続・小説みつめてナイト 紅玉の双騎士【完結】 作:ケルティック☆タイチ
ここに来て仕事が忙しくなっているのと、ドラクエ3に時間を奪われております(;'∀')
いやドラクエ3も全然出来てないんですが(笑)
ドルファンは一足早くクリスマスとなりました。何事もないはずもなく。。。
複数話にわけてのお届けとなります。来週分は文字数多めでお届けできるように頑張ります(汗)
先のアルビア軍の侵攻はドルファン首都城塞に住む人々にとっても衝撃的な出来事であった。
レッドゲートと呼ばれる城壁に囲まれたこの都市は、長らくの間敵国からの攻撃を受ける事などなかった。
唯一の例外は二十三年前のヴァルファバラハリアンの軍団長、破滅のヴォルフガリオ率いる少数制絵の部隊にレッドゲートを突破されて王城前まで侵略を許した事だったのだが、それは季節外れのハリケーンの夜中だった事もあり、市民が直接目にすることはなかった。
だが、今回の侵攻に関してはドルファン港の沖合一キロ以内にまで敵軍艦が迫ってきており、ズィーガー砲での迎撃を行った際の爆音と煙は多くの市民が目撃しており、アルビアの裏切りもまたウィークリートピックスで大々的に報道された事もあって、平和に慣れきっていたドルファン首都城塞市民も戦争の足音を間近で感じていた。
それでも季節は巡るし、恒例行事というものは恒例行事らしく実施される。
毎年恒例のドルファンの冬の風物詩である、王城の中庭で実施されるクリスマスパーティーも例外では無い。
普段は決して立ち入る事の出来ない王城だが、クリスマスイブの夜だけは広く一般市民にも開放される。
人々は王宮から供される軽食や飲み物を片手に着飾ったパーティードレスで踊り、笑い合い、大いにクリスマスを楽しむのが習わしだ。
いよいよ寒さも本格的になったクリスマスイブのこの日、フィオナ・ロベリンゲとサラ・ショースキー、そしてパトリツィア・オーエンズはそれぞれが思い思いのドレスに身を包み、多くの人で賑わうドルファン城の中庭にいた。
フィオナのドレスは赤を基調としたスタンダードなAラインのシルエット。胸元より上はシースルーの黒いレースで覆われた、露出は控え目の上品な仕立てとなっている。
いつもの三つ編みを解いてアップにまとめた髪を大きな黒いリボンでまとめ、耳元にあしらった小さなルビーのイヤリングが歩く度に軽やかに揺れる。
隣のサラは母ハンナのお下がりのドレスにアレンジを加えたもので、元々はベーシックで伝統的な型の濃紺のドレスだが、スカートを膨らませてプリンセスラインに改造しており、胸元から上を大胆にカットしてオフショルダー風に仕立てて露出度を上げている。
首元には黄色いリボンのチョーカー、前髪はおろしておりチョーカーとお揃いの色の花飾りのついたカチューシャをしている。
華やかな二人とは対照的に、パトリツィアのドレスは控え目だった。
薄いオレンジ色を基調としたエンパイアラインのドレスはフリルやレースの数も必要最低限、ポートネック特有の横一直線に切られた首元にも余計な装飾は一切ない。
だがそのシンプルさが線の細いパトリツィアといつもの通りの三つ編みお下げ髪によく合っており、上品で大人っぽい仕上がりだ。
それぞれの個性に合った三者三葉に着飾った三人は、ピュエリの細いグラスを片手に会場の雰囲気を楽しんでいた。
「やっぱりクリスマスっていいね。この会場に来るとなんだか幸せな気持ちになるね」
上機嫌に言うサラの言葉に、フィオナはくすりと笑ってみせた。
「そうね。毎年来ていても気分が高揚するかも」
「この非日常感がいいんだよね」
「クリスマスツリーも綺麗だし」
楽し気に会話する二人に対し、パトリツィアだけは醒めた口調で言った。
「人が多くて不快だわ。そもそもこんなに人が集まって何をするの。集まる事に何の意味が?」
「何って……」
言いながらサラは顎に人差し指を当てて少し考えた。そして、困ったような笑顔で答えた。
「何もしないかも。普段は入れない場所に普段と違う恰好でいるって事に意味があるんじゃない?」
パトリツィアは大きなため息を吐いた。
「お気楽なものね。戦時中だと言うのに緊張感がまるでないわ」
「クリスマスの夜くらいはみんな楽しみたいんだよ」
「……理解に苦しむわ」
鼻のまわりのそばかすを寄せるようにしかめ面をするパトリツィアに、フィオナは苦笑してみせた。
「でも、この後イベントもあるのよ」
「イベント?」
つまらなそうに聞き返すパトリツィアに、フィオナは小さく頷く。
「プリシラ王女のご挨拶の後に、抽選で選ばれた人達のダンスがあるの。入場した時に配られた番号札はまだ持っている?」
「これ?」
パトリツィアは赤いインクで数字が書かれた紙片を取り出した。
「そうそう。その番号で選ばれた人が、同じように選ばれたパートナーとダンスを披露するの。クリスマスの一大イベントよ」
「ふうん……」
全く興味がなさそうに紙片をいじるパトリツィアに、サラが自分の番号が書かれた紙を胸に当てながら言う。
「今年は選ばれたいなぁ。やっぱり、こんなドレスでダンスが出来る機会なんてそうそうないもんね」
「知りもしない相手と踊っても仕方ないわ」
「だから面白いんだよ。それに……」
サラは少しだけ目を伏せてわずかに頬を染めて言う。
「もしも知っている人がパートナーに選ばれとしたら、それってすごい事だと思わない?」
サラの言葉に深く頷くフィオナ。それを横目で見ていたパトリツィアはもう一度大きなため息を吐いた。
「まったく理解できないわ……」
海軍の礼服であるマリンブルーの燕尾服に身を包んだ如月忠正は、同じ色の軍帽を被ると愛用のレイピアを腰のベルトに装着して隣を見た。
隣には同じように女性用の軍の礼服を着たエルザ・ディーリアと、いつもと同じ年季の入った革のジャケットを着たルシル・ルシラ・ド・ベルヴィラが立っている。
その三人の前で士官用の礼服を纏ったジョアン・エリータスは軽く咳払いをするとやや緊張気味の声で言った。
「エルザ君、ルシル君は長旅から戻って早々の任務で申し訳ない。だが、これも重要な任務の一つなのだ。理解してくれたまえ」
その言葉にエルザは間髪を置かずに敬礼をするが、ルシルはニヤリと笑うと低い声で答える。
「何、人使いが荒いのはいつもの事だろ。それよりも、何をすればいいって?」
「うむ。基本的には会場内の巡回、警備となる。先日のアルビアの造反行為、ハンガリアの攻勢を考えると、このクリスマスパーティーでテロなどを画策している可能性もある。我々はそういった危険を早期に発見して、これを阻止する事が任務だ」
「やれやれ。オレ達は働き者だぜ」
「くれぐれも一般市民に不安を与えるような事はないようにな」
「イエッサー」
すでに会場のシャンパンのグラスに目を奪われているルシルに若干の不信感を抱いたジョアンではあったが、クリスマスパーティーの会場内をルシル以外の海賊達に闊歩させるわけにもいかない。
「では、頼んだぞ」
「任せておきな!」
返事もそこそこに嬉々としてシャンパングラスを取りに行くルシルの背中を見送りながら、忠正は隣で美しく敬礼をしているエルザに声を掛けた。
「長旅、お疲れ様。報告書は読んだけれど、船大工の協力が仰げたようで良かった」
世間話に近いニュアンスで話しかけたつもりだったがエルザは忠正の方を見ようとせず、まっすぐに前を見据えたまま軍人らしい固い口調で答えた。
「はい、協力していただけるという事になり、任務を遂行できた事を嬉しく思っています」
「イングレス王国はどうだった? アルバ島といえば蒸留酒作りが有名だけれど、飲みましたか?」
「いいえ。私は軍務で赴いたに過ぎません。軍務中は飲酒をするべきでは無いと思っています」
その、出会った頃よりもかしこまった言葉使いと態度に、忠正は思わず首を傾げた。
忠正の知っているエルザとは、果たしてこんな態度だっただろうか。
だが、当のエルザはそれどころではなかった。
ようやくドルファンに戻ってこれたと思った矢先、王城のクリスマスパーティーを楽しむ事も出来ずに任務に呼び出されたわけだが、まさかそれがパーティー会場の護衛だとは思っていなかったし、イングレスまでの船旅の中でルシルにからかわれて以降忠正の事ばかりをどうしても考えてしまい、久しぶりに顔を合わせた今、どんな風に接したらいいのか、どんな顔で会えばいいのか全くわからなくなってしまっていた。
自分の行動のおかしさに気付きながらも、忠正の顔をまともに見る事が出来ないでいた。
自分がこんな風になってしまうなんて想像もしていなかったエルザであったが、ルシルに指摘された事もあながち間違いではなかったのかもしれない、と一人顔を赤くするのだった。
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