「ウマすぎるって・・・大丈夫なのか、お前?」
ダブルソースケバブの感想が予想外だったことにカガリは、顔を引きつりながら聞く。
「うん、悪くない。」
「そ・・・そうか。」
「しかし、君たち随分すごい買い物だね。パーティーでもやるの?」
目の前で満面の笑みで答えるスネークを他所にアロハシャツの男は、相変わらずナンパのように声をかけてきた。
「うるさいな、余計なお世話だ!大体お前はなんなんだ?勝手に座ってああだ、こうだと・・・」
「「!」」
カガリが面白くなさそうに言いかけた時、男とスネークは隣の建物の屋上から何かが発射されたことにいち早く気付く。
「伏せろ!」
男が先に言い、テーブルをひっくり返して即席の盾を作る。撃たれた弾頭は店に直撃、スネークは急いでカガリを無理やり伏せさせるがそのおかげで彼女はチリソースまみれになった。
「死ね、コーディネーター!」
「宇宙の化け物め!!」
「青き清浄なる世界のために!!」
実行犯と思われる男たちは、銃を乱射しながら向かってくる。
「やれやれ、よくもまあ飽きずにやってくれるものだね。ブルーコスモスの連中は。」
バルトフェルドは、ため息をつきながら胸に隠し持っていた銃を取り出す。
「君たち、怪我はないかね・・・・うん?少年はどこ行った?」
彼は、隣にいるはずの二人に振り返るがいつのまにかスネークだけいなくなっていることに気づく。
スネークは、カガリをの傍に置いていくと銃撃戦の中をうまく潜り抜けてブルーコスモスのゲリラたちの背後に忍び寄ってCQCで次々と無力化していく。
「なんだ、コイツ!?」
「コーディネーターか!」
「クッ!奴も『虎』ごと殺せ!!」
ゲリラたちは、乱入してきた彼に動揺しながらも攻撃しようとするがうまく攻撃を掻い潜られてしまい、カガリたちの背後に隠れていた最後の一人も装備していたサバイバルナイフを肩に向かって投擲して怯ませたところで背負い投げで鎮圧した。
「ほう、ここまでとはね。」
バルトフェルドは、感心しながらも近くで民間人に扮していた部下にゲリラにとどめを刺すように指示を出す。
「止めを刺すまでもないだろう。」
「いや、彼らを生かしておけばこの街の人間にも害を及ぼしかねない。それだけ過激なのだよ、ブルーコスモスはね。」
「隊長ー!ご無事で!?」
そこへダコスタが数名のザフト兵士を連れて駆けつけてきた。彼は帽子とサングラスを外しながらスネークたちの方を見る。
「あぁ、私はこの通り何ともない。彼の活躍でな。」
「お、お前はアンドリュー・バルトフェルド!?」
顔を見るなり、カガリは驚きの声を上げる。
「・・・・この男が『砂漠の虎』か。」
「いや~助かったよ。ありがとう。だが、おかげで君たちの食事を邪魔したどころかそっちのお嬢さんに申し訳ないことをしてしまったね。どうだろうか?僕としては感謝の気持ちとして屋敷に招待したいのだが。お話もしたいところだしね。」
彼は、死体からサバイバルナイフを抜いてスネークに返す。カガリは、不味いからやめとけと言う顔をしているがスネークは、状況から判断して受け入れることにする。
「そうだな、コーヒーの一杯はごちそうしてもらおう。」
「おっ?コーヒーとはいい線いってるね、君。」
バルトフェルドの好意で二人は、彼の屋敷へと連れてこられる。外には砂漠仕様に換装されたジンが複数機待機しており、外の方も護衛がかなりの数徘徊していた。
屋敷の中に入ると事前に連絡したのか彼の恋人のアイシャが待っていた。
「この子ですの、アンディ?」
「あぁ、街でチリソースとヨーグルトソース、お茶で汚してしまってね。何とかしてくれ。」
「あらあら、ケバブね。」
話を聞くと彼女は、汚れたカガリの方へと近づいてよく見た後に何か思いついたのかニコッと笑って彼女を部屋の奥へと連れて行く。
「おーい、少年。君はこっちだ。」
スネークは、連れて行かれる彼女の姿を見送ると呼ばれた部屋へと足を踏み入れる。部屋の奥ではバルトフェルドがコーヒーを入れているところだった。
「僕は、コーヒーには些か自信があってね。もうすぐ淹れるから寛いでくれたまえ。」
そう言われると彼はソファーに腰を掛け、渡されたコーヒーを口に含める。
「どうかな?今回のブレンドは自信作なんだが。」
「・・・うまいな。コーヒーは色々と飲んだがアンタの淹れたのは3本指に入るぐらいだ。」
「ほう、それは嬉しいね。部下たちには中々受け入れてもらえなくてね。彼らはインスタントの方が飲みやすいと来たもんだ。」
「アンディ、出来たわよ。」
コーヒーを満喫しているところへアイシャがドレスアップしたカガリを連れて部屋に入ってくる。
普段と違う雰囲気でありながら如何にも乙女らしい格好にスネークは、爆笑してしまう。
「ハハハハハッ、随分とお姫様らしくなったじゃないか。」
「なんだとてめえ!!もう一度言ってみろ!!」
「ククッ、確かに似合っているじゃないか。」
「そうでしょ?これが一番似合うと思って選んであげたのよ。フフフフッ。」
「「「ハハハハハハッ。」」」
「笑うな!恥ずかしいから、みんな笑うな!!」
カガリは、顔を真っ赤にしながらもスネークの隣に座る。一通り笑い終わったバルトフェルドは、アイシャを退室させてソファーに座り直した。
「ハハハッ、失礼。しかし、ドレス姿もよく似合うね。っと言うかそういう姿の実に板がついてる感じだ。喋らなければ完璧なお嬢様だ。」
「勝手に言ってろ。そういうお前こそ、本当に『砂漠の虎』か?なんで街で会った初対面の相手にこんなドレスを着せる。これも毎度のお遊びの一つか?」
カガリは、面白くなさそうな顔で出されたコーヒーを一気飲みする。
「うん?ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装して街の中をヘラヘラ遊びまわったり、住民だけ逃がして街だけを焼いてみたりってことさ。」
「・・・いい目をしてるね。真っ直ぐで、実にいい目だ。」
「ふざけるな!」
帰ってくる言葉に対しカガリは、癇癪を起こす。
「では、君も死んだほうがマシな口かね?そっちの彼、君はどういう考えてる?」
「俺か?」
「どうなったらこの戦争を終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては?」
バルトフェルドが自分たちの正体を気付いていることにスネークは、苦笑しながら葉巻を取り出して口に咥える。
「いつから気づいてたんだ?」
「ハハハッ、君の動きさ。街でブルーコスモスの奴らとやり合った時に見せたあの動き・・・・直接見たのは初めてだがあれは過去の大戦で一部の兵士が使用したと言われる軍用格闘術『CQC』だ。年端のいかない少年が早々使いこなせるものではない。それに私は、この街の人間をよく見ているのでね。この辺で見ない顔となれば最近地球に降りてきた地球軍の新造艦に乗っている人間である可能性が高い。」
「コーヒーだけじゃなく、観察眼にも優れているな『虎』の大将。」
「フッ。戦争には制限時間も得点もないスポーツのようにね。なら、どうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?」
バルトフェルドが席を離れて何かを取り出そうとしている中、彼は隣で動揺しているカガリを他所に一服して答える。
「さあな。」
「なら、こう言われたらどうする?敵であるものをすべて滅ぼせと。」
銃口が二人に向けられる。そんな状況でありながらもスネークは、冷静に寛いでいた。
「・・・・俺たちを今ここで撃つ気か?」
「どうだろうね?例え君がバーサーカーであったとしても僕を蹴散らし、外の兵士たち全員を倒してここから出ることは流石に無理だと思うがね。ここにいるのは君と同じコーディネーターなんだからね。」
「そこまでお見通しか。」
「あの2機のモビルスーツ、タイプは違うが動きは動きや戦術は同じ人間としか思えないものだ。砂漠の耐設置圧、熱対流のパラメータを短時間で適応させたあの実力・・・・君は同胞の中でもかなり優秀と言っても過言でないだろう。君が何故、同胞と敵対する道を選んだのかは知らんが。」
「同胞?俺は確かにコーディネーターだが元はお前たちの仲間が崩壊させたヘリオポリスの人間だ。都合のいい時だけ同胞扱いするのはやめてもらおうか。俺からしてみればコーディネーターもナチュラルも関係ない。アンタは、どうすれば戦争が終わるかと言っていたが決めるのは政府のお偉いさん方だ。前線のアンタがどう言おうと連中が終わると言うまで戦わなければならない。」
彼の放った言葉にバルトフェルドは、しばらく黙り込むが少し呆れた顔をすると銃を下ろした。
「・・・ふむ、確かに僕たちがどうこう言おうが結論が出るわけではないね。難しい話だ。」
彼は銃を元の場所に戻し、アイシャを呼び出すと彼らを見送るように伝える。
「いいのか?俺たちを解放して。」
「今日の君は僕の恩人だし、ここは戦場じゃないしね。帰りたまえ。話ができて楽しかったよ。良かったかどうかはわからんがね。」
「じゃあ、俺からも一言言わせてもらおう。アンタの淹れたコーヒーはうまかった。軍人続けるよりもそこの恋人と一緒に喫茶店を開くことを勧める。その方が人気出ると思うぞ。行くぞ、カガリ。」
「そうかい。では、次は戦場で会おう。」
スネークたちは、そのまま屋敷を後にする。
「・・・次は戦場か。もう、あのコーヒーは二度と飲めないかもしれないな。」
同じ頃、アスランは、二コルと共にプラントに帰還。しばらく休暇をもらったことでラクスの自宅を訪問していた。屋敷に入りなり、複数のハロ達に囲まれて困惑するものの特に変わりない様子のラクスを見て彼は、追悼式に参加できなかったことを謝罪しつつ庭園で紅茶を楽しんでいた。
「お戻りになられたと聞いて今度はお会いできるかしらと楽しみにしておりましたのよ。今回は少しゆっくりとおできになられますの?」
「さあ、休暇の日程は飽くまで予定ですので。」
何気ないティータイムをしつつも、ラクスは戦争の規模が徐々に拡大していることに不安を感じていることを吐露する。開戦から既にかなりの期間が経過しており、同年代の若者は次々と軍に志願して前線へと向かっていた。それが最悪の結果にならないかと彼女は心配で仕方なかったのだ。
「そう言えばキラは、今頃どうされてますのでしょうね?」
「えっ?」
「あの後、お会いになられましたか?」
さり気ない一言でアスランは、大気圏に突入していくストライクとデュエルの姿を思い出す。
遠くからで分からなかったがデュエルの攻撃で被弾して墜落していくところを目撃したため、怪我をしたのかもしれない。
「アイツは地球でしょう。無事だと思いますが・・・」
「小さい頃からのお友達でらしたのですか?」
「えぇ、4、5歳からの付き合いでずっと月にいました。開戦の兆しが濃くなった頃、私は父に言われて先にプラントに上がってアイツも後から来るはずでした。それなのに・・・・」
アスランの脳裏に移る幼少期の頃のスネークと現在の彼の姿を思い浮かべる。
あの頃は、同年代でありながら世話のかかる弟のような存在だった。それがいつの間にか軍人ではないにもかかわらず、自分よりも覚悟を決めて戦っていることに戸惑いを覚えた。
『彼女のことを思うなら軍から身を引け!!そんなことで命を無駄にしたら元も子もないぞ。』
(分かっているんだ。もう、アイツを止めることができないことを。けど・・・)
「・・・ハロのことをお話したら、貴方のこと相変わらずなんだなって嬉しそうに笑いながら仰ってましたわ。自分のトリィも貴方が作ってくれたと。」
「えっ?アイツ、まだアレを持って。」
彼女の話を聞いて彼は、驚く。
確かに別れの際に急いで作って手渡したがいまだに大事にしていたとは思ってもみなかったからだ。
「はい、何度かポケットから飛び出して肩に止まっているのを見ましたわ。そのたびに『勝手にどこかへ遊びに行くんじゃないぞ』って言っておられましたの。」
「そう、ですか。」
二人は庭園から見える港を眺める。こうしている間にも戦線では敵味方問わず、次々と儚い命が散っていく。評議会の方ではアスランの父パトリックが今日にも大規模な作戦『オペレーション・スピットブレイク』が世論の風潮もあって可決されるだろう。そうでなくても、またスネークと戦場で戦うことになる。
「・・・・私、あの方が好きですわ。」
「えっ?」
その日の夕方、クルーゼは自宅で休んでいたのだが突然の発作でベッドから落ちていた。
「グ、グウウ!!」
彼は、急いで近くに置いてある薬を一錠取り出して口に入れる。すると乱れていた呼吸は落ち着き始め、顔色もよくなり始める。
「ハア・・・ハア・・・いくら熟睡しようとこれが起こればあっという間に現実に戻されてしまうものだな・・・・」
落ち着きを取り戻したと同時にベッドの上に置いておいた端末に着信が入る。相手は、パトリックだった。
「これはザラ委員長閣下。この時間帯だとまだ評議会の最中では?」
『こちらの案件は無事通った。まだ、やることがあるが終わったら夜にでも君と細かい話がしたい。どうかね?』
「分かりました。お伺いします。」
『今にも見せつけてやるさ。我らが本気となれば地球など・・・・な。』
連絡が終わるとクルーゼは、そのまま床に横になる。その見えない素顔からはこの世のものとは思えない憎悪のようなものが感じられる。
「ハア・・・・ハア・・・・・フッ、せいぜい今のうちに思い上がっているがいい・・・パトリック・ザラ。」
同じ頃、アスランは回されている仕事を消化する事情もあってラクス宅を後にしようとしていた。
「残念ですわね、夕食もご一緒にしていければよろしいのに。父ももうすぐ帰ってきますし。」
「すみません。まだ、やることがあって・・・・その、あまり戻れませんから。」
誘ってくれるラクスに対して彼は、申し訳なさそうに答える。休日がいつ急遽取り消されるか分からないことを考えるといつでも出られるようにしなければならない。
「そうですか、なら仕方ありませんわね。」
「あっ、時間が取れればまた伺いますので。」
「本当に?お待ちしておりますわ。」
嬉しそうに言うと彼女は、お別れのキスを促す。アスランは少し顔を赤くしながらも頬にそっとキスをしてそのまま彼女の自宅を後にした。
車を運転して帰路に就いた彼は、ラジオを付ける。
「ラクスの新曲か。」
スネークは、アークエンジェルに帰還すると丁度マリューたちは、明けの砂漠の基地で作戦会議で艦を空けていた。
格納庫でマードックの仕事の手伝いをしようと行ってみると一か所で何やら人が集まっているのを目にする。
「どうした?みんな集まって。」
「あっ、キラ。見てくれよ、このカガリって子。スカイグラスパーのシミュレーションテストで高得点出してるんだ!」
トールが指さした先を見るとそこにはシミュレーション装置が設置されており、カガリがデータ上のジンなどを撃墜している姿が見えた。
「ほう、よくできてるじゃないか。」
「すげえよな、モビルスーツバンバン墜として。カズイは出た瞬間、ミリィは1機、俺は2機倒したところで撃墜されちまったんだからさ。」
「お前ら、軍人なのに情けなすぎるぞ。銃も撃ったことないんだって?ンなことじゃ死ぬぞ。戦争してんだろ、戦争。」
カガリは、煽るように言いながら席を外す。その態度にミリアリアたちは面白くなさそうだった。
「何よ、自慢できることじゃないじゃない!銃を撃ったことなんて。」
「まあ、銃を撃たない軍人自体早々いないからな。寧ろそれだけ恵まれているってわけだ。」
そんな彼女に対し、スネークはフォローを入れる。ついこの間まで民間人の立場だったのだ。射撃訓練すら碌にしたことがないのだから仕方ない。
「キラ・・・」
「クソ、俺だってあれぐらいできるようになってやらぁ!」
対抗心を燃やしたのかトールは装置に座って再度シミュレーションを始める。
後日、砂漠で戦闘準備のための補給を受けているバルトフェルド隊。
補給ではバクゥを新たに寄こしてほしいと要請したのだがジブラルタル基地から届いたのは、より機動性が劣るザウートばかりだった。
「何を考えているのかね、ジブラルタルの連中は。バクゥは品切れか?」
「はあ、駆動系の摩耗とかを理由にディンやグーンなどと共に民間に売ったとかで新規ものはまだ回せないと。その埋め合わせかどうかはわかりませんがあの2機を。」
外に出ると輸送機から待機状態のデュエルとバスターが運ばれていた。
「確かダイアモンド何とかって言う海洋調査の会社だっけか?怪しい会社に売ってしまうんだったらこっちに回してもらった方がありがたいんだがね。却って邪魔になるだけだ。宇宙戦しか経験がないのだろう?彼らは。」
「何を言うにもエリート部隊ですからね。」
「クルーゼ隊だろ?僕、アイツのこと嫌いなんだよ。何考えているか分からないからね。」
愚痴を言いながらもバルトフェルドは、ダコスタと共に甲板に出て派遣されてきたイザークとディアッカに挨拶をした後に作戦参加の許可をする。
そうしている間にもアークエンジェルが動き出したという情報が届くのだった。
『MISSION FAILED』
???「スネーク!応答して!スネーク!スネーク!!」
□CONTINUE
EXIT
フレイとサイを退場させちゃったせいであの昼ドラみたいな修羅場がなくなってしまった。