翌日、アークエンジェルは暫定処置として第八艦隊からアラスカ守備軍への所属を移行することが通達された。
補給こそして貰えるのはいいが休暇・除隊の希望に関しては、パナマの件で忙しいことから先送りにされてしまい、マリューは頭を押さえながら艦長席へと座る。
先ほど、転属のために退艦したナタルとムウがいないだけでここまで精神的に来るとは。それだけ自分の中では大きな存在だったのかもしれない。決まったからには、それぞれの分野で活躍してほしいと考える一方で残ってもらいたいと言う気持ちもあった。
格納庫の方では予定通り、ストライクとアストレイ以来となるモビルスーツである105ダガー、バスターダガー、ストライクダガー2機が配備されたことに整備スタッフは興奮していたが依然、パイロットが不在という問題が否めない。
鹵獲したバスターについては特に得るものがないのか何も言われることはなかった。
ムウたちを見送った後、彼女は何かぽっかりと穴が空いてしまったような感覚を感じながらもこれからの任務に集中しようと自分に言い聞かせるのであった。
同じ頃、オーブの軍病院の一室では目を覚ましたトールが右足をギプスで固定された状態でノートPCで情報収集していた。
「・・・やっぱダメか。」
「親父さんたちから寝とけって言われたんじゃなかったのか?」
「イッ!?」
ドアの開いた音を聞いて彼は、慌てて持っていたPCを枕の下に隠そうとする。
入って来たのは、花束を持ったサイとフレイだった。
「さ、サイ!ハア・・・・びっくりさせないでくれよ。先生かお袋たち来たかと思った・・・。」
部屋に入って来たのが友人であることがトールは、警戒を解いた。
サイは、そんな彼の態度に呆れながらもフレイに持ってきた花を花瓶に差すように頼んで椅子に座る。
「親父さんたちから聞いたよ。無人島の海岸で回収されたって。」
「あぁ、スカイグラスパーでディンを1機墜とした後にキラと合流しようとしたんだ。そこで攻撃を受けちゃって・・・」
「それで足だけで済んだのは運が良かったのかもしれないな。墜とされたって聞いたときはもっとひどい怪我だと思ったよ。」
「変に心配させてゴメンな。一番心配してんのはミリィかもしんねえけど。・・・・なあ、サイ。オーブの方でアークエンジェルがアラスカに着いたって情報とか聞いてないか?俺の調べた範囲じゃ何にも分んなくてさ。」
「悪い、俺たちの方でもまだ何も聞いていないんだ。キラのことも。」
「・・・そっか。」
少しでも希望を持ちたかったトールは、その言葉を聞いて暗い表情になる。そんな彼に対して、フレイはその場を少しでも宥めようと口を開く。
「だ、大丈夫よ!アンタがこうやって助けられたんだからキラもどこかで助けられているに違いないわ。それにミリアリアたちもアラスカに着けば除隊申請できるようになるはずだし、すぐに戻ってくるわよ。ねえ、サイ。」
「そうだな。まだフラガ少佐がいるんだし、きっと今頃アラスカでオーブに戻る手続きをしているさ。ミリアリアに会ったときはちゃんと謝っておけよ。『心配させてゴメン』って。」
「はいはい・・・俺、出撃する前にアイツを不安がらせちゃってさ。早く会いたいっていても立っても居られないんだ。キラにも気を遣わせちまったし。」
トールは、ノートPCを取り出して気むずかしい表情をする。
「それになんか胸騒ぎがするんだよ。オーブも近いうち戦場になるんじゃないかって。」
「流石にそれはないんじゃないか?」
「艦に乗る前だったら気のせいだって言えたぜ。でも、ヘリオポリスの件とか含めて考えれば可能性はゼロじゃないだろ?だから、もしもの時のためにできるだけ情報を集めようかと思って。」
「それなら尚更安静にした方がいいんじゃない?軍のことじゃ情報統制されてやりようがないんだし。」
「ウッ。」
フレイのさり気ないツッコミに彼は言い返すことができず、PCをそっと閉じて枕元に戻した。
『作戦開始は定刻の予定。』
『各員は迅速に作業を終了せよ。』
『降下揚陸隊配置完了、作戦域オールグリーン。レーザー通信回線、最終チェック。』
ザフトの大規模作戦『オペレーション・スピットブレイク』の準備は着々と進められていた。
ジブラルタル、カーペンタリア基地からは無数のディンとジンなどを載せた輸送機が旅立ち、海中ではグーンとゾノに囲まれたボズゴロフ級が次々と作戦エリアへと向かって行く。
更に宇宙ではこれでもかとばかりに降下部隊を乗せた大気圏突入ポッドを搭載したローラシア級、ナスカ級戦艦が待機していた。
「ザラ議長閣下、全部隊作戦準備完了いたしました。後は、閣下の指示を待つのみです。」
「うむ。」
プラントの総司令部で配置完了の報を受けたパトリックは、重い腰を上げてブリッジへと向かい始める。
「オセロットの方から何か報告はあったか?」
「いえ、クライン前議長の動きは特に見られないと。愛娘とティータイムを楽しんでいるそうです。」
「・・・そうか、他の親衛隊にも引き続き穏健派の連中を監視するように伝えておけ。不審な動きがあったら私に直接と。」
「ハッ。」
彼は、シーゲルを初めとする穏健派の面子の動きに警戒し、作戦中に騒ぎを起こさぬよう部下に命令する。
司令室では既に多くのザフト兵が各部隊の状況を逐一確認しており、後はスピットブレイク発動を待つだけだった。パトリックが入室して来たのを確認すると一同は彼に向かって敬礼をする。
「この作戦により、戦争が早期終結へ向かうことを切に願う。真の『自由』と『正義』が示されることを・・・・『オペレーション・スピットブレイク』、開始せよ!」
「スピットブレイク発動!」
「繰り返す、オペレーション・スピットブレイク発動。目標、アラスカ『ジョシュア』!」
スピットブレイク発動は、ザフト各部隊に通達されたが一部の部隊は目標を聞くと動揺を隠せなかった。
「ジョシュアだと!?」
「パナマではなかったのか?」
「地球軍本部!?」
無論、それは地上の部隊も同じでクルーゼとイザークが乗艦しているボズゴロフ級でもスタッフたちは困惑していた。
「おいおい、話が違うじゃないか。」
「本部を攻めるなんて上は何を考えてんだ!?」
そんな中、イザークは一瞬驚きはしたものの敵を潰すのなら本部への奇襲が効果的だと考えてパトリックの作戦を称賛する。
「へえ、面白いじゃないか。流石、ザラ議長閣下。やってくれる。」
「他の連中が戸惑ってんのにお前は良く落ち着いてんな、イザーク。」
一緒にデュエルのチェックを行っていた整備長は、周りが騒いでいるのを見ながら言う。
「奴らは、目標をパナマだと信じて主力部隊を展開させてるんだろ?まさに好機じゃないか。これで終わりだな、ナチュラル共もさ。」
「・・・お前さんは、切り替えが早いな。まっ、次は壊さないようにしてくれよ。元々規格の合わない部品を調達するのも一苦労なんだからよ。」
その一方、スネークはクライン邸で雨を眺めながらマルキオ導師等と共にティータイムしていた。
「・・・・」
感慨深い表情をしながら紅茶を口に含む彼の顔を横にラクスは、少し心配そうに見ていた。
スネークにとって雨は、大きな出来事の前触れのようなものでヴァーチャスミッション並びにスネークイーター作戦の合間、ザドルノフとパスがコロンビアに来た時やその彼女とチコを救出しにキューバに向かった時もこのような天気だった。
「どうした、ラクス?浮かない顔をしているようだが。」
彼女の様子に気づいたのかスネークは、声をかける。
「い、いえ・・・・キラは雨がお好きなのですかと思いまして。ずっと眺めていたものですから。」
「好きかと言うとそうだな・・・色々と考えてるんだ。オーブの両親やアークエンジェルの皆のことを。」
「・・・・」
「まあ、じっとしているのが性に合わないと言ったところか。ヘリオポリスを出てからずっとバタバタ動いていたからな。いざのんびりしようとしても落ち着かないんだ。」
彼は、不安そうな顔をするラクスに苦笑しながら答える。
「自分の向かうべき場所、せねばならぬことはやがて自ずと知れましょう。貴方がたは『SEED』を持つ者、故に。」
共に紅茶を愉しんでいたマルキオ導師は、教えを説くように言う。
「やがて知ることになるか。俺の知り合いが似たようなことを言っていた。だが、導師。アンタの言う『SEED』っていったい何なんだ?」
「昔、ある研究者が学会で発表した『優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子を持つ、類の一つ先のステージに進むための可能性』と言われています。私は、遺伝子操作による優劣とは関係のない、ヒトと世界が融和しうる認識力の変革を促す者たちであると考えています。」
「難しい話だな。ちなみに発表した研究者は誰なんだ?」
「確かクラーク博士と言う女性の方だったと聞いています。」
「ク、クラーク!?」
聞き覚えのある名前に彼は、紅茶を吹き出しかかるが何とか踏みとどまって話を続ける。
「そのクラーク博士は、今何をしてるんだ?発表してからそれっきりって訳じゃないんだろ?」
「詳しいことは分かりませんが16年前のL4コロニー『メンデル』での研究施設の事故でお亡くなりになられたと聞いています。」
「そうか・・・今も生きていたらサイボーグ兵士でも作ってたかもしれないな。」
「?」
「こっちの話だ。気にしないでくれ。」
そんな話をしているとシーゲルが悩んだ顔で部屋に入って来た。
「導師、申し訳ない。帰りのシャトルを手配しようとしたのですがどの便も作戦終了まで出せないと言われてしまいましたよ。」
「構いません。私も急ぎ足ではありませんので。」
「パトリックは何を考えているんだ。パナマを墜とすためとは言え、宇宙軍まで駆り出して。」
「お父様も少しお休みになられては?」
「そうだな。私の考えすぎかもしれん。キラ君、体の具合はもういいのかね?」
「あぁ、おかげさまで。」
「君にもすまないことをしたね。本来ならご両親のいるオーブへ送り届けたいところだったが。」
彼は、席について紅茶を受け取ろうとすると部屋の通信端末に着信が入る。
「どうした?」
『アイリーン・カナーバ様からシーゲル様に通信です。』
「分かった、彼女と繋げてくれ。」
通信を繋げるとスクリーンに同じ穏健派であるアイリーン・カナーバの血相を変えた顔が映し出される。
「クラインだ。」
『シーゲル・クライン、我々はザラに欺かれた!!』
「どういうことだ、カナーバ?」
『発動されたスピットブレイクの目標はパナマではない、アラスカだ!』
「なんだとっ!?」
『彼は一息に地球軍本部を壊滅させるつもりなのだ。評議会はそんなことを承認していない!』
「・・・・」
連絡で一大事なことが起こったことを知りながらもスネークは、驚くことなく紅茶を口に含む。
その様子を見てラクスは、既に彼がこのことを知っていたのではないかと直感した。もし知らないのなら動揺を隠せないはずだ。
「キラ、確かお友達が・・・」
「あぁ、アラスカにいるはずだ。助けに行きたいのは山々だが・・・今の俺にはどうすることもできない。」
「・・・・でも」
彼女が言いかけた時、スネークは彼女の首元にレーザーポインターが向けられていることに気づいて反射的に押し倒す。
「伏せろ!」
「!?」
彼の突然の声にシーゲルとマルキオ導師もテーブルをひっくり返して盾にする。すると部屋のガラスが割れ、銃声が響き渡り始める。
「どこの攻撃だ!?」
「分からない。だが、貴方たちを狙おうとしたのは確かだ。」
外では武装した集団が銃を発砲しながら近づいてくる。スネークはラクスを抱き寄せながら庭の方へと脱出する。シーゲルがマルキオ導師と共に逃げているとザフトの親衛隊が現場に駆けつけて応戦をし始める。その中にはSAAで応戦するオセロットの姿もあった。
「クライン前議長、マルキオ導師もご無事ですか?」
「オセロット、これはどうしたことなんだ!?」
「ブルーコスモスの過激派の仕業です。さあ、こちらへ。」
オセロットは、部下にシーゲルたちの護送を任せると前の方に出てブルーコスモスの工作員に向かって6発連続で発砲する。一見誤った方向へ撃ったように見えるがこれは彼の得意とする跳弾で建物の角で跳ね返り、相手に不意を突く形で命中させるテクニックだ。
ラクスは、遅れてシーゲルたちの後を追うがいつの間にかスネークがいなくなっていることに気づく。
「キラ?・・・キラ!?」
道から逸れて探してみると茂みの中に隠れてやり過ごしているスネークの姿があった。何かを察した彼女はピンクハロを抱えたまま屋敷の反対側から外に抜けだし、何故か一台だけ置いてある親衛隊用車を発見する。
「・・・・」
周囲に誰もいないことを確認するとラクスは、車に近づきバッグドアを開けて中に忍び込む。
それからしばらくしてブルーコスモスの工作員を一掃した後に他に誰もいないかどうかを確認すると言って一人になったオセロットが隠れていたスネークと共に知らずに乗り込み、そのままクライン邸から走り去っていった。
ムウたちを見送って数時間経った頃、基地の緊急警報のサイレンでアークエンジェルのクルーたちは何事かと動揺する。
外では無数のディンとザフト輸送機が迫ってきており、シグーやジンが続々と地表へ降下して攻撃を開始。別方向からはバクゥとザウート、海中からはグーンとゾノが侵攻を始める。
「統合作戦室より入電、サザーランド大佐からです!」
「モニターに映して!」
マリューの指示でブリッジのモニターに映像が投影される。
「サザーランド大佐、これは!?」
『してやられたよ。ザフトは直前で目標をパナマからこのジョシュアへ変更したのだ。守備軍は直ちに発進。迎撃を開始せよ!』
「なっ!?」
まさかの事態にマリューは、呆然とするがそうしている間にも敵軍が攻めてきているためすぐに頭を切り替える。
「これで戦えと言うのも酷な話だけど、本部をやらせるわけにはいかないわ。総員第一戦闘配備!アークエンジェルは、これより防衛任務のため発進します!」
「そんな、キラも少佐もいないのにどうやって!?」
カズィは、思わず弱音を吐いてしまうものの自分のできることをやろうと席に着く。格納庫にはダガー数機が待機しているもののパイロットは不在な現状戦力として当てにならない。
かくしてアークエンジェルは、基地防衛のためにメインゲートの前へと発進し始める。
一方、転属命令で去ったはずムウは、何故か基地の中を走っていた。
「一体どうなってやがんだ?まるでもぬけの殻じゃないか!」
マリューたちと別れてナタルとぞれぞれ別の艦で移動する予定の彼だったが乗艦する直前、今まで抱えていた嫌な予感とモヤモヤした感情が限界に達し、IDカードを見せる直前で足を止めた。
「どうしました、フラガ少佐?」
確認を行っていた兵士は、カードを掲示しないムウに対して不思議そうに聞く。
「悪い。俺、前の艦に忘れ物したみたいだからちょっと戻るわ。」
「えっ?しかし、次に出るカリフォルニア便は」
「向こうに遅れて着任するって伝えといてくれ。とりあえず、近くの便に乗って後で行くからさ。」
そう言うと彼は、荷物を持ったまま駆け足で港を去って行き、今に至る。
「緊急事態だってんのになんなんだこの静けさは・・・・!」
エレベーターに乗って統合司令室へ向かって行く最中、ムウは奇妙な気配を感じ取る。
「この感じ・・・まさか、ラウ・ル・クルーゼか?こんな時に!」
エレベーターを降り、彼は忍び足で司令室へと足を運ぶ。
そこには、既に侵入してきたラウ・ル・クルーゼの後姿があった。
「ほう、こんな大層なものを仕掛けておくとは。恐れ入ったよ、『ジョージ』。」
端末の情報を見ながら不敵な笑みを浮かべる彼の背後へムウは、銃を構えながら近づいていく。
「・・・背後から不意打ちとは、姑息だなムウ・ラ・フラガ。」
「!?」
自分の存在に気づかれたことに一瞬驚いた隙をついてクルーゼは、所持していた銃を発砲する。ムウは壁に隠れて凌ぐと無人の指令室の中へと乗り込んで応戦するがそこには薄暗いために姿を捕らえるのは困難だった。
「久しぶりだと言いたいところだが、生憎貴様と付き合っている時間はないのでな。」
「何をっ!?」
「しかし、ここにいると言う事は地球軍にとって貴様は既に用なしと言う事か。『エンデュミオンの鷹』も堕ちたものだな。」
そう言うとクルーゼは、数発発砲して退室していく。一人残されたムウは、いなくなったのを確認すると彼が何を見ていたのかを確認するため、ディスプレイを見てみる。
そこには、サイクロプスの起動シークエンスが既に完了したと言う表示が出ており、いつ動いてもおかしくない状況になっていた。
「こ、コイツは・・・・」
「『サイクロプス』。かつて、アンタが参加した『グリマルディ戦線』で使用された大量破壊兵器だ。」
「!?」
「動くな。」
不意に背後からの声に彼は、銃口を突きつけられて両手を上げる。ゆっくりと振り向くとそこには銃を構えたヴェノムが立っていた。
「アンタ、誰だ?どう見ても軍人じゃなさそうだけど・・・・」
「俺のことはいい。お前、コイツの事実を知っていたのか?」
彼は、モニターの見ながら確認をする。
「いや、俺もここに来てようやく分かったんだ。」
「ならいい。これからどうするつもりだ?」
「どうするって・・・・行かなきゃなんねえ所があるんだ。早く行かねえと。」
ムウは、内心焦りながら受け答えをする。もし、上層部がいつでもサイクロプスを使えると言うのなら一刻もここから早く脱出しなければならない。恐らく、メインゲートではアークエンジェルが守備軍として参加しているはずだ。このままではマリューを始めとする仲間たちが死ぬことになる。そうなる前に合流しなければ。
「・・・・そうか。なら早く行け。」
ヴェノムは、銃口を下げて退室を促す。ムウは、自分を撃たないことが分かると駆け足で司令室から去って行った。
「・・・カズ、統合司令室へ着いた。予想通り、放棄された後だ。」
『っとなると、残された時間は少ないな。救出艇に乗せられる人数も限られている。ボス、予定通り端末に例の信号をインストールし、危険領域から離脱してくれ。本部内に信号が発信した後、救出艇を港に出す。信号に応じた連合兵士は可能な限り収容するが・・・・いつ、サイクロプスが作動してもおかしくない。』
「どのタイミングで作動すると思う?」
『大まかだが・・・5割ぐらいが中枢部に達した段階だろうな。それよりも早いかもしれん。離脱の時間も考えて4割に達そうとした段階で救助を打ち切る。残された奴らを見殺しにすることになるが。』
「表の連中に頑張ってもらうしかないな。俺もすぐに引き上げる。そっちは頼んだ。」
彼は、通信を終えると持ってきた端子を取り付けて信号をインストールさせる。
内容は『連合本部は放棄された。間もなく自爆装置で半径10キロ圏内が消滅する。生き残りたいと望むのなら指定された場所へ向かえ。』と言ったものだった。
「目標は達した。これより離脱する。」
ヴェノムは、信号が本部全域には送信され始めたのを確認すると司令室から走って行く。
時間は少し遡り、スネークはオセロットに連れられてプラントの宇宙港近くへと連れてこられた。
スピットブレイク発動で警備が手薄になっていることとコロニー内部にブルーコスモスの工作員たちはテロ活動を行ったと言う騒ぎが広まったことでその数少ない警備が出動したおかげで宇宙港はほとんど人員がおらず、この場にいるのは2人だけだった。
「貴方の機体を用意しました。メンテナンスも問題ありません。後は貴方の生体認証を登録すれば全て完了です。」
二人の目の前には待機状態の翼を持つモビルスーツ『フリーダム』が待機しており、いつでも動ける状態になっていた。スネークは、用意されていたパイロットスーツに着替えており、後は乗り込むのみだ。
「後は私に。これを。」
オセロットは、持っていた端末カードを手渡す。
「アラスカまでのコースパターンをまとめてあります。後、ミラーのところへ行く場合はこの信号を送ってください。彼ならすぐに貴方だと気づくでしょう。」
「俺も彼らも追われる立場になるのか。」
このまま地球へ向かい、アークエンジェルと合流して危険域から脱出すればザフトと連合の双方から狙われる立場になる。そうなれば、向かう先はオーブを始めとする中立国に限られる。
「オーブに直接向かえば、あの国を叩く口実を与えることになる。それよりはリスクを抑えられるでしょう。さあ、あなたも早く。」
「分かった。あれをくれ。」
行く前の一服を求められるとオセロットは、コートのポケットから葉巻を取り出して彼に差し出す。
スネークがそれを受け取って口に咥えて火を借りようとした瞬間、彼は銃を取り出して振り向いて発砲する。
「いつまで隠れている?我々がいつまでも気づいていないと思っていたのか、ラクス・クライン嬢。」
銃弾が掠って悲鳴を上げそうになるのを我慢していたがバレていたことに観念してピンクハロを抱えてラクスは、顔を出した。
「ラクス・・・俺たちを付けていたのか。」
港に着いた段階で付けられているとは思っていたがまさかの彼女だったことにスネークは、少し驚く。
「・・・キラ、貴方はどこへ向かわれるのですか?」
目の前にまで来て彼女は、不安そうな表情を浮かべながら彼に問う。
「地球、仲間のところだ。」
「何故ですか?そんなにもボロボロになって、貴方が戻らなければならないのですか?戻ったところで戦いは終わりません。」
「そこまでできるとは思ってはいない。俺は、自分の意思で自分のために戦う。ザフトも地球軍も関係ない、仲間を助ける。それだけだ。」
火を諦めたのか、彼は口に咥えたままフリーダムへと乗り込もうとする。
「待ってください!」
ラクスは、抑え込んでいた不安が我慢できないとばかりに走ってスネークを背後から抱き着いて止める。
「ラクス?」
「行かないでください・・・行ったら・・・もう、貴方に、会うことが出来なくなってしまいそうで・・・・」
泣き始める彼女をオセロットは、少し嫌そうな顔で無理やり引き剥がそうとする。しかし、スネークはそれを制して振り向いて彼女の顔を見る。
「泣くことはないさ。生きていればまた会える。これから大変になるだろうが望みを捨てなければ人間ちょっとやそっとじゃ死なない。」
「・・・キラ。」
「オセロット、彼女を頼む。」
「はい。」
そう言って彼は、改めてライターを取り出して葉巻に火を点けようとするが目の前にいるラクスが物欲しそうな顔をしていたため、渋々手渡した。
彼女は、受け取ったライターで葉巻に火を点ける。スネークは、葉巻を口に咥えて吸うとゆっくりと煙を吐いた。
「また、会おう。ラクス・クライン。」
「えぇ・・・私もまた貴方にお会いしたいです、キラ・ヤマト。」
ラクスは、彼に頬に優しくキスをする。その光景を見てオセロットは、一瞬嫉妬深そうな顔をするがスネークに見えないように振り向く。
「じゃあ、行ってくる。」
「はい、行ってらっしゃい。」
スネークはフリーダムのコックピットへと入り、生体認証を登録した後にOSを最適化させて起動させる。
「ボス、港のゲートを解放します。ご武運を。」
事前に職員を無力化させた管制室からオセロットがゲートの扉を開く。傍でラクスは飛び去って行くフリーダムを愛おしそうに見送った。
「キラ・・・。」
宇宙港から外に出たフリーダムは、背部のウィングバインダーを吹かせながら地球を目指して飛んで行く。
「『フリーダム』確認!くそ、ブルーコスモスのテロリストめ!!」
「何としても奪還するんだ!!」
奪取されたことを把握していたか、捜索に当たっていたジン数機がマシンガンを発砲しながら迎撃に向かってくる。
スネークは、スラスターで小刻みに攻撃を回避すると背部の『M100 バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲』、両腰部に装備されている『MMI-M15 クスィフィアス・レール砲』を展開して一斉発射する。
「グワッ!?」
高火力のビームとレールガンの砲撃にジン数機はあっという間に蹴散らされ、フリーダムはバインダーをハイマットモードへと戻して高速離脱する。
「ストライクのランチャー以上の火力だな。アイツが俺好みじゃないって言っていたのが納得いく。だが、このスピードなら間に合いそうだ。」
スネークは、進路を地球のアラスカへと定めて先を急ぐ。
『MISSION FAILED』
???「ボス、子供に手を出したな?任務は失敗だ。」
□CONTINUE
EXIT
正直、最後の下り悩んだ。