運命者達の軌跡   作:藤崎葵

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相変わらずのアキナ×ミコトで付き合ってる設定。今回はミコトちゃんとナオ先輩のファイト話。かなり長い上に妄想と空想と幻想が極大です。

時間軸的には『秘密の関係』後、『零に触れる』前となっとります。


それでも構わねぇ!って方はスタンドアップでどうぞ〜


無双に示すは万化の覚悟

 

 

 

「それじゃあミコトちゃん。準備はいい?」

 

「はい。いつでもいいですよ、ナオさん」

 

テーブルを挟んで向かい合うのは2人の少女。

互いにデッキをセットして手札の入れ替えを行い、裏返されているファーストヴァンガードに手を添える。

 

『スタンドアップ! ヴァンガード!!』

 

ファイト開始の掛け声が同時に響き、ファーストヴァンガードが表返された。

今ファイトを行なっているのは無双の運命者カードの所持者──員弁ナオと万化の運命者カードの所持者──西塔ミコトだ。

何故この2人がファイトしているのか?

事の発端はこれより少し前に遡る。

 

 

 

本日は日曜。

この日、ミコトとナオは明導家を訪れていた。

彼女達だけではなく、運命大戦を通して交流を持つ事になった清蔵タイゾウと呼続スオウも訪れている。

呼んだのは他でもない、明導アキナだ。

リビングダイニングに通されナオ達と彼の妹である明導ヒカリはアキナから、否、正確にはミコトと彼の2人から

 

『実は、俺達……お付き合いをさせてもらってます』

 

『隠しててすみませんでした』

 

そう告げられたのである。

アキナとミコトは運命大戦からしばらくたった頃に恋仲となっていたのだがそれを周囲には隠していた。

しかしながら二人が互いに接するときに纏う雰囲気はとにかく甘い為、ヒカリを始めナオとタイゾウもそうではないかと察していたのだが、少し経てば自分たちくらいには明かしてくれるだろうと思っていた。

しかし彼らは一向に話してくれる気配を見せかなった為、痺れを切らしたヒカリから『気付いてないのはスオウくらいだ』と苦言を呈されたアキナはミコトと話し合った結果、本日彼らに自分達の関係を打ち明けることにしたである。

ようやく打ち明けてくれた彼らにナオ達は苦笑いを零しつつ、ヒカリの指摘通り本当に気付いていなかったスオウも喜ばしい事だと理解してしっかりと二人を祝福。

そこから質問タイムへと入り、『どちらから告白したのか?』や『どこまで進んだのか?』などとかなり返答に困る質問が主にアキナへ集中している中、ナオはふとミコトが何やら微妙そうな表情をしている事に気が付いた。

不思議に思った彼女がミコトに視線を向けてみると目が合った瞬間に逸らされてしまい、そこで少々思考に耽った後

 

『ねぇ、アキくん。ミコトちゃんと話したい事があるから席を外してくれないかな? もちろんタイゾウさんと呼続くんも。あ、ヒカリちゃんは残ってていいからね』

 

そのように要求してきた。

突然の事にアキナは疑問符を浮かべるもナオの真剣な目を見て

 

『わかりました。スオウ、タイゾウさん、俺の部屋に』

 

彼女の意図を察して男子二人を自分の部屋に向かうように促した。

アキナたちが出ていったのを見送った後、ナオは一息吐きミコトと向き合う。

残っているヒカリは漂う気まずい雰囲気にオロオロと二人を交互に見やった。

数秒の沈黙の後、口を開いたのはナオだ。

 

『ミコトちゃん。私に何か言いたい事があるんだよね?』

 

問われたミコトは一瞬目を泳がせるも、意を決したのかナオに視線を向けて

 

『ナオさん、ごめんなさい!』

 

そう言って頭を下げてきた。

当のナオは彼女の行動に疑問符を浮かべている。

 

『? いやー、なぜに突然謝罪なのかな??』

 

『え? だって……ナオさん、アキナ先輩の事好きなんですよね? なのに私、宣戦布告もせずに抜け駆けで先輩に告白したので……』

 

『は?! ちょ、ミコトちゃん?! 待った待った!!』

 

思ってもみなかったミコトの言葉に顔を赤くし、彼女の言葉を遮るようにワタワタと慌てるナオ。

だが、彼女とミコトの間に入るように座って様子を見守っていたヒカリが

 

『ナオさん。みーたんだけじゃなくて私も気付いてましたよ? ナオさんもかなりわかり易いですし。あれで気付かないのなんてお兄ちゃん本人と呼続さんだけですよ』

 

そう言ってきた。

しかも兄とその友人に対してかなり辛辣な評価を付けて、だ。

確かに彼女の指摘通り、ナオもアキナに対して異性としての好意を抱いていた。

彼は素直で人当たりもよくナオの事を尊敬して慕ってくれており、更には運命大戦にてアキナ自身は無自覚だが彼女の迷いを吹っ切る切っ掛けさえ与えたのだ。

これで後輩兼ヴァンガードの弟子として以上の好意を抱かない方が無理な話である。

とは言え、基本『人類皆友達』系である彼はヒカリの指摘通りナオの気持ちに気付いてはおらず、ナオもそれは承知の上でゆっくりと距離を詰めればいいと思っていた。

しかしそう思っていたのもつかの間、想いを寄せていた後輩は同じ運命大戦の参加者であったミコトといつの間にか恋仲になっており内密で交際を始めていた。

二人の互いに向けている視線や雰囲気で気付いた時には確かにショックを受けたが、可愛い後輩が幸せそうにしているのを見て『これはこれで有りかな』とすでに考えを切り替えている。

もっとも、すぐに報告してくれなったことには対しては不満に思っていたのだが。

 

『ヒカリちゃんキツイなぁ。なるほど。つまりミコトちゃんは私に負い目を感じてるってことでいいのかな?』

 

ヒカリの言葉に苦笑いになりつつもナオがミコトに問うと、彼女は気まずそうに頷いた。

先程述べた通り、ミコトもナオがアキナに好意を寄せている事には気付いていた。

アキナに告白したこと自体は後悔してないが、それでも気付いていながらナオに宣戦布告しなかった事に関してだけは後ろめたさが残ってしまっているのだろう。

 

『んー。でも、それはミコトちゃんが気に病むことじゃないと思うけどなぁ。恋はいつでも速戦即決の早い者勝ちだし。のんびりしてた私が間抜けだっただけなんだし、ね?』

 

『けど……』

 

ミコトはナオの言葉に未だ納得がいっていない様子だ。

 

⦅真面目だなぁ。こういうところ、アキくんと似てる感じがする……ふーむ、こうなったら⦆

 

巡らせている思考を止め、ナオはミコトに視線を向けて問いかける。

 

『ミコトちゃん、デッキ持ってきてるよね?』

 

『え? あ、はい』

 

問われた彼女がデッキを取り出すと、ナオはニッと笑って自身もデッキを取り出して

 

『今から、私とファイトしてくれない?』

 

そう申し込んできた。

突然の事にミコトはもちろんヒカリも驚いている。

ナオは構うことなく自身のライドデッキをセットしてメインデッキをシャッフルしながら

 

『見せてほしいんだよ。ミコトちゃんのアキくんに対する『覚悟』をね』

 

そう言ってシャッフルし終わったメインデッキをテーブルにセットする。

再び視線を向けてきた彼女は不敵に笑っていた。

ミコトはしばし沈黙するも、意を決してライドデッキをセットしメインデッキをシャッフル。

シャッフルし終えたメインデッキをテーブルにセットして

 

『わかりました。そのファイト、受けます!』

 

不敵に笑うナオを見据え、彼女からのファイトを受けることを承諾したのである。

こうして話は冒頭へと戻るのだった。

 

 

 

 

ミコトの先攻で始まったファイト。

すでにお互いグレード3である自身の分身へとライドしており、先程ナオのターンが終了してミコトへとターンが返されていた。

現在ミコトのダメージは3、エネルギーは6、手札は6枚で後列左に『食べ過ぎ注意!アイリーン』、右に『クーリング・ハート ユイカ』がコールされており、対するナオはダメージ2、エネルギーが5、前列右に『ドラグリッター シュウラ』がコールされており、手札はスキルを駆使して10枚にまで増えていた。

見届け役を頼まれたヒカリはファイト展開を息を吞んで見守っている。

 

「私のターン。スタンド&ドロー」

 

これでミコトの手札は7枚。

引いたのは『イノセントオレンジ アニエス』だ。

 

(クリスレインは引けないか……ペルソナライドしたかったけど、出来ないものは仕方ない……とにかく攻めて手札を削らないと)

 

巡らせた思考を止め、ミコトはプレイングを開始。

 

「ライドフェイズ開始時にエネルギージェネレーターの効果でEC(エネルギーチャージ)3。アニエスをコール! スキル発動、CB(カウンターブラスト)1EB(エネルギーブラスト)3。山札の上から5枚見てヴァンガードとリアガードに同名がないユニット選んでコールする。『ラヴィング・ピンク フランセット』をスペリオルコール!」

 

アイリーンの前、左前列にコールしたアニエスのスキルによってユイカの前にフランセットが右前列にコールされる。

 

「ユイカのスキル。このユニットと同じ縦列にユニットが登場した時そのユニットにパワー+5000!」

 

フランセットのパワーが10000から15000に増加。

 

「クリスレインのスキル発動! CB1を払い以下の効果を発動する。一つ目、EC3して1枚ドロー! 2つ目、それぞれ別名のユニットが4枚以上ならユニットを1体選んでこのターン中パワー+15000。フランセットを選択してパワー+15000! さらに3つ目。別名のユニットが5枚以上でクリスレインにクリティカル+1!」

 

この効果によりアニエスのスキルで6に減ったエネルギーが9に回復し、フランセットのパワーが30000にまで増加。

そしてヒットした時にダメージを与えるクリティカルが+1されクリスレインのクリティカルが2に増加した。

彼女のプレイングを観察しながらナオは思考を巡らせる。

 

(パワー増加効果をリアガードに振った? さっきのターンはクリスレインに振ってたのに……ペルソナライドしてない状態じゃヴァンガードのクリティカルを上げてもパワーが足りないから大した圧力にならないのに……)

 

思考を巡らせていると、ミコトは更にスキルの発動を宣言する。

 

「フランセットの効果発動。このユニットが『クリスレイン』を含むヴァンガードの効果で選ばれた時、このターン中ヴァンガードにパワー+10000!」

 

(そうか! このためにリアガードにパワーを振ったんだ。リアガードの火力を高めつつ自身も強化するとか……厄介なスキル連携だねぇ)

 

思わぬスキルの連携にナオは表情を崩すことなく思考する。

これでクリスレインのパワーは23000に増加。

 

「さらにエネルギージェネレーターの効果発動! EB7で1枚ドロー! クリスレインの後列にラウムをコール!」

 

ミコトは更にクレストカードである『エネルギージェネレーター』の効果で1枚引いて手札を増やし、ヴァンガードの後列に『シニカルコンポーザー ラウム』をコールする。

盤面が完全に埋まり、態勢は整った。

 

「バトルフェイズ! アイリーンのブースト、アニエスでヴァルガ・ドラグレスにアタック! アニエスのスキル! グレード3にアタックした時、別名のユニットが4枚以上ならパワー+10000! 合計パワー28000! さらにアイリーンのスキル! このユニットがブーストした時、デッキの上を1枚見てデッキの上か下に置くことが出来る!」

 

スキル効果に従いミコトはデッキの一番上を確認し

 

「デッキの上に置きます」

 

確認したカードをデッキの上に置いた。

 

(山札の上に置いたってことは確実にトリガーだね。それにリアガードからアタックしてきたって事は間違いなくディヴァインスキルも使ってくる……一気に私の手札を削いでダメージを与えて次に繋げる気か……上等!)

 

「スネゴスリでガード! さらにシュウラでインターセプト!」

 

ガーディアンサークルにコールされた『妖獣 スネゴスリ』のシールドパワーは15000。

更にインターセプトに使用したシュウラはシールド値5000。

これによりヴァルガ・ドラグレスのパワーは33000となりガード成功。

 

「ユイカでブースト! フランセットでヴァルガ・ドラグレスにアタック! スキル発動!別名のユニットが三枚以上でこのターン中フランセットのパワー+5000! 合計パワー43000!!」

 

「スネゴスリとディノブリーズ、ロクセイでガード!!」

 

この攻撃に対しナオは共にシールド値15000のスネゴスリと『爽風竜 ディノブリーズ』、そしてシールド値5000の『猛炎の武僧 ロクセイ』をガーディアンサークルにコール。

合計パワーは48000となりガードが成立する。

まるで計算通りとばかりに不敵に笑うナオ。

二度に渡り攻撃を防がれたミコトは表情を顰めつつも次の攻撃へと意識を切り替えた。

 

「ラウムでブースト、クリスレインでヴァルガ・ドラグレスにアタック! ラウムのスキル!このユニットがブーストした時ヴァンガードがクリスレインなら自身にパワー+5000! 合計パワー36000、クリティカル2です!」

 

「スパークルリジェクター!! 完全ガード!!」

 

クリスレインのアタックに対し、ナオが使用したのは『スパークルリジェクター・ドラゴン』。

このカードはデッキに四枚まで入れられる守護者(センチネル)のカード。

手札が二枚以上の時は手札を一枚捨てなければならないが、相手の攻撃を完全に防ぐことの出来る強力なガード札である。

コストとして『ボルダーアクス・ドラゴン』がドロップに送られ、防御成功が確定した。

 

「ツインドライブ。ファーストチェック──────ゲット! クリティカルトリガー! 効果はすべてクリスレインに!」

 

ドライブチェック一枚目で捲れたのは『珠玉の一曲 エドウィージュ』、クリティカルトリガーだ。

効果はすべてクリスレインに付与され、パワーとクリティカルが増加する。

 

「セカンドチェック─────ノートリガー」

 

二枚目に捲れたのは『クーリング・ハート ユイカ』、トリガーカードではなかった。

ドライブチェックで捲った二枚を手札に加え、すべての攻撃が終了──────ではなく

 

「まだです! 万化絢爛! ディヴァインスキル発動!!」

 

ディヴァインスキル────運命者カードが持つファイト中に一回だけ使える強力なスキルの発動を宣言。

 

「クリスレインがアタックしたバトル終了時、リアガードをすべて手札に戻し、手札から一枚選んでコールする! さらにこの効果でコールされたユニットのパワーとクリティカルは現在のクリスレインと同じになる! アニエスを選択してスペリオルコール! パワー33000! クリティカル3!」

 

効果によって手札に一度戻したアニエスがコールされそのパワーとクリティカルが現在のクリスレインと同じになるまで増加。

更にリアガードを手札に戻したことで手札を9枚から13枚にまで増やすことに成功した。

 

(やっぱり来たね。先に攻撃をガードしといて正解だったよ)

 

しかし、この動きもナオには読まれていた。

二人は運命大戦で当たることはなかったが、それぞれ別の対戦を観戦しておりある程度互いのプレイスタイルは把握している。

故にどのタイミングで仕掛けてくるかもおおよその予測が出来たのである。

 

「アニエスで、ヴァルガ・ドラグレスにアタック!!」

 

「ノーガード」

 

宣言されたアニエスのアタックをナオはノーガード宣言。

攻撃は成立し、ダメージチェックが行われる。

捲れたのは3枚ともノーマルユニットでありトリガーではなかった。

これによってナオのダメージは2から5へ。

もう1点与えれば勝利となるが、ミコトは先のアニエスですべての攻撃を終わらせている。

後はターン終了を宣言してナオにターンを返すことしかできない。

 

(……攻めきれなった。けどダメージは5まで押し込んだし、手札も増やした。むしろ気を抜けないのはここから……)

 

「ターンエンド」

 

思考を巡らせながらターン終了を宣言。

そのままナオを見据え

 

(ナオさん、わかってたけどやっぱり強い。無双の運命者カードの所持者でアキナ先輩のヴァンガードの師匠。そして、プロを目指す人……けど、負けられない……ううん、違う。勝つんだ!)

 

思考を巡らせ自身を叱咤するミコト。

 

「私のターン。スタンド&ドロー」

 

ナオのターンが開始され、レストしているヴァンガードをスタンドして1枚引く。

引いたカードを確認してナオは不敵に笑い

 

「ライドフェイズ開始時、ジェネレーターの効果でEC3。そして──────ペルソナライド! 『無双の運命者 ヴァルガ・ドラグレス』!!!」

 

自身の分身であるヴァルガ・ドラグレスへと再びライドし、ペルソナライドが発動する。

ペルソナライドとは同じカードにライドすることによって発動する強力な効果だ。

 

「ペルソナライドの効果により1枚ドロー! さらにこのターン中前列のユニットのパワーが常に+10000!! 続けてメインフェイズ。ツインパルシヴをコール! スキル発動! EB3で山札の上から5枚を見てグレード2以下を1枚選んでコールする! タイジョウをスペリオルコール!」

 

続けてコールされた『ツインパルシヴ・ドラゴン』の効果が使用され、右後列に『猛炎の武僧 タイジョウ』がコールされる。

 

「さらに手札からシュウラ、ヴァンガード後列にインペイルホーン、左後列にロクセイをコール! ロクセイのスキル発動! このユニットが登場した時このターン中相手はインターセプトが出来ない!!」

 

手札からコールされたロクセイの登場時スキルによってアニエスによるインターセプトを封じられたミコトは苦い表情をする。

 

(インターセプトは前列からでもガードに参加できるグレード2の固有能力。スキルが無い場合は最大2体で10000までシールド値として数えられる。みーたんのインターセプト要員はアニエス1体のみ。たかがシールド値5000だけどされど5000。この数値が時に戦局を左右することもあるからインターセプト封じはかなり痛いと思う)

 

ミコトの心情を代弁するように見届け人のヒカリが思考を巡らせた。

一見地味な能力に思われがちだが、時に手札のガード値が足りない時もある。

インターセプトが出来るのと出来ないのでは防御に大きな差が生まれるのだ。

ナオの盤面は完全に埋まり、攻撃態勢が整った彼女は不敵に笑う。

 

「バトルフェイズ! シュウラ単騎でクリスレインにアタック! スキル発動! EB2で自身にパワー+5000し、別名のリアガードを1枚選び『このユニットが退却した時、このユニットを手札に加える』能力を与える! 私はロクセイを選択! パワーは25000だよ!」

 

アタックしてきたシュウラはペルソナライドの効果と自身の効果で単体パワー25000まで上昇。

 

「タンムーズでガード!!」

 

対してミコトは手札からヒールトリガーである『トーカティヴ・アワー タンムーズ』をガーディアンサークルにコール。

シールド値は15000なのでクリスレインのパワーは28000まで上昇しガードが成立する。

 

「ロクセイのブースト、ツインパルシヴでクリスレインにアタック! 合計パワー31000!!」

 

「エドウィージュとユイカ、アイリーンでガード!!」

 

この攻撃に対してシールド値15000のエドウィージュと共にシールド値5000のユイカとアイリーンがコールされる。

パワーが33000まで上昇してガードが成立した。

 

「ヴァルガ・ドラグレス単体でクリスレインにアタック!! スキル発動! CB1で互いの前列ユニットをすべて退却し自身にパワー+10000! さらにアタック終了時に自身をスタンドさせてドライブ-2する!」

 

発動したスキルによって互いの前列ユニットがドロップゾーンへと送られたがこれで終わりではなく、さらなるスキルの連携が始まった。

 

「シュウラのスキル発動! このユニットが『ヴァルガ』を含むヴァンガードの能力で退却した時、CB1で自身をスペリオルコールしパワー+10000! さらにツインパルシヴの退却時効果発動! ヴァンガードを1枚選んでパワー+5000! そしてロクセイのスキル! 同じ縦列のユニットが退却した時、自身を退却させて1枚ドロー! さらにシュウラに与えられたスキルで自身を手札に! タイジョウのスキル。相手のユニットが退却した時、自身にパワー+5000!」

 

連携されたスキルにより攻撃回数を増やしてヴァンガードとリアガードの火力を高め、更には手札も補充してくるナオ。

洗練された見事なプレイング。

現在ヴァルガ・ドラグレスのパワーは単騎で38000まで上昇。

さらに復活したシュウラも単騎で30000までパワーを上げており、後列のタイジョウも13000にパワーを上昇させている。

ミコトは怯むことなく

 

「タンムーズとエドウィージュ、ユイカとフランセットでガード!!」

 

手札から4枚のカードをガーディアンサークルへコールした。

シールド値15000のタンムーズとエドウィージュ、更にシールド値5000のユイカとフランセット。

その合計シールド値は40000。

クリスレインのパワーは53000まで上昇。

このガードを貫通するにはトリガー二枚を引き当てなければならない。

 

「ツインドライブ! ファーストチェック─────ゲット! フロントトリガー! 前列にパワー+10000!!」

 

1枚目は『焔の巫女 パラマ』、前列のユニットすべてにパワー+10000出来るトリガーユニットだ。

これによってヴァルガ・ドラグレスとシュウラのパワーがさらに上昇し、次のチェックでトリガーが捲られたら攻撃が貫通することになる。

 

「セカンドチェック─────ノートリガー」

 

捲れたのはノーマルユニットのインペイルホーン。

ガードが成立し、防御に使用されたユニットがドロップゾーンに送られる。

しかしまだ終わったわけではない。

 

「アタック終了時、スキルによってヴァルガ・ドラグレスをスタンド! ドライブ-2!」

 

アタック時に発動したスキル効果によってヴァルガ・ドラグレスは再び立ち上がった。

そのパワーは48000。

 

「ヴァルガ・ドラグレス単騎で、再びクリスレインにアタック!! ドライブは0だからドライブチェックもパワー増減もないよ」

 

スタンドしたヴァルガ・ドラグレスの刃が再びクリスレインに向けられる。

このアタック宣言に対し、ミコトは自身の手札とダメージ枚数を確認して

 

「ノーガード」

 

攻撃を通すことを宣言した。

 

(ここでノーガード? 手札のシールド値が足りない? いや、ここで手堅く防いでも手札が減って次のターンでの攻め手が欠けてしまう。ならいっそ私の奥の手を使わせてでも手札を温存して次のターンに賭けるって寸法だね。今のミコトちゃんのダメージは3だし、『次』で私がクリティカルを引かなければもう一回は攻撃を通せる。悪くない判断だけど、この子も結構ブレーキぶっ壊れてるなぁ)

 

彼女のノーガード宣言を聞いたナオは心の中で苦笑いしながら思考する。

以前、運命大戦に於いてアキナとタイゾウがファイトした時、アキナは勝利を掴む為にデッキからヒールトリガーと完全ガードを全て抜いて攻撃に全てを賭した構築で挑み見事勝利を収めたのだが、その構築を聞いた時彼女は『バカじゃないの?!』とかなり辛辣なコメントをしており、今までの彼女のファイトを見ていても準ハイランダー構成のデッキで変幻自在にプレイするミコトは堅実なファイターだとナオは思っていたが、アキナ同様ここ一番では大勝負に出るほどの度胸を持っているのだという事を改めて認識させられた。

 

「ダメージチェック──────ノートリガー」

 

捲られたカードは『リンギング・ソング フィオラ』、トリガーではなくノーマルユニットだ。

これでミコトのダメージは4となり、ナオは切り札を発動する条件がすべて整ったことで不敵に笑った。

 

「ヴァルガ・ドラグレスの刃は3度煌めく──────無双開眼! ディヴァインスキル発動!!」

 

ここで彼女の切り札たるヴァルガ・ドラグレスのディヴァインスキル発動を宣言。

 

「アタック終了時、相手のダメージが4以上でこのユニットが2回以上アタックしているなら、CB1でヴァルガ・ドラグレスをスタンドしドライブ+2する!!」

 

コストであるCBが支払われ、ヴァルガ・ドラグレスは再びスタンド。

更にはドライブが+2されたことで次の攻撃ではツインドライブが出来るようになった。

 

「インペイルホーンでブースト! ヴァルガ・ドラグレスでクリスレインにアタック! インペイルホーンのスキル発動! このユニットがブーストした時、『ヴァルガ』を含むヴァンガードがいるなら自身にパワー+5000! さらにもう一つの効果発動! 『ヴァルガ』を含むヴァンガードをブーストした時、自身にパワー+2000し、バトル終了時にSB1と自身を退却させることで1枚ドロー出来る! 合計パワー63000!!!」

 

今まで温存されていたブーストが加わり、ヴァルガ・ドラグレスのパワーが63000まで膨れ上がった。

ミコトは迷うことなく

 

「ウォルミアで完全ガード!!」

 

手札から守護者である『暖かいうちに召し上がれ ウォルミア』をガーディアンサークルへコール。

コストとしてラウムがドロップに送られたことで絶対防御が確定した。

 

(やっぱり持ってたか。あとは私のトリガー次第)

 

「ツインドライブ! ファーストチェック──────ノートリガー」

 

1枚目のドライブチェック。

捲れたのはノーマルユニットのタイジョウだ。

1枚目をトリガーゾーンに置いて、二枚目を捲るためにナオはデッキに手を添える。

現在ミコトのダメージは4。

ここでクリティカルトリガーが出なければ、次のシュウラの攻撃はどんなにパワーが高くなっても受けることが出来、彼女は無理にガードせず手札を3枚残すことが可能となる。

 

「セカンドチェック──────ゲット! (オーバー)トリガー!!『再起の竜神王 ドラグヴェーダ』!!!」

 

「なっ!?」

 

「ここで(オーバー)トリガー?!」

 

捲られたのはデッキに1枚しか入れることの出来ない(オーバー)トリガー。

思ってもみなかったトリガーにミコトだけでなくヒカリも驚いている。

 

(オーバー)トリガーは手札に加わらず除外される代わりに1枚ドロー出来る! そしてユニットを選んでパワー+1億!! 私はヴァルガ・ドラグレスを選択する!!」

 

捲られたドラグヴェーダはフィールドの外に置かれナオは1枚ドロー。

更に選択されたヴァルガ・ドラグレスのパワーは単体で1億48000にまで上昇した。

しかしどんなにパワーを上げても完全ガードで防がれている以上このパワーアップは無意味と思われれるだろう。

だが、本番はここからだった。

 

「さらに(オーバー)トリガーはドライブチェックで出た時、追加効果を得ることが出来る! ドラグヴェーダの追加効果! ヴァンガードを1枚選んでスタンド!!」

 

そう、(オーバー)トリガーはドライブチェックで引き当てるとさらなる効果を発揮するのだ。

ドラグヴェーダの追加効果はヴァンガードのスタンド。

まさに『再起の竜神王』の名に相応しい効果である。

 

「ヴァンガードの3回攻撃でもとんでもないのにここで4回目、しかもパワー1億越えなんて……」

 

想像もしていなかった状況にヒカリは息を呑む。

ちらりと視線を向けたミコトもまた予想外のトリガーに驚愕していた。

 

(トリガーを引く可能性は考えてた……けど、まさか(オーバー)トリガーなんて……)

 

彼女の手札は残り三枚。

パワー1億など幾ら手札があっても守護者カードでなければ防ぐのは不可能。

しかもまだリアガードの攻撃も残っておりパワーもブースト込みで相当高い状態だ。

 

「これは私も想定外だったけど、ファイトは常に全力勝負。容赦はしないよ。バトル終了時、インペイルホーンのスキルで1枚ドローし自身を退却」

 

インペイルホーンのスキルによって自身をドロップに送り、SB1することでナオは1枚ドローする。

これでナオの手札は8枚にまで増えていた。

スキル処理を終え、彼女は再び自身の分身に手を添えて

 

「パワー1億48000。ヴァルガ・ドラグレスで───クリスレインにアタック!!」

 

攻撃を宣言してレストする。

絶大なパワーによる4度目のアタック。

この攻撃を前にしてミコトは思考を巡らせる。

 

(……手札に完全ガードは無い。あってもクリティカルを引かれた時点で負けはほぼ確定する……どのみち止められないなら、ここで賭けるしかない!!)

 

「ノーガード!!」

 

ミコトは攻撃を通すことを宣言。

 

「ツインドライブ!! ファーストチェック──────ノートリガー!」

 

1枚目はノーマルユニットのロクセイ。

トリガーではなかったがミコトは安堵することなく次のセカンドチェックを息を呑んで待った。

このチェックですべてが決まる。

 

「セカンドチェック──────ゲット! ヒールトリガー!! パワー10000をシュウラに! そしてダメージを1枚回復!!」

 

捲れたのはディノブリーズ、ヒールトリガーだった。

これによってシュウラのパワーが50000まで上がり、更にミコトよりダメージが多かった為1枚回復し、ナオのダメージは4へと減少。

 

「ダメージチェック──────ゲット! ドロートリガー! クリスレインにパワー+10000! さらに1枚ドロー!!」

 

対してミコトがダメージチェックで引き当てたのは『澄み渡る雪夜 ベトレア』、ドロートリガーである。

パワー10000がクリスレインに与えられ、ミコトは1枚ドローする。

これで彼女の手札は4枚に増えた。

しかしまだ終わりではない。

 

「タイジョウでブースト! シュウラでクリスレインにアタック! スキル発動! EB2でシュウラにパワー+5000!! 合計パワー68000!!!」

 

最後に残ったリアガード、シュウラがタイジョウのブーストを得てクリスレインに迫りくる。

ミコトは手札の1枚を手に取り

 

「ウォルミア!!! 完全ガード!!!!」

 

ガーディアンサークルへとコールした。

コストとして『月に寄り添う幻想曲 アーデルハイト』がドロップに置かれ、ガードが成立。

合計7回の猛攻をミコトは見事に凌ぎ切ったのだ。

 

(完全ガードを温存してた? いや、それなら4回目のヴァルガのアタックで使ってたはず……まさかさっきのドロートリガーで引き当てたって事?! なんて豪運?!)

 

そう、先程のダメージで引き当てたドロートリガー。

この効果によってミコトは完全ガードを引き当てていたのだ。

これまでのファイトでも彼女はここ1番という場面で引きの強さを見せている。

『運も実力のうち』とはまさにこの事だろう。

 

「ターンエンド」

 

全ての攻撃を終えたナオはターン終了を宣言。

ミコトへとターンが回ってきた──────しかし

 

(なんとか凌げた……でも……)

 

彼女は自身の手札とフィールドを見て苦い表情をする。

(オーバー)トリガーという予想外のナオの引きによって残しておきたかった手札が想定より1枚少ないからだ。

このままではドローしてもリアガードは3体しかコール出来ない為火力は圧倒的に足りない。

更にはそれぞれ別名のユニットに出来ない可能性もある為クリスレインのスキルも効果が充分に発揮出来ないかもしれないのだ。

 

「まさか凌ぎ切るなんて思わなかったよ。けど、ミコトちゃんの手札は二枚でリアガードは0。さらにダメージは5で逃げ場無し。まさに絶体絶命だね」

 

指摘通り、ミコトのフィールドには自身の分身しかおらず、先も述べた通り展開するには手札が足りない。

さらにダメージも5なのでここで決め切らなければ次のナオのターンで確実に敗北するだろう。

俯き気味になっているミコトをヒカリは不安そうな表情で見ている。

数秒の沈黙。

が、不意にミコトは口を開いて

 

「確かにナオさんの言う通りです……状況は絶望的……でも」

 

そこで一度区切り

 

「それってただのピンチですよね? まだ負けたわけじゃありません」

 

俯かせていた顔を上げ、ナオを見据えて言い放つ。

その表情、目もまだ諦めには染まっていない。

 

「それに、アキナ先輩ならこんな状況でもきっと諦めないから」

 

そう言って思い浮かべるのは彼の事。

運命大戦でのファイトで彼は幾度となく窮地に立たされた。

それでも決して諦めることなくその手を伸ばし続けた──────わずかな光を掴むために。

 

(そんなアキナ先輩の傍に、隣にいるために──────)

 

「私だって、こんなことで諦めたりしない! スタンド&ドロー!」

 

レストしているヴァンガードをスタンドしてデッキから1枚ドローするミコト。

引いたカードを確認し微笑んで

 

「だから、力を貸して──────私の分身! ライドフェイズ開始時、ジェネレーターの効果でEC3! そしてペルソナライド!! 『万化の運命者 クリスレイン』!!」

 

 

彼女の分身クリスレインへと再びライドし、ペルソナライドが発動。

 

「ペルソナライドの効果で1枚ドロー。このターン中、前列のパワーが常に+10000! メインフェイズ! フランセットを右前列に、ラウムをヴァンガードの後列にコールして、さらにシスカを左後列にコール! シスカのスキル発動! リアガードにこのユニットと同名のユニットがいないなら、二つある効果のうち一つを選んで発動する。ユニットが4枚以上ならCB1で1枚ドローする効果を選択!」

 

左後列にコールされた『いつか私だけの唄を シスカ』は2つの効果を持つユニットだ。

一つはEB3で自身にパワー+10000する効果。

ミコトが選択したのはもう一つ、自身を含めてユニットが4枚以上ならCB1で1枚ドローできる効果である。

コストを支払いミコトは1枚引き

 

「フィオラを左前列にコール!!」

 

そのままリアガードサークルへとコール。

これで彼女の盤面にそれぞれ別名のユニットが5体揃ったことになる。

 

「クリスレインのスキル発動!! CB1で以下の効果を発動! EC3して1枚ドロー! 別名のユニットが4枚以上なのでフランセットを選択してパワー+15000! そして別名のユニットが5枚なのでクリスレインにクリティカル+1!! さらにフランセットのスキル発動! クリスレインの効果で選ばれたのでクリスレインにパワー+10000!!」

 

完全な形で発動したクリスレインの効果によってヴァンガードとリアガードが最大限のパワーアップを完了する。

しかしまだメインフェイズは終わらない。

 

「ロシェルをフランセットの後列にコール!!」

 

先程の効果で引いたカード『モデレートミント ロシェル』がコールされる。

壊滅状態だった盤面が完全に埋まり攻撃態勢が整った。

 

(まさかあの状態からここまで持ち直すなんてね……けど、ディヴァインスキルはすでに使い切ってる。攻撃回数は3回。今の私の手札は10枚。完全ガードもあるし合計のシールド値も高い。これなら凌げる……いや、凌ぎ切る!!)

 

「バトルフェイズ! ロシェルでブースト! フランセットでヴァルガ・ドラグレスにアタック! フランセットのスキル! 別名のユニットが3枚以上なのでこのターン中パワー+5000! 合計パワー48000!!」

 

最初にアタックしてきたのはリアガードのフランセットだ。

クリスレインの効果で与えられたパワーとペルソナライドの効果、そして自身のスキルとブーストを合わせた火力の高いアタック。

だがナオはこのアタックに疑問符を浮かべていた。

 

(リアガードから? ディヴァインスキルが使えない以上、クリスレインから来ると思ってたけど……なんにしても、ダメージを受けるならここだね)

 

「ノーガード」

 

疑問を抱きつつも、ナオはここがダメージを通すべきタイミングだと判断しノーガードを宣言。

 

「ダメージチェック──────ノートリガー」

 

ダメージチェックで捲れたのはノーマルユニットのツインパルシヴ。

これでナオのダメージは再び5になり後がなくなった。

しかし彼女の表情は崩れてはいない

手札は10枚あり、そのうちの1枚に完全ガードがある。

故にナオは確実に防げると確信しているのだ。

 

「ラウムでブースト! クリスレインでヴァルガ・ドラグレスにアタック!!」

 

後列のラウムによるブーストを受けたクリスレインの攻撃。

ナオは手札を見ながら

 

(クリスレインのクリティカルは2。完全ガードを使ってもいいけど最後の攻撃を確実に防ぐために温存するのもありだね……ここはトリガーユニット数枚でガードを──────)

 

思考を巡らせてトリガーユニット数枚を選ぼうとしたその時

 

「ラウムのスキル発動! このユニットがクリスレインをブーストした時、別名のユニットが4枚以上ならEB3することでそのバトル中、相手は手札から守護者以外のカードをコールする際、異なるグレード3枚以上を同時にコールしなければならない!! そしてヴァンガードがクリスレインなのでブースト時にパワー+5000! 合計パワー46000、クリティカル2!!」

 

ミコトはラウムのブースト時のスキル発動を宣言した。

それを聞いたナオは目を見開き思考する。

 

(ガード制限?! まずい……今の私の手札にはグレード1とグレード0しかない……これは手札を一気に消費させる、もしくは完全ガード確実に切らせるための能力か……厄介極まりないね。けど、効果はこのバトルだけだし攻撃回数はこれを含めて後2回。この合計シールド値なら──────)

 

そこまで思考したその時、ミコトは更にスキルの発動を宣言した。

 

「ロシェルのスキル発動! 『クリスレイン』を含むヴァンガードがアタックした時、このターン中自身のリアガードがカードの能力でスタンドしていないなら、EB3とロシェルをソウルに置くことでクリスレインの効果で選ばれているリアガードをスタンドさせる! フランセットをスタンド!!」

 

コストが支払われて発動したロシェルのスキル。

この効果によってフランセットは再びスタンドし、再度攻撃が行えるようになった。

 

(そうか……先にフランセットでアタックしてきたのはこの為か。見事なまでの連携……変幻自在の万化に相応しいプレイングだよミコトちゃん!)

 

「スパークルリジェクターで完全ガード!!」

 

ラウムのスキル効果によってガード制限されているナオは完全ガードを躊躇なくガーディアンサークルへコールする。

 

(出来る事はすべてやった……後はこのツインドライブに賭ける!)

 

ミコトは息を吐き、デッキの一番上にと添えた。

大一番のドライブチェック。

 

「ツインドライブ! ファーストチェック──────ゲット! クリティカルトリガー!! 効果はすべてフランセットへ!!」

 

1枚目のチェックで捲れたのは『朗らかな陽の下で ウォリス』、クリティカルトリガーだ。

効果はすべてフランセットへと与えられ、パワーが50000、クリティカルが2に上昇。

ウォリスをトリガーゾーンに置き、二枚目を捲るために手を添える。

 

「セカンドチェック──────っ!」

 

捲られた2枚目のドライブチェック。

姿を見せたのは

 

「さすが私! ゲット! (オーバー)トリガー!! 『焼尽の精霊王 ヴァルナート』!!!」

 

 

クレイエレメンタルの(オーバー)トリガー『焼尽の精霊王 ヴァルナート』だ。

クレイエレメンタルには国家の縛りが無い。

故にどの国家にでも入れる事が出来るカードである。

まさか自分も(オーバー)トリガーで返されるとは思ってなかったナオは先のターンのミコトのように驚愕している。

 

(まさかここで引いてくる?! どんだけ豪運なのこの子は?! いや、違うか……ミコトちゃんの想いにデッキが応えた。その方がロマンがあるってもんでしょ!)

 

「ヴァルナートを除外して1枚ドロー! そしてパワー 1億をフランセットに!!」

 

(オーバー)トリガーの効果によりフランセットのパワーが膨れ上がる。

その数値、 1億50000。

さらにはクリティカルは2に上昇している。

だがそれで終わりでは無い。

 

「ドライブチェックで引いた事によるヴァルナートの追加効果! スタンドしているリアガードを選択して『このユニットがアタックしたバトル終了時、このユニットをスタンドする』能力を与える! フランセットを選択して能力を付与します!」

 

追加効果によって与えられたのはもう一度スタンドする能力だ。

これでフランセットはパワー1億超え、さらにはクリティカル2で2回攻撃してくることになる。

 

(今の私の手札でパワー1億超え、しかもクリティカル2の2回アタックを防ぐ手段は無い。フィオラのアタックは防げてもフランセットは確実に通さないといけないか……)

 

「シスカのブースト! フィオラでヴァルガ・ドラグレスにアタック! フィオラのスキル! 場のユニットを4枚選択してそれが全て別名のユニットならフィオラのパワー+10000! 合計パワー38000!」

 

「パラマとフレアヴェイルでガード!! どちらもスキルでシールドパワー+5000!!」

 

続けて行われたフィオラのアタック。

それをナオは手札からパラマとドロートリガーユニットの『フレアヴェイル・ドラゴン』をガーディアンサークルにコール。

このユニット達は相手のヴァンガードがグレード3ならシールド値を+5000する能力を持っている。

元々のシールド値が15000のパラマは20000へ、シールド値5000のフレアヴェイルは10000となり合計のシールド値は30000となった。

この数値がヴァルガ・ドラグレスに加算されパワー43000となりガードが成立。

これで残るユニットはフランセットのみ。

そのパワー1億50000、クリティカルは2。

ナオの手札は残り6枚。

だが、その中に完全ガードはない。

 

「フランセットでヴァルガ・ドラグレスに────アタック!!!」

 

宣言と共にフランセットがレストされる。

ナオは一度目を閉じ、大きく息を吐いて

 

「来い!! ノーガード!!!」

 

攻撃を受けることを宣言。

 

「ダメージチェック─────ヴァルガ・ドラグレス。ノートリガーだよ」

 

捲れたのは彼女の分身、ヴァルガ・ドラグレス。

ダメージゾーンに置かれ、ナオのダメージは6となった。

 

「……勝った?」

 

「勝った……勝ったんだよみーたん! すごいすごい!」

 

想像以上の激闘にヒカリはミコトに興奮しながら言うと、呆けていた彼女も勝利の実感が湧いてきたようで

 

「や……やったぁ!!」

 

歓喜の声をあげた。

するとナオは息を吐き、彼女に視線を向けて

 

「いやー、まさかこんな激闘になるなんて思わなかったよ。ミコトちゃんも結構エグいね? あの場面で(オーバー)トリガー引いてくるなんて」

 

悪戯っぽく笑いながら言う。

それを聞いたミコトはジト目になり

 

「ナオさんだって(オーバー)トリガー引いたじゃないですか。ヴァンガードの4回攻撃とか本気でヤバかったです」

 

「じゃぁ、お互い様だね」

 

ミコトの言葉にナオは笑いながら返すと、釣られて彼女からも笑みが溢れた。

 

「……これで私とアキナ先輩との事、少しは認めてくれましたか?」

 

改めてナオと向かい合いミコトがそう訊ねると

 

「え? 2人の事は最初っから認めてるけど???」

 

ナオは疑問符を浮かべながら返してきた。

 

「え? いや、でも……『覚悟』を見せて欲しいって言ってたじゃないですか?!」

 

彼女からの返しにミコトは困惑。

なら一体何のためにファイトしたのか?と、ヒカリも同様に疑問符を大量に浮かべていた。

 

「あ、アレね。ちゃんと見せてもらったから大丈夫。『諦めない』って覚悟をね」

 

そう言うとナオは苦笑いをし、一度息を吐き口を開く。

 

「さっきのファイト。あの絶望的な盤面で君は諦めなかった。ただのピンチだって跳ね退けてみせた。それで改めて確信したんだよ。ミコトちゃんとアキくんなら、これから先どんな事があっても諦めずに進んでいけるだろうって、ね。それにファイトする前にも言ったけど、恋はいつでも速戦即決。のんびり構えて出遅れた私が間抜けなだけだったんだから、ミコトちゃんが気に病むことなんてないんだよ」

 

「ナオさん……」

 

「それでもまだ気になるって言うんなら──────これからも定期的に私とファイトしよう! さっきのファイトも滅茶苦茶楽しかったからね」

 

ナオはそう言うとミコトに笑顔を向けてきた。

 

「────はい! 私も、滅茶苦茶楽しかったです!!」

 

「次は負けないよー?」

 

「望むところです。何度だって返り討ちにしますから!」

 

言いながら笑い合うナオとミコト。

すると横から

 

「うー。あんな凄いファイト見てたら私もファイトしたくなっちゃった。ねぇねぇみーたん、今度は私とファイトしよ!」

 

いつの間にかデッキを手に持ったヒカリがミコトにそう申し出てきた。

その申し出に彼女は不適に微笑んで

 

「いいよ。やろっかヒカリちゃん!」

 

そう言ってもう一度デッキをテーブルにセットする。

次いでヒカリもデッキをセットし、2人がファイトを開始したのを確認したナオは

 

「さーて、私もそろそろ……ケジメをつけないとね」

 

そう呟いてリビングダイニングを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキくーん。入るよー」

 

ノックをした後ナオはそう言いうと扉の向こうから「どうぞ」と彼の声が聞こえてきた。

ナオが扉を開けて中に入るとタイゾウとスオウが向かい合って座っており、間にはカードが展開されていた。

先程までこの2人がファイトしておりアキナは観戦していたのようである。

 

「ミコトちゃんとのお話、終わったよ。ごめんね、待たせちゃって」

 

「いえ、大丈夫です。と言うかナオ先輩、西塔さんとファイトしてたんですよね? 声、ここまで聞こえてきましたよ」

 

「ありゃ、聞こえてたかー。中々に白熱したファイトだったよー。今はヒカリちゃんとミコトちゃんでファイトしてる最中だね」

 

言いながらリビングダイニングの方に視線を向けた後、ナオは小さく息を吐きアキナに視線を向けて

 

「でさ、今度はアキくんに話があるんだ」

 

言いながら今度はタイゾウとスオウに視線を向けた。

その意図を察したタイゾウは

 

「了解。俺と呼続くんは先に向こうに戻ってるよ。というわけで、行こうか呼続くん」

 

「わかった」

 

立ち上がりスオウに声をかけ、それに応えて立ち上がった彼と共にアキナの部屋を後にする。

残されたのはナオとアキナのみ。

 

「それでナオ先輩。話って何です?」

 

彼が疑問符を浮かべて訊ねる。

ナオは目を伏せ、大きく深呼吸をしてから目を開いて

 

「私ね、アキくんが好き」

 

そう告げた。

 

「──────え?」

 

耳に届いた言葉に、アキナは間の抜けた声を出す。

呆気に取られる彼だが、ナオは構え事なく言葉を続けた。

 

「後輩としても。ヴァンガードの弟子としても。そして、1人の男の子としても─────私はアキくんの事が好きなんだ」

 

「え? ナオ先輩……それって……いや、でも……俺は─────」

 

「アキくん」

 

彼女の言葉に狼狽えるアキナだが、ナオは真剣な目で彼を見ながら告げる。

 

「これはね、必要な事なの。だから────アキくんの言葉でちゃんと聞かせて欲しいんだ。アキくんの答えを」

 

それを聞いたアキナは一度ナオから目を逸らすも意を決し再び彼女を視界に映し

 

「俺は……ナオ先輩の事、尊敬してます。ナオ先輩はいつも頼もしくて、カッコよくて、俺の────憧れです。けど、俺が一緒にいたいと、隣にいたいと思えたのは……ミコトなんです。だから、ナオ先輩の気持ちは嬉しいけど────応える事は出来ないです」

 

そう告げた。

彼の言葉を聞いたナオは一度天井を仰ぎ、小さく息を吐く。

 

「そっか。ありがと、アキくん。ごめんね、辛い事言わせちゃって」

 

「ナオ先輩、俺は───────」

 

「そんな顔しないの」

 

申し訳なさげな表情で言葉を紡ごうとしたアキナを遮るように、ナオは右手の人差し指を彼の口元に突きつける。

 

「君はミコトちゃんを選んだんだから、彼女の事を考えてあげて? 大事にしなきゃダメだよ? あんないい子、そうそういないんだからね? 泣かせたりしたら許さないぞ!」

 

言いながら笑うナオ。

彼女の言葉を聞いたアキナは一度目を伏せ

 

「はい、わかってます。彼女の事、絶対大事にします」

 

目を開き、真剣な表情でそう返した。

ナオは満足そうに微笑み

 

「よし! それじゃ向こうに戻ろっか? せっかくだしみんなでファイトを楽しもう!」

 

「はい! ナオ先輩!」

 

そう言うとアキナも笑って返事を返す。

彼の部屋を出てリビングダイニングに戻ると、アキナに気付いたスオウが歩み寄りファイトを申し込んでくる。

彼はそれを受け、互いにデッキをセットしてファイトを開始した。

隣ではミコトとヒカリが発熱したファイトを繰り広げている。

ナオがその様子をリビングダイニングの入り口あたりで眺めていると

 

「スッキリしたかい?」

 

いつの間にか隣にいたタイゾウがそう問いかけてきた。

問われたナオはジト目で彼を見ながら

 

「もしかしてアキくんとの話、盗み聞きしてました?」

 

そう問い返すと彼は苦笑いになり

 

「流石にそんな事はしないさ。どんな話をしたのかは何となく予想がついてるってだけだよ。それで、どうなんだい?」

 

「ちゃんと言いたい事は言えたので無問題って感じですねー」

 

再度問いかけるとナオは腕組みしながらそう返してきた。

 

「本当は泣きたいんじゃないのかい?」

 

「……2人が付き合ってるって気付いた時にしっかり泣いてるので今更かなそれは。それに─────『カッコいいナオ先輩』が後輩の前で簡単に泣くわけにはいかないでしょ?」

 

タイゾウの言葉にナオは言いながら悪戯っぽく笑って見せる。

それを見た彼は参ったと言わんばかりの苦笑い。

 

「なるほど。確かに君は『カッコいい』よ、ナオさん」

 

「けど、まだスッキリし足りない気もするので─────これから一戦付き合って貰えます?」

 

ナオはデッキを手にしてタイゾウならそう申し出ると、彼は一瞬呆気に取られたが

 

「俺で良ければ何戦でもお付き合いするよ、お嬢さん」

 

「デラックス2位の実力、たっぷり堪能させてももらいますからねー」

 

言いながら2人はファイトしているアキナ達の元へと向かう。

そうして彼らは心ゆくまでヴァンガードファイトを楽しんだ。

 

 

 

その日から暫く経った頃。

アキナはミコトの事を大事にしすぎた事でかえって彼女に不安を抱かせ泣かせてしまう事になり、その事を知ったナオによって詰め将棋ならぬ『詰めヴァンガード百問の刑』に処される事になるのはまた別の話である。





今回のファイト内容と使用してるデッキレシピ

クリスレインはボク自身が組んでるものをそのまま使い、ヴァルガは友人からレシピを教えてもらいプロキシで盤面を組み立てました。ファイト内容は実際カードを引きながら要所要所で調整したって感じです。

魅せるファイトを意識したのでプレイングとか突っ込まないでくれると助かりんこです

どんな話を書いてほしい?

  • ほのぼのした話
  • 甘くイチャつく話
  • アキミコ以外の話
  • ファイト話
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