2食目の飯ネタ。今回はほんのりスオヒカあります。
妄想と空想と幻想が強めに入り混じってますので苦手な方は観覧注意。
それでもいいという方はスタンドアップしてどうぞ〜
「食材は……これだけあれば足りるか。何を作ろうか……」
土曜日の昼下がり。
学校から帰宅した明導アキナは冷蔵庫に入れられている食材のチェックを行っていた。
材料を吟味し、本日の夕飯の献立を考えているのだろう。
腕を組んで唸っていると
「ただいまー」
玄関の扉が開く音が聞こえ、妹の明導ヒカリが帰宅。
リビングダイニングに顔を出し、ウンウン唸っている兄を見て
「お兄ちゃん、怪しい人みたい」
と辛辣な一言。
「帰って来て早々に酷くない? 食材チェックと夕飯の献立考えてたんだよ。今日はスオウが泊まりに来るからさ」
軽く溜息を吐きアキナはそう返す。
「スオウさんが? 泊まりに来るの?」
思いがけない人物の名前を聞いたヒカリは問い返した。
疑問符を浮かべてはいるがその声色は何処か嬉しそうだ。
「ああ。スオウの叔父さんが今日仕事の関係で帰れないらしくてさ」
呼続スオウ─────零の運命者カードの所持者にしてアキナのクラスメイトである彼は現在叔父との二人暮らしだ。
アキナ曰く、その叔父が急遽仕事の都合で今日は帰れなくなったとの話を訊い彼は、以前大雨警報が出た時に泊めさせてもらったお礼も兼ねてスオウを自宅に招待したとの事だ。
彼は一旦自宅に戻り、宿泊の用意等を済ませて夕方には訪れる予定になっている。
その間に食材をチェックして必要なら買い出しに行き、必要ないなら掃除と洗濯を済ませておこうとアキナは考えていた。
彼が確認したところ食材の買い出しは特に必要なさそうなので、とりあえず何を作るか思案していたところにヒカリが帰宅したといった具合である。
改めてアキナが献立を考えていると
「ねぇ、お兄ちゃん。今日の夕飯、私も作るの手伝いたい」
ヒカリがそう申し出てくる。
「どうしたんだ急に?」
「私、今までお兄ちゃんに炊事は任せっきりだったでしょ? けど、いつまでもやってもらうばかりじゃ駄目だと思うの。それに……」
「それに?」
途中で言葉を止めた妹に、アキナは疑問符を浮かべている。
次の言葉を待つも、ヒカリはブンブンと首を振って
「なんでもない! とにかく手伝いたいの! いいでしょ、お兄ちゃん?」
言いながらアキナに目を向ける。
その頬は心なしかほんの少し赤みを浴びているような気がしたが、アキナは気にする事なく考える仕草を取った。
(確かにヒカリの言う通りかもなぁ。家事自体は俺がやりたいからやってるけど、俺1人で手が回らない時だっていつかは来るはずだし……先の事を考えるならヒカリにも色々教えていくのは悪い事じゃないかもしれないな)
アキナ達の両親は離婚しており母はいない。
父は仕事に追われ、運命大戦での願いによって今でこそヒカリは元気だがよく入退院を繰り返していた。
その為家事全般はアキナが熟すようにしていたが、いつまでも自分だけで全てをカバー出来るとは限らない。
それならば、この先の事も考えて少しずつでも彼女に家事の仕方を教えるのも悪くないのでは?とアキナは考える。
しかし先も述べた通り入退院を繰り返していたヒカリはまともに包丁を握ったとこがない。
そんな彼女に手伝いとはいえ難易度の高い料理を作らせるのも忍びないとも考える。
(今ある材料は鶏胸肉とキャベツ。人参にブロッコリー……うん。アレならいけるかな)
巡らせた思考を止め、アキナは未だ彼からの返事を待っているヒカリに目を向けて
「わかった。それなら今日はヒカリにも手伝ってもらおうかな」
「ホント? ありがとう、お兄ちゃん!」
了承の返事をするとヒカリは目を輝かせながら頷いた。
(やった! お兄ちゃんのお手伝いだけど、これでスオウさんにこの間のお礼とお詫びが出来る! 頑張るぞ、私!)
そう、これこそが彼女が今回手伝いを申し出た最大の理由である。
以前ヒカリは1人でカードショップ『ストレイキャット』を訪れた時、偶然居合わせたスオウとファイトをして遅くなった際に自宅まで送ってもらっていた。
その最中、知らなかったとはいえ彼の両親の事について触れてしまい辛い過去を思い出させてしまっている。
当のスオウは『気にしなくていい』と言ってくれているのだが、ヒカリの中ではこの事がしこりとなって残っていたのだ。
それ故、今日彼が泊まりに来ると聞いたヒカリは送ってもらったお礼と、その気が無かったにしても心の傷を抉るような事を訊いたお詫びを美味しい物を作る事で少しでも返せるのでは考えて兄に手伝いを申し出たのである。
最も、お詫びとお礼だけが理由ではないのだが。
「さぁ、スオウが来るまで時間あるし、掃除と洗濯を済ませとこう。それとお客様用の布団も出さないといけないしな。ヒカリ、着替えたら手伝ってくれ」
「はーい」
アキナの言葉にヒカリは返事を返して足早に自分の部屋へと向かう。
こうして明導兄妹はスオウが訪問してくるまでの間に必要な家事を分担し、時間はあっという間に17時前まで経っていた。
そろそろ夕食の準備に取り掛かる為、アキナはエプロンを身につけ本日使用する材料を冷蔵庫から手際よく取り出していく。
並べられた食材を、兄同様にエプロンを身につけたヒカリが眺めながら
「それで、今日は何を作るの?」
そう問いかけた。
材料を取り出し終え、冷蔵庫を閉じたアキナは彼女に視線を向けて
「今日は『キャベツと鶏肉のコンソメ煮』を作ろうと思ってる。後は『トマトとチーズのオーブン焼き』かな。ヒカリにはコンソメ煮の方を手伝ってもらおうと思ってる」
そう返す。
「よろしくお願いします、お兄ちゃん」
「よし、それじゃあまずはキャベツを切ってもらおうかな。包丁の扱いには気を付けて、あと材料を切る際の左手は猫の手だ」
「猫の手?」
「そう。猫のように軽く手を握って材料を押さえるんだ。とりあえず手本を見せるからよく見てて」
そう言うとアキナは包丁を手に取り、ハーフカットされているキャベツをまな板に置いて包丁をキャベツの丁度真ん中に当てがった。
彼の言うように左手は軽く握られてキャベツを押さえるように当てがい、キャベツを半分に切る。
そのまま今度は中央の芯を取り除く為に刃を芯より少し上から斜めから切り込んでいきキャベツの芯を取り除いた。
その手際の良さにヒカリは感心した眼差しで兄を見ている。
「さ、今度はヒカリがやってみてくれ。この4分の1にしたキャベツをさらに4等分にするんだ」
「や、やってみる」
緊張した様相でヒカリは包丁を手に取り、先程アキナが見せたように猫の手にした左手を押さえるようにして当て、中央からキャベツを2等分にする。
そこからアキナがキャベツの位置を切りやすいように変え、同じように半分に切りキャベツを4等分に切り分ける。
「よし。じゃあ切ったキャベツを解してボウルの中に入れといてくれ。次は人参の乱切りだ」
「乱切り???」
聞き慣れない単語にまたもやヒカリは疑問符を浮かべている。
「乱切りっていうのは材料を回しながら斜めに包丁を入れて切っていく切り方だ。これも見本見せるからな」
言いながらアキナはピーラーで手早く人参の皮を剥いていき、慣れた手付きで人参を切っていく。
3分の1ほど切り終えたところで
「ほら、ゆっくりでいいからやってみて?」
ヒカリに切るのを促した。
頷いた彼女は再び包丁を手に取り、左手に持った人参を斜めに切っては回転させて切るを繰り返す。
慣れない作業故スピードは遅いが焦って怪我をしては元も子もない。
数分かけてようやく人参を切り終えたヒカリは包丁を置いて一息吐く。
「切り終えた人参も小さめのボウルに入れといて。後は鶏肉とブロッコリーだけど、こっちはヒカリが人参切ってる間に俺がやっといたよ。流石に慣れない作業を全部を任せるわけにはいかないからな」
作業を終えたヒカリに言うアキナの前にはもう一つのまな板がいつの間にか置いてあり、鶏胸肉が一口大に切り分けられブロッコリーも茎から適量切り落とされており、すでにそれぞれボウルに放り込まれている状態だ。
「お兄ちゃん速くない?」
「慣れればヒカリもこれくらい出来るようになるって。さ、次は鍋にそれぞれ材料を詰めていこう。まずはキャベツを底に敷くようにして貯めるんだ」
アキナに促されたヒカリは用意されている鍋に切ったキャベツを指示通りに入れていく。
次にアキナが入れるように指示したのは乱切りにした人参だ。
その上に一口大の鶏胸肉を乗せ、さらにブロッコリーを詰めていく。
「材料を詰めたら顆粒コンソメを大さじ2杯、小さじ一杯分を満遍なく塗して水を100ml加えて蓋をするんだ。そして弱火で10分程熱を通す」
言われた通りヒカリは顆粒コンソメと水を加えて鍋に蓋をしてIHを弱火設定にし、タイマーを10分にセットしてスイッチを押した。
「これでいいの?」
「ああ。後は煮込み終わるまで待つ。その後でブラックペッパーとかで味の調整をするんだ」
「ふぅ……思ったより大変なんだね料理って」
「さっきも言ったけど、慣れればヒカリもすぐ出来るようになるよ。さて、次はトマトとチーズのオーブン焼きだな。ヒカリ、耐熱用グラタン皿を3つ用意してくれ」
「はーい」
指示されたヒカリは食器棚へと向かい耐熱用グラタン皿を探し取り出していく。
その間にアキナはヘタを取ったトマト3つを其々6等分に切り分け、彼女が持ってきたグラタン皿に並べ、大さじ一杯分のオリーブオイルをトマトにかけていく。
その上にバジルと塩胡椒を少々降り、ピザ用のチーズをたっぷりと乗せてパン粉を軽く振りかけた。
「それってパン粉?」
「こうするといい感じに焼き色がつくんだ。後はこれをオーブンに入れてで5〜6分ほど焼けば完成だ」
そう言ってアキナはオーブンに材料を詰めたグラタン皿を入れてタイマーをセットしてスイッチを入れた。
さらに待ち時間を利用して簡単なサラダを用意し始める。
その手際の良さをヒカリは感心しながら眺めていると、来客を告げるベルが鳴った。
「お、スオウが来たかな」
「私が出るね!」
勢いよく言いながらヒカリは足早に玄関へと向かい、シリンダー錠を解除して扉を開けると
「スオウさん、いらっしゃい!」
「ああ。世話になる」
手に少し大きめな鞄を下げた小柄な少年────呼続スオウがいつもの無表情で迎え入れてくれたヒカリに応えた。
彼女に招き入れられ、スオウは中に入るとそのままヒカリと共にリビングダイニングに顔を出した。
「お、いらっしゃいスオウ」
彼の来訪に気付いたアキナがリビングダイニングの入り口に目を向けて声をかけた。
「丁度コンソメ煮とオーブン焼きが出来たところだからいいタイミングだな。スオウ、荷物を置いて手洗いしてきてくれ。ヒカリは配膳の手伝いな」
「わかった」
「スオウさん、荷物はリビングに置いときますね」
スオウは自身の荷物を預けると洗面所へと向かい、ヒカリは彼の荷物をリビングのソファの側へと置いて兄の手伝いへ戻っていく。
盛り付けの為に鍋の蓋を開けると食欲を唆るコンソメの香りが鼻腔をくすぐった。
よそう前に軽くブラックペッパーを振り、少しだけ混ぜてから取り皿へと盛り付け、ダイニングテーブルへと持っていき、続いてオーブンから耐熱用グラタン皿をミトンを付けて取り出した。
これもまた綺麗に焼き色が付き、熱を通したトマトの芳醇な香りが食欲を唆る。
グラタン皿を其々の席へと配膳し、最後にサラダとあらかじめタイマーを仕掛けて炊いてあったご飯を盛った茶碗3つを並べたところでスオウが手洗いを済ませてダイニングに戻って来た。
席に着くよう促し彼が座ると、エプロンを外したアキナとヒカリも席に着いた。
「じゃあスオウ、遠慮なく食べてくれ」
「ああ。いただきます」
手を合わせてからスオウはまずコンソメ煮が盛られた皿を手に取った。
じっくりと熱を通したことでしんなりと柔らかくなったキャベツと鶏肉を一緒に口へと運んで咀嚼する。
その様子をヒカリは息を呑みながら見ていた。
咀嚼し終わり嚥下してほんの少しの間を置いて
「美味い」
短いが裏表のない素直な感想をスオウは口にする。
それを聞いたヒカリは安堵したように息を吐くと同時に嬉しそうな表情を溢した。
「そっか。そのコンソメ煮、ヒカリが作ったんだ」
「そうなのか?」
アキナの言葉に反応してスオウは彼女に目を向けながら問うと、ヒカリは照れたように頬を指で掻きながら
「お兄ちゃんに手伝ってもらったんですけどね」
そう返した。
「……お前の作ったコレも、アキナと同じ暖かい味がする」
「え……?」
「オレは、この暖かくなれる味が好きだ」
スオウは小さな微笑みをヒカリに向けながら言う。
それは彼の裏表の無い本心。
その言葉を聞いたヒカリは顔に熱が集中していくのを感じた。
「あ、あの! また何か作ったらスオウさん、食べてくれますか?!」
集中する熱を払うように少し大きめな声で問うヒカリ。
「ああ。ヒカリ、お前が望むなら」
その問いにスオウは間を空けることなく返す。
彼からの返事を聞いたヒカリは心の底から嬉しそうな表情をする。
その様子を見ていたアキナは
「さ、俺たちも冷める前に食べよう」
「うん! いただきまーす!」
食事を進めるように促すとヒカリも手を合わせてからグラタン皿のトマトとチーズを口の中に運んでいく。
もくもくと咀嚼するとトマトの酸味と熱を加えた事によって滲み出た甘味が口いっぱいに広がっていくのを感じた。
「美味しい。トマトって加熱すると甘味が増すんだね!」
「だろ? チーズとの相性も抜群なんだ」
同じようにトマトとチーズを食べたアキナも満足そうな表情で言う。
次いでコンソメ煮を口にして咀嚼。
こちらもじっくり煮込んだ事でキャベツや人参から甘味が滲み出ており、染み込んだコンソメ味がそれを引き立てている。
「上出来だよヒカリ」
「えへへー」
スオウからだけでなく兄からも好評価を貰ったヒカリはとにかく嬉しそうだ。
「アキナ、今日は気の済むまでファイトするぞ」
「わかってるって。けど、今は食事に集中な」
いつものようにスオウはアキナとのファイト欲を抑えることなく言葉をかけると、アキナは苦笑いで返す。
するとヒカリが少々頬を膨らませながら
「あ! お兄ちゃんばっかりズルい! スオウさん、私ともファイトしてくださいね!」
「ああ、構わない」
兄に抗議した後、スオウにそう申し出ると彼は快く了承。
彼とファイト出来る事が嬉しいのか楽しそうな表情をしながらヒカリは食事を進めていく。
そんな妹を見ながらアキナは表情を綻ばせ、同様に食事を進めていった。
そうして食事を終えた彼らは、本当にスオウの気が済むまでファイトに明けくれ、気が付いたら日を跨いでいたのであった。
後日。
ヒカリがミコトとのメッセージで今回、アキナの手伝いでだがスオウに料理を振る舞った事を報告すると、それを羨ましく思ったのかナオに料理指南をお願いするミコトの姿があったのはまた別の話である。
飯ネタは書くの楽しいねぇ。
他にも書きたいレシピネタあるから続けて書きたいのです。
ちなみにレシピはクックパッドを参照にしとります。
どんな話を書いてほしい?
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ほのぼのした話
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甘くイチャつく話
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アキミコ以外の話
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ファイト話