体長10mの鷲   作:害獣駆除業者F

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スカイハイジャンプ

 

 

「ピ(さて、腹拵えは済んだな)」

 

 それでは早速、飛行訓練をしようじゃあないか。所詮、私は生後一日目。すぐに飛べるとは思えんが、やらないという選択肢は無い。

 

「ピー!」

 

 必死に翼を羽ばたかせ、飛ぼうとする。が、全く上手く行かない。羽ばたき方が違うのだろうか。色々と試してみよう。

 

 大きく動かしてみる、違う。小さく動かしてみる、違う。立ちながら、違う。前傾姿勢で……おっ?

 

 前傾姿勢、ちょっと手応え有ったぞ。一旦前傾姿勢で練習してみるか。これで勢い良く等間隔で羽ばたきながら、後ろを蹴って……

 

「ピィ!」

 

 おぉ、飛べた。ほんの少しだけだが、今のは確かにジャンプでは無く飛行! よしよし、良い感じだぞ。思ったよりも早く身に付けられそうだ。もしかして、才能とか有るのでは?

 

「ピッ!」

 

 今度は更に飛距離が伸びた。今までの二回は横移動だったから、今度は上移動を狙ってみようか。

 

「ピィ……(うぅむ、上は少し難しいな。筋力不足か、身体が重いか。食事直後にやるのはミスだったか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は暫く飛行訓練を続け、多少は上達した。横移動なら10m、上方向なら1.5~2mは飛べる。まだまだ物足りないが、生後一日目と考えたら相当素晴らしい結果なんじゃないか?

 

 だが、流石に疲れたな。もう夜だし、軽く狩りをしたら寝よう。

 

 私は川の前へとテクテク走りし、ジッと魚を探す。今は嘴で捕まえているが、飛行をマスターすれば普通の鷲のように滑空しながら鉤爪で捕まえられるようになる筈だ。

 

 

 おっ、アメマスだ。これは食べたい。

 

 私がアメマスへ嘴を突き立てようとしたその時、不快な違和感が背筋を走った。それと同時に、複数の足音。私はアメマスを諦め、急いで振り向く。

 

「グァンッ!」

 

 野犬だ。三匹の痩せた野犬が、涎を垂らして走ってきている。間違いない、私を食おうとしている。

 

「ピィ……(不遜であろう、野犬風情が。この私を、食おうだと?)」

 

 確かに、私は雛だ。身体はもっふもふで、全体的に柔らかそうなシルエット。それでいて、身体の大きさも丁度良い。なるほど、確かに徒党を組んだ野犬にとってはご馳走だ。

 

「ピ(来ると良い、補身湯にしてやる)」

 

 

 

 

 …………どうしよ。大口叩いたけど、ぶっちゃけ勝てなさそう。移動速度は総合的に見れば向こうの方が速いし、私は今疲労が溜まっている。だが……戦わずして、この身をくれてやる気は無い。

 

「ピッ!」

 

 野犬の突進噛み付きを飛行で回避、そのまま鉤爪で引っ掻く……が、失敗。掠めただけだな、直撃はしなかった。

 

「ピィ……(身体が重い。飛行回避は、後五回行けるかどうか。厳しいな)」

 

 だが、野犬は今ので警戒してくれたな。攻撃の手が止み、様子を窺ってくれている。連続飛行は流石に厳しい、少しでも休めるのは有り難い。

 

 再びの突進噛み付き、これも飛行で回避して同様に鉤爪を引っ掛ける。今度は上手く行き、一匹の背中を軽く裂き血を流せられた。

 

 またまた突進噛み付き、また同様に対処し反撃。行動パターンの変化は警戒していたが、全く同じか。あまり頭が良くない群や犬種なのか? 油断させる策の可能性は有るが、有り難い限りだ。しかし……やはり、疲労の蓄積が厳しいな。

 

「ピィッ!」

 

 くっ、流石に厳しいな。三匹でタイミングよく来られると、滞空のできない私ではダメージは避けられない。腹を爪でやられ、血が滲み出ている。

 

 だが、これで三匹全員に程度の差こそ有れど流血はさせられている。勝機は有る。こんな所で、死んでたまるか。

 

「ピ!(見え見えだ! その痩せた身相応の狩りの下手さで助かるよ)」

 

 野犬の視線が、明らかに上を向いていた。ジャンプ読みで、ぶつかる直前に大きく背を低くし嘴を脇腹に突き刺す。野犬の動きを逆に利用し、もう二匹からの攻撃が来る前に噛み千切り捨てる。

 

「キャンッ!」

「ピ(痛いだろう? だが、これはお前たちの仕掛けた殺し合いだ)」

 

 疲弊していたのは、向こうも同じだったのだろう。嘴を受けた個体は、息を荒げ動きを止めている。

 

「ピィッ!?(し、しまった!)」

「ウォンッ!」

「ピッ……!(グゥ……退けろ!)」

 

 お決まりの飛行回避からの鉤爪。しかし、疲労からか角度を間違えてしまった。鉤爪の尖った部分を向けれず、地面に投げ飛ばされる。そこに野犬がすかさずマウント。なんとか抜けだせられたが、背中と右脚が酷く痛む。

 

「ピ……(不味っ!)」

 

 飛行で回避を試みるも、失敗。飛び上がれなかった。噛み付きが左脚に直撃、目を攻撃することによってすぐに離れさせられたが、これで両脚に大きなダメージを負ってしまった。

 

「ピィッ……(クソッ、私はここで死ぬのか?)」

「ワンッ!」

 

 野犬が目の前まで迫ってきている。脚は全く動かず、飛べる気配も無い。''死''が、目の前に有った。

 

 痛い、疲れた。あぁ、クソ……もう、終わりなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだ、この空間は。真っ白で、何も無い。ただ、何処までも明るく温かい。私は、また死んだのか?

 

 

「諦めんなよ……」

 

 何処だッ! 誰だお前はッ! 姿を表せ!

 

「諦めんなよお前!」

 

 ッ……。

 

「どうしてそこでやめるんだ、そこで! もう少し頑張ってみろよ!」

 

 無茶を言うな。流石の私でも、無理なものは無理だ。あの状況を、どうやってひっくり返せと? そもそも、私はそこまで生存意欲が無い。こんなあぶく銭のような謎の第二の人生に、あまり興味が無いのだ。

 

「ダメダメダメダメ! 諦めたら! 周りのこと思えよ、応援してる人達のこと思ってみろって!」

 

 周り? 応援? 何を言っている。私は孤軍奮闘だ。親鳥も居らず、たった一羽で…………いや、違うな。私は、人間の私は死んだ。だが、私は私だ。人間だった時の家族や友が居る。また、彼等に会いたい。彼等もまた、もしも今の私を知れば死んで欲しくないと願う筈。

 

「後もうちょっとの所なんだから!」

 

 あぁ、そうだ。その通りだ。勝利は、目の前に有るんだ。

 

「俺だってこのマイナス10度のところ、シジミが取れるって頑張ってるんだよ!」

 

 え? あ、そうなんだ……大変ですね、貴方も。漁師の方なんですか?

 

「ずぅーっとやってみろ、必ず目標を達成出来る。だからこそ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピョオオオォォォーーーッッッ!!!」

 

 

 

 

 Never Give Up!!!

 

 

 

 

「ピョォッ!(あぁ、これが……空か)」

 

 

 私の身体は、天高く舞い上がっていた。風を受け、風を作り、自由自在に大空を舞う。

 

 10m、20m、50m、100m。瞬く間に高度は上がっていく。そして……急降下。狙いは勿論、野犬。

 

 鷲の急降下、その威力は雛とて絶大。70cmの灰色の砲弾が、野犬の首を破壊する。即座に再び上昇、再び急降下でもう一匹の動ける野犬を殺害。残りの動きの止まった野犬は、横飛行の勢いを乗せた蹴りで顔面を破壊する。

 

「ピョオッ(私は鷲である。偉大なる空の覇者にして、生態系の絶対王者。地を這うだけの獣には、到底抗えぬ究極のハンターだ)」

 

 

 

 

 

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