水龍っぽい少年と蛙っぽい少女   作:ダブドラ

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三話です。

1000UAありがとうございます!
感想も励みになります!

切島は入試時は髪を染めてないはずとの指摘をいただいたので前回の描写を修正しました。またそれに伴い今回も描写を変更しました。

龍也の漢字であったり誤字を見逃していることがあるかもしれないのでもしあれば誤字報告して頂けると本当に有難いです。(作者も更新前に極力確認します。)



3話 入学、そして再会

 

 

 

 

 

 

 ──合格通知が届いてから1ヶ月後──

 

 

 

 

 「・・・・・・いよいよか。」

 

 雄英高校の登校初日の朝、龍也は制服に着替えて鏡の前に立っていた。

 

 未だにあの日、合格通知が届いた日の事を龍也は良く覚えている。雄英に合格したと伝え終わる前に、突然シリウスが抱きついたからだ。

 

 

 

 「おめでとう龍也君!」

 

 「やったじゃねぇか龍也!信じてたぜオイ!」

 

 「おめでとう、龍也」

 

 「頑張ったな、本当に」

 

 

 抱きついたままのシリウス、自分の頭をくしゃくしゃと撫でるセルキー、駆け寄ってきた両親に祝われ、忘れられない一日になった。

 

 龍也の母曰く、あの後セルキーと龍也の父は遅くまで飲んでいたらしい。また次の日、龍也がシリウスと会った途端不満そうな顔でその事を愚痴っていた。

 

 そう言うシリウスも顔を真っ赤にさせたりと落ち着かない様子だったが。かくいう龍也もシリウスと話す時は動揺しっぱなしでロクに話せなかった。

 

 

 

 

 

 そんな事があってから一ヶ月が経ち、入学初日。

 

 

 龍也はリュックを背負って家を出る。軒先では父が日課として愛用の釣具を手入れしていた。

 

 「父さん、行ってくるよ」

 

 「おう、気をつけるんだぞ」

 

 いつものように父へ声をかけ、龍也は通学路の途中の市場にいる母の所へ向かう。

 

 朝早くから買い物にくる人で賑わう市場の中を通り抜けると、店先に立っている母の姿が見えた。

 

 「おっ、龍也制服カッコいいじゃん!」

 

 「ありがとう母さん。じゃ、行ってくる」

 

 「ふふっ。行ってらっしゃい!」

 

 

 

 両親への挨拶を済ませた龍也は、それから数十分程で雄英高校に到着したのだった。

 

 

 

 

 

 

──雄英高校1年A組の教室前──

 

 

 

(ここが俺の教室か・・・・・・)

 

 龍也は廊下を移動し大きくAの文字が描かれた扉の前に立つと、ゆっくりとその扉を開ける。

 

 

 教室に入り座席を確認するために左を向いた時、廊下側の列、前から4番目の席に座っていた女子と目が合った。

 

 

 

 

 (俺の席は・・・・・・っ!?)

 

 

 

 彼女の顔を見て龍也は息を呑んだ。何故なら龍也の良く知る人物に似ていたから。深緑のロングヘアーに大きな目。動物で言えば蛙っぽさを感じる少女。

 

 とはいえまだ本人だと決まった訳では無いが特徴は合致する。見れば彼女の方も目を見開き驚いた様な顔をしていた。

 

「あ、あの・・・・・・」

 

 龍也が真偽を確かめるべく彼女に話しかけようとしたその時。

 

 

 

「あ───!!」

 

 

 一人の生徒が龍也を指差し大声で叫ぶ。ニコニコしながら近づいて来たのは赤く染めた髪を逆立てている男子生徒だった。

 

「お前、入試で助けてくれた奴だよな!?」

 

「ん?なんで俺の事・・・・・・まさか」

 

 龍也の脳裏によぎったのは長めの黒髪を下した少年の顔。髪色も髪型もまるで違うがギザギザした歯に赤い瞳などの特徴は一致していた。

 

「髪染めたのか?」

 

「おう! 高校デビューってやつだ!」

 

「そういう事か・・・・・・」

 

 すると、切島が龍也に手を差し出す。

 

「試験の時は名前言いそびれてたよな。俺は切島鋭児郎。よろしく!」

 

「俺は葵 龍也。こちらこそよろしくな」

 

 自己紹介と共に二人は握手を交わした。龍也は話せる知り合いがいたことに内心有り難いと思い口元をわずかに緩める。

 

 

 

 (さてと・・・・・・)

 

 話を終えた切島が自分の席に戻った後、いざ話しかけてみようと龍也が少女の席の方を向くと、そこには誰も座っていなかった。

 

 立ったままでいるわけにもいかないので自席に戻ると、すぐ横のドアが開き、入ってきた誰かと目が合う。それは先程席からいなくなっていた蛙っぽい少女だった。

 

 「うおっ!」

 「ケロッ!」

 

 お互いドアの向こうに人がいると思っていなかったらしく同時に驚きながら向き合う形になる。

 

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 そのままどちらからも何も言えず、ただ時間だけが経過する。

 

 

 (はっ!今聞かねえとまたタイミング逃しちまう!)

 

 

 

 我に返った龍也は顔を横にブンブン振ってから少女の方を向いた。ところが少女の視線は開いたままのドアの方へと向けられている。

 

 気になった龍也は机から身を乗り出す形でドアの先を見てみる。するとそこには黄色い巨大な芋虫のような何かが横たわっていた。

 

 「何してる、早く席に着け。」

 

 突然聞こえた声と共に長身の男が芋虫もとい寝袋の中から現れた。ぼさぼさの長い黒髪に無精髭、上下黒い服を着た上にやけに長いマフラーを巻いている怪しさ全開の見た目である。

 

 困惑しながら振り返ると、龍也以外の生徒は全員着席していたので慌てて自席に座る。やがて男が教卓に立った。

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね。」

 

 「「「担任!?」」」

 

 教室に驚きの声が響き渡る。それを他所に相澤は何かを取り出した。

 

 「早速だがコイツに着替えてグラウンドαに集合しろ。詳しい説明はそこでする。」

 

 雄英高校指定の体操着を見せながらそう言った相澤は足早に教室を去っていった。

 

 

 

 「いきなりグラウンドに集合って・・・。ガイダンスとかやらんのかな?」

 

 不意に隣に座っている女子が龍也へ話しかける。

 

 「あっ、いきなりごめんね!私麗日お茶子。よろしくね!」

 

 「俺の方こそ悪い、話しかけられると思ってなくて。俺は葵 龍也。よろしく!」

 

 「良いよ良いよ、隣だし話せたらいいなーって思ったんだ」

 

 「そりゃ良かった。でも確かに入学式とかするもんだと思ってたな・・・。まあ先生に聞いてみれば分かるだろ」

 

 「それもそうやね。・・・やばっ、急がんと!」

 

 麗日が慌てて教室を出る。龍也も急ぎ足で更衣室へ向かい着替えを済ませ、グラウンドに出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「よし、全員揃ったな。じゃ説明するぞ」

 

 「あの先生、入学式とかしないんですか?」

 

 「ヒーロー目指すならそんなもん出てる暇ないよ。時間が惜しい、始めるぞ」

 

 雄英高校・グラウンドαにて生徒の人数確認を終えた相澤がスマホの様な物を取り出しながら話し始める。

 

 

 「これから君らには体力テストをやってもらう。但し、個性を使用して、だ」

 

 相澤先生の最後の一言に周囲がザワつく。

 

 それもその筈、中学時の体力テストでは個性によって結果に不公平性が生じないように個性の使用が禁じられている。

 

 「それじゃ爆豪、そこの円の中に立ってコイツを投げろ」

 

 「個性使って良いんだよな?」

 

 「ああ、思いっきり投げていい」

 

 そう言うと相澤先生は水色に光る線の入ったボールを爆豪に渡す。

 

 「そんじゃ、遠慮なく・・・・・・」

 

 

 「死ねえ!!

 

 (・・・・・・死ね?)

 

 爆豪は入試の時と同じく物騒な掛け声と共にボールを投げた。個性で生じた爆風に乗ってぐんぐんと飛距離を伸ばしたボールが地面に落ちると、相澤が持つ端末に数値が表示される。

 

 そして705mという結果が出た途端、周囲から歓声が湧く。

 

 「700m超えってマジかよ!?」

 

 「本当に個性使っていいんだ・・・・・・!」

 

 「燃えてきたぁ!!」

 

 「何これ面白そー!」

 

 

 

 

 「・・・・・・面白そう、か」

 

 溢れんばかりの歓声の中で相澤が微かに口元を緩めながらそう呟く。

 

 「それならこうしよう。トータルの順位が最下位だった者は───除籍処分とする」

 

 「「はあああああ!?」」

 

 相澤がそう言うと今度は困惑する声が上がる。しかしそれは直ぐに納まった。

 

 「生徒の如何は教員(俺たち)の自由。ここは雄英高校ヒーロー科だ。入試でマイクも言ってただろ。Plus Ultraさ。これくらい乗り越えられなきゃ、ヒーローにはなれないよ」

 

 赤く鋭い眼光と共に放たれた一言に、皆の表情が変わる。

 

  

 そうして個性把握テストが始まった。

 

 

 

 

 

 第一種目 50m走

 

 両足に個性を発動させ思い切りダッシュ。

 

 記録はふくらはぎのエンジンが個性である飯田天哉の次点だった。

 

 

 第二種目 走り幅跳び

 

 個性を発動しそのまま幅跳び。中学時代と比較して2倍以上は間違いなく跳んだが結果は4位。

 

 

 そんなこんなで龍也は他の種目も個性を発動しっぱなしにして行い、握力4位、反復横跳び3位、上体起こし3位、長座体前屈4位、ボール投げ3位、長距離走5位でトータル順位は4位だった。

 

 ちなみに1位の八百万はボール投げなら大砲、握力なら万力と個性で創造した道具を使って圧倒的な記録を叩き出していた。

 

 2位の轟も右手や右足から生成される氷で移動や投擲を補助することで高記録を出し、龍也は僅かに競り負けた。

 

 他にも特定の種目でずば抜けた結果を残した者が多く、麗日に至ってはボール投げの記録で無限を叩き出していた。

 

 

 

 「というわけでテストは終了だ。お疲れさん。あ、ちなみに除籍はウソな」

 

 「「・・・・・・は?」」

 

 相澤先生が放った一言に一瞬クラス全体が静かになる。

 

 

 「君らの全力を引き出すための合理的虚偽ってやつだ」

 

 「「はああああああああ!?」」

 

 この日二度目の絶叫がグラウンドに響き渡る。

 

 

 

 「よ、良かったぁ・・・・・・」

 

 「本当にギリギリだったな、緑谷」

 

 龍也は隣で力が抜けたように座り込んだ男子生徒──

緑谷出久に話し掛けた。

 

 個性把握テスト中に個性について聞いてきたので色々話していたら仲良くなったのだが、これがまた不思議な少年で、何でも個性が最近発現したという。

 

 一般的に個性はもれなく5歳までに発現する物で、緑谷のような遅咲きは龍也も聞いたことがなかった。加えてその個性も身体能力を途轍もなく増強出来るが、使えば自分の身体が壊れてしまう厄介な代物だった。

 

 その為迂闊に個性が使えず、ボール投げで人差し指1本を犠牲に700m超えの記録を出した以外は高校生男子の個性なしでの結果にしては高いといった所で、本人曰く後半は痛みで酷かったらしい。

 

 (・・・除籍にならなくて良かったぜ本当)

 

 

 

 「今日はこれで終わりだ。怪我したやつは保健室でばあさんに見てもらえ。それじゃ解散。」

 

 相澤は指示を出すと職員室へ戻っていった。

 

「おい」

 

 龍也が更衣室へ戻ろうとした時、突然爆豪が目の前に現れた。

 

「何だよ」

 

「てめぇ入試じゃ俺の次点だったみてえだが、1Pだけの差だと思うなよ。僅差じゃねえ、圧倒的な差があるって事を思い知らせてやるぜ」

 

「だったら俺はお前の先に行ってやるさ」

 

「ケッ」

 

 相変わらず不機嫌そうな爆豪はさっさと更衣室へ行ってしまうのだった。

 

 

 

 その後、龍也は着替えを済ませ昇降口へ向かいながら今日の事を思い返す。

 

 

 (友達が出来た事は嬉しいが結局彼女には話しかけられなかったな・・・。)

 

 

 

 モヤモヤを抱えたまま、龍也は昇降口に着き外を見ると、夕暮れ時で鮮やかな夕日に照らされていた。靴を履き替えようと自分のロッカーまで移動すると、入口の前に立っていた少女と目が合う。

 

 

 少女は、龍也が今日一日声をかけられずにいた"彼女"だった。

 

 ようやく訪れた2人きりのタイミング。逃してはならないと龍也は口を開く。

 

 

 

 「もしかして、君は───」

 

 

 

 

 「()()()()()、なのか・・・・・・?」

 

 

 

 龍也は彼女に問いかけた。4年前に出会った少女が、そう呼んでほしいと望んだ呼び名で。

 

 

 「──やっぱり

 

 

 少女は何か呟くと、笑顔を見せて龍也の方へ近づく。

 

 

 

 

 「本当に久しぶりね、()()()()

 

 

 

 蛙吹梅雨、葵 龍也が雄英高校への進学を決めるきっかけとなった少女がそう告げる。

 

 

 4年ぶりに少年は、少女と・・・"梅雨ちゃん"と再会を果たした。

 

 

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございました。

まずは原作の完結おめでとうございます。
中学生の頃、単行本でいうと9巻が発売されたあたりから僕は読み始めたのですが、高校受験の時などに勇気をもらったことを覚えています。



次回は明後日更新です。

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