水龍っぽい少年と蛙っぽい少女   作:ダブドラ

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期間が空いてしまい申し訳ありません。

仕事が忙しく、また構成を練る為に時間がかかってしまいました。




7話 悪夢の序章

 

 

 

 

 

「俺の個性・・・・・・ですか?」

 

「ああ。まぁ入学時に提出してもらった書類である程度把握してはいるよ。だが先の訓練で君は瀬呂少年のテープを切る際、水を刃のようにして飛ばしただろう?」

 

 龍也は『あー、その事か』と手を口に当てて呟く。

 

 実は龍也の個性届が提出された当時、まだ個性の全貌が明らかになっていなかった。

 

 ちなみに発現したての頃は皮膚の所々に柔らかい鱗が生え、手足の短い鰭で泳ぐスピードが速くなる程度のモノだった。

 

 それから年を重ねるごとに鱗は腕全体を覆い鰭も魚の成体のような立派なものになっていった。他にも身体能力の強化や鱗の硬質化などの変化が起きたことで中学生時代に一度個性届を更新。

 

 雄英高校に提出されたのはこの時の物であったため、記載されていない能力を龍也が見せた事について確認する必要があると判断された。

 

 

「なるほど、水を飛ばす力の記載がなかった訳は分かったよ。では個性がどういったものなのか、()()()()()()()()()()()()()()()教えてくれないか?」

 

「わかりました。ちょっと長くなりますけど」

 

 前置きをしつつ龍也は個性を発動させ、右手を変化させる。

 

「俺の個性は『水龍』。個性名はこの見た目から父さんが付けてくれたんです。能力でいうと・・・・・・」

 

 

 龍也の個性は分解すると以下のようになる。

 

 ①・魚における鰭と鰓が形成される

 

 ②・硬い鱗が全身に生える

 

 ③・身体能力が強化される

 

 ④・水を纏える

 

 

 鰭によって水中での機動力、鱗によって防御力がそれぞれ強化されるが大まかに分ければ現状4つだ。と説明する龍也。するとそこにオールマイトが待ったをかける。

 

 

「葵少年、『水を纏える』というのは?訓練では明らかに飛ばしていたが・・・・・・」

「俺もまだちゃんと把握できてるわけじゃないんです。何せ最近出来るようになったばかりで」

「どういうことだい?」

「その前に聞きたいんですけど、俺の両親については知ってますか?」

 

 オールマイトは首を横に振る。書類上で名前を見た程度なので当然の反応である。

 

 

「俺の個性は両親の個性が混ざったパターンなんです。水を纏うのは母の個性で」

 

 

 龍也の母親は爪を起点に水を纏わせられる個性を持っていた。範囲は指を第二関節まですっぽり覆うくらいだが、魚市場勤務の身としては重宝したのだとか。ちなみに龍也父の個性は鰓と鰭、薄く丈夫な鱗が生えるというものである。

 

 その事を知った龍也は『本当に父の個性が遺伝しただけなのか?』と疑問を抱いていた。

 

 

「で、母の見様見真似で試してみたら出来たというわけです。とはいっても俺の場合爪じゃなくて指の付け根辺りが起点になっていて、且つ個性で爪が鋭くなるんで

そのまま空中を引っ搔いてみたら水が飛んだって感じでした。何で飛ばせるかは俺もまだ分からないんで、知ってるのはこんな所です」

 

 

 その後、オールマイトはすべてのメモを取り終えると休憩室のドアを開ける。

 

「うむ、ありがとう。今日聞いた話をもとに書類は修正しておくよ。時間をとらせてしまったな、すまない」 

 

「いえ、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽く頭を下げ、食堂へ戻っていく龍也を見届けたオールマイトは再びソファに腰掛ける。

 

 そして全身から蒸気を発しトゥルーフォームに戻ると、机に置かれた書類を見つめた。

 

 

「葵少年からは治癒力や再生といった単語は出てこなかった。だが本人も全てを把握できていない以上、結論を急いではいけないな。

 

・・・・・・一先ずリカバリーガールと相澤君に知らせねば」

 

 

 調査の結果を告げるべく、オールマイトは保健室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ 

 

 

「悪い!遅くなった!」

 

 オールマイトの呼び出しから龍也は急ぎ足で食堂へ帰還。すると切島が手を振って迎える。

 

「気にすんな!昼休みの時間ならまだ残ってるぜ」

「切島ちゃんの言う通りよ。葵ちゃん」

 

 それから龍也はもともと座っていた席に戻る。

 

 ちなみに座席は龍也の左斜め前に切島、隣に蛙吹、正面に小森といった形だ。  

 

 

 

「それで、結局何の話だったノコ?」

 

 途中だった昼食の海鮮丼を食べ進めている龍也に、小森がお決まりの質問をする。

 

「ああ、何か俺の個性について聞かれたよ。入学時に提出した書類に書いてない能力使ったから確認したいって」

「能力って、あの水を飛ばす技の事かしら」

「その通り。俺も使えるようになりたてだから説明に手間取っちまってさ」

「だから時間がかかってたのね。・・・・・・そういえば、相澤先生じゃなくてオールマイトが呼び出すなんて何か気になるわ」

 

 訝しげな表情の蛙吹に対し3人も首を傾げる。

 

「確かに、普通なら担任の先生が聞きに来ると思うノコ」

「気にはなるけどさ、単に相澤先生が忙しくて代わりにオールマイトがきたってだけなんじゃね?」

「言われ見てみればあり得るな」

「ケロ、確かにそうかも」

 

 

 実際はオールマイトが自ら名乗り出た上に個性の確認どころではない理由があるのだが、そんなことは龍也たちは知る由もなかった。

 

 

 

 それから数分後、食堂内にチャイムが響き渡る。

 

 昼休みの終わりを告げる鐘の音を聞いた生徒達が一斉に教室に戻る中、龍也達も席を立つ。

 

「なあ葵、次のヒーロー基礎学って確か」

「救助訓練だった筈だ。相澤先生に睨まれる前に戻ろうぜ」

「あ、葵君、頑張ってノコ!」

「小森もな!お互い頑張ろうぜ」

「っ!・・・・・・うん!」

「皆行きましょ、授業に遅れちゃうわ」

 

 

 その後、結局ギリギリで到着した3人が相澤に睨まれるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、それからもう一人の計三人で見ることになった。」

 

 元はそうではなかったと暗に示すような口ぶりの相澤に緑谷を始めとした数人が疑問を浮かべるが、当の本人は淡々と説明を続ける。

 

「で肝心の内容だが、今回は救助訓練を行う」

 

 相澤は大文字で『RESCUE』と書かれたカードを取り出し顔の横に掲げた。

 

「詳しい説明は訓練場でするが、場所が少し離れているのでバスで移動してもらう。準備が出来たらバス停に集合だ。それとコスチューム着用については任意とする。」

 

 人によっては活動が制限される場合があるからな。と付け加え相澤は教室を出る。

 

 

 

 それに続くようにして龍也達も準備を終え、バス停前にやって来た。

 

 「皆!スムーズにバスへ乗り込む為に出席番号順で二列に並ぶんだ!」

 

 「張り切ってんな、()()()!」

 

 カクカクと手を動かしながら指示を出す飯田に切島が親指を立ててみせる。

 

 先日のマスコミが雄英に侵入した一件の後、『やっぱり君がやるべきだ』と緑谷から託される形で飯田はクラス委員長になっていた。

 

 その為いつになく張り切っていた飯田だったが・・・・・・

 

 

 「こういうタイプだったかくそう!!

 

 

 バスはバスでも路線バスだったため見事に空回っていた。

 

「意味なかったわね、飯田ちゃん」

「ぐおおおおッ!!」

「梅雨ちゃん、やっぱ容赦ねぇな・・・・・・」

 

 飯田の傷に塩を塗り込む蛙吹だったが、ふと視線を緑谷に向ける。ちなみに緑谷のコスチュームは前回の訓練で大破したため修理中だ。そのため体操着に買い直したマスクとグローブを身に着けている。

 

「緑谷ちゃん」

「あすっ、梅雨ちゃん?」

「自分のペースで良いのよ」

「う、うん」

「私、思ったことは何でも口に出しちゃうの。あなたの個性、()()()()()()()()()()

「っ!?」

 

 あまりにも突然な蛙吹の一言に緑谷の顔色がみるみる悪くなっていく。

 それもそのはず、緑谷の個性はオールマイトから受け継いだ物なのだ。

 

 つまり二人の個性は似てるどころか同一である。この事がバレてしまえば世間は大騒ぎになるであろう事は想像に難くない。

 

「確かにパワーだけで言えば似てるな」

「でしょ?反動で怪我しちゃうのはとっても心配だけど」

「やっぱシンプルな増強型は良いよな!派手だし出来ることも多くてさ」

「そ、そんな・・・・・・!僕なんかまだまだだよ!」

 

 むしろ皆の方が、と謙遜しながらも緑谷は内心話が逸れたことにホッとしていた。

 すると切島が車内を見回し始める。

 

「派手で強いといえばやっぱ葵と轟に爆豪だよな!」

「え、俺も?」

「だって見た目が派手だし、強いだろ?」

「わかる!葵君の鱗って綺麗な色してるよね!」

 

 龍也の腕を指差しながら言うのは葉隠 透。個性によって姿は見えないが嬉しそうにしている事はその身振り手振りから伝わってくる。

 

「でも爆豪ちゃんは怒ってばかりで人気でなさそう」

「んだとコラ出すわ!!」

「ホラね」

「うん、ありゃ出ねぇわ」

「あぁ゙!?」

 

  

 

 爆豪が弄られ車内が騒がしさを増す中、何かを思い出した緑谷が龍也に話しかけた。

 

「葵君、ちょっといいかな?」 

「何だ?」

「あs、梅雨ちゃんの話を聞いてた時気になったんだけど、葵君ってセルキーに鍛えて貰ってるの?」

「まあな。中学の頃から戦い方とか色々教わってるんだ」

 

 ヒーローオタクである緑谷からの話題といえばヒーロー関係であると想像するのは容易いが、龍也はセルキーの名が上がると思っておらず内心驚いていた。

 

「セルキーって?」

「海難ヒーロー・セルキー。その名前の通り海難事件のスペシャリストなんだ!アザラシの個性による索敵と情報伝達によって遭難者の発見、救助や密漁者の捕縛などを迅速に行っているんだよ!」

 

 目を輝かせながらそう説明する緑谷。その勢いは質問した葉隠もたじろぐ程だが、龍也は感心したような顔をしている。

 

「緑谷・・・・・・マジで詳しいんだな」

「そ、そうかな?」

「おう、正直驚いた。セルキーのおっさんってそこまで知名度がある訳じゃないからさ」

「緑谷君凄っ」

 

 実際の所セルキー自身は知名度に固執していない。

 また稀に大きな事件に関わりメディアからの取材があったとしても、ある理由で本人が出ることは基本無い為、知っている人間はかなりのファンだと言えるだろう。

 

 

 

 

 

「お前ら静かにしろ。そろそろ着くぞ」

 

 と、相澤の一声で今までヒーロートークで盛り上がっていた車内が静まり返る。

 

 (あれが演習場か)

 

 バスの車窓から見えたのは巨大な白いドーム。

 それから程なくしてバスが停車し、龍也達は中へと移動するのだった。

 

 

 

 

 ◇

 

「USJかよ!!?」

 

「すっげー!!」

「あそこウォータースライダーみたいなのあるよ!!」

「三奈ちゃん、遊園地じゃないのよ」

 

 ドームの中に入った龍也達の眼前には、中央の広場を起点に土砂に埋まったビル群や船が浮かんだ池など、まるで何処ぞのテーマパークと見紛う空間が広がっていた。

 

 そして広場に続く階段の前にA組を待つ人物が一人。

 

 

「ようこそ皆さん。ここはU(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)。あらゆる災害や事故を想定、再現し対応方法を学ぶ為に僕が作った演習場です!」

 

 

「USJだった!!」

 

「・・・・・・いやマズくないのかそれ」

「触れない方が良さそうだわ」

 

「スペースヒーロー・13号!本物だ!」

「すごい!私好きなの13号!」

 

 担当教師三人のうち最後の一人である13号に興奮する緑谷と麗日。それを横目に相澤が前に出る。

 

「13号、オールマイトは?」

「それが・・・・・・活動時間を使いすぎたらしく仮眠室で休んでいるそうで」

 

 本来いる筈のNo.1ヒーローがいない事について聞かれた13号は指を三本立てながら小声で言う。

 

 実は、オールマイトには過去の戦いで負った重い傷によりマッスルフォーム(皆が知る筋骨隆々の姿)でいられる時間に制限がある。

 

 だが今朝の出勤で事件を解決し、龍也に話を聞く際もマッスルフォームでいた為に制限時間を減らしてしまったのだ。

 

「不合理の極みだなオイ」

「本人曰く後半は顔出せるそうなので、それまでは僕らで見ましょう」

「全くあの人は・・・・・・。やむを得ん、始めるか」

 

 

 

「それでは皆さん、授業を始めます。ですがその前にお小言を一つ二つ」

 

 そう前置きをして13号は話し始める。

 

 自身の個性はブラックホール。あらゆるものを吸い込みチリにしてしまう事ができ、それをもって人々を救い上げてきた。

 

 だが、それは人に向けてしまえばいとも容易くその命を奪えてしまう。

 

 現代社会では個性の使用を資格制にすることで一見成り立っているように見えるが、実際は一市民であってもそんな危険な力を有している事があるのが現状なのだ。

 

 だからこそ相澤とオールマイトの授業で自身の力量と可能性、力を人に向ける危険性を学んだ皆に、自分たちの力は人を傷つけるのではなく守り救う為にあるのだと学んで帰って欲しい。

 

 そう言って13号が紳士的な所作と共に小言を終えると生徒達から歓声が上がった。特に飯田は拍手までしている。

 

 

 

 

 

 「さて、それじゃまずは・・・・・・」

 

 

 13号が話し終えた直後、相澤が授業を始めようとした時だ。

 

 

 ───ナニカが現れたのは。

 

 

 

 

「全員一塊になって動くな!!」

 

 

 突然何かの気配を察知した相澤が叫ぶ。その背後では中央の広場に黒いモヤのようなものが浮かび、中から次々に人が現れる。

 

 全身に手のような装飾を身に着けた男に脳ミソ剥き出しの大男。奴らが何者かなど火を見るより明らかだ。

 

「先生、あれって」

「何だ何だ、入試ん時みたいにもう始まってるパターンか?」

 

「違う。・・・・・・あれは、(ヴィラン)

 

 その一言に皆の表情が凍り付く。

 

「そんな・・・・・・!」

「ここはヒーローの学校なんだぞ?いくらなんでも侵入するとかバカかよ!?」

 

「・・・・・・」

「葵ちゃん?大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫!」

 

 蛙吹が龍也の方を見ると、大男の方を見つめたまま固まっていた。その表情は何か考えている様にも見える。

 

 すると広がっていたモヤが縮み人型になり、手だらけの男の隣に立った。

 

「ふむ、イレイザーヘッドに13号ですか。オールマイトもいる筈なのですが・・・・・・」

 

「何だよ、No.1ヒーローいないのか。折角大衆引き連れてきたってのに・・・・・・。子供を殺せば来るかな?」

 

 ヴィラン二人がそう話す声は龍也達には聞こえていない。だがそんな事は関係ないと相澤は臨戦態勢をとる。

 

 奴らが侵入したのはここだけか、はたまた他の場所にもいるのか。どちらにしても授業中を狙ってきた以上何らかの目的があるのは明白だ。馬鹿だが阿呆ではない。周到に計画されている。

 

 となればする事は決まっている。

 

「13号は生徒を避難させろ。学校への連絡もだ。だが奴らのどいつかが個性で電波妨害してるかもしれん。上鳴も個性で連絡試せ」

 

「先生は?」

「・・・・・・まさか一人で戦うつもりじゃ」

 

 

 緑谷がそう零した事をきっかけに反発の声が上がる。

 

 イレイザーヘッドは視て個性を消した相手を捕縛する戦闘スタイルだ。つまり集団戦は不利といえる。

 

 だが、そんな緑谷の意見も意に介さず相澤はゴーグルを装着し駆け出した。

 

「よく覚えとけ。一芸だけじゃヒーローは務まらん

 

 そう言って相澤はヴィランの群れに飛び込む。そして自らの個性を活かし相手の連携を乱しつつ次々と無力化していく。

 

 個性を消せない異形型に対しても肉弾戦で対応し、プロとしての実力を見せつける中、龍也達はUSJの外を目指し避難を開始する。

 

 それから13号が先導し出口の扉へ走る龍也達だったが、突如現れた黒いモヤのヴィランが行く手に立ちはだかる。

 

 そしてこう告げた。

 

 

「はじめまして、我々は(ヴィラン)連合。今回僭越ながらここ雄英高校に入らせて頂いたのは、

 

 

 平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして

 

 

 瞬間、A組に戦慄が走る。何人かは顔が少し青ざめてしまっていた。

 

「ですがそのオールマイトがいらっしゃらないようで、聞いた話ではいるはずなのですが、何かあったのでしょうか?・・・・・・まぁ私の役目とは関係ないのですがね」

 

 

 モヤのヴィランはそう言いながら自身の体を大きく広げ始める。

 

 

「っおい、止せ!!」

 

「死ねえ!!!」

「このっ!」

 

 と、龍也の制止も届かず爆豪と切島が飛びかかるも、時すでに遅し。

 

 

「私の仕事は、散らして嬲り殺す

 

 

 モヤはもう、龍也達を包み込んでいた。

 

 

 





お読み下さりありがとうございました。

今回はほぼ原作沿いでしたが次回からオリジナル展開ですのでご期待下さい。

最後にお知らせなのですが、1話の後書きにオリ主のプロフィールを記載します。
(12/19追記 無いじゃんと思われた方申し訳ありません、記載しました)

次回もよろしくお願いします。
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