ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン   作:邪兎屋が好き

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一つの終わりと二つの始まり:上

彼女が女と分かった後も、少女と名すら名乗らないホロウレイダーの関係は続いていた。

ホロウレイダーは少女に、ホロウの内側で見た物や拾った物、ホロウでの冒険を語り、少女はそんな話を興味津々に聞いていた。

数多く語られた話の中でも少女が特に興味を示したのは彼女の〝奥の手〟の話。

それは内部に発熱機構を備えたマチェーテのような見た目の武器で、最高温度に達した際には戦車の装甲ですらバターのように切り裂く、現在は流通が少ないモデルなのだと彼女は自慢げに語った。

デッドエンドブッチャーや、()()()()()()()()()()()、彼女が戦ったそれらの話を少女が楽しみに待っていたそんなある日、彼女は突然言った

 

「……そろそろ、この場所を去ろうと思うんだ」

「………………え?」

「この組は末端の制御を失い始めてる。そして制御を失った末端の一部は、私を恨んでるらしいからな」

 

シルバーヘッドとの約束の通り、定期的にホロウ内で行方不明になった仲間の遺品を持ち帰る彼女は、一部の組員の中では彼女自身が殺して持ち帰っているのではないかと噂されていた。

そんな噂はいつしか組中に広がり、シルバーヘッドと怪しい取引をして、仲間を殺して遺品だけを持ち帰る女だと末端の組員たちは本気で思い込んでいた。

彼女に付けられた〝葬儀屋〟と言うあだ名は、そんな蔑みから生まれた名だ。

彼女がそう話した直後、数人の男がこちらに近寄ってくる。

赤牙組の末端の数人が大声で彼女を呼んいる。

 

「おーい、〝葬儀屋〟の姉御!来てくだせえ!」

「俺たち個人でアンタに依頼してぇんだ!」

 

しかし彼女は大声で呼ぶ彼らを見ることもなく

 

「待ち合わせの座標送っといて、もう少し話したら行くよ」

 

と言って少女へ顔を向ける。

そして、一本のマチェーテのような武器を少女に差し出す。

 

「前に言ったろ、私の奥の手……お前に預けるよ」

「……え?でも、これはあんたの」

「そう、私の魂と言ってもいいくらい大事な物だ。だからこそ、コイツをお前に預ける」

「な、なに言ってるんだ……?まるで死ぬって言ってるみたいだぞ?」

 

少女は、自らの死期を悟ったような彼女の発言に冷や汗を垂らしながらそれを否定するような言葉を待つために、その不安を言葉にする。

すると彼女は

 

「そうだね、いつ死んだっておかしくない」

 

と、そう言った。

フードからその顔に落ちる深い影でその表情を伺い知ることは難しかったが、少なくとも少女には、その表情は死への恐怖でも決意でもなく、ただすべてをどうでも良いと切り捨てた達観であったように見えた。

彼女は立ち上がり、()()()()()()である少女の頭をその耳ごとひと撫ですると、背を向けて去っていった。

 

───────────────

 

「それで、依頼とは?」

 

彼女は、猫の少女に向けたものとは違う冷徹な瞳で、赤牙組末端の男たちを見据えた。

 

「依頼?そいつはですねえ、姉御。アンタに──」

 

ざくり、という音と共に、飛来したクロスボウの矢が彼女に突き刺さる。

右肩と腹、完全に彼女を狙い、殺すための位置だった。

 

「死んで欲しいんですよ。シルバーヘッドの旦那をどうやって脅してたかは知らねぇが、もう十分俺たちの仲間を殺しただろ?次はアンタが死ぬ番だ」

「……っ、お前──ふざけるのも大概に……!」

「うるせぇ!潔く死にやがれ!」

 

男たちの一人がナイフを持って彼女に襲いかかる。

左腕しか動かない手負いの女、そう油断したのが命取りだった。

彼女は近寄って来た男の足を払い、転んだ男の首を足で踏みつけへし折った。

 

「………っ!?クソっ」

 

しかし、彼女へ向けてさらに矢が放たれる。

膝を掠めた矢に、彼女は思わず膝を付いた。

 

「……私は、アイツのためにもまだ死ねやしないんだ」

「猫又か?あ、アイツはお前のことなんてどうでも良いって言ってたよ。殺してしまえってな!」

 

真っ赤な嘘だ。

右肩と脇腹に矢が突き刺さり、矢が掠めて切り傷を作った膝からは血が流れ続けているのにも関わらず立ち上がる彼女に恐怖した男が吐いた嘘だ。

しかし、その一言で彼女の動きは止まった。

屋上の淵に立つ彼女へ、男は嘲笑うように告げる

 

「言い残すことは?」

「──私を覚えていろ。お前たちが裏切った女を覚えていろ。何年かかろうが必ずお前たちを殺しに行く。……夜のたびに私に見つかってはいないかと怯えると良い、必ず見つけてやる……必ず殺してやる。私を裏切ったお前たちを、許さない」

 

彼女の鬼気迫る表情に怯えた男は、動きを止めていた彼女を蹴り飛ばした。

彼女の体はビルの屋上から投げ出され、男には見えないほど下まで落ちて行った。

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