ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン 作:邪兎屋が好き
「ヴィジョンの手は血まみれだ!その体の隅々まで、罪なき一般市民の血に塗れているんだ!」
ニコたちが先導した爆破予定地域の人々は、口々にヴィジョンの所業への不平を並べ立てる。
ニコが事前に呼んだ白祇重工とマスメディアの人々がそれを聞き、今頃はマスメディアの報道から市民にもそれが知れ渡っただろう。
しかし、その行列の中にネムの姿は無く、デッドエンドブッチャーとの戦いで素顔を晒した彼女は
「スペアのマスクを取ってくる。……ホロウレイダーが関与してたとなると面倒なことになるかもしれないしな」
と言ってその場を離れていた。
さて、警察からの事情聴取も終わり、邪兎屋の面々と猫又、そしてパエトーンの二人が食事を摂っていたその時、店の外でバイクのエンジン音が響いた。
「来たわね!」
「あぁ、遅れてすまない」
マスクとコートを新品に取り替えたネムが店のドアを開いて入ってきた。
「…………猫宮又奈、元赤牙団組員だな?今回の件では、お前と直接会う機会こそなかったが、裏で少しだけ協力させてもらった」
猫又は、握手を求めるように差し出された左手を取った。
「この人は私がこの前話した邪兎屋の協力者よ。……そういえば、一度素顔は見せたのに、なんでマスク付け直したのよ」
「落ち着くからだ。冗談のつもりだったがお前は俺の出した条件を果たしただろう?だから、素顔を見られても何も言わなかったんだ。これからはお前たちしかいない場所では外すよ」
彼女はそう言うと、空いた席に腰掛ける。
祝勝会とも呼べる宴は、夜が更けるまだ続いた。
──────────
宴も終わり、帰り道。
「猫宮又奈、お前とはまた近いうちに会うだろう。また」
ネムはそう言って、邪兎屋の面々と同じ方向へと歩き始めた。
猫又は元々の隠れ家から持ち物を取りに戻り、その場に居る人間か元々の邪兎屋の三人になったところで、ネムはマスクを外す。
「……やっぱり、女の子…よね?」
「……そうだ」
マスクを外したその素顔は、光のない細い眼の黒髪黒目の少女だった。
左半身からは、服の下から顎の辺りまで大きな傷跡が覗いている。
「……さて、これでオ──私はニコに顔を見せたわけだけど、覚えはないか?」
「え?……えーっと……あっ!前に助けた──!」
「そう、その通りだ。だからこそ、私はお前たちに人生一つ分の借りがある。だから、お前たちも躊躇わずに私を頼ってくれ。個人的な借りと好意の元に援助をさせてもらう」
「……なら、あなたも邪兎屋に入らない?」
アンビーの提案に、彼女はとても申し訳なさそうに首を横に振った。
「……私はもう少しだけ汚れ仕事が残ってる。それが終わるまで、邪兎屋の一員になるわけにはいかない」
〝それはお前たちの看板に泥を塗ることになる〟と言外に語る彼女に、アンビーもそれ以上追求することはなかった。
「……全てが片付いたその時、もう一度私を誘うのなら、その時は仲間になるよ」
そう言って、彼女は路地裏の闇へ消えていった。
「─────今のって……!」
陰から彼女を見つめていた、猫耳の少女には気が付かないまま。