機動戦士ガンダムSEED SOLID   作:赤バンブル

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今回の話結構悩みました。

カセットテープは当初ニコルについてのものにする予定でしたが今回の話の事情で変更しました。


PHASE:22『正義の名のもとに』

「利用されたのはどうやら『サイクロプス』のようです。基地の地下のかなりの規模が・・・」

 

「クルーゼはどうした?巻き込まれたのか!?」

 

「いえ、まだコンタクトは取れていませんが無事との報告を受けています。」

 

「彼から詳細な報告を上げさせろ。」

 

スピットブレイクの失敗は、プラント本国に大きな衝撃を与えた。

 

本来、パナマを陥落させることで地上と月との繋がりを断ち、連合を地球に封じ込めて戦争の早期終結を狙ったはずの作戦がアラスカ本部を強襲した末に部隊の大半が全滅したと言う事実にカナーバを始めとする穏健派は黙っているはずもなく、計画を主導したパトリックに回答を求めるほどだった。

 

「ザラ議長、アイリーン・カナーバ以下数名の議員が事態の説明を求めて議場に詰め掛けております。臨時最高評議員会に召集を要請すると思われますが・・・」

 

「ハア、少し待て。ともかく残存の部隊をカーペンタリアに急がせろ!」

 

「ハッ!」

 

「今欲しいのは冷静かつ客観的な報告だ!クライン等の行方は?」

 

「まだです。屋敷は既にもぬけの殻でかなり周到にルートを用意していたようで思ったよりも時間がかかるかもしれません。」

 

「ムウゥ・・・司法局を動かせ。カナーバ等、クラインと親交の深かった議員は全て拘束だ!」

 

「拘束・・・ですか!?しかし」

 

「漏洩していたスピットブレイクの攻撃目標、身柄を保護された矢先の失踪。それだけではない、破棄処分を命じたはずのYMF-X000Aの横流しも含め、奴が手引きをしたと言う疑いがある!クラインが我らプラントを裏切っているのは明らかだ!なのに私を追求しようと言うのか、カナーバ等は!!奴らの方こそ、いや!奴らこそがあの親子を匿っているのだ!!そうとしか考えられん!」

 

「りょ、了解しました閣下!」

 

苛立っているパトリックの形相を見て部下たちは反対意見を言うことができず、その場から逃げる様に去って行く。少し前に入室したアスランは、そんな父に動揺しながらも彼らの退室を見送る。

 

「・・・父う、いやザラ議長閣下。」

 

「いつも通りでよい。待たせてすまなかったな、アスラン。」

 

「いいえ。しかし、私には信じられません。ラクスたちが裏切って逃走したなどと。そんな馬鹿なことが・・・・」

 

パトリックは、眉間を押さえながら手元のタブレットを操作してアスランに手渡す。

 

「これがフリーダム強奪時の映像だ。おそらく、強奪を担当したのはナチュラル共に飼いならされたコーディネーターだろう。それと同時にクラインは襲撃を受け、オセロットたちに保護された。だが、彼を監視から外して間もなく、あの親子は逃亡したのだ。それだけではない、奴は解体処分するはずだった重要機密であるYMF-X000A『ドレットノート』を何者かに横流しにしたと容疑がかけられていた。お前がなんと言おうがクラインが姿を晦ました以上、奴が黒なのは事実なのだ。」

 

「そんな・・・」

 

「まだ公表はしていないが最早ラクス・クラインはお前の婚約者ではない。父親と共に国家反逆罪で指名手配中の逃亡犯だ。アスラン、奪取されたZGMF-X10A『フリーダム』の奪還とパイロットの生け捕り、接触したと思われる人物、施設の全ての排除に当たれ。本来ならパイロットも始末したいところだがあの機体に搭載されている生体認証は登録した本人でなければ、セキュリティを解除することができん。ZGMF-X09A 『ジャスティス』の調整が間もなく完了する。受領次第、任務に就くのだ。奪還が不可能であるのならば、フリーダムを完全に破壊しても構わん。仕様については担当であるアマルフィに聞くといい。」

 

「接触した者と施設の全てをですか!?」

 

どう見ても表向きの任務ではないことにアスランは、驚愕するがパトリックの一言でさらにその重みを知ることになる。

 

「あの機体とジャスティスにはNジャマーキャンセラーが搭載されているのだ。あれが連合の手に渡れば、奴らは再び核を撃ってくるだろう。」

 

「Nジャマーキャンセラー!?何故そんな物を!プラントは全ての核を放棄すると仰っておられたではありませんか!!」

 

「必要になったのだ、あのエネルギーが。スピットブレイクで大打撃を受けた今、お前の任務はそれだけ重大なものとなっている。心してかかれ。」

 

「しかし、父上」

 

「失礼します、ザラ議長。」

 

重大なことに対して物申そうとしたところでユーリ・アマルフィが部屋に入って来た。

 

「来たか、ちょうどアスランにジャスティスのことについて話していたところだ。工房で直接説明してやってくれ。」

 

「分かりました。アスラン、構わないかな?」

 

「は、はあ・・・・」

 

納得いかないもののアスランは、流れでそのまま工房の方へと行かされてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェノムたちが見守る中、スネークはフリーダムから降りてアークエンジェル一行の目の前に歩いてきた。

 

パイロットスーツはザフトのものであるが間違いなく本物でマリューたちは、驚きながらも彼を出迎えた。

 

「改めて、待たせたな。みんな、無事そうで何よりだ。」

 

「キラ君・・・・本当にキラ君なのね?」

 

「おいおい・・・・俺が幽霊に見えるか、艦長?大丈夫だ、足はちゃんとついている。」

 

「キラ!」

 

「お前、一体どうして!?」

 

「ほんとに、本当に間違いないんだよな!?」

 

「よかったぁ、本当に生きててよかったよぉ~!」

 

ミリアリアを始めとするクルーたちは、取り囲むようにして喜んで受け入れた。スネークは、そんな彼らとの再会を喜びつつも再びマリューの方へと向き直る。

 

「再会して早々言う事じゃないが、やるべきことが多そうだな艦長。」

 

「えぇ、私たちもこれからのことも含めて色々話し合わなくちゃいけないわね。」

 

「キラ。お前、ザフトにいたのか?」

 

話し合う前にムウは、一足先にはっきりしたいことを確認する。

 

「あぁ。あの後、プラントに回収されて向こうで治療を受けた。だが、俺はザフトじゃない。それどころか、もう地球軍でもない。ただの兵士だ。」

 

ツッコミを入れたいところだが自分たちも既に脱走兵の立場のため、その場にいる全員が何とも言えない顔になった。

 

「分かったわ。とりあえず、話をしましょう。あの機体は、どうすればいいの?」

 

「整備や補給に関しては今のところは大丈夫だ。ただ、その前に約束してほしいことがある。あの機体、フリーダムの整備をする人間は俺に選ばせてほしい。アイツにはNジャマーキャンセラーと言うやばい代物が積んであるんでな。下手に手を出されたら困る。それともう一つ、データを取るのも禁止だ。それを守れないというなら俺はこの場から去って別の場所を探す。」

 

「お前、それ本気で言ってるのか?」

 

「少佐、今の俺は手つかずの核弾頭を持ち歩いているようなもんなんだ。もし、奪われたり、外部にデータが洩れるようなことがあれば核戦争の火蓋を開くことになる。それだけ重大な責任を背負っているんだ。」

 

「・・・・なるほどな。」

 

「分かりました。機体を整備する必要があったら、人選は貴方に任せます。いいわね?」

 

マリューが聞くと整備班はOKサインを出す。その中でマードックは、高確率で自分が任されるだろうなと思っているのか一人苦笑していた。

 

「悪いな、艦長。」

 

「話は一旦まとまったか?」

 

今まで黙っていたヴェノムが一行の前に近づいてくる。スネークは、その容姿に驚くものの悟られないように彼女たちに聞いた。

 

「艦長、この男は?」

 

「この人は『エイハブ』さん。彼の協力で私たちは貴方が来るまで持ちこたえることができたの。」

 

「そういう事だ、坊主。ところでアンタら、これからどうするんだ?まだ、決めていないんだろう。」

 

「えぇ。その前に艦の応急処置をする必要があります。話はブリッジの方で。」

 

「ほう、なら俺も一緒に来て構わないか?興味がある。」

 

彼の言葉にクルーたちは、互いに心配になる。助けてもらったとは言え、敵であったはずのデュエルに乗って現れた得体の知れない男だ。普通なら絶対に断る。

 

だが、少なくとも敵対する意思はないのは確かなのでマリューは特別に武装解除を条件にヴェノムの乗艦を許可することにした。

 

黒いデュエルは彼の部下であるモルフォの輸送機へと運ばれ、アークエンジェルの中でスネークは、スピットブレイクの詳細を聞く。

 

「なるほどな、ザフトは作戦開始直後にアラスカ本部へと目標を変更。だが、連合本部は何故かそのことを知っていてアークエンジェルを始めとする部隊を餌にしてサイクロプスで敵に壊滅的打撃を与えたと。」

 

「まあ、簡単に言えばそんなところだ。」

 

「私たちには作戦の詳細は何も知らされていなかったの。」

 

「地下にサイクロプスが仕掛けられたからに本部はかなり前に作戦のことを知ってだろうさ。そうでなきゃ、あんなことできるわけない。」

 

「プラントの方でも似たようなことになっていた。向こうの評議会では、飽くまで承認していたのはパナマを墜とすための作戦だった。それが直前でアラスカに変更されたらしい。」

 

「「・・・・」」

 

「ところでこれからのことについてだが、アークエンジェルはどうする?」

 

彼の問いにマリューたちは、返答に困った。

 

「どうって・・・」

 

「Nジャマーと地場の影響で今のところ通信は全く。」

 

「応急処置を済ませて自力でパナマまで行くんですか?」

 

ノイマンたちは、地球連合の一員としてパナマに向かった本隊と合流するべきか聞くがあまり現実的ではない。

 

「向こうの連中は歓迎してくれんのかねぇ?色々知っちゃった俺たちをさ。」

 

「命令なく戦列を離れた本艦は、敵前逃亡艦・・・と言う事になるでしょうね。」

 

見捨てられたとはいえ、最早自分たちに戻る場所がないことに彼女たちは、ひどく落ち込む。

 

「原隊に復帰しても軍法会議か。」

 

「また、罪状が追加されるわけねぇ。」

 

「なんだか、何のために戦っているのか分からなくなってくるわ。」

 

「どちらにしろこれから先、俺たちが相手をするのはザフトだけじゃない。連合からは脱走者の烙印を押されて追われることになる。生き残るためには慎重に動かなければならないな。」

 

スネークの一言にブリッジ全体が静まり返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦う理由なんて人それぞれだ。国のため、家族のため、仲間のため、金のため・・・・様々な理由がある。だが、時には理由も分からず、意味も知らず戦わされる奴もいる。連合にこの艦が生き残っているのがバレるのも時間の問題だ。今は、落ち着けるところを探すのが最優先だな。」

 

一旦、艦長室に戻った彼女は、一緒についてきたヴェノムの助言を聞いていた。得体の知れない男だが、経験は豊富なようで一言一言に深みがある。

 

「確かに今の俺たち、根無し草だからな。じゃあ、いっその事オーブにでも行くか?」

 

ムウは、そんな二人にコーヒーを出して提案する。

 

「オーブに?」

 

「ちょっと、もう軍に戻るって気分じゃないだろう?この艦に乗っているみんなもさ。」

 

「銃殺刑が確定しているようなものですもんね。」

 

「オーブに行くのは悪くない選択だ。だが、このまま直接向かうのはまずいんじゃないか?」

 

コーヒーを飲むヴェノムの言葉に彼は、少しムッとしたのか顔を顰める。

 

「それ、どういうことだよ?」

 

「このアークエンジェルは、ただでさえ目立つ艦だ。直行すれば、ザフトか連合に確実にみられる。それでオーブに行ったらどうなる?『中立国が脱走艦を匿っている』と言う名目で連合に侵攻されかねないぞ。奴ら、ザフトに大打撃を与えたのを機に地上から一掃しようと動き始めるはずだ。」

 

「そりゃ・・・・でも、他に選択しないだろう?」

 

「別に直接行くことだけが正解じゃない。仲介業者を通じて密航するという選択肢もある。ジャンク屋ギルドに傭兵組織、連合の最新鋭モビルスーツを代金にすればできなくもない。」

 

「確かにアークエンジェルごと匿ってもらうならその方がオーブにとってもリスクが低く抑えられるわね。けど、正規軍だった私たちにそんな伝手・・・・」

 

「ないよな。軍属だった俺たちにそんな」

 

「そうでもない。」

 

「「えっ?」」

 

マリューとムウは、思わずヴェノムのことを見る。彼は、電子シガーを吸いながらもう一言告げる。

 

「俺の仲間で仲介できる奴がいる。受けるかどうかはアンタら次第だけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランは、一人コンサート会場へと足を運んでいた。

 

ユーリからジャスティスの仕様の説明を聞いた後、彼はクライン邸へと向かうが屋敷は既に荒らされており、以前訪れた時との違いに動揺を隠せなかった。中庭を探索しているとどこからともなくボロボロになったピンクハロが姿を現し、飛び跳ねていた場所で咲いていた薔薇を見てここが思い浮かんだのだ。

 

会場は既に締まっており、誰もいないがホールの方へと向かって行くにつれて聞き覚えのある歌声が大きくなってくる。

 

右手に銃を持ち、ホールへと侵入するとそこではラクスがステージで歌っている姿があった。

 

彼女の姿を確認したアスランはステージへと近づき、ハロの電源を再起動させて返した。

 

「やはり、貴方が連れて来てくださいましたわね。アスラン。ありがとうございます。」

 

「ラクス、これはどういうことですか?」

 

「お聞きになったからここにいらしたのでは?」

 

「では、本当なのですか?貴方のお父上のこと、ブルーコスモスと繋がっていたことも!?」

 

ハロを見ながらラクスは、何か寂しそうな表情を浮かべながら答える。

 

「半分は本当で残りの半分は違います。確かに父が行ったことは全て事実です。しかし、私はブルーコスモスを手引きをしていません。すべてはキラにお渡しするためでした。彼に必要な剣を。」

 

死んだはずのスネークの名前が出てきたことにアスランは、驚愕するが彼女の言葉は続く。

 

「今のキラに必要で彼が持つのに相応しいから。」

 

「キラが・・・何を言っているんです!?キラは・・・・アイツは・・・・」

 

「貴方が殺しましたか?」

 

「!?」

 

「大丈夫です、彼は生きていますわ。」

 

「う、嘘だ!?一体どう言う企みなのです!?ラクス・クライン。そんな・・・馬鹿な話を・・・・アイツが・・・・アイツが生きているはずがない!!」

 

あの自爆から生き延びるはずがないと彼は、銃口をラクスに向ける。

 

「傷ついた彼をマルキオ様が私の元へお連れしました。キラは全て教えてくれました。地球で貴方がたと戦ったこと、仲間の一人を殺めてしまったこと・・・・そして、貴方と殺し合いをしたことも。」

 

「・・・・」

 

「私は軍人ではないので皆が何を信じて戦っているのかは分かりません。プラントなのか、それとも・・・貴方のお父上なのか。」

 

「それは・・・」

 

「キラは、自分の意思で自分のために戦うと仰っていました。ザフトも地球軍も関係ない、仲間を助けるためにと。」

 

ラクスは、ハロを抱えた手を震わせながらも話を続ける。

 

「アスラン、貴方が信じて戦うものは何ですか?頂いた勲章?お父様のめ、命令です、か?」

 

「ラクス?」

 

銃を構えていたアスランは、目の前の彼女が泣き始めていることに戸惑いを覚える。

 

「もし・・・そうであるならば・・・貴方は、再び彼の敵として戦うことになる・・・・・そして、わ、私も敵であるなら。」

 

「もういい。もうそこまでにしなさい、ラクス。」

 

第三者の声に彼女は、話を止める。振り向くといつの間にかシーゲルが背後に立っていた。

 

「クライン前議長。」

 

「こんな形でまた会うことになるとはな、アスラン。パトリックから私の罪状を聞いているだろう。あれは事実だ。」

 

「では、ブルーコスモスとスピットブレイク漏洩の件は?」

 

「あれは、私が仕組んだものではない。だが、スピットブレイクが失敗した今、パトリックは私たちを始めとする反発する者を恐れている。逃げ出さなくても何らかの理由を付けて消そうとしただろう。」

 

「そんな・・・」

 

「今の彼は戦争を早期終結へ向かわせるためではなく、如何にしてナチュラルを殲滅するかを考えている。それは、我々コーディネーターの存続どころか滅びへと導きかねない。」

 

彼は、複雑な表情を浮かべながらアスランに語る。

 

パトリックがナチュラルに対しての差別意識があったのは幼少の頃から知っていた。その思想がより過激になったのは、母であるレノアが「血のバレンタイン」で亡くなったのがきっかけでその憎悪は、日に日に彼を蝕んでいるのは目に見えて明らかだった。

 

「私は、早く気づくべきだった。レノア君が亡くなった時、パトリックにもっと親身に接していればここまで暴走することもなかった。最早、彼には目の前にいる相手がすべて敵としか見えていない。それが例え、実の息子である君であろうと。」

 

「馬鹿な、そんなことが・・・・」

 

シーゲルの言葉を否定しようとしたアスランだったが、パトリックの顔を浮かべると言葉が出なくなる。母のような犠牲者を出さないためにも自分もプラントのために戦いたいと志して、ザフトに入隊したが赤服に選ばれた時も、ヘリオポリスから査問会で呼び出された時も彼とやり取りは、親子とは程遠いものだった。寧ろ、他の部下と何ら変わらない他人のようにしか見えなかったのかもしれない。

 

「さて、アスラン。君がここに来たと言う事は既に追手が近くまで迫っているだろう。ここでみすみす私たちを取り逃がしてしまえば君の立場が危うくなる。私は、パトリックにどうされようが覚悟はできている。だが、ラクスは、あの娘を同じようにするわけにはいかない。」

 

「・・・・何を。」

 

「お待たせしました、シーゲル様。」

 

ホールの扉が開いたかと思えば、追手を倒したダコスタたちが入って来た。シーゲルは、倒れた追手の姿を見ると何かを悟ったようだった。

 

「全員、倒したのか?」

 

「はい。しかし、次の部隊が向かってきています。このままだとここを封鎖されるのも時間の問題かと。」

 

「そうか。では、頼む。」

 

「・・・・申し訳ありません。」

 

そう言うとダコスタは、何を考えたのか拳銃をシーゲルに向けて発砲した。

 

「ウッ!」

 

「クライン前議長!?」

 

「お父様!」

 

負傷した彼を見てアスランとラクスは、駆け寄ろうとするがシーゲル自身に制される。

 

「これも予定の内だ。君が私を撃ってここで拘束する。部隊が来て確認している間にラクスの逃げる時間を稼ぐ。パトリックも私自身を押さえてしまえば、君のことを疑うことはないだろう。」

 

「しかし・・・」

 

「これは、私なりのケジメでもある。『エイプリル・フール・クライシス』の時、NJの特性を良く知っておけば、許可を出さずにあのような事態を引き起こすこともなかった。私もパトリックと同じ罪人なのだ。」

 

「・・・・」

 

「アイシャはいるか?」

 

「はい、シーゲル様。ここに。」

 

シーゲルに呼ばれるとアイシャが近づいてきた。

 

「マルキオ導師の方は?」

 

「無事に地球へお立ちになりましたわ。」

 

「ラクスを頼む。予定通り、時期が来たら彼の元へ。」

 

「分かりました。さあ、ラクス様。私たちと共に。」

 

彼の頼みを引き受けると彼女は、ラクスの元へと駆けよって逃亡の準備を行う。

 

「お父様・・・・」

 

「ラクス、強く生きなさい。キラ君にまた会うために。」

 

「・・・・はい。」

 

ラクスは、涙をこらえながらアイシャたちと共にその場を去ろうとする。

 

「アスラン、キラは地球にいます。もし、貴方に意思があるのならお会いになってください。友達として。」

 

「・・・ラクス。」

 

アスランは、ただ茫然と彼女たちが去るのを見届けることしかできなかった。

 

 

 

 

その後、オセロットが率いる増援が現場に到着。

 

負傷したシーゲルを連行し、アスランはこの件でパトリックに称賛されることとなった。

 

当の本人は、戸惑いながらも今後シーゲルをどうするのかを聞いてみたが現在、地上での対応と今後の方針を検討しなければいけないため、尋問はしばらく行わないと言う事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

応急処置を終えたアークエンジェルは、モルフォの輸送機に先導してもらって太平洋のど真ん中を航行していた。

 

オーブへのリスクを考えた末、マリューたちはヴェノムの提案を受け入れて彼らの拠点へと向かうことを決める。

 

幸い、アラスカの一件で連合並びにザフトの警備網が緩くなったこともあって彼らは発見されることなく、進むことができた。

 

「この信号を送信してくれ。そうすれば、受け入れてもらえる。」

 

ヴェノムは、カード端末をミリアリアに手渡して彼女に送信を頼む。しばらくすると艦を囲むようにディンやグーンが姿を現し始める。

 

「周囲にグーン、ゾノ、ディン複数を確認。更に戦闘ヘリも。」

 

彼らが攻撃してくるのではとクルーたちが不安になるがここまで来たら引き返すことはできない。

 

『まもなく、マザーベースです。』

 

目の前に大型の洋上プラント基地が見えてくる。甲板の上にはジンなどの他にダガー系の姿もある。ザフトと連合の機体が見えることにマリューたちは、どうなっているのかと困惑していると司令塔から通信が入る。

 

『こちら、「ダイアモンド・ドッグズ」管轄第二マザーベースだ。旗艦の所属は?』

 

「こちら、元地球連合軍アラスカ守備軍所属艦『アークエンジェル』。本基地への入港を許可していただきたい。」

 

マリューは、見知らぬ相手に対して緊張しながらも返答する。まさかの太平洋のど真ん中近く、それもオーブからそんな遠くではないところにこんな基地があるとは誰が信じるだろうか。

 

『信号は確認した。今から修理ドッグへ移動してくれ。尚、交渉は艦長を始めこちらが指名したメンバーに来てもらう。』

 

「了解しました。受け入れ感謝します。」

 

アークエンジェルは、誘導される形でドッグがある修理プラットフォームへと移動し、収艦される。

 

受け入れが終わるとマリューは、パイロットであるスネークとムウ、操舵士であるノイマンと整備主任のマードックを連れて迎えに来た兵士たちの元へと行く。兵士たちはヴェノムの姿を見るなり、驚きつつも敬礼する。

 

「お疲れ様です、ボス!」

 

「「ご苦労様でした!!」」

 

「お帰りなさい、ボス!」

 

彼らの対応に彼女たちは、思わずヴェノムを見た。

 

「ボスって・・・・貴方は」

 

「まあ、指揮をしているのは俺と言うよりもここの副司令だ。あまり、気にしないでくれ。」

 

「気にするなって・・・俺たちもしかして填められた?」

 

ムウは、思わず苦笑してしまう。そんな彼の肩を叩きながらヴェノムは先導するように歩く。

 

「ようこそ、『天国の外(アウター・ヘブン)』へ。」

 

 

 




カセットテープ《BIGBOSS》

『フウ・・・・』

『隣、いいか?』

『うん、あぁ。構わない。』

『・・・・』

『・・・・』

『・・・・アンタなんだろ、イシュメール。』

『・・・久しぶりだな、エイハブ。最後に会話したのは「アウターヘブン」が陥落した時以来だな。』

『また、アンタに会える日が来るとは思わなかった。』

『俺もだ。まさか、前の俺の顔そっくりだとはな。それは整形か?』

『悪いが生まれつきだ。尤も傷は去年のユニウスセブンで負ったものだがな。』

『「血のバレンタイン」か。友人の母親も同じ場所で死んだ。』

『カズの嫁さんもその中にいたらしい。俺は、たまたまスーツで宇宙に放り出されて助かった。』

『そうか・・・それで今は彼とまた民間軍事組織を結成しているのか。』

『あぁ。この世界はかつての冷戦どころか第二次世界大戦の時よりもひどい。遺伝子操作をしたかしないかで優劣を決め、互いに憎しみ合い、殺し合う。』

『それで抑止力となる組織を作り始めたという訳か。相変わらずのビジネスマンだな、カズは。』

『彼だけじゃない。みんな、アンタが現れることを信じていた。』

『それでアークエンジェルを助けて俺も参加させる魂胆か?悪いが』

『カズはそうは思っていない。あの人(ザ・ボス)の遺志を理解した以上、もう俺たちと一緒にやってくれないだろうって。』

『・・・・』

『オセロットから端末を受け取っただろう?』

『これのことか?』

『アンタから艦長に渡すと不自然だろう。俺の方から渡す。』

『確かにそうだな、分かった。任せる。お前の方はどうなんだ?』

『俺は・・・・できるならもう一度共に歩みたいと思っている。アンタが応じてくれるならな。』

『正直、すぐには出せない。確かに冷戦とは違い、この世界には均衡を保つための抑止力となるものが必要だ。だが、それが武装組織であるべきなのかはまだ分からない。』

『そう思うなら構わない。カズの方も無理は言わないさ。艦長たちは、マザーベースに行く意思を固めているようだ。俺も乗艦させてもらう。』

『そうか。言っておくが俺たちの関係は内密に頼む。話しても混乱するだけだからな。』

『了解。久々にアンタと話せて楽しかったよ、イシュメール。・・・いや、BIGBOSS(ビッグ・ボス)。』
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