どうやら、この惑星はいつの間にかに廃墟となっていたようだ。
およそ百五十年後の景色を見て、真っ先にそんなことを思っ
どこまでも続く赤褐色の砂漠。吹きすさぶ砂嵐。ところどころ点在する濃紫の毒沼。おまけに過剰な程に照りつける太陽光。畜生め、百五十年も待ち望んだ娑婆の景色がこんな荒んだものとは。まったく、とんだ期待外れだ。
百五十年前、ここら一帯は豊かな森林。そよぐ澄んだ風。生命養う湧水。草木を見守る太陽と、生命力が溢れる霊山であった。それが今はどうだ。こんな有様では、どんなに強靭な動物だろうと死に絶えてしまうだろう。
いや、人間なら、人間ならば、その知恵を活かしてしぶとく生き延びているやもしれぬ。
そう考えていると、その予想は的中した。そう、およそ一里約4kmほど先に、奇怪な仮面を付けた人間が見えたのだ。
早速、門を開くとしよう。
***
おお、神よ!
名もなき放浪者は、突如として目前に発生した、未知の、冒涜的な、世にもおぞましい存在を前に、生まれて初めて神に祈った。
“それ”は、子供の想像する最も気持ち悪い存在が、実体を持ったようだ。
“それ”は人のようで、しかし人とは似ても似つかぬ頭部を細長い首で支えていた。
人であるなら目があるだろう箇所には毒沼ナメクジのような触角が無数に生え、複眼を成している。
大口は砂鯨みたく、ぱっくりと裂けており、カミソリ刃ほどの牙が口内を覆っている。
鼻や耳などの人間らしい器官は存在しない。
首から下の胴体はブヨブヨと肥え太った芋虫のようで、極彩色のぬめる皮膚に、太い血管が浮かんで伸縮し続けている。
また、緑がかった膿が噴き出る触手を背中から無数に生やし、腹の裏側には細かな歯舌が生え、地面を削り喰らいながら這いずっていた。
ガスマスクの曇り切ったレンズを介してでも、その曇りが晴れたと錯覚するほどに、“それ”は気味悪く、冒涜的であった。
「縺ゅ↑縺溘?縺ェ縺セ縺医?縺ェ繧薙〒縺吶°?」
“それ”が形容し難き異音を発した。その異音は口からではなく、汚濁のような膿を吐き出し続けていた背中の触手から発せられた。
しかしどういう訳か、放浪者にはその異音が何らかの言語としての意味があると感じられた。
不味いぞ、どうにか対応しないと、でなければ死あるのみだ!と、放浪者は瞬時に思考した。
「は、ハロー」
放浪者が選択したのは、“それ”との対話であった。
少し遅れて、“それ”が異音を立てる。
「?滓э蜻ウ繧呈蕗縺医※荳九&縺??」
その瞬間、放浪者の目前に“それ”の触角が突きつけられた。
「縺昴?險?闡峨?諢丞袖縺ッ縺ェ繧薙〒縺吶°?溘←縺?@縺ヲ縺昴?莉ョ髱「繧剃サ倥¢縺ヲ縺?k縺ョ縺ァ縺吶°?溘←縺?@縺ヲ縺薙%縺ッ縺薙≧縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺」縺溘s縺ァ縺吶°?」「螳?ョ吶°繧峨?蠢?浹縺ッ騾皮オカ縺医∪縺励◆縺具シ滓オキ縺ョ蠎輔°繧峨??溘≠縺ェ縺溘?莠コ髢薙〒縺吶°?滓悽蠖薙〒縺吶°?」
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失神寸前だった放浪者の意識は容易く途切れた。
***
おや、人間に軽く質問してみたが、どうやら百五十年前とは言語が違うらしい。
知り直さないといけない。
それにしても、この人間、随分と弱っていたようだ。
まあ、無理もないか。こんな環境で生きていられる生物など、そうはおるまい。
今はただ、人間が目を覚ますのを待つとしよう。