水龍っぽい少年と蛙っぽい少女   作:ダブドラ

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更新が遅くなり申し訳ありません。

修正版になります。
2話の方も描写を一部修正しました。





6話 “私”のヒーロー

 

 

 

 1年A組の初訓練が終わり翌日。

 

 

「お早う。早速HRを始める」

 

 相変わらず気怠そうな相澤の声が教室に響く。

 

「昨日の訓練についてVと成績を見させてもらった。まぁ言いたい事は色々あるが爆豪、お前は能力あるんだからガキみてえに突っ込むな。二人一組で行う訓練だって事を無視するんじゃない」

 

「・・・・・・・・・・・・わかってる」

 

 俯いて呟く爆豪を横目に、相澤は緑谷の方を睨む。

 

「緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か。個性のコントロール、『出来ないから仕方ない』なんて通用しないぞ。それにそこをクリアすりゃ出来ることも自ずと増えるんだ。だから焦れよ緑谷」

 

「っはい!」

 

 

 相澤は手に持っていた紙の束を教卓に置き、先程よりも険しい顔になる。

 

「さて、訓練の話はこの辺にしてHRの本題に入ろう。急で悪いが君らにやってもらう事があるからな」

 

 その言葉に教室内がザワつき始める。やってもらう事と聞いて皆抜き打ちテストでもあるのかと神妙な面持ちになっていく。

 

 

 

「これから君らには学級委員長を決めてもらいます」

 

 

「「「学校ポイのキタァァァァ!!!」」」

 

 

 続く相澤の言葉に教室内はそれまでとは一変してお祭り状態になる。

 

「俺やりたいです!!」

 

「リーダー!!やるやるー!!」

 

「女子全員膝上30㎝!」

 

「やりたいわ」

 

 

「静粛にしたまえ!」

 

 すぐに切島を始めとした生徒たちが続々と手を挙げ立候補する。次第にギャアギャアと騒がしくなる教室だったが飯田の一声で静かになった。

 

「学級委員長とは“多”をけん引する責任重大な仕事だ。やりたい者がやれるモノではない! 何より周囲からの信頼があってこそだ。そこで俺は、委員長を投票で決める事を提案する!」

 

「あー、言いたい事はわかるが正直説得力ないぞ」

 

 龍也は呆れ顔で飯田に向けている目線を上げる。それに釣られるように麗日は振り向くと、その光景に思わず吹き出していた。

 

 

「そびえ立っとる!!」

 

 その言葉通り飯田の右手はこの場の誰よりも真っ直ぐ天井に向かって伸びていた。

 

 

「お前もやりたいんじゃねーか!」

 

「まだ知り合って日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」

 

「投票するにしても、皆自分に入れるんじゃね?」

 

「上鳴君の言う事も分かる。でもだからこそ、投票で複数の票を集めた者こそが学級委員長にふさわしいと思わないか? いかがでしょうか、相澤先生」

 

「早く終わるなら何でもいい。時間は限られてるんだ」

 

 

 かくして飯田の案が採用され、学級委員長を決める投票が行われた。全員の投票後、程なくして黒板に結果が書き出される。

 

 

 緑谷  3票

 蛙吹  2票

 八百万 2票

 

 

「僕3票!?」

 

 

 (私が2票・・・・・・もしかして)

 

 

 一番票が入っている事に驚く緑谷に対し蛙吹は誰が自身に入れたのか察した様子だった。その後同数票だった八百万と蛙吹については、話し合いの結果八百万が副委員長になった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 その後HRを終えて昼休み。

 

 龍也、蛙吹、緑谷、麗日、飯田の5人は食堂で昼食を摂っていた。

 

 「僕に務まるかなぁ・・・・・・」

 「ツトマル」

 

 学級委員長に選ばれてしまった緑谷が不安を口にする中、白飯を頬張りながら麗日は笑顔を浮かべる。

 

「大丈夫さ。入試の実技や先の訓練で君を見てきたが、緑谷君なら“多”を牽引するに相応しい。そう思ったから僕は君に入れたんだ」

 

 (1票は飯田君だったのか! ・・・・・・あれ?)

 

 緑谷は飯田の言葉に感激する一方、ある違和感をもった。

 

 

「飯田君、今『僕』って」

 

 その一言に飯田は『しまった!』という顔になる。

 

 

「前から気になってたんだけど・・・・・・飯田君って坊ちゃん!?」

 

「そう思われるのが嫌で一人称を変えていたんだが・・・・・・俺もまだまだだな」

 

 何を隠そう飯田の家はヒーロー一家である。多数の相棒(サイドキック)を抱えるターボヒーロー・インゲニウムは実の兄なのだ。

 

 

「インゲニウムの弟!? 凄いや!」

 

 その事を知った緑谷が大興奮する横で麗日が蛙吹に問う。

 

「梅雨ちゃんは良かったの?副委員長八百万さんに譲っちゃって」

 

「ええ、正直やりたいとは思ったわ。けれど百ちゃんの方が適任だと思ったの。葵ちゃんには申し訳ないけれど」

 

「何で葵君?」

 

 いきなり龍也の名前が出た事に麗日は疑問を抱く。龍也自身も驚きのあまり目を見開きながら蛙吹の方を向いていた。

 

 

「・・・・・・バレてたのか。俺が入れたって」

 

 すると3人の視線が龍也に向く。

 

「理由は飯田と似たようなもんさ。梅雨ちゃんなら多を牽引出来るって思ったからだ」

 

「厶、そうだったのか」

 

 雄英に入学する以前から付き合いがあったことは関係なく、ただ純粋に龍也は思ったことを述べた。すると緑谷が顎に手を添えて分かりやすく呟く。

 

 

「そうなると、もう一票は蛙吹さん自身ってことかな」

 

「ええ、その通りよ。あと梅雨ちゃんと呼んで」

 

「あ、は、ハイ!」

 

 突然名前呼びを要求され動揺する緑谷。それを見ていた龍也も変わらない蛙吹の姿に苦笑いしていた。

 

 

「梅雨ちゃんは葵君には入れなかったんやね」

 

 意外そうな表情のお茶子に対し蛙吹は淡々と続ける。

 

 

「だって葵ちゃん、皆を引っ張るリーダーってタイプじゃないでしょ」

 

「ハッキリ言うな・・・・・・。まぁ事実なんだが」

 

 どちらかと言えば飛び出して先行するタイプの龍也は蛙吹のズバッとした物言いに内心ダメージを負っていた。

 

 

 

 その直後、思い出したように麗日が声を上げる。

 

「そうそう、葵君と梅雨ちゃんの昔の話!」

 

「ケロ、昨日の訓練で話すって約束したんだったわね」

 

「切島達には後で話しておくとして、どうする?」

 

「私から話すわ」

 

 

 そう言うと蛙吹はゆっくりと語り始める。

 

 

 ◇

 

 

 今から5年前。まだ龍也と蛙吹が小学5年生だった頃の事。

 

 龍也の地元にある海水浴場まで短期間の旅行に来ていた蛙吹一家は、とある事件に巻き込まれた。当時まだ三歳の長男、五月雨が行方不明になったのだ。

 

 事件のあった日、長女の梅雨は次女のさつきと五月雨の三人で仲睦まじく遊んでいた。だが両親から昼食にしようと呼びかけられた時、五月雨の姿がなくなっていた。一人で遠くへ行かないよう目を光らせていたのになぜこうなってしまったのか。

 

 両親を振り切って飛び出し、手当たり次第に駆けずり回るも五月雨はいない。

 

 後悔や絶望から失意の底にいた梅雨。大粒の涙を零す彼女の前に、一人の少年が現れた。

 

 

 その少年は梅雨に泣いている理由を問い、事情を聞き出すと笑顔で言った。

 

 

「大丈夫。おれも一緒に探すよ。二人で探せば絶対見つけられる!」

 

 

 少年の言葉に暗く染まった梅雨の瞳が光を取り戻していく。そのまま少年が差し出した手をそっと握るように取った。

 

 

 

 この瞬間、ヒーローを目指している少年だった葵 龍也は確かに成った。

 

 少女、蛙吹 梅雨にとってのヒーローに。

 

 

 それから龍也は梅雨の手をしっかりと握ったまま街中を探し回った。道中で師と仰ぐセルキーに協力してもらい懸命に捜索した結果、五月雨は密漁者の船にいることが分かった。

 

 実は梅雨たちが遊んでいたときに一度密漁者と接触していたのだが、その時に忍び込んでしまったらしい。加えて梅雨が連中の事を漁師と勘違いしていたことで発覚までにそれなりの時間が経過していた。

 

 

 その後、密猟者の船にセルキーが潜入し部下もとい船員を引き連れ救出を試みた。

 

 だが五月雨が人質にされてしまい動きを封じられてしまう。

 

 身動きを封じられて万事休すかと思われたその時、密漁者の頭を狙った龍也の飛び膝蹴りが命中。それにより隙が生まれ瞬く間に密漁者は確保。事件は幕を下ろした。

 

 

 龍也は勝手に現場に来たことをセルキーに叱られるが、事情を知った蛙吹一家からは大きく感謝された。

 

 

 そして蛙吹一家が帰る日。別れ際、龍也は梅雨に対して宣言した。

 

 

「俺は雄英高校に行く。そしてなってみせる。皆を救けられる最高のヒーローに!」

 

 

 

 この時から梅雨は、『彼の隣に立ちたい』と思うようになったのだった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

「と、こんな感じね」

 

「そんな風に思ってたのか、梅雨ちゃん・・・・・・」

 

 

 隣に立ちたいという蛙吹の本心を初めて知った龍也は気恥ずかしそうな顔をする。 

 

 

「葵君とあすっ、梅雨ちゃんの過去にそんな事があったなんて」

 

「凄いな、葵君は。誰かを救うべく手を差し伸べる優しさと無茶ではあるが敵に立ち向かう勇気。尊敬するよ」

 

「面と向かって言われると照れるな・・・・・・」

 

「あの時は本当に嬉しかったわ。でも無茶は程々にして欲しいわね」

 

「ぜ、善処する」

 

 蛙吹のジトっとした視線が自分に向いている。そう気付いた龍也は顔を引き攣らせるのだった。

 

 

 

 

 

 その後、食事を終えた龍也達が教室へ戻ろうとした時、突如として警報が鳴り響いた。

 

 3年生の生徒曰く学校内の敷地に何者かが侵入したとの事。避難しようとする学生たちに押され緑谷が何処かへ流されていくも、最終的には麗日と連携した飯田が落ち着くよう呼びかけたことで事態は沈静化していった。

 

 

 結果から言えば侵入した何者かとはただのマスコミだった。オールマイトが雄英に赴任する件でコメントをもらおうと押し寄せたらしい。

 

 だが雄英には雄英バリアという部外者の侵入を拒む堅牢なセキュリティシステムがあるので本来侵入出来るはずがない。

 

 そこで不審に思った根津校長が現場を確認したところ、何とバリアが破壊されていたという。果たしてただのマスコミにこのような芸当ができるだろうか。そう考えた根津校長は何か裏があるとして教員達に一層の警戒を呼びかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 放課後。

 

 

 龍也が帰り支度を終え、蛙吹・切島の二人と教室を出ようとした時だった。

 

 

「・・・・・・何だ?」

 

 

 それは切島の視線の先、教室の扉から一人の生徒がこちらを覗いていたのだ。ひょっこりとこちらを覗いているが、その様子は怯えているようにも見える。

 

「俺たちを見てるのか?」

 

「そうだと思うけど、様子が変ね」

 

「ここで見てても仕方ねえし、声かけてみようぜ」

 

 

 と、切島が動こうとした時だった。

 

 

「えっ、ちょっとまっ・・・・・・!」

 

 

小さく驚く声が聞こえ、後ろから押されたかのような動きで生徒が教室内に入ってきた。否、入らされたというべきか。

 

 

「ん? 君は・・・・・・」

 

 

 教室を覗いていたのは女子生徒だった。肩まで伸びたロングボブの明るい茶髪に☓のような模様が入った瞳をした彼女に見覚えがあった龍也は少しずつ歩み寄ろうとする。

 

「あ、あああの、えっと、その・・・・・・」

 

 

 顔を赤く染め、激しく動揺する女子生徒に対し正面に立つと、龍也は笑みを浮かべた。

 

 

「やっぱりあの時の! 合格してたんだな!」

 

「「「え」」」

 

 嬉しそうな顔の龍也とは対照的にクラスメイトは驚き、女子生徒に至っては顔を上げたまま固まっている。

 

 

「ん?大丈夫か?」

 

「・・・・・・あっ! うん!」

 

「にしてもまた会えて嬉しいよ。入試の時名前聞きそびれてたからずっと気になってたんだ」

 

 微笑む龍也に、女子生徒は顔を赤くしたままモジモジとし始める。

 

「あっ、あの時はちゃんとお礼を言えてなかったから・・・・・・コホンっ」  

 

 程なくして軽く咳き込むと、女子生徒は背筋を伸ばして顔を上げた。

 

「改めて、ヒーロー科B組の小森希乃子(こもりきのこ)ノコ。前は名乗らなくてごめんなさい!」

 

「それと、入試の時は助けてくれてありがと・・・・・・ノコ」

 

 女子生徒、小森希乃子は頬を徐々に紅潮させながら

微笑んだ。

 

 

 

「ねぇ葵ちゃん、その子とどういう関係なの?」

「入試がどうとか言ってたが・・・・・・」

「ああ、えっと実は・・・・・・」

 

 龍也が蛙吹と切島含むクラスメイトに事情を説明する。すると切島は何故か目に涙を浮かべて龍也と肩を組む。

 

 

 

「葵・・・・・・漢だぜ!」

「緑谷君の他にもアレに向かっていった者がいたとは、驚いたよ」

 

 

 実は、入試の時龍也の他に緑谷も麗日を救わんと0Pに向かっていっていた。別会場であったため当人同士は知る由もないが。

 

 

 

「あ、葵くん」

 

「どうした?」

 

「もし良かったら、今度一緒にお昼食べないノコ?」

 

 小森は自らの願いを恐る恐る口にする。それを見ていた女子たちがキャイキャイし出す中、龍也はというと・・・・・・

 

「勿論!いいに決まってるだろ」

 

 ニッと歯を見せて笑っていた。小森も嬉しさのあまり笑みが溢れている。

 

「あ、丁度これから帰る所なんだが一緒にどうかな?」

 

「良いノコ?ちょ、ちょっと待っててノコ!」

 

 小森はいそいそと廊下へ出て誰かと話している。それを見ていた龍也だったが、突如右肩に手が置かれる。

 

「葵ちゃん、私も一緒で良いのよね?」

「えっ・・・・・・そりゃ勿論!」

 

 いつものポーカーフェイスの筈がどこか圧を感じる蛙吹に龍也がたじろいでいるとリュックサックを背負った小森が現れた。

  

 

「お待たせノコ!」

 

「そんじゃ、行こうぜ二人とも!」

 

「ええ、そうね」

 

 

「あの~梅雨ちゃん?この手は・・・・・・」*1

 

 

「行きましょ」*2

 

「あ、ハイ・・・・・・」

 

 

 かくして、龍也は新たな友人と共に帰路を辿るのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 翌日、昼休み。

 

 本来ならば小森との約束で一緒に昼食をとっている筈の龍也は休憩室にいた。

 

 

「先ずは急に呼び出してすまない、葵少年」

 

 神妙な面持ちでそう告げるのは、雄英高校教師・オールマイトだ。2m越えの大男が窮屈そうにソファーに腰掛ける姿は一見シュールだが表情は真剣そのもので、龍也も釣られて畏まってしまう。

 

「いえ、気にしないで下さい」

「おっと、そう硬くならなくていい。楽にしてくれ」

 

(いかんいかん、つい顔が強張ってしまった)

 

 鼻筋を抑え顔を横にぶんぶんと振りながらオールマイトは元の笑顔に戻る。それを見て龍也も肩の力を抜き、『ふうっ』と息を吐いた。

 

 

 

「早速本題に入ろう。私が少年を呼んだ理由なんだが──」

 

 話しながらオールマイトは手に持っていた書類を龍也の向きに合わせて置く。それは雄英高校が生徒のプロフィールをまとめた報告書の内の一枚、氏名欄には『葵 龍也』の記載があった。

 

 その中の()()()()を指さしながら、オールマイトは告げた。

 

「葵少年の個性について、聞きたいことがあるからなんだ

 

 

 

 

 

*1
ガッチリ掴まれている右肩を見ながら

*2
手を放し笑顔で





というわけで第2のヒロインはB組の希乃子です。

 元々B組から一人は出したいと思っていて、色々なヒロアカのSSを読む内にとある展開を思いついた事で希乃子に決まりました。

次回はUSJ編のさわりになります。それから3話ほどUSJ編は続くのでどうぞよろしくお願いします。

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