ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン   作:邪兎屋が好き

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猫が暴くまで

物心ついた頃には家族との関係は良くなかった。

気がついた時には、ホロウレイダーとして生きていた。

それが、ネムと名乗るホロウレイダーの人生だった。

 

───────────────

幼い頃から完璧を求められ、それに応えられてしまった。

一度応えてしまったならそこから降りることはできない、期待を裏切ることがどれだけ恐ろしいのかを知っていたから。

しかし人は誰しもが完璧ではいられない、それは自明の理だった。

 

「……っなんだコレは!?」

「私が、妊娠したままホロウに呑まれたからだわ。……私、エーテリアスを産んでしまったんだわ……!」

 

学校で行われた健康診断、その中のエーテル適正の検査結果は父と母に恐怖を抱かせた。

 

()()()()1()0()()()()()()()()()()()だと?そんなモノが人間な訳がない!俺たちの子供を返せ、バケモノめ!」

 

父の拳はただ痛かった。

こうして家を失い、ホロウに入った。

拾い物のケータイで暇を潰して、エーテリアスに襲われた死にかけの他人から追い剥ぎをして過ごす日々。

そんな中、とある男が声をかけて来た。

 

「……オメェか?ここ二、三年ホロウに住んでるってガキは……、こんなに若ぇのに、よくやるじゃねぇか。くっ……」

 

何故か涙ぐんだその男はシルバーヘッドと名乗った。

どこから聞きつけたのか、シルバーヘッドは

 

「お前のエーテル適性を見越して頼みてぇことがある」

 

そう言った。

 

────────────

シルバーヘッドが頼んだのは赤牙組の仲間の遺品の回収だった。

ちょうどその頃ホロウの内部でのアレコレに手を出し始めた時期だった赤牙組は、新しい動きだったこともあり、ホロウに入ったきり帰ってこない仲間が多かったのだ。

何はともあれ、そこから数年の間赤牙組には、赤牙組の仲間ではなく外部の協力者として、数ヶ月に一度行方不明のメンバーの遺品を集めてくる者がいたのは真実だ。

そして、その到着を心待ちにする者もいた。

 

「おっ、来たな!待ってたぞ」

 

そう言って、シルバーヘッドに遺品を渡し終えたホロウレイダーへと駆け寄る少女。

 

「……久しぶり、猫ちゃん。元気だった?」

「おう、私はこの通りピンピンしてるぞ!そっちは……なんか良い匂いがする」

「ああ、この前ホロウの中で水道が通ってる家を見つけたんだ。久しぶりにしっかり汚れを落とせたよ」

「久しぶりって……、これまでは?」

「川」

「川って……」

 

そんなしょうもないやり取りを繰り返す時間は少女にとって得難いもので、次に会えるのはいつかと毎日心待ちにしていた。

そんな少女は気になったことがあった。

顔だ、少女はホロウレイダーの顔を知らなかった。

目深に被ったフードの中でどんな表情を浮かべているのかが無性に気になった。

そして……

 

「先に謝るぞ、ごめんっ!」

 

少女はそのフードを剥ぎ取った。

抑えを失った黒い長髪がさらりと垂れる。

青い瞳は、不服を訴えるように少女を見つめている。

 

「……はぁ、猫ちゃんだから許すけど、二度としないでね」

 

いつも少女に構ってくれて、面倒を見てくれて兄のように思っていたホロウレイダーは、女だった。

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