水龍っぽい少年と蛙っぽい少女   作:ダブドラ

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5話 漢の殴り合い

 

 「第二試合・・・・・・スタートォ!!!」

 

 訓練の開始を知らせるオールマイトの声を聞いたヴィランチームの切島はペアの瀬呂に目で“行ってくる”と合図をして部屋を出た。守備範囲の広い瀬呂に核を任せ、自身は下の階で迎え撃つ作戦である。

 

 

 (負けねぇぞ、葵!!)

 

 切島チームの相手は葵龍也と蛙吹梅雨のペア。中でも葵とは一度手合わせしたいとずっと思っていた切島はこれ以上ないほどワクワクしていた。

 

 

 

 (......!)

 

 程なくして下の階にある部屋にやってきた切島は咄嗟に両腕を硬化させる。その瞬間、廊下から何かが飛び出して切島を吹き飛ばした。

 

 防御が成功した事もあり姿勢を保てていた切島の前に現れたのは龍也だった。ついに現れたヒーローを前に切島は笑みを浮かべてファイティングポーズを取る。

 

 「よう切島、そこ、通してもらうぜ」

 

 「やれるもんならやってみろよ、葵!」

 

 

 

 「オラァッ!!」

 

 同じく笑みを浮かべ構えをとる龍也に対し、切島は拳を振りぬく。大振りの右フックからの左アッパーという見てからでも躱せる単調なコンボ。しかし龍也は躱しながら冷や汗をかいていた。

 

 (集中しろ、大振りでも油断するな!)

 

 

 それもそのはず、切島の両腕は個性によってガチガチに硬化しており、その硬さは金属製のロボットをたやすく破壊できるレベル。その為パンチを一発もらっただけでも十分に危険なのである。

 

 

 

 

 「貰ったぁ!!」

 

 

 

 

────()()であれば。

 

 

 

 

 「……なっ!?」

 

 

 

 

 アッパーを避け、懐に潜り込んだ龍也を迎え撃つべく打ち下ろされた右拳。しかしそれが命中することはなかった。

 

 “個性”によって変化した龍也の左手が受け止めていたからだ。その事に気づき驚愕の表情を浮かべる切島へ龍也の右ストレートが突き刺さる。

 

 「がは…っ」

 

 切島はガラ空きの顔面に拳を受けて後方へ吹っ飛ばされた。顔を硬化させる前に当たったためダメージも大きく、口から僅かに流血している。しかし負けるわけにはいかないと、血を拭いながら立ち上がった。

 

 

 「効いたぜ、葵。まさか受け止められるとは思わなかった。」

 

 「お前ほどじゃないが、鱗の硬さには自信があるんでな。」

 

 ニヤリと笑みを浮かべながら、龍也は自らの左腕を見せる。魚のものより分厚い鱗で覆われた腕は傷一つついていなかった。

 

 

 「本気でやろうぜ、切島」

 

 龍也は先ほどよりも個性の出力を上げた。それに伴って首回りも鱗に覆われ、魚の鰓のような器官が生成される。 

 

 「あたりめーだ。……いくぞ、葵!」

 

 対する切島はニッと口角を上げながら硬化させた両拳を打ち付ける。

 

 

 

 

 漢の勝負が今、幕を開けた。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 龍也が切島と交戦中、モニタールームでは訓練中の4人と保健室にいる緑谷を除いた生徒15人とオールマイトが観戦していた。龍也が切島を殴り飛ばした瞬間、歓声が上がる。

 

「やりやがった!」

 

「切島のパンチ正面から受け止めてたよね!?」

 

 上鳴と芦戸が驚く横で耳がイヤホンジャックの様な形状をした生徒の耳郎響香が考え事をしていた八百万に話しかける。

 

 

「蛙吹さんは一体どちらへ…?蛙吹さんの個性なら外壁を伝っていち早く核の回収に向かったのではと思いましたがここまで何の通達もないとなると……」

 

「それウチも気になってた。モニターには今の所葵しか映ってないしどういう作戦なんだろ」

 

 

 

 

「切島が仕掛けたぞ!」

 

 モニターを見つめていた上鳴が急に声を上げる。クラス全員の視線が集まる大画面には龍也に向けて拳を振り抜く切島の姿が映し出されていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「うおおおおお!!!!」

 

 

 雄叫びを上げながら切島が龍也に殴りかかる。先程とは打って変わってコンパクトな左右のコンビネーションで積極的に攻めたてる。

 

「ぐっ、ハッ、・・・・・・だっ!!」

 

 龍也はそれを捌きながら負けじと殴り返す。すると切島が大振りを繰り出そうと腕を振りかぶった瞬間を見逃さなかった龍也の右ボディブローが炸裂する。

 

 個性によって増強された腕力から放たれる一撃に切島の表情が歪んだところへ追撃の左アッパー。

 

「が…は…っ、ぬああああ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 アッパーがクリーンヒットした切島は後方へ倒れそうになるが気合いで持ちこたえ、体勢を戻す勢いを利用し顔面を硬化させての頭突きを龍也にぶち当てた。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 切島は軽い脳震盪を起こしよろめく龍也へ続けざまに拳を放つ。右、左、ボディ、アッパーと絶え間なく続くラッシュを葵はガードせずに受け続けた。

 

 すると次第に葵が倒れないことで焦りだした切島が右拳の硬度を限界まで引き上げる。

 

 

 

「早よ、倒れろぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 そう叫びながら振りぬかれた切島渾身の右が命中し、龍也は頭部から流血しながら後ろへのけ反る。

 

 

 (よし、手応えあっ)

 「っあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!」

 

 

 しかし倒れる寸前、龍也は四股を踏むようにして前かがみになりながら耐え切った。

 

 確かな手応えを感じていた切島は驚くと同時によくぞ耐えたというような笑みを浮かべる。

 

「倒れねぇ…よ…こんな…んじゃ…な!!」

 

 龍也が不敵な笑みを浮かべたその時だった。踏み込みから一気に距離を詰めた龍也は切島の眼前まで迫っていたのだ。切島が気づいた時にはもう既に龍也の拳が顔面にめり込んでいた。

 

 

「オオオオオオッ!!!」

 

 

 龍也は全体重を乗せて拳を振りぬいた。すると切島の体は宙を舞い、床に叩きつけられる。

 

 

 

「俺の・・・ッ・・・勝ちだ・・・。言ったろ、通させてもらうって」

 

 

 

 殴り飛ばされ気を失った切島へ龍也は拳を握りながら言う。その拳からはポタポタと血が滴っていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「終わった、今から合流する。」

 

 

 切島に確保証明のテープを巻いた龍也は耳につけた通信機に向けて言う。そして部屋を出るとそのまま上の階に移動する。

 

 龍也が向かった先は最上階手前の階段だった。そこにはペアの蛙吹が待機していた。蛙吹は龍也に気づくとボロボロの姿に目を見開いた。

 

 

「勝ったのね、葵ちゃ・・・」

 

「待たせてごめん。梅雨ちゃん・・・梅雨ちゃん?」

 

「ねぇ、その怪我」

 

「・・・今は言ってる場合じゃないわね。行きましょ」

 

「あ、ああ」

 

(やっぱ怒ってるよな・・・)

 

 

 見るからに不機嫌そうな蛙吹が先行し2人は瀬呂が待ち構える部屋の前までやってきた。

 

「状況は?」

 

「部屋の至る所にテープが仕掛けられてるわ。窓もしっかり貼られてる」

 

 

 蛙吹は龍也が戦っている間、外壁を伝って核のある

部屋を偵察していたのだ。部屋にはテープの罠が張り巡らされており、瀬呂の周到さが伺える。

 

また八百万と同じく瀬呂も蛙吹が外壁を伝ってくると考えたらしく対策は万全だった。

 

「それじゃ、行ってくる。合図を出したら思いっきり頼むな」

 

「ええ、任せて頂戴」

 

 

 作戦の確認を終えた龍也は部屋へ足を踏み入れる。直後、テープが飛んでくるが龍也は横に転がって回避。

 

 龍也が部屋の奥を見ると核の前に立ちテープを射出する構えをとった瀬呂がいた。

 

 

「切島がやられた場合もちゃーんと考えてるんだぜ?」

 

「やっぱりか、ならさっさと終わらせる!」

 

 そう言うと龍也は瀬呂めがけて突進する。テープを躱しながら半分ほど進んだ所で龍也は左手を開いて振りかぶった。

 

「“水斬(みずきり)”!!」

 

「なっ!?」

 

 葵が鉤爪状にした左手を振り下ろしながら小さく叫ぶと、水を纏ったような斬撃波が飛んでいく。

 

 それによって部屋にあったテープの罠の一部が切断され機能を失っていく。斬撃波は徐々に小さくなりやがて消えていった。

 

「切れるのかよ・・・」

 

「俺の個性さ、まだ弱いが水を纏える」

 

「ご丁寧に解説どう・・・もっ!!」

 

 話終えると同時に瀬呂はテープを射出し龍也を拘束。そのまま壁に叩きつけた。すると砂埃が舞い視界が徐々に悪くなる。

 

 「・・・!やべっ!」

 

 龍也を逃すまいと拘束したままテープを引っ張っていた瀬呂だが急に感触が軽くなる。直後砂埃の奥から斬撃波が飛びだした。

 

 瀬呂は核を引きながらそれを避ける。そのまま核の前に立った瀬呂を見てすぐに龍也が叫んだ。

 

「今だ!梅雨ちゃん!」

 

「なっ!?」

 

 瀬呂は警戒しながら窓の方を向いた。龍也の視線が向いていたからだ。見ると窓のテープは切られており外から侵入できるようになっている。しかし数秒経っても蛙吹は現れない。

 

 (・・・何だ・・・?)

 

「ぐほぁっ!!」

 

 不審に思った瀬呂だったが不意に背後からの衝撃によって吹っ飛ばされる。

 

「詰めが甘いわね、瀬呂ちゃん」

 

 背後にいたのは蛙吹だった。窓から入ってくると思わせてビル内に待機していた蛙吹は、龍也の合図で不意打ちのドロップキックを放ったのだ。

 

 蛙吹の個性「蛙」がもたらす強靭な脚力から放たれる蹴りは瀬呂の意識を刈り取るには十分な威力であった。その証拠に壁に打ち付けられた瀬呂は気を失いぐったりとしている。

 

 葵が瀬呂の状態を確認して目配せをすると、蛙吹は核にタッチした。それと同時にオールマイトの声が響き渡る。

 

 

「ヒーローチーム、WI────N!!!」

 

 

  試合の終わりが告げられ、切島と瀬呂は搬送ロボによって保健室へ運ばれていった。それを見届けた葵の元へ蛙吹が駆け寄る。

 

「やったな、梅雨ちゃん」

 

「葵ちゃん・・・怪我は?」

 

 勝利の喜びを分かち合う前に蛙吹は龍也を問い質した。

 

 頭部左側からの流血に顔中にあるアザ。両腕を覆う鱗はヒビが入り傷だらけと見るからにボロボロであり当然の反応だ。

 

「大丈夫だよ。顔は見た目ほど酷くない。腕は鱗がボロボロになっただけさ」

 

「・・・なら良いけど。先に戻ってるわ」

 

 そう言って蛙吹は不機嫌そうなままモニタールームに戻った。それを見届けた龍也も保健室に向かったのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「それでは、第二試合の講評を始め・・・・・・てもいいのかな?」

 

 

 モニタールームでは試合を終えた生徒(気絶した切島を除く)が戻ってきたことを確認したオールマイトが講評を始めようとして戸惑っていた。

 

 

「大丈夫よ」

 

 目が笑っていない蛙吹、

 

「進めてください」

 

 見るからに重症患者の龍也、

 

「・・・始めちゃってください」

 

 目に見えて落ち込んでいる瀬呂と戸惑うのも当然の状況である。

 

 

 

 

 

「う、うむ。それじゃ発表しよう。今回のMVPは・・・・・・蛙吹少女だ!!」

 

「何故かわかる人ー?」

 

「はい、オールマイト先生」

 

 オールマイトの問いに八百万が手を上げると淡々と説明を始める。

 

 

「まず切島さんは葵さんとの戦闘で大振りによる隙が目立った事と最後に油断があった事がよくなかったと思います。瀬呂さんは蛙吹さんの対策も含めてしっかりしていた点は良かったですがテープを切られて動揺した事は減点だと思いますわ。」

 

「葵さんは切島さんとの戦闘で途中油断した事もそうですが、何より瀬呂さんとの戦闘で放った波状攻撃の

2度目ですわ。テープを切って罠を無効化したのは良かったですが核のある部屋で闇雲に放てば核に当たることも考えられたはずです。

蛙吹さんは不意打ちをするまで隠密に徹していましたし、葵さんと合流するまで偵察を行って情報を集め、

不意打ち後も瀬呂さんの状態を確認するなど最後まで油断せず行動されていましたのでMVPも納得ですわ」

 

 

「素晴らしいぞ八百万少女!私も同意見だ。3人は反省点などはあるかな?」

 

「ヤオモモの言う通り動揺しました。もっと落ち着いて対処すべきだったと思います」

 

「私は作戦が葵ちゃん任せになっていた事が良くなかったと思うわ」

 

「トラップを切ることに必死で核に当たる可能性を考えられてなかったです。それに油断してなければここまでの怪我にならなかったと思います」

 

「Good!反省点がすぐに出てくるのはその分自己分析をしっかりできているということでもある。今後の成長を楽しみにしているぞ!」

 

 

 オールマイトの講評が終わると次のチームが訓練場に向かう。それから他のチームも訓練を終えて今日のヒーロー基礎学は終わったのだった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 訓練後、龍也は着替えを終えて更衣室を出る。するとA組教室前の廊下で待つ切島がいた。

 

「俺の負けだぜ、葵。強いよおめーは」

 

「切島だって強いさ。危うく意識が飛ぶかと思ったぜ」

 

「油断しなけりゃなぁ。あ、一つ聞いて良いか?」

 

「何だ?」

 

 互いを称えた後、切島はずっと気になっていた疑問を口にする。

 

「水斬って技をさ、俺と戦ってた時に使わなかったのは何でだ?」

 

「アレは撃つ前に溜めがいるんだ。お前相手じゃそんな隙なかったし、そもそも挙動がデカいから防がれて終わりだった」

 

「・・・そうか」

 

「それに、切島とは殴り合うしかないと思ってたんだ」

 

 答えを述べながら龍也は包帯が巻かれた右拳を突き出す。

 

「奇遇だな、それは俺も思ってた。おめーとは拳で決着つけたいってな」

 

 切島も応える様に拳を突き出すと、握られた手を開き握手を交わす。

 

 

「葵、改めてよろしくな!」

 

「ああ、よろしくな!切島」

 

 

 二人の間に熱い友情が生まれた・・・・・・その時だった。

 

 

「いや〜アツいね!男の友情ってヤツだね!」

 

「葵って以外とそういうタイプだったんだ〜!」

 

 ガッツポーズをしている麗日と好奇心に目を光らせた芦戸がドアの隙間から現れたのだ。

 

「芦戸!?見てたのかよ?」

 

「ニヒヒ、全部見てたんだなぁ~。麗日と一緒に」

 

「その麗日は何で嬉しそうなんだ・・・?」

 

「だって何か青春!って感じするやん!」

 

「青春か・・・」

 

 ふと教室に目を向けると、緑谷が既に入っており、何人かのクラスメイトと楽しそうに喋っている。

 

 (アイツやっぱり腕を・・・)

 

 

「何を話してるの?」

 

「うわっ!?」

 

 

 考え込んでいた龍也の背後にいつの間にか蛙吹がいた。蛙吹は驚く龍也に近づくと頬のアザをつつく。

 

「痛っ!」

 

「葵ちゃん、やっぱり無茶したわね」

 

「うっ・・・」

 

 蛙吹の言葉に龍也はばつの悪そうな顔をする。紛れもない事実に返す言葉もないからだ。すると蛙吹は包帯が厚めに巻かれた龍也の右手を包むように両手で握り、そのまま龍也の顔を見上げる。

 

 (・・・っ!?)

 

 2人の身長差も相まって所謂上目遣いになっている事に気づいた龍也は更に動揺する。

 

「実は最初から信じてなかったわ。葵ちゃんなら無茶してでも勝とうとすると思ってたから」

 

「でもボロボロの葵ちゃんと合流した時、やっぱり悲しかった。あなたがこんなに傷ついているのに私は無傷だったから」

 

 そう言って俯く蛙吹の手を龍也は左手で更に上から包む。

 

「ごめんな、梅雨ちゃん。やっぱりまだまだ未熟だ、俺」

 

「それは私も同じよ。だってまだ卵なんだから。だから一緒に頑張るの。私だって葵ちゃんの事を助けたい。

ヒーローを助けたいと思うのは変?」

 

「変じゃない。むしろ嬉しいよ」

 

 蛙吹の問いに龍也は正直な気持ちを答える。すると蛙吹は満足そうな笑顔を見せる。

 

「良かった!・・・・・・一緒に頑張りましょ、葵ちゃん」

 

「勿論。改めてよろしくな、梅雨ちゃん」

 

 

 夕日が照らす中楽しそうに微笑み合う2人。その近くでタイミングを見計らったかのように教室のドアが開いた。

 

「おうおう何見せつけてくれてんだよああん!?」

 

「あら峰田ちゃん」

 

「あらじゃねぇよ!葵てめぇ何イチャついてんだコラァ!?」

 

「はぁ!?」

 

 ブドウ頭のクラスメイト、峰田が龍也を指差し叫ぶ。その後ろでは芦戸や葉隠がキャーキャーとはしゃいでいる。

 

「ねえねえ聞けてなかったけど二人ってどんな関係なのー?」

 

「そうだそうだ!一体どこまでヤッたんだよお前らばぁッ!?

 

「人聞きが悪いわ。峰田ちゃん。」

 

 蛙吹が舌で峰田にビンタを喰らわせる。そのまま瀬呂たち男子に取り抑えられる峰田を横目に、龍也は顔を赤くしていた。

 

「どんなって・・・久しぶりに再開した友達だ。正確に言えば」

 

「えー付き合ってないの?」

 

「ええ、付き合ってはいないわ。・・・・・・()()ね」

 

「はっ!?」

 

「今()()って言った?うっそマジで!?」

 

 つまらなさそうな顔をしていた芦戸が思わせぶりな蛙吹の答えにまたはしゃぎだす。龍也が驚きながら蛙吹の方を見ると笑顔の彼女に手を引かれる。

 

 「行きましょ、葵ちゃん」

 

 「あ、ああ!」

 

 

 「えっちょっと待ってよ!色々聞きたいんだけどー!」

 

 「それなら明日話すわ。またね三奈ちゃん」

 

 

 「葵!俺にも聞かせてくれよ!」

 

 「ああ、切島また明日な!」

 

 

 

 龍也は蛙吹に引っ張られそのまま帰路に就いたのだった。

 

 

 

 

 

 (ここが俺の、ヒーローアカデミアか)

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「来たかい、二人とも」

 

 生徒が下校を終えた後の保健室に、リカバリーガールに呼び出された二人のプロヒーローがいた。

 

 

 「それで、要件とはなんでしょう?」

 

 一人はNo.1ヒーロー・オールマイト。その姿は痩せ細っているが、これがトゥルーフォーム(本当の姿)なのだ。

 

 「俺を呼んだということはA組生徒の事で何か?」

 

 もう一人は相澤消太。又の名を抹消ヒーロー・イレイザーヘッド。龍也が所属するA組の担任だ。

 

 

 「その通りさね。さっき葵って子の治癒をしたんだが、気になることがあってね」

 

 「葵少年が・・・・・・?」

 

 

 リカバリーガールはデスクから一枚の写真を取り出す。そこには龍也の頭部にある傷口が写っていた。

 

 「訓練で頭に思いっきりパンチを貰ってたけれど、それにしては傷が浅すぎるんだよ」

 

 「浅すぎる?」

 

 「ああ、モニターで訓練の様子は見てたさね、傷の深さも想像してたんだ。でもアタシが診た時既に傷が塞がりかけてたんだよ」

 

 「相澤くん、葵少年の個性は確か・・・・・・」

 

 「ええ、葵の個性は治癒力とは関係無い筈です」

 

 「それなら尚更気になるね・・・・・・」

 

 3人揃ってこの不可解な事実に首を傾げる。

 

 

 「それでは、私の方から葵少年に聞いてみましょう」

 

 「分かったよ。イレイザーも気にかけるようにしとくれ」

 

 「了解しました」

 

 

 話を終えた相澤とオールマイトは保健室を出る。

 

 「それじゃ、何か分かり次第連絡するよ」

 

 「頼みますよ、オールマイトさん」

 

 そう言う自信ありげなNo.1ヒーローに、相澤は内心不安を抱いていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 今後の方針を固めた後、オールマイトは職員室の廊下で電話をかけていた。

 

 

 「・・・そうか。また何かわかったら教えてくれ」

 

 「ああ、分かったよ」

 

 

 会話を終えたオールマイトは深刻な顔のまま窓の外を見つめる。

 

 

 (断定はできないが、()()が関係しているかもしれない。慎重に動かねばな)

 

 

 

 

 誰も知る由もないが、この時既に巨悪は動き出していた。

 

 

 

 




 
 始めに次回の更新は来週中になります。

 3連休のうちに書けるだけ書くのでお待ち下さい。

 またUSJ編に入ったところでアンケートをする予定です。

 今後もよろしくお願いします!
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