太陽の当たらないような薄暗い街、
グールタウンのやけに埃っぽい酒場は、
いつものように静寂に包まれていた。
しかし、今日は珍しく、そんな店内には似つかわしくない可憐な少女が入店してきた。
「おいおい嬢ちゃん、ここはおもちゃ屋じゃねぇぞ?」
店の用心棒がそう言って、少女に詰め寄る。
「……」
しかし、その言葉を無視して、少女はカウンター席に座る。用心棒は舌打ちをし、少女に怒りの視線を向けた。
「おいこら、無視すんじゃねぇぞ!」
少女は用心棒の大声を無視してカウンターに着くと、困惑する店主に聞く。
「何か、適当なウイスキーをストレートで」
「あ?まぁ、いいけどよ……」
「じゃあ、一杯貰おうか」
店主がショットグラスに蒸留酒を注ぎ、カウンターに置く。少女はそれを一気に飲み干した。
それを見た隣席の男がこう言った。
「良い呑みっぷりだな、あんた、名前は?」
「……ペトラだ」
「俺はホフマンだ」
少女……ペトラは眉をひそめた。
「ホフマン……ね」
続けて言う。
「まぁいい、さっさとあんたの首をくれよ」
ペトラはホフマンの頭、に忍ばせていたマグナムの銃口を向けた。
「あぁ、お前も賞金目当て……」
BLAM!
ホフマンがそう言おうとした瞬間に、
彼の眉間に44口径の銃弾がブチ込まれる。
しかし、彼はそれを素早く体を後ろに反らして回避!
そしてカウンターに手を突いて、バク転をし、後ろへと下がった。
ペトラはそれを見てニヤリと笑う。
「おお、やるね」
「そんなに天に召されたいか」
ホフマンは拳を構えながら言い返す。
「悪いが、私は神を信じてなくてね」
「んじゃあ、何を信じてんだ?」
「このマグナムだけさ」
「ハハッ、そりゃ結構!」
そうして、二人は銃と拳を構え、睨み合う。
造られた静寂を打ち破ったのは腰を抜かした店主の、用心棒を呼び出す声だった。
「た、助けてくれ!」
店主は必死に叫んだが、誰も来ない、
用心棒は足早に逃げ出したのだ。
「ひえっ、お、お助けぇ!」
店主は恐怖の余り失禁した。
そのときペトラは一瞬、店主に目を向けた。
その隙を見逃さずにホフマンはペトラの首に蹴りを入れる。
ペトラはその攻撃を予測していたかのように腕でガードした。しかし、衝撃を抑え切れずに吹き飛ばされる。受け身は取ったが、入口近くの壁にぶつかり、背中に鈍い痛みが走る。ペトラはすぐさま態勢を整えると、ホフマンへ向けてマグナムを乱射し始めた。
BANG!BANG!BANG!
激しい発砲音と共に放たれた弾丸がホフマンを襲う。
しかし、彼はそれら全てを見てから回避し、ペトラへ向かってゆっくりと歩いていく。
「ほぉーう、俺に蹴られて死なねぇ奴は初めてだ!」
「お前こそ、この私に傷を付けるとはね……」
ペトラは鼻血を拭いながら言う。
「そりゃどうも、っと!!」
今度はホフマンが攻勢に出る。
素早い動きから繰り出される拳は、風を切り、ペトラに迫る。しかし、彼女はそれらを全てリボルバーでガードする。
「ぐぅッ!?」
だがしかし、彼女の手首に鈍痛が広がる。けれども怯まず銃撃する。
BANG!
「ぐあっ!」
間近での射撃であったためか腹部に命中し、ホフマンが怯んだ。ペトラはその隙に追撃しようと、銃を構える。
しかし、次の瞬間、
「舐めんじゃあねぇ!」
ホフマンは腹部を押さえていた手を前に突き出し、掌打を放つ。
それはマグナムに直撃し、弾き飛ばした。
ペトラの手から離れたそれは宙に舞い、数メートル程離れた床に転がった。
「終わりだぜ。」
ホフマンはそう言って、拳を振り上げる。
「まだだ」
ペトラはニヤリと笑うと、ホルスターからもう一丁の拳銃を取り出した。
「何ッ!?」
ホフマンは驚いたが、そのまま拳を振るう。
しかし、その拳は空を切った。
そして、背後からの強烈な殺気を感じ取り振り向くと、そこにはマグナムを突き付けるペトラの姿があった。
「チェックメイトだ」
BLAM!
乾いた銃声が響き渡る。
ホフマンは、確かに死んだ。
店内に静寂が訪れる。
「ふぅ…」
ペトラは息を吐き、その場に座り込んだ。
「勝った。」
すると、カウンター裏に隠れていた店主は、ゆっくりと姿を現した。
「あんた、まさかあの……」
「……ああ、そうだ」
「マスター、一杯くれよ」