ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン 作:邪兎屋が好き
どれほど待っても、猫又の元にあのホロウレイダーは現れなかった。
そんな折、猫又の元に数人の男たちがやって来た。
「姉御は俺たちの依頼を受けてから音信不通で……すまねぇ。一番仲のいいお前はなんか知ってたりしないか?」
猫又は脇目も振らず走り出した。
猫又は、彼女の隠れ家を知っていた。
ホロウの奥、多くの裂け目を超えた先にあるその隠れ家へ辿り着くための道順も教わっていた。
もしかしたら、彼女はそこにいるのかもしれないと一縷の望みに賭けて彼女の隠れ家へと辿り着いたが、しかしそこにあったのは彼女が語ったような戦利品も、日用品すらないもぬけの殻だった。
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「……っ!?親分!こ、こここ、これ!」
「ん?何よビリー……依頼の品を見つけ……ちょ、何コレ!?」
二人の騒ぐ声を聞いて、アンビーもその場へ集まる。
そこに居たのは、〝居た〟と生物的な形容をして良いのかわからないほど傷だらけの人型。
右肩と脇腹には矢が突き刺さり、両足には切り傷が残っている。
おそらく上から落下したのだろう、打ち付けられたと思われる左半身は形こそ留めているものの、傷と出血が酷く、全身には傷が幾つも残っている。
「……人、ね。どうする?ニコ」
「え?どう……って?」
「まだ息がある。今すぐ手当すれば、助かるわ」
「え?こんな状態……で……っ!?」
ソレは、立ちあがろうとしていた。
根元に矢が刺さり動かないはずの右腕を無理やり杖のように扱って、怪我をしているはずの足を無理やりに動かして、立ちあがろうとしていた。
「ちょっと待って、あんたその怪我じゃ……ああもう!二人とも手伝って!この人に応急手当てをしてあげないと!」
ニコはバランスを崩したその体を抱き止め、彼女を連れてホロウを出た。
そこから数時間後、目を覚ました彼女は辺りを見回すと、ニコと目を合わせた。
「……名前は?」
「あたし?あたしはニコ・デマラよ」
「……ニコ、この借りは必ず返す。今は少し急用がある、また今度会おう」
彼女は自らの名すら名乗らず、無理矢理に立ち上がるとその場を去っていった。
猫又がもぬけの殻となった彼女の拠点を見たのはそれから数日後のことだった。
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「……ったく、なんで俺がこんな仕事しなくちゃなんねェんだ……」
さらに一ヶ月後のこと、とある男がホロウを歩き回っていた。
「お探しのものは、仲間の遺品か?それも別の用事か?」
「あ?誰だお前」
背後から聞こえたくぐもった声に男が振り返る。
そこに立っていたのは、見覚えのある黒いコート。
「……それとも、お前たちが殺した仲間の死体を探しに来たのか?」
男は、目の前にいるのは自分たちが裏切って殺したはずの、突き落としたはずのホロウレイダーであると気がついた。
黒いフードとマスクによって頭を完全に隠したその姿は、男には首がないように見えて一層恐怖を増幅させた。
それと同時に、男の足へと投擲されたマチェーテが突き刺さる。
「あがっ……っ!?て、テメェ!なんで生きてやがる!」
「……さあ?私もわからないさ、ただ親切な人に救われたことは事実だ」
男は動かなくなった右足を引きずりながら逃げ出した。
しかし男がいくら走っても、ブーツの足音は少し後ろをついてくる。
這う這うの体でホロウの外へと逃げ出した男は仲間へ電話をかける。
「おい、聞こえるか!?俺だ!アイツが、アイツが生きてやがる!」
『アイツ?誰だよ』
「名前なんて知らねぇ!アイツはアイツだ!俺たちが殺した──」
「そう、お前たちが殺したんだ。だから
電話越しに、男の仲間は湿った音と苦悶の声を聞いた。
数それは何かが人体に突き刺さる音と声だと、数秒かけて理解した。
「ひぃっ、やめてくれ!命だけは、頼む!」
「……俺がそう頼んでいたとしたら、お前は首を縦に振ったか?」
「ああああっ!──ぐあぁあっ!?」
「俺から奪ったものを返してもらわねぇとな?……まずは右腕だ」
「ひぃっ!?た、助け──」
悍ましい音と痛ましい叫び声の後、完全な沈黙が訪れた。
「……次はお前たちだ。背後に迫る亡霊に、怯えて過ごせよ」
ツーツーと、虚しい電子音と共に電話が切れた。
数日後、彼のものと思われる死体が見つかると、死んだ男の仲間だった者たちは全員が集まって、どのようにして逃げるべきかと話をした。
しかし、どうしようもない。
シルバーヘッドに助けを乞おうにも、その為には自分たちが仲間であった彼女を裏切り、果てには殺したと言わなければならず、それを打ち明けて助かったとしても、その後に待つのは赤牙組の一員としての処断である。
そこで彼らは、あのホロウレイダーに最も近かった少女に、彼女を説得してくれるよう頼んだ。
だがしかし、それすらも受け入れられることはなく、そこから数日が経つと彼らの仲間のうちの一人が消え、また惨たらしい死体が見つかった。
猫又はその日、腐敗していく赤牙組を見捨てると同時に、どこかで生きているあのホロウレイダーを探すために赤牙組を抜けた。
それと同じく、ホロウレイダーの彼女の復讐はここから始まったのである。