ホロウ居座り放題のホロウレイダーは邪兎屋のファン 作:邪兎屋が好き
「にしても、マチェーテなんて……あたしたちの知り合いを思い出すわね」
「……そういえば、彼とは近頃連絡が取れてない」
「あぁ、アイツ曰く、──こほん」
猫又と共にデッドエンドホロウへ足を運んでいる最中だったニコは、邪兎屋のパートナーである人物のノイズのかかった低い声を再現すべく咳払いをして息を整える。
「『俺は少し大規模な依頼のために暫く連絡が着かなくなる。必ず戻ってくるつもりだ。俺が戻るよりも前に看板を下すような真似はしなくていいようにしろよ?』ってあたしに電話したっきりよ」
「……それは、無事なの?」
「さぁ?近頃は惨い死体がいくつも見つかってるって聞くから、あたしも心配して連絡したのに、既読だけ付けて返信の一つもくれやしないわ」
はぁ、とため息を吐くニコ。
すると、
「うにゃ?邪兎屋は他に従業員がいるのか?」
猫又の質問に、ニコは答えづらそうに
「従業員じゃないわ。……友達っていうか、支援者っていうか、微妙な立場であたしたちを支援してくれる人がいるの。たしか、2〜3年前からかしら?」
「大規模な仕事って……、それこそニコたちは参加しなくていいのか?」
「……たぶん、本当に大規模な仕事ってわけじゃないのよ。昔馴染みがどうたらって言ってたから、それでも心配だけど」
猫又の背筋に悪寒が走った。
昔馴染みと過去の清算というワード、そしてこのタイミングで起こった連続殺人。
きっとニコも気がついてはいるのだ、その全てにきっと繋がりがあるのだと。
そして、それはもしかしたら自分にも繋がりがあるかもしれないと、猫又は薄々勘づいていた。
「……な、なぁ、その人って、どんな人だったんだ?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「次回からも邪兎屋に依頼したいから、そうしたらその人に会うかもしれないだろ?」
「……まぁ、それもそうね。彼は私たちのパートナーで……正体不明のホロウレイダーよ。ネムって名乗ってるけど完全に偽名で、そう呼んでも時々反応しないし、フルフェイスのマスク着けてるし、完全正体不明。……あと、いつもは優しいけど、怒るとすっごく怖いわ」
自らがパートナーと呼んだ人物に対して、ほぼ情報ゼロの紹介をするニコ。
しかしそうとしか紹介のしようがないらしく、ビリーとアンビーの二人もかなり悩んだ末、ビリーが
「スゲェ力持ちなんだぜ!この前なんか、あの人が黙って入金してくれたディニーって知らずに、湧いたディニーで焼肉に行こうとしたニコの親分を片手で持ち上げてよぉ、親分が気づいて謝るのがあと少し遅かったらあのまま川に──」
「ちよっと!その話はしないで頂戴!そこまでしてくれてるとは思ってなかったのよ!」
「……正体不明の知り合いからお金貰ってるのか?」
「あたしも時々返そうとはしてるのよ?だけど、『お前たちには人生一つ分の借りがある』なんて言って受け取ってくれないのよ」
そんなこんなと話しているうちに、四人はデッドエンドホロウへと辿り着いていた。
「……そう言えば、姉貴はデッドエンドブッチャーを追い詰めたって言ってたな」
「へ?あんたの姉貴って、一体何者?」
「私の義理の姉貴だぞ。ホロウの中で死んだ人の遺品とかを集めて返すのを仕事にしてたホロウレイダーで、すっごく強いんだ」
猫又は言葉を続ける。
「ロングコートとバイクが目印で、フードを被ってた。ホロウの中のことをたくさん教えてくれて、色んなやつと戦って勝ったんだって話してた」
「ソイツは、今どこにいるんだ?」
ビリーの質問に、猫又は目を伏せた
「仲間に裏切られて、死んだってことになってる」
「……あ、悪ぃ」
「でも、きっとまだ生きてるんだ!その後にねぐらに行ったら、あるはず物が全部消えてたし、何より……その、とにかく!きっと生きてる、だからあの武器を侵食で壊れるより前に探して、いつでも返せるようにしたいんだ!そしたらきっと、また会った時に褒めてくれる」
猫又はそう言って、前へと歩み出した。
「……そんなに大切な預かり物なら、尚更早く探さねぇとな!」
「そうね、行くわよ」
邪兎屋の三人は足を速めた。
それを見た猫又は少し、これからのことに躊躇いを覚えた。