「ぐぇっっ」
転送陣で意識が飛んだのも束の間、俺は衝撃で意識がハッキリして肺から溢れた空気で声にもならない呻きを発してしまう、普通に痛い
「なんつー始まり方だよ・・・あ?」
背中の痛みに文句を口にして自分の声に違和感を感じて、喉を触ると そこにある筈の喉仏がなくてツルツル?だった
おかしい、俺は15で成長期を迎えていて声変わりだって済んでいる、だからこんなに喉仏がある筈の喉がツルツルな訳がないし、こんなに声が高くて中性ボイスな訳がないのだ
「・・・まさか、対価か? なるほどな」
考察している内に痛まなくなった背中に驚きつつ立ち上がり、周りを見渡すと、墜落地点は森の中の様で右を見ても木、左を見ても木、前も後ろも木、どこ見ても満遍なく木、と言う安定の森だった
「面倒だな・・・サバイバル技能はあるけど、折角 異世界に来たのに開拓民スタートとか、面倒臭い」
野宿する為には水場を見つける事が必須・・・いや、魔法が使えるなら その限りではないのか?
どちらにせよ、着の身着のままだし食料の確保が急務ではある
「しかし、その前にやる事がある」
俺は少し逃げていた現実を受け入れる為に、自分の身体を確認する事にする
「認めたく無いモノだな、若さ故の過ちを」
髪の色は変わらず黒だったが伸びて肩を越していて、黒の長袖セーラーワンピース型制服でタイツを履いて靴は高そうなブーツだった
お嬢様学校の制服みたいで、少し変な感じがするが仕方ないので我慢するしかない、それに服の事はよく分からないし・・・もっと真面目に師匠の話を聞いておけば良かった
とりあえず、過去の傷が原因で視力が低かった俺だが、転生しても変わらずにメガネ必須の様で、メガネを着用している・・・いや、コレは伊達メガネか?
なんとなく着け外しして確認して分かったが、転生して視力はリセットされて体感2.0まで回復しているが、どうやらイオンが気を利かせてくれた様で、メガネを付属してくれた様だ、助かる
長い事メガネと共に生活してきたからな、無いと気持ち悪い
「とりあえず性転換してるのは間違いな、未使用の相棒が家出してやがる」
また少し現実逃避をしていたが、気を強く持ち現実を受け入れる、俺は間違いなく女になってしまっている
やはり盛り過ぎたが起きてしまった事は仕方ない、過去は変わらないしな?
これを教訓に次に活かそう・・・どう活かすかは分からないけど
「そこの珍妙なガキ、アンタ 人ん家の裏山で何してんだい」
「なんだと? 誰がガキだ、誰が・・・」
「口答えする前に質問に答えな、クソガキ」
「あー? なんつーか、転移事故?でココに落ちて途方にくれてんだよ、ババア」
軽く現実逃避していると、背後から話しかけられて振り向くと、如何にもな魔法の杖を持った白髪の老婆が居て、なんとも口の悪いセリフで問われたので、同じテンションで返答すると
「んー? なるほどねぇ、アンタは転生者かい。ご苦労なこった、どんな善行を積んだのかは知らないけど、無一文だろう? ウチに来な。アタシは見ての通りババアでね、若い手が欲しかった所さ」
「ちょっと待てよババア、何勝手に決めてんだ? それに何で俺が転生者って分かんだよ」
「とにかくついてきな、まだ陽があるとはいえ山ん中でする話じゃないからね」
「あ、おい。ババア」
俺の話を全く聞かずにババアは俺に背を向けて歩き出し、俺はババアの後を追う
正直、ババアの言う事は正しいので、ここはババアに従って大人しく着いていく事が正解だろう、最悪 ババアの目を盗んで逃げれば良いし
30分ほど歩き、如何にもな洋風建築の一軒家へ到着しババアに言われるがまま家に入り、火が焚べてある暖炉の前にある椅子に座らされ
「ひとまずアンタが転生者と分かった理由から教えてようかねぇ」
「是非そうしてくれ」
ババアは手に持つ杖でコンコンと床を打つと、影が伸びて腕状にしてヤカンやお茶缶を扱い始める、これが魔法か?
「アタシはね、ギルドの幹部席である称号持ちで、魔法陣の研究者なのさ、だから こんな人里から離れた山の麓に住んでいる」
「つまりアレか? 俺が転送された魔法陣の残滓を見て、俺が転生者って分かった、と?」
「アンタ、思ったより賢いね。まさにその通りだよ、この世界には たまに居るんだよ転生者がね」
「マジかよ」
ババアは、俺を馬鹿にしているのか褒めているのか分からない事を言う
ただこのババアは口が悪いが、悪い人間では無さそうだ
「アタシは見ての通りババアだ、いつポックリ逝ってもおかしくない。なら最期に善行でもしようと思ってね、アンタに飯と寝床を提供してやる代わりに、ババアにはツライ事を任せるって話さ、のるかい?」
「確かに俺は無一文だし、この世界の事を何も分かんねー、その提案にのるぜ」
「よし、今日から頼むよ。クソガキ」
「あぁ、頼むぜ? ババア」
口が悪いババアとなんだか意気投合して、奇しくも下宿生活が決まり俺の異世界生活はスタートした
案外悪くないスタートなのかも知れない