『明けの砂漠』との話し合いのため、アークエンジェルは彼らのアジトへと移動した。
空からの発見される可能性を低くするため、スネークは防塵処理が完了したストライクに乗り換えて甲板にシートをかける。
「ふう・・・」
作業が一段落した彼は、コックピットから降りて葉巻で一服しようとする。そこへさっきの少女が歩いてきた。
「うん?今度は何の用か?」
「いや・・・その、さっきは悪かったな。殴るつもりはなかった・・・・わけでもないが。あれは弾みだ。許せ。」
「タッハハハ!」
「何がおかしいんだ!?」
突然笑いだすスネークに対し、彼女は面白くなさそうな顔をする。
「ハハハッ、いや。まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかったんでな。」
「・・・あれからずっと気になっていたんだ。お前はあの後どうしただろうと・・・・なのにまさかこんなのと『アストレイ』に乗ってたなんてな。おまけに今は地球軍か。それにその目・・・・」
「色々あったんだ。そうでもしなけりゃ守れなくなるほどのな。」
そう言うと彼は、葉巻に火をつけて煙を吸いだす。
「おい!話の途中で何タバコなんか吸ってるんだ!?お前、どう見てもまだ未成年だろ!!」
「葉巻はタバコじゃない。味も品も違う。ところで君は何故あの緑の機体を『アストレイ』と呼んだんだ?」
「えっ?」
「あのとき、工場区でストライクを見た時も親のことを裏切り者と言ったりと引っ掛かってはいたんだ。君はモルゲンレーテの関係者なのか?それとも・・・お偉いさんのとこのお嬢様とかか?」
「つっ!」
「フッ、あっちにいるガードマンのような男が見守っていることから分かる。そうでもなきゃ、こんな辺境まで来てレジスタンスと一緒にアークエンジェルを見つけることなんかできるわけないからな。」
「お前!!」
少女は、これ以上言われたくないと飛び掛かるがスネークは、CQCの構えで攻撃を受け流して逆に動きを押さえた。
「グッ!?」
「カガリ!!」
離れたところで様子を見ていた男は、彼女を助けようと駆けよる。
「つつ・・・・」
「俺は、別に艦長たちにこのことを話すつもりはない。だが、戦場に出る以上自分の身を最低限守れるぐらいでなければ死ぬことになる。俺がもし敵だったらお前は腕を一本持っていかれる程度では済まされないぞ。覚えておけ。」
「うぅ・・・」
「そこのアンタ、このお嬢様に最低限の護身術は教えておいた方がいいぞ?そうでもしなければあんた自身の首も危ないだろう?」
来た男に対し、スネークは少女を解放して渡すと葉巻の火を消してストライクの方へと戻る。
「カガリ、大丈夫か?」
「私は大丈夫だ。アイツ・・・まさか、こうもできる奴とはな。」
「あれはCQC・・・あの歳の少年が使いこなせるとは。しかも動きがかなり精錬されている。」
男は、彼女の安否を確認するとスネークが只者でないというのを唯一見抜いた。
その日の夜、アークエンジェル一行は『明けの砂漠』のキャンプで一緒に食事をとることになった。
「はあ、まさかレジスタンスの基地でこういう風に食事を食うことになるなんてな。」
トールは、炊き出しで受け取った食事を口に入れながら目の前の焚火を見る。
「そうだよねぇ。これなら残るんじゃなくてサイとフレイみたいにシャトルに乗ればよかったかな・・・・」
「カズイ!」
さりげないことを言ったカズイに対し、ミリアリアは隣でガツガツ食べているスネークに指を差す。
「ご、ゴメン!そんなつもりで言ったんじゃ・・・」
「そう責めるな、ミリィ。カズイだって悪気があったんじゃないんだ。」
「そうだけど・・・二人とも、今頃オーブに着いたのかな?」
「どうだろうな。おっ、そろそろ焼けたか。」
スネークは、焚火の下の砂に手を突っ込んで何かを取り出す。それは木の枝に細長い何かが突き刺さったものだった。
「ちょっ、ちょっと!?何よ、それ!?」
「うん?蛇だが。ストライクをしまった後、岩陰で見つけたから
「そうじゃなくて・・・・何するのよ?」
「何って、食べるんだろう。」
「「えぇ!?」」
まさかの発言にトールとカズイは、絶句する。ミリアリアは顔面が蒼白になっており、離れたところから見ているレジスタンスたちも目を丸くしていた。
「どうした?ちゃんと絞めてあるし、頭も落として食べられるところ以外取り除いてあるから見た目もそんなに気にならないだろう?そりゃあ、高級レストランとかで注文するような代物じゃないが・・・」
「ウエェエエエ~!!!」
あまりの発言にカズイは、その場で嘔吐してしまう。
「どうした、カズイ!?急に吐いたりして。」
「キラのせいよ!!いくら、こんな状況だからって変なことしないで!!」
堪忍袋の緒が切れたのか、ミリアリアはスネークから蛇を取り上げる。
「何をするんだミリィ!?俺の食事を!」
「別に食料が足りないわけじゃないんだからこんな変なもの食べないでちょうだい!!」
そう言うと彼女は、砂漠の方へと焼き蛇を放り投げた。久しぶりの蛇を失ったことにスネークは思わず絶叫する。
「ミリィー!!」
「もう、トールも何か言ってあげて!」
「は、ははは・・・笑えねぇ。」
彼の悪食の習慣を知ったことにトールは、苦笑いするのだった。
その後程なくしてバルトフェルド隊は、レジスタンスの拠点から少し離れたタッセルの街を燃やすという事態が発生した。
事前に警告したため、死人こそ出ていなかったものの建物は愚か、備蓄していた食料や弾薬を容赦なく破壊したことで、報復心に駆られた一部のグループが復讐しようと彼らの追撃に向かってしまい、その中にはサイーブとカガリも混ざっていた。
街の方はムウたちに任せ、スネークはストライクで救援のためにカタパルトに移動する。
『ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。』
ライフルとシールドが装備されるとストライクは、カタパルトから発進する。
「無茶な真似を・・・・間に合ってくれ!」
スラスターを吹きながらスネークは、現場へと急行する。
現場では、既にレジスタンスの戦闘車両のほとんどが4機のバクゥによって蹂躙されていた。
「クソ、遅かったか。」
彼は、すかさずビームライフルの精密射撃でバクゥを1機破壊する。
「隊長、あれです!あれがX105『ストライク』です。」
「ほう、もう熱対流の流れをパラメータに入れていると来たか。一発で仕留めるとはね。面白い。」
ダコスタが動揺しているのを他所にバルトフェルドは、笑みを浮かべて先ほどレジスタンスの攻撃から一時行動不能になっていたバクゥが再起動できるようになったのを見計らってパイロットに自分と交代するよう命令した。
「隊長、わざわざお出にならなくても・・・」
「撃ち合ってみないと分からないものもあるからね。君はダコスタ君と共にジープで先に戻りたまえ。」
パイロットを交代してもらうと彼は、他のバクゥと連携を組んでストライクへと向かって行く。
「フォーメーション、デルタで行く。ポジションを取れ!」
「「了解!!」」
並んで突っ込んでくる3機に対し、スネークはシールドを捨ててアーマーシュナイダーに持ち替える。擦れ違いの際、体当たりを受けそうになるも一番手前の1機の首をカウンターで刎ねる。
「ムッ!?」
しかし、フェイズシフトの性質を理解していたバルトフェルドは、ミサイルと高速移動で撹乱することでうまくエネルギーを消耗させようと画策していた。
「通常弾頭でも76発でフェイズシフトはその効力を失う。その時同時にライフルのパワーも尽きる!さあ、これをどうするかな?奇妙なパイロット君!」
「・・・なるほど、撹乱してこっちのエネルギーを削っていくという魂胆か。」
狙いに気付いたのか、スネークはワザとエールストライカーを外して目の前に迫ってきたバクゥにぶつける。その間にも他の2機がミサイルで攻撃してくるがいきなり高速で走り出して回避していく。
「こ、コイツ・・・追尾ミサイルを悠々と避けやがっている!?」
ミサイルの爆煙で視界が一時的にシャットアウトされるとその中からストライクが現れ、背負い投げでそのまま砂の上に叩きつけられ、1機はミサイルの爆薬で機体毎爆発した。
「コイツ!」
バルトフェルドは、状況不利だと判断して最後に突進を仕掛けるがそれすらも避けられてしまい、アーマーシュナイダーで後ろ足一本を切り落とされる形で撤退を余儀なくされた。
「総員後退!・・・・あのパイロット、とんでもない奴だ。武者震いが止まらない・・・だが、それがいい。面白くなってきた。」
バルトフェルド隊が撤退後、スネークは地上に降りて戦死したレジスタンスたちの遺体の回収を手伝って彼らの前で黙祷をささげた。
「頭が冷えたか?アンタらは己の報復心で仲間を死に追いやった。」
「なんだと、貴様!」
彼の一言にカガリは、掴みかかって恨めしそうな顔で睨みつけてくる。
「みんな必死に戦った、戦っているんだ!大事な人や大事なものを守るために必死でな!!」
「自惚れるな!それが今回の失敗につながったんだ!!」
「っ!」
スネークの鬼気迫る声に彼女は思わず手を放す。
「お前たちが『砂漠の虎』相手に戦うのは自由だ。止める権利はない。だが、いくら集まろうと素人が正規の訓練を受けた戦闘のプロに相手するのは自殺に等しい。街は諦めなければまだ復興できる。死ねばそこまでだ!奴らが本気でかかってくれば皆殺しにされてもおかしくない。向こうも仲間を殺されているんだからな。それが戦争だ。」
「なら・・・なら、どうしろって言うんだ!?このまま大人しく服従しろと言いたいのか!!」
「自分の身を守るだけの力を、技術を身に付けろ。それからだ。今のままでいけば、『砂漠の虎』の気まぐれでいつか本当に喰われるぞ。」
彼は、それだけ言うとサイーブの元へ向かって遺体の扱いについて話し合い始める。
カガリは、納得できないものの明確な答えが出せないため、ただ黙っていることしかできなかった。
後日、アークエンジェル一行は『明けの砂漠』の面子と共に物資を調達するべくザフトが基地を構えているバルティーヤの街へと向かうことになった。
サイーブ曰く、この街にはザフトとゲリラに隔てなく武器を売買し、商売をする武器商人アル・ジャイリーという男がおり、市場の倍以上で売り飛ばすため気に入らないが必要なものは必ず手に入ると言う事から腹を括って商談するしかないとのことだ。
ナタルたちが彼らと商談を行っている間、スネークはカガリの護衛を兼ねて食料・日常品の購入をする。
「ほう、思っていたよりも活気がある所じゃないか。占領された街だと聞いていたから暗いかと思ったが。」
「フン、そんなの表だけさ。こっちに来てみろ。」
市場を感心そうに見ている彼に対し、カガリは少し外れた裏路地へ案内する。そこは戦闘で破壊された建物が軒並み並んでおり、まだ復興もされていなかった。更にその先には母艦であるレセップスが見える。
「これがこの街の正体さ。逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、『砂漠の虎』のものなんだ。」
「・・・・だが、同時に規律を乱さない限り、外敵から街を守ってくれる保証はある。少なくともこの街の連中は懐柔されているな。」
「な、なんだとっ!?お前、虎に肩を持つのか!?」
「連中の顔を見てみろ、街の傍にあんなデカい母艦があるって言うのに怯える様子がまるでない。寧ろ安心している。それどころか、子どもが路地で遊んでいる始末だ。確かに占領した時は恐怖しただろうかその後のアフターケアでうまく信頼を勝ち取っている。」
「でも」
「まあ、裏ではまだ抵抗する意思があるのかもしれん。どちらにせよ、今の俺たちがどうこう言えることではない。それよりも買い物が先だろ?キャンプにいるチビたちにも土産を買ってやらないとな。」
「あ、あぁ・・・」
うまく言い包められたことに不満を感じつつも彼女は、市場に戻って買い物を始める。買い物はリストにまとめてあり、屋台にあれば手あたり次第購入、気づけば大量の荷物を抱えるようになった。
「これならジープに荷台を付けてくればよかったな。」
「仕方ないさ、下手に目立つとまずいからな。後はサイーブたちがうまく武器と弾薬を調達してきてくれれば達成だ。」
一通りの買い物を済ませた二人は、街の飲食店で食事をとることにする。
「お待たせねー。」
店員が持ってきた料理を見るなり、スネークは思わず笑みを浮かべる。
「ケバブか。」
「ドネルケバブさ。合流までまだかかりそうだし、腹も減っただろう?ここにこのチリソース」
「いやいや、ちょっと待った!!」
カガリが出されたチリソースをケバブにかけようとしたところでサングラスをかけたアロハシャツの男が割り込んできた。
「ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!このヨーグルトソースをかけるのが常識だろうが。」
「はあ?」
「いや、常識というよりももっとこう・・・うん、そう!ヨーグルトソースをかけないなんてこの料理に対する冒涜だよ。」
「なんなんだお前は!?見ず知らずの男に私の食べ方をとやかく言われるはない!」
彼女は、男の言葉を無視してチリソースをかけ、ケバブを巻いて口に頬張る。
「うわぁ~なんということを・・・」
「うん、うんまぃい~!ほら、お前もケバブにはチリソースを」
「お、おう・・」
「待ちたまえ!彼まで邪道に落とす気か!?」
「何をするんだ引っ込んでろ!」
「君こそ何を!!」
両者が取り合っているうちに持っていたソースは吹き出し、スネークのケバブは双方のソースだらけになってしまった。
「・・・・・」
「「あっ。」」
流石に悪いと思ったのかアロハシャツの男は、席に座って謝罪する。
「いや~悪かったね~。」
「まあ、不味くはならないだろう。」
そう言いながらスネークは、ケバブを巻いて口に頬張る。
「うっ!?」
「お、おい大丈夫か!?」
彼が目を大きく見開いたことにカガリは、心配そうに声をかける。
「ウ マ す ぎ る ! !」
一方、スネークたちが買い物をしていた頃、ナタルたちはサイーブと共にアル・ジャイリーの館で商談を進めていた。
「いやはや驚きましたよ。貴方が私の元へおいでになるとはね。」
ジャイリーは彼らが来るなり屋敷に招き入れ、分かってましたとばかりに軽く煽ってくる。
「水を押さえて優雅な暮らしだな、ジャイリー。俺もお前さんの顔など二度と見たくなかったんだがな。仕方がない。」
「お考えを変えればよいものを。大事なのは信念より命ですよ、サイーブ・アシュマン。」
不敵な笑みを見せながらも彼は、物資が保管されているファクトリーの方へと一行を案内し、事前に要求していた物資を見せる。その中には地球軍やモルゲンレーテの純正品が入っており、驚きつつもこんなところまで密かに横流しされていることにナタルは、複雑な心境となった。
「ったく、どこから横流しにされたのやら。」
「如何です?世界にはご存じない地下水脈も多くございましょう。」
そんな彼女に対し、ジャイリーは得意気に答える。
「必要なものは揃っているみたいだな。それで、どのくらいなんだ?」
「いえ、今回はあるスポンサー様からの要請でしてね。前金は既に頂いているのでそのままお引き取り頂いて構いませんよ。」
「何?」
いつものように金銭を要求しないことにサイーブは、少し驚く。ナタルたちも同様に警戒し始める。
「どういうことだ?」
「ホッホホ。お生憎匿名でしてね。あまり、深く詮索しないでください。こちらも穏便に済ませたいですからね。」
「お前さんらしくねえが、まあいい。さっさと運び出すぞ。」
サイーブの指示で荷物をジープへと運んでいく中、ジャイリーはナタルを呼び止めた。
「あっ、そうそう。そこのお嬢さん。」
「私か?」
「スポンサー様から伝言がありましてね。礼を言うなら“右目に眼帯を付けた少年”に言えと。」
「眼帯の少年・・・・何のことだ?」
まさかのスネークへの伝言に彼女は、内心動揺した。彼が負傷したのはここ最近でそのことを知るものはほとんどいないはずだ。
「さあ、私も飽くまで伝えといてくれとのことですのでそれ以上のことは。」
「・・・・そうか、分かった。伝えておく。」
ナタルは、正体の分からないスポンサーの正体を気にしながらも今は物資を無事に運ぶべく、その場を去るしかなかった。
『MISSION FAILED』
???「スネーク!?状況を報告しろ!スネーク!スネーク!!」
□CONTINUE
EXIT