昼休憩が終わって、私もスタジアムに戻った……んだけど……。
何故かA組女子がチアガールになっていた。
うん。…うん、どういうこと?私もチアガールにならないと駄目?
あ、そういう訳じゃないのか。じゃあどういう訳なの?
じゃあまあ…私はスルーで。
気を取り直して、最終種目の説明に入ろう。
内容はさっきの騎馬戦で上位4位だったチーム16名+シード枠の私での1対1のトーナメント。
今年は特に趣向を凝らした訳でもなくて単純に戦うんだね。
組み合わせはシードの私以外はくじ。私と最初に当たる子は優勝までに5回戦う必要がある。…実際のところ、私に当たった時点でおしまいではあるんだけどね。
さて、くじはどうなるか。
ふうん?尾白とB組の…庄田?が棄権と。原因としては普通科の子か…。騎馬戦では基本緑谷、轟、爆豪のチームが常に目立ってたから見てる人は少ないだろうけど、相手を止める系の個性だった。
それと尾白が言っていたことを考えると操る系か。魅了…いや、見る限りそういう系ではないよね。まあどの道私には効かないだろうからいいか。
ミッドナイトの好みによって棄権は認められ、最後までポイントが高かったB組チームの子が2人入る。
よし、じゃあ改めてくじの時間だね。
1回戦から順に
緑谷 対 心操 ┐
轟 対 瀬呂 ┘
塩崎 対 上鳴 ┐
飯田 対 発目 ┘
爆豪 対 麗日 ┐
切島 対 鉄哲 ┘
八百万 対 常闇 ┐
青山 対 芦戸 ┬┘
竜胆
って感じ。私が最初に当たるのは青山か三奈のどっちかだね。
じゃあ組み合わせは決まったから一旦レクリエーションだね。どうしようかな…、全く疲れてはないからレクリエーション参加してもいいんだけどみんな楽しくやるだろうにそこに手加減してやるのも…。
まあ休んでいようか。
あ、A組女子は結局チアガールするんだ。
さて、さっさと話を進めようか。トーナメント1回戦からだね。1試合目は緑谷対心操だ。
緑谷は正直今回はきつそうかな。第1種目と第2種目は持ち前の分析とか発想でかなりの活躍をしていたけど、正面戦闘では個性の制御が出来てないからまだまだ。普通科の子相手の肉弾戦ならまだ個性なしでも勝てはするか。
ただきついのは相手の心操も同じか。強制的な支配ならともかく、さっき尾白が色々教えてたから多分条件発動型、対応出来るタイプ。
こういうのが輝くのは初見殺し、不意打ちに乱戦複数戦であって間違っても1対1で正面からやるものじゃない。
あ、緑谷がかかった。
見た感じ言葉の応答かな。周りの声とかマイク先生の放送音声が大きくて何を話していたかは聞こえなかったけど、何を言われたのか。
まあただ、今回で明確に目立った。次の試合は流石に無理だろうね。といってもここまで盛大に目立てばプロの目にも止まりそう。敵の無力化には持ってこいの個性だからね。
緑谷はそのまま、いや、自傷で気を取り戻した。指先の少しくらいは動かせるのか。これは指ですら自傷出来てしまう緑谷だからこその機転。
でも、指先を少し動かすくらいがギリギリなら個性はどのくらい使えるんだろう…?
何はともあれ、気を取り戻した緑谷は今度こそ相手の個性にかからず、接近、なんとか投げ飛ばした。まあ緑谷も十分鍛えてるからね、近接戦闘に関しては心操が負けるか。
でも歓声を聞く限りやっぱり評判は悪くない。えっとなんだっけ、普通科からヒーロー科への編入があるんだっけ?可能性は高そうだね。
2試合目、轟対瀬呂、なんだけど……。
瀬呂の初手不意打ちも悪くは無かったけど轟が大凍結で一瞬で決めてしまった。
それよりも寒い…。折角さっき仮眠を取って眠気もなかったのに眠くなってきた…。轟とやることになるのは決勝かぁ。今から憂鬱。
同じく3試合目も一瞬。
相手の個性が中々器用だったのもあるけど、上鳴も強い個性ではあるんだからもっと考えて使えばいいのに。アホになるのは使った後なんだから使う前に頭を使ってかないと。
4試合目は……なんだろうこれ、セールス番組?
なまじ飯田が真剣に動いてるからこそサポートアイテムがしっかりしている事がわかるというか、ヤラセでは無いことがわかるというか…。
まあ、いいのかな?
5試合目、立て続けに瞬殺が続いた上にさっきがセールスだったから期待は高まってる。けど爆豪対お茶子か。どうなるかな。
お茶子の個性もこの試合には向いてない。周りに浮かすものもないし、相手の個性次第では浮かせればその時点で完封出来たかもしれないけど、相手は爆豪。浮かせたところで自分の爆破による推進力である程度は対処してくるだろう。
初手はお茶子から。けど爆豪に迎撃されてる。緑谷に聞いていたかな、防御は出来てたけど避けれてはいないくらいの反応。爆破で生まれた煙幕から囮を出しての横撃も単純故に有効な手ではあるけど、周囲の警戒を鍛えてる爆豪には及ばない。
ああ、そういう狙いか。爆豪も私相手の遊びで警戒が強くなってるといってもあれほどの距離が離れてたら気づけない。それに私が地上で遊んであげてたのもあってか空に意識が行ってないね。たまたまかもしれないけど今の爆豪には最適かな。
戦えば戦うほど瓦礫の数は増えていく。けれど爆豪もそれは同じ、時間が経てばその分爆破が強くなる。この分だと、残念だけどお茶子の策は……。
一撃か、かなり規模が大きい。爆豪もそれだけ汗をかいていた…かかされていたってことかな。もしこれが周りに物があって初手この規模の攻撃を出来ていれば結果は違ったかもしれないね。
6試合目に行こう、切島対鉄哲。
個性だだ被りコンビだね。さっきと比べて派手ではないけれどその根性や気迫は見応えのある試合でもある。ボクシングとかの試合を見てる感じだね。
勝敗に関しては、ほぼ互角。切島が少し上回ったか。爆豪のついでに何回か殴ってた甲斐があったかな?
7試合目、百対常闇。
ダークシャドウによる短期決戦で終わり。百は予め用意していたものも新たに対策を作ることも出来ずに敗退。
まあ百は後方支援や味方への装備供給が強みだからね、狭いフィールドでの直接対決ならこうなってしまうか。単純にダークシャドウも強いし。
8試合目、三奈対青山。ここで勝った方が私の相手だね。
といってもこれまた短期決戦。酸を使った滑るような移動でレーザーを避けて近づき、サポートアイテムに酸を1発。壊れて慌てた青山に拳で1発。
本来なら連続での試合にならないように2回戦目3試合目くらいに私がやる予定だったんだけど、瞬殺だったのと三奈が問題ないって言ったのもあってこのまま続けて私との試合になった。むしろいい準備運動になったって言ってたけど、準備運動扱いされた青山が凹んでたよ。
さて、いよいよ私の出番なわけなんだけど。
『いよいよ来たぜ竜胆鏡花!だがそのルールの追加、というよりハンデの追加だ!内容は竜胆は開始から10分は自分からの攻撃禁止、相手の攻撃を相殺するための攻撃や軽いカウンターくらいはありだぜ!ついでに飛行の制限とかいろいろな!』
『正直これでも足りないが、今回は訓練じゃなく体育祭だ。竜胆の強さを示す場も必要だろう。それにあいつもその辺は弁えてる、とやかく言う必要はないだろ』
ふむ、思ってたよりハンデは少ないか。どちらかというと10分間相手に付き合えって感じ。
「よろしくね竜胆!アタシも負けないよ!」
「うん、遠慮はいらないよ。酸も全力でかかっておいで」
『芦戸 対 竜胆!!START!!!』
「とりゃあ!」
開始と同時に滑り移動を開始、突っ込みながら酸を飛ばしてくるけど、遅いし数も少ない。少し体をズラせば避けれる。酸を纏ったままの腕でも攻撃してくるけど、気にしなくていいくらいの酸性。
「動きはいいけど、攻撃が軽いね。ダンスをしてるんだっけ、そのせいで1発1発に体重が乗ってない」
「その前に何で素手で捌いて大丈夫なの!?うぅ、こんな感じ!」
「うーん、付け焼き刃だと流石に微妙。今なら重さより速度を速くして酸を撒き散らす方が強くなるかな?個性を活かしてね」
ちゃんとアドバイスを聞いてるのか、酸の量を増やして手足の攻撃の動きに合わせて飛ばしてくる。ここまで飛散すると1滴は少ないけど避けきれない。まあ私には意味無いんだけどね。
「って、結局竜胆には意味無いじゃんか!」
「ふふ、もっと酸を強くしてもいいんだよ?」
このままでは無駄だと考えたんだろう。仕切り直しを考えてるのか、後ろに跳び酸の壁を作る。中々良い技、でも酸性が変わらないなら私にとっては柔らかい壁にすぎないんだ。
「はぁっ!」
オールマイトの様に風圧で全部飛ばすなんてことはできないけど、人1人分くらいの隙間なら問題なく開けれる。左手で壁を割り、右手で薙ぎ払って飛ばす。
「うっそぉ!?やっぱ素手で酸どうにかするのはおかしいって!」
「実際出来てるんだからそれが事実よ。ほら早く来ないと10分たつよ?」
うん、壁をこじ開けたはいいけど私からは攻撃出来ないから待つしかないんだよね。私の言葉に反応してか飛ばしてきた酸をとりあえず避ける。壁を作った後に少し溜めたのか最初よりも多いね。後ろに落ちたのを確認する限り酸も強くなってる。
さっきの壁が結構な量の酸を使っていたのもあって地面には酸が溜まってる。ただ大半はさっきまでの私には効かない酸だから利用できそう。
「弱い酸はあまり出しすぎるのも問題かもね。相手にも利用されかねないよ、こんな風に、ねっ!」
自分から酸に踏み込み、滑る。あまり慣れてないからほんの少しだけ魔力放出を使い、体勢の補助と自由な方向転換を。流石に自分の酸が使われると思ってなかったのか驚いてる三奈の後ろに回る。
「後ろを取られてるんだからちゃんと対応しないと」
「そうだ!あっ」
攻撃出来ないから肩を少し叩く。咄嗟に右腕を伸ばしてきたけどそれは悪手。腰も入ってないし酸も飛散しない。ずっと出してる酸はあるけどそのくらい。腕をとって軽く投げる。本当に軽くしたし、投げる場所も酸溜まりにしたからこれくらいなら問題ないはず。
「いたた……」
「自分の移動用の酸、周りに配慮した弱酸、あるいは敵が耐性を持ってたり酸に触れてもいい物を付けてる時。色々あるんだから酸を出した後の事も考えないと駄目だよ」
「おっしゃる通りです……」
『おいおい!これじゃ試合というか授業を見ている気分だぜ!』
『余裕が出来たらアイツに他の奴の戦闘訓練の相手をさせるのもいいかもな』
「10分たったわ!竜胆さん、攻撃してOK!」
おっと、もうそんな時間か。短期決戦が多かったとはいえ、あんまり時間を使うのも問題だよね。終わらそうか。
「じゃあ、これで最後かな。おいで」
手招きをする。三奈も終わらせる気が分かったのか構える。
「じゃあいくよ!おりゃああぁ!」
後ろから前に助走をつけて右半身を出す。と同時に酸の津波が迫る。さっきの壁を横向きに出したのか。それに、形としては轟の氷にも近い。
この津波が酸ってことを考えるとあまり実用的ではないけど、今はそれでも十分か。
「吹き飛べ!!」
1歩踏み込む。全力で殴り、そのまま魔力放出で津波を全て弾き飛ばす。同時に加速、途中で三奈を抱えてステージの端まで移動。場外に降ろせば終わり。
「芦戸さん場外!竜胆さん2回戦進出!!」
「負けた~。やっぱダメか~」
「まあまあ。それに悪くは無かったよ」
目の前に下ろしたからね。そのまま会話、握手してステージを去る。ついでに観客席に向かって手を振っておこうかな。
これで1回戦も終わったし、次は2回戦。初戦は緑谷対轟か。
観客席まで寒くならないといいんだけど…。
私の相手は常闇だね。