ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン 作:邪兎屋が好き
「猫又、あなたへの依頼よ」
ある日、ニコは少し神妙な顔で一枚の書類を持ってきた。
書類に書かれているのはホロウ内での荷物輸送の依頼で、危険なエーテリアスと、狭い道が多いのである程度の戦闘力を持つ猫のシリオンに頼みたいと書かれている。
「はっきり言って、ちょっと胡散臭いわ。……でも、ありえないほどの高額なの、あなたさえ良いなら……」
「行ってくるぞ」
食い気味に返答した猫又。
恩ある邪兎屋への益になるのなら断る理由がない。
「……ありがとう。せめて、プロキシに手伝ってもらいましょ。その方が安全だし!」
ニコのそんな言葉通り、猫又はアキラとリンの助けを得ながらホロウへと足を踏み入れた。
ホロウの内側は恐ろしいほど静かで、依頼の書類に書かれていた危険なエーテリアスなどどこにも見当たらない。
依頼人が用意していたキャロットに従ってリンとアキラが雑談を交えつつ猫又を誘導する。
「脅し文句だったのか?それとも依頼主がビビリだったとか?」
『そうとも限らない。一応警戒は緩めないでくれ。猫又』
気が抜けたような様子だった猫又にアキラから注意が飛び、猫又はそれに適当な返事をして、もう一度辺りを警戒し始める。
「……でも、本当に何もいなさそうだぞ?」
『いや、まさか……本当に?』
『──警告します、依頼主より譲渡されたキャロットのデータと実際の地形が異なっています。ここは袋小路です』
「なんだって!?猫又、すぐにこの場所から離れないと──」
「いいんだ。あたしを置いて逃げて」
Fairyの警告にアキラが撤退を促すが、猫又は首を縦に振らない。
明らかな罠にも関わらず逃げない彼女に、何か理由があるのかとアキラが問いただそうとしたその時、彼らの背後から、つまり彼らがやってきた通路から足音が響く。
片足分だけ別の音が混じった重々しいブーツの足音が、刻一刻と近づいてくる。
「……逃げないなんて、大人しいな」
「次はあたしだって、わかってたから」
「そうか」
姿を現したのは、見覚えのあるロングコートと、光を発していない仮面を纏ったホロウレイダー、ネム。
彼女の右手には古式の拳銃が、左手にはボロボロのマチェーテが握られている。
彼女は猫又の正面で立ち止まり、その仮面に手をかける
「……これで最後だ、私の顔を見せてやる」
外された仮面の下にあったのは、猫又が想像していた、しかし信じたくはない現実だった。
仮面の下から現れたのは猫又が姉貴と慕った少女の顔だ。
しかし、左半身には服の内側から喉元まで伸びる大きな傷跡があり、その瞳には昔にあったような光や優しさはなく、ただ冷淡に彼女を見据えている。
「──殺しに来たよ、猫ちゃん」