機動戦士ガンダムSEED SOLID   作:赤バンブル

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『MISSION FAILED』のバリエーションが尽きちゃったから今回からはカセットテープになります。


PHASE:21『舞い降りる剣』

地球連合アラスカ本部では、サイクロプスの存在を知らない地球連合守備隊とザフトの攻防が繰り広げられていた。

 

大気圏突入ポッドで降下してきたものを初め、大量のモビルスーツで攻めてくるザフトに対して地球軍はリニアガン・タンクを中心とする戦車部隊と戦闘機スピアヘッドの防空隊と言う有様で主力部隊が不在なこともあって徐々に押されていく。

 

メインゲートの守備に就いていたアークエンジェルも当然例外ではなく、圧倒的数の攻撃で右舷に被弾して大穴が空いた。

 

「右舷フライトデッキ、被弾!」

 

「火災は?」

 

「小規模です、すぐに対応させます!」

 

消火に当たるマードックたちは、消火活動をしながら近くで待機しているダガーたちを見て思わず愚痴をこぼす。

 

「クソッ、上は何考えてやがんだ!モビルスーツがあったって、乗れる奴がいなかったらただの置物じゃねえか!!」

 

そうしている間にも味方の艦船が集中砲火で撃沈する。

 

「オーレグ、轟沈!」

 

「取り舵!オーレグの抜けた穴を埋める。照準合わせ、ゴットフリート撃てー!!」

 

今までナタルが対応してくれた指示までも出すマリューは、こんな時に2人がいてくれればと思いつつもパナマから主力部隊が戻ってきてくれることを信じて応戦し続ける。

 

「尚もディン接近!数、6!!」

 

「艦長、この陣容じゃ対抗しきれませんよ!」

 

ノイマンは、操舵を握りしめながら苦言を呈する。

 

「まんまとやられたもんだぜ、司令部も!」

 

「主力部隊は全部パナマに行ったんですよね?本当に戻ってきてくれるんですか?」

 

「俺たちもそう願いたいよ!尤もこっちが全滅する前に来てくれればだけど。」

 

「そんなぁ・・・ハッ、ミサイル接近!!」

 

応援が来てくれる保証がないことにカズイは、弱音を吐きかけるもすぐに切り替えて報告を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を離れたところからクルーゼが双眼鏡で観察していた。

 

「生贄はユーラシアの部隊と足つきと言ったところか。強固な守りで立ち塞がるほどその奥の宝への期待は高まる。全く、相変わらず君の考えは面白いよ、『ジョージ』。」

 

彼は、笑いながらディンのコックピットへと乗り込んでOSを起動させると一旦母艦へと引き上げて行く。

 

「彼らには頑張ってもらわないとは。そうでなければ事はうまく運べない。我々の望んだ方へね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラスカ本部内では、ヴェノムと別れたムウがバイクを走らせながら外へと目指す。

 

「幸いまだ中に来た奴はクルーゼだけだったようだな。だが、アイツが乗り込んでこれたってことは他の連中が乗り込んでくるのも時間の問題だぞ。」

 

エレベーターの乗り、とりあえず一番近い外のゲートを目指す。主力がパナマへ行ったとは言え、アラスカの戦力はかなりのもので運が良ければ待機中の戦闘機が残っているかもしれない。

 

扉が開くと早速目の前で爆発が起こり、煙を振り払いながらもゲート外へと向かって行く。

 

「おい、なんなんだこの信号?」

 

「本部は放棄?そんな馬鹿な!?」

 

「司令本部とは連絡はつかないのか!?」

 

「クソ!誰か応答してくれ!!」

 

途中では、ヴェノムが送信したと思われる信号で困惑している兵士たちの姿もあった。

 

「第11防空隊は・・・・全滅!?第8、第10隊はどうした!?こっちも負傷兵で溢れてるんだぞ!!」

 

「おい、ここの指揮官は」

 

連絡を取っている指揮官と思われる人物に声をかけようとするが爆風で彼が吹き飛ばされる。外の方を見ると指揮官であるシグーがディン4機を引き連れてゲートから侵入してきていた。

 

「侵入経路、確保!ナチュラル共はこの先だ!!各機、俺に続け!!」

 

彼らは、中枢を向うことだけを考えているのか端に残されていた整備中のスピアヘッドと整備兵に目もくれず前進する。

 

それをありがたいとばかりにムウは、ヘタレた整備兵の元へと走って行く。

 

「おい、ここはもう撤退だ!基地は放棄される!!」

 

「あ、あぁ・・・・」

 

「ほら、しっかりしろ!!生き残った奴らを集めて早く脱出するんだ!最低でも基地から半径10キロ以上離れるんだぞ!無理そうなら今発信されている信号の指示に従え。いいか、これは命令だ!死にたくなかったら言うとおりにするんだ!!」

 

叫ぶと整備兵は、悲鳴を上げながらも味方に呼びかけるために走り去っていく。彼は、急いでヘルメットを被ってエンジンを始動させる。

 

「ったく、ヒーローなんて柄じゃねえってんのに。」

 

文句を言いつつもムウは、侵入してきたジンをミサイルで撃墜してゲートから外へ発進していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アラスカから脱出したサザーランド大佐一行は、潜水艦の中で来るべき時を待ちわびていた。

 

「第4ゲートが突破され、敵の侵入が開始しました。メインゲートが堕ちるのも時間の問題でしょう。」

 

「予定よりも侵攻が速いな。」

 

「できれば、8割ぐらいは喰い付いてもらいたいものですな。」

 

「シアーズ大統領からは?」

 

「予定の数に達したら起動。アラスカの壊滅はザフトが導入した新兵器によるものであると発表するとのことです。」

 

「ザフトもまさか、自分から地獄へ足を突っ込んでいるとは思いますまい。」

 

彼らは、テーブルの上に置かれている起動装置を見ながらアラスカの動向を窺うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バリアント、1番、2番沈黙!!」

 

「艦の損害率、30%を超えます!」

 

「イエルマーク、ヤルスマルク、轟沈!!」

 

「司令部とのコンタクトは!?」

 

「取れません!どのチャンネルも全部同じ電文で返って来るだけです!『各自、防衛線を維持しつつ臨機応変に応戦せよ』って!!』

 

奮闘し続けるアークエンジェルだったが味方は次々と轟沈し、損害が増える一方で徐々に艦内は不安と焦りが募ってきていた。

 

「艦長、指揮系統が分断されています!これでは・・・」

 

その間にもザフトは攻撃の手を緩めず、更に追い詰められていく。そこへスピアヘッドに搭乗したムウが近づいていた。

 

「よっしゃ!まだ、粘っててくれたみたいだな。」

 

スネークのストライクはないものの、アークエンジェルの中にはまだスカイグラスパーとアストレイが残されている。本部の方で回収されていなければすぐの乗りこんで安全圏に離脱するまでの間、応戦することができるはずだ。

 

そう思ったのも束の間、前のシグーの攻撃でスピアヘッドは機体下部を被弾。煙を吹きながら高度が落ちて行く。

 

「痛、やっちまったぁ。こちら、フラガ。アークエンジェル、応答せよ!アークエンジェル、応答せよ!!くそ、さっきの攻撃で通信系統がいかれちまった!」

 

仕方なく、ムウは落下しつつある機体を何とかコントロールして、アークエンジェルの右舷の穴からの着艦を試みる。

 

「友軍機、接近!被弾している模様!」

 

「エェ!?まさか、こちらに着艦しようとしているの!?」

 

「そんな無茶な!」

 

「整備班、どっかのバカが1機突っ込んでこようとしているわ!退避!!」

 

マリューは、急いでマードックたちと連絡を取って右舷のフライトデッキからの受け入れを急がせる。

 

こんな事態に突っ込んでくるとはどういう神経しているんだと彼らは、苛立ちながら機体が着艦するのを見届けると降りてきたのがムウで唖然とする。

 

「フ、フラガ少佐!?」

 

「おっと、悪いな。だけど、話は後にしてくれ!!」

 

ムウは、彼らに軽く詫びを入れるとすぐにブリッジの方へと乗り込み、全員を驚かせる。

 

「艦長!」

 

「少佐!?あ、貴方一体何を!?転属は?」

 

「俺のことはどうだっていい!それより、生き残っている友軍を連れて早くここから撤退だ!!」

 

「撤退って、」

 

「コイツはとんだ作戦だぜ。守備軍は一体どんな命令を受けてんだ!?」

 

「わ、私たちは本部を守るために各自防衛線を維持」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ザフトが続々と基地内部へと侵入していく中でヴェノムの発信した信号を信じた連合兵士たちが指定されたポイントへ向かって移動を開始していた。

 

得体の知れないこともあって完全に信用することはできないが先ほどから本部からの連絡がまともに取れないこともあってこのまま見殺しにされるのならばと賭けてみることにした。そして、そんな彼らを見過ごすほどザフトも甘くはない。

 

「ナチュラルの腰抜け共が、ノコノコ逃げようと言うのか!」

 

施設の破壊を行っていたジンが彼らに向かって銃を発砲しようと構える。車で移動していた連合兵士たちは見つかったことに恐怖する。

 

「モビルスーツに狙われているぞ!?」

 

「もっとスピードを出せ!!」

 

「無茶言うな、定員オーバーで走ってるんだ!これ以上のスピードなんかでねえよ!?」

 

引き金が今に引かれようとした瞬間、彼らの向かう先から飛んで来た光弾がコックピットに直撃してジンは、爆発する。振り向くとそこには105ダガーとストライクダガーの小隊、更に迷彩柄のディンやM1アストレイ等の混成部隊がザフトの迎撃を開始している姿があった。どの機体にも共通で左肩に犬にダイアモンドを模ったエンブレムが付いている。

 

『そこの連合兵、大丈夫か?』

 

105ダガーからパイロットの声が聞こえ、連合兵たちの安否を確認する。彼らが首を縦に振ると他のモビルスーツと共に迎撃しながら指を差す。

 

『すぐに向こうの港へ向え。もう、時間があまりない。死にたくなかったら急げ!!』

 

言われると連合兵士たちは、すぐに車を走らせて港へ直行する。

 

そこには同じエンブレムが付いたボズゴロフ級潜水艦などが停泊しており、護衛にグーンやゾノが付いていた。

 

「怪我人を優先させろ!」

 

「喧嘩すると余計に時間がかかる!文句言い合う暇があるならさっさと奥に行け!」

 

「一番艦、満員だ!!出すぞ!!」

 

「遅れたら、全員死ぬことになる!順番を乱すな!!」

 

連合でもザフトでもない兵士たちの誘導に彼らは、不安を感じるものの攻撃がどんどん激しくなっていることもあって渋々従って乗艦を始める。中は、既に先に収容された他の兵士たちで溢れかえっており、ベッドや椅子などには負傷兵を優先的に座らせたりしていた。

 

「三番艦、こっちにも満員になった。出港するぞ。」

 

『了解、後でマザーベースで合流しよう。アウト。』

 

限界まで乗せた艦は順に潜水を初め、護衛と共に悟られぬようにジョシュアからの撤退を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、よく聞いてくれ。本部の地下に『サイクロプス』が仕掛けられている。作動したら基地から半径10キロは溶鉱炉になるってサイズの代物だ!」

 

ムウから告げられた言葉にマリューたちは、戸惑いを隠せなかった。だが、更に追い打ちをかける様に残酷な事実を告げられる。

 

「薄々気づいているだろ?この戦力で防衛は不可能だ。パナマからの救援は間に合わない。やがて、押されて守備軍は全滅し、ゲートは突破され、本部は施設の破棄かねてサイクロプスを作動させてザフトの戦力の大半を奪う気なんだ!それが上層部のお偉いさん方が考えたこの戦闘のシナリオだ!!俺はこの目で見て来たんだ。司令本部はもぬけの殻、残って戦っているのはユーラシアの部隊とアークエンジェルのようにあっちの都合で斬り捨てられた奴らばかりさ!」

 

その一言に彼女は、これまで信じていた友軍が自分たちを騙して捨て駒にしたという現実に言葉を失う。それは他のクルーも同様だった。

 

「俺たちにここで死ねと?そういうことですか!?」

 

「撤退したことを悟られないように奮戦してな。」

 

「そんな!?」

 

特にミリアリアはかなりショックを受けており、トールを失ったトラウマもあって半泣き状態で口を開いた。

 

「・・・こういうのが作戦なの?戦争だから、私たち軍人だから・・・そう言われたら、そうやって死ななきゃいけないの?」

 

そんな彼女の顔を見てマリューは、斬り捨てた上層部への不信感とこれまでの理不尽な扱いに対して堪忍袋の緒が切れたのか、各方面で友軍がやられていく報告が伝えられる中、深刻な表情を浮かべながら重い決断を下す。

 

「ザフト軍を誘い込むことがこの作戦の目的だと言うのなら、本艦は既にその任を果たしたものと判断いたします。尚、これはアークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスの独断であり、乗員には一切この判断に責任はありません。」

 

「・・・そう気張るなって。」

 

状況もあってムウは、そんな彼女を気遣うように呟くがいつサイクロプスが作動してもおかしくない状況であり、すぐに行動を移さなければならない。

 

「本艦は、これより現戦闘海域を放棄・離脱します!僚艦に打電、『我ニ続ケ』!機関全速!」

 

マリューの指示が出るとノイマンはすぐに操舵を行い、他のメンバーも自分の持ち場へと戻る。

 

「脱出もかなり厳しいが諦めるな。俺も出る。」

 

「少佐。」

 

「心配しなさんな。忘れた?俺は不可能を可能にする男だってこと。」

 

ムウは、彼女を鼓舞すると急いで格納庫の方へと戻る。

 

乗り込んできたときは気づかなかったが、彼はモビルスーツがに新たに配備されたことに驚いた。

 

「斬り捨てる前提で新型4機も寄こすなんざどうするつもりだったのかね?上の連中は。」

 

本来なら飛行能力があるスカイグラスパーに乗るつもりだったが一番手前に待機している105ダガーを見てムウは、マードックに確認する。

 

「曹長、このストライクもどきは使えるのか?」

 

「連中がアストレイからコピーしたOSをインストールしてましたからすぐに出せますぜ!」

 

「よし、ストライカーパックで使えるのは?」

 

「エールも新しく補給してくれましたから3種類全部使えますよ!」

 

「なら、坊主がいつも使う感じのやつで頼む!後、アグニをケーブルで接続していつでも使えるようにしてくれ!まずは前方の敵を減らす。」

 

「気を付けてくださいよ、コイツは多少頑丈ですけどPS装甲じゃないんですから!」

 

彼は、ダガーのコックピットに乗り込んでシステムを起動させる。使用はアストレイと同じで自分でも問題なく動かせる。

 

『105ダガー、フラガ機は発進位置へ!ストライカーパックは、エールを装備します。更にコンボウェポンポッド、マイダスメッサー装備!!』

 

105ダガーは、アグニを手に取ると穴の開いた右舷のフライトデッキへと移動し、接近してくるディンやジンに向かって発砲する。

 

「メインゲートはもうくれてやるんだ!こっちは見逃してくれたっていいだろうが!!」

 

数発撃つとムウは、アグニ砲を置いて甲板の上へと移動、肩のコンボウェポンポッドとビームライフルで上空の部隊を撃ち落としていくがボズゴロフ級のミサイル攻撃で付いて来ていた味方艦が更に撃沈していく。

 

「後方よりデュエル!」

 

「「「えっ!?」」」

 

このタイミングで現れたことにマリューたちは、思わずギョッとする。当のイザークも因縁の相手が逃げようとしているとは考えてもおらず、この場にいない同僚たちの恨みを晴らすべく迫る。

 

「足つき!今日こそ、終わりだな!!」

 

早速とばかりにミサイルを連射してくるデュエルに対して、ムウは舌打ちをしながらも応戦をする。

 

「クソォ、こんな時に!」

 

彼も弾幕を張って相手を遠ざけようとするがグゥルをうまくコントロールして避けられてしまう。

 

「新型が!バスターとは違うんだよ!」

 

発射されるビームをシールドで何とか受け止めるものの、モビルスーツ戦闘の経験が乏しいムウにとってイザークは手強い相手であることには変わりない。その間にもアークエンジェルは、敵の猛攻にさらされる。

 

「艦長!」

 

「取り舵20、回り込んで!」

 

「10時の方向にモビルスーツ群!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボス、メインゲートが突破された!この調子だと作動までもう時間が残されていない。残念だが、救出は今乗せている奴らを最後に打ち切る!!』

 

「分かった。・・・カズ。お前、確かアークエンジェルは是非家に来てほしいって言っていたな?」

 

『うん?あぁ、確かにあの艦の火力は目を張るものだからな。ダイアモンドドッグズの母艦になってくれればこれほど心強いものは無い。だが、何故そんなことを聞く?』

 

カズと通信を行いながらヴェノムは、機体のコックピットからアークエンジェルを見ていた。

 

「なら、話は早いな。モルフォにランデブーゾーンを安全圏の無人島に変更するよう伝えてくれ。」

 

『ちょっと待て、ボス。アンタ、まさか・・・・』

 

「このままボロボロになったんじゃ修理が面倒になるだろうからな。堕ちないように加勢に行く。(イシュメール)が合流する前に沈んだら笑い者だ。」

 

その言葉にカズは、言葉を詰まらせてしばらく黙るが諦めが付いたのかため息をついて返答する。

 

『・・・負けたよ。いくらスネークが駆けつけても安全圏にまで到達できないほどにやられちゃ元も子もない。それに噂によれば艦長もべっぴんさんらしいからな。数が多いがボス、アークエンジェルの援護を頼む!』

 

「了解。」

 

承認をもらうとヴェノムは、OSを起動させてグゥルを浮上させる。全身をマントで覆った機体は、そのままアークエンジェルへと向かい、周囲にいた敵を増設で取り付けたミサイルポッドで殲滅していく。

 

「後方より、急接近する機体を確認!」

 

「タイプは!?」

 

「それが・・・・機種不明、周囲の敵を墜としながら本艦へ向かってきています!」

 

「どういうこと?」

 

突然姿を現した正体不明機にマリューたちが困惑する中、ヴェノムは撃ち切ったポッドをパージして身軽にするとデュエルに向かってライフルを発砲する。

 

「っつ!?なんだ、今度は!?」

 

ムウの相手をしていたイザークは一旦、艦から離れて標的をヴェノムに変更してミサイルとレールガンを一斉発射でグゥル諸共吹き飛ばす。

 

「フン、何も考えずに突っ込んでくるナチュラルの馬鹿が・・・・・!?」

 

しかし、爆炎の中から現れた機体を見て彼は、思わず目を見開く。機体は、全身を覆っていたマントが焼け落ちただけだった。だが、それよりも驚いたのは相手が自分と同じ機体(デュエル)であったことだ。

 

黒いデュエルは間合いに入るとCQCで右腕関節を外し、脚部の脛に装備されているアーマーシュナイダーで両足関節を破壊する。更に止めとばかりに離れるとバックパックに背負っていた350mmレールバズーカ『ゲイボルグ』で乗っていたグゥルを破壊し、そのままアークエンジェルの甲板へと着地した。

 

「なんなんだ?・・・・一体何が起こったんだ!?」

 

いきなり現れた同じ機体に抵抗することなく、墜とされた現実を受け入れられず、イザークは海中へと落ちて行くが近くにいた味方のディンに回収されたことで母艦に引き上げるのだった。

 

着地して来た黒いデュエルを目の前にムウは、思わずライフルを向けようとするが回線を開いてきた相手の顔を見て驚く。

 

「アンタはさっきのっ!?」

 

「アンタらにここで沈まれたら申し訳ないんでな。加勢させてもらおう。」

 

『少佐、彼は?』

 

「おっと、色々聞きたいことがあるだろうが話は後だ。今は、逃げるのが先だ。」

 

そう言うと彼は右肩の四連装ミサイルランチャーとビームライフルで上空のジンを撃ち落とす。それに続いてムウもまた攻撃を再開した。

 

『では、今は味方と判断しても構わないと?』

 

「あぁ、そうしてもらえると助かる。俺のことは『エイハブ』と呼んでくれればいい。」

 

『分かりました。では、エイハブ。少佐と共に本艦の援護をお願いします。』

 

ヴェノムも加わったことでムウの負担が少しばかり軽くなったがやはり一番目立っていることもあってアークエンジェルへの集中攻撃を緩むことはなかった。

 

「全く、メインゲートだけじゃなくてなんでこっちにも寄ってくるんだよ!」

 

「『砂漠の虎』を墜とせば、それだけ有名になって当然だ。」

 

「嫌なもんだねぇ、こんな風に有名人にされるのもさ!」

 

2人は初めての共闘にも拘らず、互いに背を任せて向かってくる敵を撃ち落としていく。しかし、そんな2機の攻撃での完全には捌き切れず、遂に一機のジンがアークエンジェルの懐に入り込み、ブリッジに向けてライフルを構える。

 

その絶体絶命の瞬間、ミリアリアは目を見開きながらこの場にいないトールとの思い出を走馬灯のように思い浮かべ、カズイはもう助からないとばかりに両手で頭を抱えて目を閉じた。

 

そして、マリューも今回ばかりは助からないと覚悟を決めるがライフルから火花が吹こうと瞬間、上空からのビームがジンの身体を貫き、爆散させた。

 

彼女たちは、一体何が起こったのかと前を見るとフリーダムが胸の排熱ダクトから排熱し、ウィングバインダ―を展開して艦を守るように降り立っていた。

 

「こちら、キラ・ヤマト。アークエンジェル、聞こえるか?」

 

「「キラ!?」」

 

「キラ君?」

 

謎の機体からの通信にミリアリアとカズイはすぐにスネークだと気づき、マリューはまさかの生存に目を丸くした。

 

「キラ、本当にお前なのか!?」

 

「あぁ、俺だ少佐。待たせたな。」

 

甲板にいたムウが本人なのかを確認しようとするとスネークは、笑いながら答える。再会を喜ぶのも束の間、スネークは自分の中で何かが無意識に割れたのを感じつつ、フリーダムのマルチロックオンシステムを使い、迫ってくるジンとディンたちに対して一斉射撃で撃破する。

 

「艦長、艦は大丈夫か?」

 

「え、えぇ・・・・でも、本部の地下にサイクロプスが・・・私たちは、囮に・・・作戦なの。知らなかったのよ!だから、もっと基地から離れなくては!」

 

状況もあってマリューは、やや支離滅裂気味に答える。スネークは、事前に基地内にサイクロプスが仕掛けられていることを知っているため、再びハイマットフルバーストを展開して、突破口を開く。

 

「了解した。俺が突破口を開く。アークエンジェルと生き残った艦はそこから脱出しろ!」

 

フリーダムは、周囲の敵を一掃しながら安全圏への脱出を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵の大半が内部へ侵入、そろそろですな。皆の衆、よろしいですかな?」

 

その頃、敵の大半が本部内部へと乗り込んだことを把握したサザーランド大佐一行がついにサイクロプスを起動させようとしていた。

 

「シアーズ閣下から許可も下りた。後は、我々がスイッチを押すだけ。」

 

彼らは、席に着いて持っていた安全キーを取り出して装置に差す。

 

「この犠牲により、戦争が早期終結へ向わんことを切に願う。」

 

「青き清浄なる世界のために。3、2、1・・・」

 

同時にキーが回される。

 

 

すると仕掛けてあったサイクロプスが起動。眩い閃光の後に雷が落ちたかの如き轟音が基地内部へと響き、手始めに内部に侵入していたザフト軍のモビルスーツ隊が爆散、ダイアモンドドッグズの信号を信じずに残った連合兵たちは一瞬の苦しみの後、肉体が風船のように膨らんで木っ端微塵となっていく。

 

その範囲は徐々に拡大していき、天変地異の如くアラスカ基地は崩壊していく。

 

「急げ!このままだと俺たちもおしまいだぞ!」

 

「分かってる!」

 

ギリギリまで救助活動を行っていたダイアモンドドッグズの潜水艦は巻き込まれる前に最大船速で崩壊していく地下水路を離脱し、安全圏へと離脱する。

 

異変を察知した外のザフト軍も急いで基地から離れるがそのほとんどが間に合わず、機体のほとんどが爆散して消滅する。

 

 

 

 

 

 

 

フリーダムが活路を開いたことでアークエンジェルは、何とか安全圏へと脱出。ひとまず近くの無人島へと上陸するとカズの連絡でヴェノムを迎えに来ていたモルフォの輸送機が待っていた。

 

「ボス、ご無事で!」

 

モルフォは、副操縦士に操縦を一旦任せてデュエルのコックピットから降りてきた彼の元へと行き敬礼する。

 

「色々注文を付けてすまなかったな。」

 

「いいえ、ボスの命令ですから。しかし、彼らですか?生き残ったのは。」

 

視線の先にはボロボロになったアークエンジェルと少し離れたところにフリーダムが着地している。

 

「あぁ、これからマザーベースに連れて行く。しばらく、休めないだろうな。」

 

「既に救出部隊が連れて来た連合兵士たちもいますからね。」

 

「彼らの安否は?」

 

「ミラー副司令によれば全艦、無事脱出できたそうです。残っていた連合兵たちはダメでしたが・・・」

 

「だが、それ以上に打撃を受けたのはザフトだ。恐らく、向こうも荒れるだろうな。」

 

ヴェノムは、電子シガーを口に咥えて口から煙を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全滅?全滅とはどういうことだ!?」

 

「そんな馬鹿な話ないだろう!」

 

「カーペンタリアは!?とにかく正確な情報を」

 

スピットブレイクの失敗を受けてプラント本国でも大荒れの事態となっていた。

 

命令で帰国したアスランは、到着して早々荒れている現場に戸惑いを感じつつも恩師であり、特務隊の隊長であるレイ・ユウキに会うことができた。

 

「お久しぶりです、ユウキ隊長。」

 

「アスラン・ザラ、会うのはアカデミー卒業以来だな。まさか、こんな時に戻ってくるとは。」

 

久しぶりに再会にも拘らず表情が曇っているユウキに彼は、ただ事ではないことを察する。

 

「この騒ぎは?」

 

「スピットブレイクが失敗したらしい。私もそうだがまだ詳細な情報が分からず、混乱しているんだ。全滅したと言う誤報まで流されているほどだ。」

 

「全滅!?」

 

「それともう一つ、我が軍の最新機がブルーコスモスのテロリストに強奪された。奴らがどこで情報を入手したかは不明だが一部ではクライン派の人間が流したという噂が囁かれている。」

 

「そんなまさか・・・・」

 

「私も信じられないのだが・・・襲撃を受けて保護されたクライン前議長、そして、君の婚約者だったラクス・クラインが失踪した。ザラ議長も疑わざるを得ないさ。」

 

「・・・・」

 

あまりのショックにアスランは、手に持っていたスーツケースをその場に落とした。

 

 

 




カセットテープ《新しい機体》

『ボス、アンタの新しい機体についてなんだが』

『新しい機体?別にシグーで十分だろう?』

『アンタは組織のトップなんだ。いつまでもシグーのままだと格好がつかない。』

『そうは言うが・・・家で開発は、まだできないだろう。』

『そこでだ。先日、アズラエル理事が俺たちに機体を提供してくれてな。ヘリオポリスで開発された機体の再生産機たちだ。』

『ヘリオポリスの奴と言えば、ザフトに強奪されたんじゃなかったのか?』

『実は、アラスカ本部で次期主力量産機のベースを決めるため事件前まで収集していた設計データを基に作られたんだ。』

『OSはどうした?』

『もちろん、ナチュラル用にはできていない。データ取りは、主に戦闘用コーディネーター「ソキウス」シリーズを用いたそうだ。』

『確か、ナチュラルに忠実になるよう調整された奴らだったな。』

『一部は薬漬けにされて人格が壊れた奴もいる。機体は、彼らの保護を兼ねての報酬だ。』

『随分と豪勢なものだな。』

『本来ならストライクをいじりたかったが、エリカにこっちに回してくれって言われちゃってな。代わりに設計が近いデュエルをベースにした。それがこの“コマンドデュエル”だ。』

『“コマンドデュエル”・・・ザフトのみたいに増加装甲も装備しているのか。』

『アーマーは、ラミネート装甲から通常の装甲を覆うように作ってある。ビーム兵器でもある程度耐えられる。また、PS装甲が高コストなことから量産機には不採用なることも見越してミサイルポッドなどの実体弾兵装を外付けできるオプションラックを機体各所に増設。CQC対応可能なアーマーシュナイダーも複数携帯できるぞ。』

『ほう、シグーと比べものにならない代物だな。』

『だろう?本当ならバスターやブリッツの装備も持たせられるようにしたかったんだが・・・・相性が合わなくてな。』

『欲張りはいけないな。』

『基本兵装は、ビームライフル、ビームサーベル、アーマーシュナイダー、ゲイボルグ、その他にもザフトの兵装も使い回せる。』

『そう言えば、この間回収したブリッツの右腕はどうした?』

『あれか?あれはこの間視察に来たロンド・サハク氏が買い取って行った。』

『大丈夫なのか?』

『まあ、トリケロスも解体してデータも回収した後だ。送られてきた機体が破損したときに使うか程度の扱いだったから丁度良かった。かなりの値で引き取ってくれたよ。』

『あの姉弟・・・何を考えているのか、分からないからな・・・・何もなければいいんだが。』
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