水龍っぽい少年と蛙っぽい少女   作:ダブドラ

2 / 8
 2話です。

 500UAありがとうございます!

 


2話 雄英高校入学試験

 

 

 ──雄英高校入学試験──

 

 

 その実技試験が行われる会場のゲート前に受験者達は集められていた。

 

 

 龍也はというと、半袖の着圧ウェアと長ジャージに着替え、自分の受験会場である試験場βのゲート前に立っていた。

 

 

 (流石に雄英を受けるだけあって他の奴らも仕上がってるな)

 

 周囲を観察しながらそう思っていると、準備体操をしていた爆豪の姿が龍也の目に入る。

 

 

 (まさか試験場が同じだったとは…。)

 

 目が合わない様にゲートのすぐ近くに陣取っている受験者の後ろに移動し、深呼吸をする。

 

 その時だった。

 

 

「レディ…スタァートォ!!」

 

 何処からかプレゼント・マイクの声が響く。それと同時にゲートが開いた。

 

「走れ走れー!!もう試験は始まってるぞ!」

 

 マイクの報せに我に返った受験者が一斉に走り出す。龍也もそれに続いて走り出し、ゲートを潜る。そしてビルに挟まれた道路を走る受験者達を横目に、颯爽と配電盤に飛び乗った。

 

 そのまま街灯のポール部分を蹴り、逆L字に曲がった部分を掴んで前に飛び出す。

 

 (筋トレの一貫でパルクールの動きを学んでいたのが役に立ったな。)

 

 一気に先頭に躍り出た龍也は正面から迫ってくるロボットの一体を飛び蹴りで破壊する。

 

 (勢いつければ個性無しでも吹っ飛ばせるレベルか)

 

 念の為に倒れたロボットの頭部を踏み、再び走り出すと視線の先で爆発が起きた。

 どうやら先頭にはもう一人いたらしい。

 

 

「死ねェ!!」

 

 

 広場のようになっているスペースにいた爆豪が物騒な事を叫びながら戦っていた。

 爆豪は掌から爆発を起こしロボットを迎撃している。

 

 (俺も負けてられないな・・・!)

 

「うおおおおお!!!!」

 

 迫ってくるロボットの大群に対し、龍也は個性を発動し挑みかかるのだった。

 

 

 

 

 今ここに、雄英高校の実技試験が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「おらあ!!!」

 

 長めの黒髪をした少年は個性で硬化させた腕を振り回しロボットを殴り壊していく。一時は不安だったが自らの拳が通用すると分かった今、もう迷いは無かった。

 

 (・・・ふう。片付いたか。)

 

 近づいてきたロボット達が大方片付いた所で別の場所へ移動しようとすると、誰かが戦っている姿が目に入った。

 

 見た感じ身長は同じくらいだが俺よりも細身な少年が次々とロボットを破壊している。

 

(す、すげぇ・・・。)

 

 少年は彼の動きから目が離せなかった。正面から迫ってくる1Pのロボットを踏み台にして背後にいるロボットの頭を踵落としで潰し、続けざまに踏み台にした方も殴り飛ばす。

 

 その後横にいたロボットの頭、丁度目の辺りを手刀で的確に貫く。手を引き抜きながらもう一体の頭部を掴み引きちぎる。

 

 今までより少し大きい2Pのロボットも尻尾のような部分を掴んで投げ飛ばし他のロボット2体を巻き込んで破壊。

 

 ビルの影から現れた3Pの更にデカいやつは多分顔だと思われる部分が他より低い位置にあった。そのため低姿勢で一気に距離を詰めてから思いっきり右の拳で殴りつけ、そのまま背中に搭載された2つのランチャーの間に乗り右腕で背中を貫いてトドメ。

 

 少年は数分もしない内に8体ものロボットを破壊して見せた。流れるような身のこなしに金属で出来てるはずのロボットを殴り飛ばすパワー。個性でスピードが殺される自分には出来ない戦い方でつい見入ってしまっていた。

 

 黒髪の少年は戦ってる最中の彼の腕が爬虫類と魚を混ぜたような見た目になっていた事に疑問を持って立ち尽くすが、すぐに顔を上げる。

 

 

 (・・・しまった!時間が限られてるってのに!)

 

 

 我に返った少年は慌てて走り出す。路地から出てくるロボット達を再び硬化させた拳で殴り倒しながら進むと開けた場所に出た。

 

 そこはもう他の受験者に取られたのかロボットの残骸が散らばっている道路だった。だが戦ってる音は聞こえるのでまだ近くに残ってるだろうと考え、少年は急いで見つけるべく動こうとする。

 

 

「伏せろ!!」

 

 

 (……!?)

 

 

 突然誰かが少年に向けて叫んだ。何がなんだか分からなかったが言われたとおりに身を屈める。すぐに少年の真上を何かの影が通り過ぎたかと思ったら爆発が起きたのだった。

 

 振り向くと頭部の潰れたロボットが転がっていた。

 

(気づかなかったぜ……。)

 

「おい、無事か!?」

 

 心配そうな顔をして駆け寄ってくる少年は龍也だった。少年は応えるように手を上げる。

 

「おう!助かった!」

 

「はぁ……。間に合って良かったぜ。偶然後ろから襲われそうになってるのが見えたんでな」

 

「それでわざわざ助けてくれたのか?」

 

「気づいてなさそうだったしほっとけなかったからな。ヒーローならそうするだろ。……でもポイント奪っちまったな、悪い。」

 

「いいって!そのお陰で怪我せずに済んだんだ。もしやられてたら試験を続行できなかったかもしれねえし。」

 

「そうか、なら良かった!あんま時間もないしそろそろ行くわ。」

 

「・・・そうだった!それじゃ、互いに頑張ろうぜ!」

 

 

 二人は互いの健闘を祈りながら別々の方向へ走り出した。

 

 

 

 

 

 それから少年は龍也が言っていた言葉を思い出していた。

 

(ヒーローならそうする、か。・・・あ、そういや名前聞いてなかったな。俺も名前言ってねえけど。)

 

 名前は分からないがあの漢を忘れることはないだろう。そしてもし、また会えたら、その時はちゃんと話をしたい、タイマンの勝負をしてみたい。

 

 

そんな事を考えながら、少年は実技試験後半に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──実技試験後半──

 

 

 

 黒髪の少年が襲われそうになった所を助けた後、龍也は試験場を走り回っていた。0pが現れない事を不審に思いつつ周囲を見渡す。

 

 

「リスナー諸君、試験は残り15分を切ったぞ!」

 

 またしても突然マイクの声が聞こえてくる。

 

(もうあまり時間も残ってないか。)

 

 考え事をしても仕方ないと思い龍也が顔を上げた瞬間、地面が大きく揺れた。

 

 「・・・・・・マジかよ。」

 

 龍也の視線の先には、周りのビルよりも巨大なロボットがいた。ソレは丁度見下ろすようにこちらを見ている。

 

 運の悪い事にアレと龍也との距離はそこまで離れていない。今の内に離れた方がいいと思った龍也はその場から走り出すが、同時にギギギという音がする。

 

 一瞬だけ振り返ると、巨大ロボが右腕をこちら目掛けて振りかぶっている。早速見つかってしまったようだ。

 

 (って冷静に考えてる場合じゃねえ!)

 

 龍也は全速力でダッシュし振り下ろされた腕を避ける。後ろから聞こえる物凄い音と同時に地面がひび割れて転びそうになるもギリギリ姿勢を保っている。

 

 ひびを飛び越えて何とか窮地を、()()()にとはいえ脱した龍也は脇の路地に逸れて息を整える。

 

 (危なかったぜ・・・。潰されるかと思った・・・。)

 

 落ち着いた所で物陰から巨大ロボの方を見ると、そのまま前進している。方向的に中央へ向かっているのだろう。このままここにいれば狙われる可能性は下げられる。

 

 ・・・と思った時、急に地面が振動し何かが砕ける音がした。何事かと道路の方を見ると、巨大ロボがビルを破壊している。

 

 

 なぜ急にそんな事をし始めたのか疑問に思う龍也だが、すぐにある考えへと至った。

 

 (待てよ、俺はヤツの視界から外れている。そして俺が追われていた時以外あのデカブツは攻撃をしていない。進んでいただけだった。ということは・・・。)

 

 (・・・っ!!)

 

 嫌な予感がすると同時に龍也は走り出していた。視界が悪かろうが上から瓦礫が降ろうが無我夢中で駆けた。やがて巨大ロボの足に登り、巨大な左腕と胴体の隙間を潜って正面に飛び出た。

 

 そのまま宙を舞う龍也の視界に人影が写る。砂埃のせいでしっかりとは見えないが誰かが座り込んでいる。 

 

 

 着地後、龍也がすぐに人影の元へ向かおうとした時だった。

 

 

「ヒッ・・・!!」

 

 視界が開け、座ったまま後ずさる女子が見えると同時に怯えたような小さな声が聞こえた。明るい茶髪の間から覗く瞳には涙が浮かんでいる。

 

「なあ、だいじょ・・・」

 

 一先ず声をかけようとした時、彼女が上を向いている事に気づいた龍也は同じく見上げてみると瓦礫が俺達に向けて落ちてきていた。

 

 

 「うおおあああ!!!」

 

 

 龍也は個性を発動しながら飛び上がる。

 

 

 葵 龍也 個性 水龍

 

 身体が神話上の生物である水龍のようになる。

 個性発動中は発動した部分が淡い青色の

鱗に覆われ筋力が増強される。また、一部にヒレが生える。このヒレによって水中では高い機動力を得ることができる。

 

 

 

 

 個性の影響で元より筋肉質になったその脚で、龍也は降ってくる瓦礫を粉砕した。

 

 

「悪い、抱えるぞ!」

 

 瓦礫をどうにかした後、龍也はそう告げながら彼女を抱えて立ち上がる。

 

「あ、あの・・・っ」

 

「話は後だ!今は逃げるぞ!」

 

 状況が状況のため龍也は彼女の言葉を遮り走り出す。個性により強化された脚力を持ってすればアレから逃げ切る事は容易いが、今は怪我人を抱えているので上手く調整しなければならない。

 

 少女を見る限り頬と手の甲に切り傷、理由は不明だが腰に下げた霧吹きは割れ、足には着ているタイツの上からでも分かる裂傷がある。血も流れているので一刻も早く安全な場所を探す必要があるだろう。

 

 

(ホントは手当てするべきなんだろうがそんな余裕はない。急がないと……!)

 

 龍也は走っている内に中央の広場に着いたので振り返ると、巨大ロボが集まっていた受験者達に襲いかかっていた。

 

 「クソっ!雄英は俺らを殺す気か!?」

 

 「あんなのどうにもならねえよ!逃げるんだ!」

 

 受験者達が叫びながら逃げ惑う中、瓦礫の固まっている方を目指そうとした次の瞬間。

 

 

 

「試験終了───!!」

 

 

 プレゼント・マイクの甲高い声が試験の終了を告げる。どうやら逃げ切れたようだ。

 

 龍也は近くの斜めになっている瓦礫に寄りかからせる様に抱えていた少女を下ろす。それから自分もその横に座った。

 

すると彼女は龍也の方を見て、

 

 「た、助けてくれてありがとう・・・」

  

 そう言ってすぐに俯いてしまった。一瞬だが彼女の頬が赤くなっていたような気がした。

 

 

 「俺の方こそ助けられて、間に合って良かった」

 

 龍也も笑みを浮かべながら少女に向けて言う。

 

 「あ、あの……」

 

 「ん、どうした?」

 

 「名前を、教えて欲しいノコ」

 

 「ああ、俺は葵 龍也だ」

 

 「葵くん・・・・・・えと、私は──」

 

 と、彼女が自分の名前を言おうとした時、どこからともなく杖をついた老婆が目の前に現れた。

 

 「良い雰囲気の所悪いねぇ。怪我人はいないかい?」

 

 そう言いながら老婆は二人の事を見る。龍也は老婆にどこか見覚えがあるような気がしていた。

 

 「おやアンタ、怪我してるじゃないか。ちょっと手を出しな。」

 

 老婆に従い少女は恐る恐る手を出す。

 

 「チユー!っとこれで大丈夫さね。気をつけて帰りよ。」

 

 するといきなり老婆の口が伸びて切り傷のあった手にくっつき、立ち所に顔や脚の傷まで治った。脚の方は傷跡が若干残ってはいるが。

 

 ちなみに龍也は大した傷じゃなかったので治療はなく、絆創膏を受け取るだけで済んだ。それと隣にいた少女はいつの間にか帰ってしまっていた。

 

(名前聞きそびれたな・・・。)

 

 

 

 帰宅した後龍也はセルキーから、少女を治療した老婆はリカバリーガールというプロヒーローだと聞いた。対象の治癒力を活性化させる個性持ちで雄英高校の屋台骨と呼ばれている存在だ。

 

 

 少女の足についても、龍也はその話を聞く中で納得するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、雄英高校から結果通知が届いた。

 

 セルキーとシリウスも結果を聞くべく茶の間で待っている。

 

 龍也は自室で恐る恐る封筒を開けてみる。すると中には小さな丸い物体が入っていて、机に乗せた瞬間映像が映し出された。

 

 

 「初めまして、葵 龍也君。」

 

 「私は雄英高校の校長さ!」

 

 白いネズミの様な外見の校長が神妙な面持ちで話し始める。

 

 

 「まずは試験お疲れ様。いきなりだけど、結論から述べさせてもらうよ。葵君、君の結果は──」

 

 「文句なしの合格さ!!」

 

 校長の宣言とともにファンファーレが鳴り響く。

 

 「実技試験はヴィランポイント36P、レスキューポイント40Pで全体2位。素晴らしい結果さ。」

  

 「レスキューポイントとは救助活動を行った受験者に与えられるポイントで、我々教師陣の審査によって点数が決定される。」

 

 それから校長の説明が続く。内訳としては純粋な戦闘力と、危険を顧みず0pに近づき少女を救出したことが高く評価されていた。

 

 

 「──というわけで、直接会える事を楽しみにしているよ。ここが君の、ヒーローアカデミアさ。」

 

 校長が話し終えると映像が消え、静寂が訪れる。龍也は丸い投影機を封筒に戻し、茶の間へと戻った。

 

 

 「船長、龍也君降りてきましたよ!」

 

 「来たかぁ!それで、どうだった?」

 

 龍也に気づいたシリウスとセルキーが近寄ってくる。ニヤリと笑いながら、龍也は二人に封筒を見せてこう言った。

 

 

 

 

「合格だってさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




 
お読み頂きありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

 8/5追記:次回は明日更新します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。