダーを確認すると、確かに3週間後の土曜から月曜までが3連休になっていた。
「確かこの連休は……私、まるまるオフになってます。ゆっくり羽を伸ばせるようにってマネージャーがスケジュール調整してくれたんですよね」
「俺も今のところバイトのシフトは入ってないし、事前に言っておけば大丈夫だと思う」
「アキくんのシフトの方は私の方からも店長に言っとくよ。いきなりヘルプ頼まれて台無しにならないようにね」
アキナとミコトがそれぞれのスケジュール表を確認し、なおかつナオがアキナのバイトのシフトに関してアシストする事を宣言し
「日取りは決まったね。あとは残りの残りのペアチケットで男女ペアをこの中から作るだけなんだけど、私はパスでお願いね」
「え? ナオさんは参加しないんですか?」
ナオの言葉にヒカリが首を傾げながら訊ねると、彼女は苦笑いを浮かべながら
「参加したいのは山々なんだけどね、その3連休は東京の方で大会があるんだよー。もうエントリー済ませちゃってるから流石にキャンセルするわけにはいかないからね」
そう言って肩をすくめる仕草を取った。
念願のプロファイターになってから、彼女はあらゆる大会に出場して実績作りに励んでおり、今回の東京での大会もその一環で、圏外の方にも足を伸ばす事が多くなっていた。
とは言うものの、語るその表情は残念そうだ。
本音を言えば彼女も京都旅行に参加したかったのだろう。
「そうですか。私、ナオさんとも京都に行きたかったです」
ナオの言葉にミコトが残念そうな表情をしながら言うと
「まぁ今回はタイミングがね。これからも機会はあるだろうから、その時は一緒に行こうね」
「はい!」
笑いながら返してくるナオに、ミコトも笑みを浮かべて頷いた。
改めてナオは咳払いをし
「というわけで、女子枠はヒカリちゃんかユナちゃんのどっちかで決めてね。それで男子枠は──────」
「その旅行」
話を進めていくナオの言葉を、これまで黙々と食事を続けていたスオウがその手を止めて口を開く。
「行けばアキナとファイトし放題なのか?」
「は? ファイト? いやまぁ、デッキは持っていくだろうけど……観光メインなんだからそれは……」
唐突なスオウの言葉にアキナは面食らった後、苦笑いを浮かべそう言うと
「夜まで観光をするわけではないだろう? なら問題ない」
真顔で宣うスオウの目は期待に満ちており、彼の頭の中ではすでに一晩中アキナとファイトする事が決定しているようだ。
その証拠に、彼は今すぐにでもファイトしたいという感じでウズウズしている。
もしもこの状態のスオウが京都旅行に行く事が決まればアキナの睡眠不足は避けられないだろう。
困り顔でどう切り返すべきかアキナが悩み始めた────その時
「スオウ、悪いけど、僕も京都の温泉には興味があるんだ。だからその枠はちょっと譲れないかな」
クオンが穏やかに笑いながらそう言うと
「む。オレも譲る気はないぞ、クオン」
当然のことながらスオウも譲る気はないと返してくる。
そして一方
「私だってみーたんと温泉旅行行きたい!」
「ユナだって行きたいです! 推しとの旅行。このチャンスは逃したくありません!」
ヒカリとユナもまた、自分達の推しであるミコトと旅行に行けるチャンスを逃したくないと権利を主張してきた。
それぞれでの睨み合いにアキナとミコトは苦笑いを溢している。
このままでは埒が明かないと判断したナオは軽く手を叩き
「ま、当然のこうなるよね。ならこうしよう。藍川君と呼続君、ヒカリちゃんとユナちゃん、2組に別れてファイトして、勝った方がもう一枚のペアチケットを使用出来る! で、どうかな?」
そう言いながら順番に彼らを見た後、ペアチケットの持ち主であるミコトに問いかけた。
ミコトがチラリとアキナに目を向けると彼は頷き、ミコトも頷いて返してから
「はい、それでいいと思います」
ナオの提案に賛成の意を示した。
スオウ達も納得したように頷き、意気揚々とデッキを取り出していた。
しかし、そこでふとアキナが何かに思い至ったようで
「けどナオ先輩。決め方はそれでいいとしても、どこでファイトするんですか? 今からまたストレイキャットに戻っても閉店間際になるから迷惑になりますよ?」
そう問いかけた。
彼の指摘通り、スマートフォンで時間を確認してみるとすでに20時を過ぎており、今からストレイキャットに押し掛ければ確実にお店側に迷惑をかけてしまうだろう。
「確かにそだね。とは言っても私の家もアキくんの家もここからじゃ時間かかるし、かと言って今日のうちにペアを決めないと後々だと面倒だしねぇ……」
アキナの問いかけにナオが腕を組んでどうするべきか思案していると
「話は聞かせてもらったよ」
突然知らない声が聞こえてきたアキナ達は声の方に目を向けると、そこには初老の男性の姿。
その男性は黒の修道服を身に纏い首からロザリオを下げており、身に着けられているエプロンと頭のコック帽がなんともシュールな絵面を醸し出しており、アキナ達から言葉を完全に奪っている状態だ。
彼らがどう反応していいのか迷っている事に気付いた男性はククッと微かに笑うと
「すまない。私はこの店の者でね。気軽に神父とでも呼んでくれたまえ」
そう言って軽く頭を下げて自己紹介をした。
「えっと……それで、神父さんは何の用で俺達に声を?」
戸惑いながらもアキナがそう返すと、神父と名乗る男は意味深な笑みを浮かべながら
「いやなに、聞くところによると君たちはヴァンガードファイターで、今から大事な事をファイトで決めようと考えているが場所が無い。ゆえにどうするか悩んでいたというところだろう? それならば奥の空いているテーブル席を使ってはどうかと思ってね」
そう提案して店内の奥にある8人用のテーブル席を指差した。
大きめなテーブルなので2組でファイトするにはもってこいのモノではある。
しかしながらユナがおずおずと手を上げて
「あのぉ……流石に飲食店でカードを広げるのは迷惑なのでは?」
そう言ってきた。
彼女の言う通り、飲食店はあくまでも食事をする場であってカードファイトを行う場では無い。
至極真っ当な事を言うユナにアキナ達も同意するように頷いている。
しかし神父と名乗る男性は
「構わんとも。見ての通り今の時間帯は客の入りが悪くてね。いつも21時を過ぎなければ客が入ってこないのだよ。故に、何の問題もない」
そう言って肩を竦めてみせた。
確かに現在店内にいる客はアキナ達はのみで他の席は完全に空いている状態だ。
特に他の客もおらず、さらに店の主が許可してくれると言うならわざわざ別場を探す必要もなくなり願ったら叶ったりではあるのだが、どうにも出来すぎた話に当然の事ながらアキナ達は警戒心を抱き、神父(仮)の提案に頷けないでいる。
そんな彼らの心情を察しているのか、神父(仮)は小さく笑い
「なに、もちろんタダという訳ではない。使用するには条件がある」
そう口にする。
やはりそう上手い話などある訳がない。
アキナ達は警戒心を強め、緊張した面持ちで神父(仮)の次の言葉を待っていると
「そう身構えなくてもいい。簡単な事だよ。この店を宣伝して欲しいのだ」
神父(仮)が出してきた条件は自身の店の紹介。
どんな条件が出されるか警戒していたアキナ達は当然の事ながら拍子抜けた表情だ。
数秒呆気に取られるも、すぐに小さくかぶりを振ったナオが軽く咳払いをして
「そ、そんな軽い条件でいいの?」
「もちろんだとも。この店はオープンしてまだ日が浅くてね。もう少し客層を増やしたいと思っていたのだよ。特に、辛い物を好んで食す者は大歓迎だ」
ナオの問いかけに応えながら、神父(仮)はどこに持っていたのかチラシを一枚ずつアキナ達へと手渡していく。
店名と看板メニューとなっている麻婆豆腐のロゴが印刷されだそれを一瞥したアキナ達はそれぞれ目配せをした後
「その条件呑んだ! 大学の方で宣伝しておきますよ。ついでに、辛い物なら1人猛者がいるからそっちにも声かけときますねー♩」
代表してナオが神父(仮)の条件を呑むことを伝えた。
「ナオさんの言う猛者って誰なんでしょう?」
「さぁ……?」
彼女の言う辛い物好きの猛者が誰なのかわからずアキナとミコトは疑問符を浮かべているが、クオンとユナ、そしてヒカリは心当たりがあるようで納得したような表情を浮かべており、ナオはナオで何処か意地の悪い笑みを浮かべている。
余談ではあるが、後日この店の看板メニューである激辛麻婆豆腐を見事食べ切り、それ以降常連客なる金髪の女性が現れる事となるのだがそれはまた別の話である。
アキナ達が自身の出した条件を呑んでくれた事に神父(仮)は満足した表情を見せて
「交渉成立だな。ではゆっくりとファイトしていってくれたまえ」
言いながら奥の厨房へと去っていった。
それを見送ったアキナ達はみな顔を見合わせて
「なんか、掴みどころの無い人でしたね?」
「親切な人────とは違う気がするんだよなぁ」
「わかります。あの意味深な笑い方、愉悦を求めてそうな感じがしました」
ミコトとアキナ、ユナが先程の神父(仮)の印象を口にする。
確かに優しそうな表情を浮かべてはいたし物腰も柔らかい。
だがその目には光が見えず、何処となく昏いモノを宿しているようにアキナ達は感じていた。
ヒカリやクオン、そしてスオウさえも同様に微妙な表情をして彼らの言葉に頷いている。
「ま、何はともあれこれでファイトする場は決まった訳だし、早速もうワンペアを決めちゃおっか。ユナちゃんとヒカリちゃんのファイトは私が見てるから、アキくんとミコトちゃんは呼続君と藍川君のファイトを見ててね。でもその前に、注文した料理を片付けちゃおうか」
手を軽く叩いてナオがそう促すと、彼らはいそいそと自分達が注文した料理を食べて納めていく。
料理を食べ切り、神父(仮)が指定した奥のテーブル席に移動すると、ヒカリとユナ、クオンとスオウのペアに別れてそれぞれのメインデッキを取り出してカット&シャッフル。
ライドデッキとシャッフルしたメインデッキをセットし、次いでファーストヴァンガードを裏でセットして手を添えた。
「さ、準備はいい? 始め!!」
『スタンドアップ! ヴァンガード!!』
ナオの掛け声と共に4人はファーストヴァンガードを表返し、京都旅行をかけたファイトが幕を開けた。
「あー! まーけーたー!」
「ファイト……アキナと……ファイト……」
京都旅行をかけたファイトはどちらも熾烈なモノだった。
ヒカリ対ユナは、ヒカリの先攻で始まり順調に詰めの準備をしていたものの、肝心の4ターン目にて彼女はキーカードである
そしてスオウ対クオンはどちらも譲る事のない攻防を繰り広げるも、トリガーの引き運が僅かに上回った事でクオンが勝利を掴み取った。
これにより、もう1枚のペアチケットで京都旅行に行くのはクオンとユナに決定。
ファイトが決着し、会計を済ませ改めてファイト場を提供してくれた神父(仮)にお礼の言葉を述べてから店を出た彼らは帰路に着いている。
ヒカリとスオウは負けてしまった事でどんよりとした雰囲気を醸し出していた。
「うう……せめてぺいしぇんすさえ手札にあればダメージの因果歪曲・断罪を回収出来てたのにぃ……」
「まぁあるよねぇ。大事な場面でキーカードを揃えられないパターン」
項垂れながら先ほどのファイトを振り返るヒカリにナオが苦笑いで言う。
ファイトは常に最善の動きが出来るとは限らない。
こういったキーカード不足による苦戦はよくある事だが、
「今回は残念だったけどまた機会はあると思うし、その時は女の子同士で行こう? もちろんナオさんとユナちゃんも一緒に。ね、ヒカリちゃん」
「うぅー。絶対だからね! 約束だよ、みーたん!」
落ち込むヒカリにミコトが苦笑いを溢しながら言うと彼女は勢いよくミコトに抱き、その様子をユナとナオが微笑ましげに眺めている。
その横では
「そういうわけでアキナ、旅行当日はよろしく。これでちゃんとした睡眠時間を確保出来るよ」
「まさかクオン、その為に?」
「せっかくの旅行なのに、睡眠不足で楽しめなかったら本末転倒だからね。まぁ、温泉に興味があるのも本当だけど」
アキナの問いかけにクオンがそう返す。
もしもスオウが旅行に同行すれば間違いなく夜通しファイトに付き合わされ、アキナの睡眠不足は回避出来なかったであろう。
それを阻止する為にクオンは旅行の参加に手を上げたのである。
とは言え、クオンもスオウに対して申し訳ないという気持ちがない訳ではない。
彼はしょんぼりしているスオウに近付き
「スオウ、旅行権は僕が貰う事になったけど、かわりに連休の間はスオウにケントの特訓をして欲しいんだ」
これでもかというほどの笑顔を浮かべながらそう言うと、スオウはクオンに目を向けて
「特訓?」
「そう、特訓。彼はまだ初心者だ。けど、初心者だからこそ伸び代があると思わないかい? ファイトの回数をこなせばそれだけ実力も伸ばせるし、スオウも満足するまでファイト出来るはずだよ」
疑問符を浮かべる彼にスラスラと尤もらしいことを宣うクオン。
「……わかった。オレに任せろ」
彼の言葉に少しだけ思考した後、スオウは小さない笑みを浮かべながらそう返す。
その様子を見ながらアキナは苦笑いを浮かべ
(がんばれ、ケント)
心の中で合掌。
同様に彼らのやり取りを聞いていたナオ達も苦笑い状態だ。
これまた余談ではあるが、クオンの言葉に乗せられたスオウによって連休中ファイトに付き合わされたケントの悲鳴がストレイキャットから絶えることなく響き渡ったのは言うまでもないだろう。
兎にも角にも京都旅行に行くメンバーが決定し、談笑しながら歩いて行くと別れ道に辿り着き
「さて、今日はこれでお開きだね」
「ですね。そうだ、旅行の手続きは俺とクオンでやっておくよ。ミコトさんはアイドルとしての仕事もあるから忙しいだろうし」
ナオの言葉に同意した後、アキナはミコトに目を向けてそう言った。
それを聞いたミコトは頷いて
「わかりました。じゃあ、ペアチケットはアキナ先輩に預けておきますね」
ペアチケットと同時に渡されていたパンフレットをアキナヘと差し出し、彼がそれを受け取ったのを確認すると
「先輩。私、旅行楽しみにしてます!」
「うん。俺もだよ」
言いながらはにかむ彼女に、アキナも優しく微笑んでそう返した。
甘い雰囲気を醸し出しながらアキナとミコトは互いに微笑み合うが、それを制するように
「おほん。2人ともー、イチャつくのは2人っきりの時にしてよねー?」
態とらしく咳払いをしながらもニヤついた表情でナオが言うと
『い、イチャついてないです!』
アキナとミコトは声を揃えてそう返してきた。
息ぴったりの2人に、ヒカリとユナ、クオンも思わず吹き出して笑いだし、ひとしきり笑った後、彼らはそれぞれの帰路につく事にして解散し、この日はお開きとなった。
翌日、早速アキナとクオンはパンフレットに記載されている旅館に予約の手続きの為に連絡を入れる。
予約の手続きは滞りなく終わり、その事をミコトとユナに連絡して当日に体調を崩して台無しにならないよう、彼らは健康に気を配りつつ旅行の準備を整えていった。
そうして時は過ぎ、あっという間に京都旅行当日の朝を迎えたアキナはいつもより早く起床。
前日に準備しておいた2日分の着替え等を旅行用のバッグに詰め、手早く朝食を準備し、丁度作り終えたタイミングでヒカリが起床。
アキナは目を擦りながらダイニングへと降りてきた彼女に顔を洗って着替えてくるように促し、トーストとプレーンオムレツ、サラダをダイニングテーブルに並べ、彼に言われた通り洗顔と着替えを済ませてきたヒカリと共に朝食を食べる。
食べ終えて食器を片付けた後、彼も身支度を整えて荷物の最終チェックを行い、漏れがない事を確認すると旅行用バッグを手に持って玄関へと移動する。
「私もみーたんと温泉行きたかったなぁ……」
「仕方ないだろ? また機会はあるって。とにかく留守番よろしくな。昼頃にはエリカが来るから仲良くするんだぞ?」
いまだに旅行権を獲得出来なかった事を嘆いている妹に、アキナは苦笑いを溢しながらそう言った。
何故エリカの名が出てきたのか?
本日から3日間アキナは旅行で家を留守にする事になる。
その間も彼らの父親は仕事によって帰ってこれないらしく、そうなると3日の間自宅にはヒカリ1人だけとなってしまう。
流石に妹を1人だけにしておけないと考えたアキナは予約手続きを完了させた後、すぐにエリカに連絡して事情を説明し、自分が帰るまでヒカリと一緒にいて欲しいと頼んだのだ。
事情を聞いたエリカは「アキナの頼みなら」と了承し、アキナ不在の3日間だけエリカが明導家に滞在する事になったのである。
「ぶぅー、わかってるよーだ。お兄ちゃんこそ、せっかくのみーたんとの旅行なんだからしっかり楽しんでくるんだよ!」
「もちろん、そのつもりだよ。それじゃぁ、行ってくる」
「いってらっしゃい、お兄ちゃん! お土産よろしく!」
ちゃっかりとお土産の要求も忘れない妹に苦笑いを溢しつつもアキナは頷いて自宅を出た。
突然降って湧いた友人、そして恋人との京都旅行。
期待に胸を膨らませながら、アキナはミコト達との集合場所である駅前に向かって歩き出した。
To Be Continued
神父と名乗る中華料理店の店主、一体何者なんだ……? というわけで続きます。なるべく早く更新したーいです
どんな話を書いてほしい?
-
ほのぼのした話
-
甘くイチャつく話
-
アキミコ以外の話
-
ファイト話