ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン 作:邪兎屋が好き
新エリー都には顔なしレイダーという都市伝説がある。
ホロウの中では時々、顔のないホロウレイダーに出会うことがある。
そして、ソレに頼むとホロウの中で行方不明になった人物の遺品を渡してくれる。
しかし、何も頼まなければ自分が行方不明者となる……らしい。
だがそんな都市伝説は根も歯もない噂だとニコ・デマラは知っている。
何故なら、その噂の元になったと思われる人物がたった今目の前にいるからだ。
「……ねぇ、あんたはどう思ってるの?あの噂」
「どうでもいい、俺は依頼通りにホロウに潜って、遺品探しと行方不明者探ししてるだけだからな。関係がない」
ネムと名乗ったこの人物はホロウレイダーであり、ホロウ内で行方不明になり、治安局によって死亡判定を下された人物の捜索や、死亡していた場合には遺品の回収を行っており、治安局に捜索の願いを出さないような人物の捜索願いも彼の元へと舞い込んでいる。
彼の顔があるはずの場所には液晶ディスプレイの付いた仮面が一つ、平常時は暗転しているそれは、度々点灯しアイコンや図柄の表示で表情に代わって彼の感情を伝える役割を果たす。
それに加えてパーカーのフードを目深に被り、上からロングコートを着込んだこの姿では幽霊の類と思われても仕方がないだろう。
ニコからしても、ある程度長く関わっているからこそ信頼はできるものの、正体不明の人物である。
「それで、今回は何をやらかすんだ?ニコ」
「赤牙組の縄張りから金庫の回収よ。これが成功すれば赤字ギリギリのウチの帳簿もどうにかなるし、あんたに貸してもらってた金も、その他のツケだってどうにかなるんだから!」
「……場所は?」
「十四分街のあたりよ」
「わかった。いつも通り近くで待機しておく、何かあったら呼べ」
そう言うと、彼はフードを被り直してニコに背を向けて去って行った。
先ほどの会話の通り、ニコを中心とする邪兎屋は今までに幾度となく彼に助けられており、その甲斐もあって邪兎屋はギリギリで赤字を免れていた。
「今回はあんたの助けなんてなくても依頼を達成してやるんだからっ!指を咥えて見てなさいよ!」
スタスタと歩み去る背中にニコはそう吠えた。
しかし彼は、背中越しに手を振ってそのまま去って行った。
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しかしそこから数日後、金庫強奪の実行日。
紆余曲折あったニコはパエトーンの元へと向かい、パエトーンの二人と話をつけるとすぐさま携帯を取り出し電話をかける。
『──もしもし?』
「緊急事態よ助けて頂戴!」
『……俺の助けはいらないんじゃなかったか?』
「そのつもりだったけど……、あたしの従業員と依頼のターゲットが全部ホロウに落ちたの!今すぐ来て!」
『はぁ、分かった。5分待ってろ』
こうして少しずつ増えていく正体不明の友人への借りにため息を吐くニコであった。