C.E.71 5月29日
『地球統一連合軍』は、最初の課題としてパナマのマスドライバーを失ったことによる月基地の孤立問題ついて議論することになる。月基地は地球連合にとって数少ない宇宙拠点であり、将来実行するであろうプラントへの反攻作戦のためには大規模な戦力を集結させる必要がある。パナマ基地の復旧が開始されることは決定したがマスドライバーが使用可能になるまで最短でも2か月以上かかる。
そのためユーラシア、アジア共和国側から、復興の目途が付くまでの間にビクトリア基地を奪還することが提案された。幸い、アラスカ・パナマでの交戦でザフトの戦力は著しく落ちている。各国の生産ラインでストライクダガーを始めとするMSの量産が進められていることもあって他の代表もその案に賛成するがトップであるジョージ・シアーズは反対こそしないものの別案を掲げる。
「確かに今の我々の戦力ならば、ビクトリアの奪還は難しくないだろう。だが、諸君はオーブの『カグヤ』を忘れていないかね?」
「シアーズ閣下、我らもそのことは存じております。ですが、あの頑固者のウズミ・ナラ・アスハは、こちらの再三送っている勧告に対して頑なに首を縦に振ろうとしません。下手に武力行使をしようとすれば加盟を検討している他の中立国に悪印象を与えることになります。」
「ふむぅ。確かにただの武力行使ならその通りだ。しかし、考えて見たまえ。我々は地球に生きる者として一致団結しようとしている。そんな中、協力しないオーブを放っておけばどうなる?中立だと放置しておけば他の国との示しがつかなくなる。諸君の言う通り、そのまま攻めたのでは印象が良くないのは確かだ。そこで私が自らオーブと交渉を行おうと思う。」
「閣下自らが!?」
彼の一言にその場にいる全員が呆然とする。
「諸君らにはパナマの復興とビクトリア奪還に専念して欲しい。うまくいけば、2つのマスドライバーを手にすることができる。それにもし、オーブが武力を以て抵抗すると言うのなら却って都合がいい。加盟を躊躇っている他の中立国への見せしめにもなるからな。」
結局、この日の会議で彼らは『ビクトリア基地の奪還』、他の中立の立場を取るスカンジナビア共和国、赤道連合等に対して『ワン・アース』アピールによる再度の一時加盟を求めることが決議され、オーブ侵攻の話は一旦保留となった。
一方のオーブ側もただ沈黙しているわけではなく、同じ中立国などを通じてアラスカで使用されたサイクロプスの件を暴露し、大西洋連邦の非道さを訴えるなど対抗していたがこれに対してあれは基地の自爆によって起こったもので守備隊が最後まで交戦した末に基地司令の判断で実行されたと発表したことであまり効果を得られなかった。
それから2週間が過ぎようとしていた頃、老人は自分の所有する山荘で山を眺めながら久しぶりに一人で紅茶を嗜んでいた。少し前に10年近く会っていなかった孫娘と婚約者の少年に手ほどきをし終えて密かにオーブを発ち、ようやく落ち着いたところだった。
そこへ一本の連絡が入る。
「はい。」
『お久しぶりです、先生。』
聞き覚えのある声に老人は、懐かしいと感じると同時に何か起こったことを悟る。
「君か、アズラエル。私に連絡を寄こしてきたと言う事は・・・どうやら、事が大きく動いたようだな。」
『貴方が予想していた通り本日、統一連合軍はオーブへの侵攻を正式に決定しました。既にシアーズ大統領を乗せた第一陣が太平洋を南下、オーブに対しアスハ代表の辞任を始めとするいくつか要求を突きつけ、72時間以内に応えない場合はザフト支援国とみなして武力を以て対峙すると。』
「ふむう・・・だが、ウズミ・ナラ・アスハは断固として要求を呑まないだろう。」
『えぇ、既にスカンジナビア共和国、赤道連合も連合の傘下に下りました。最早、攻撃しようが世間でシアーズ大統領を叩く者はいないでしょう。寧ろ、「再三に渡る勧告を無視したオーブが悪い」と。』
老人はカップに入った紅茶を飲み、これからのことを考える。
「戦力の規模を考えれば持って数日が限度と言ったところだな。その間にモルゲンレーテの主要施設、マスドライバーを破壊すれば、連合の宇宙進出はある程度遅らせられる。少なくとも彼らがオーブ軍残党と脱出して次の行動に移すまでの時間稼ぎぐらいにはなるだろう。」
『私もできるだけバックアップをさせてもらいますが、彼に目を付けられる可能性があるもので・・・・あまり目立った行動はできません。如何せん、父に無理やり押し付けられた地位でもあるので。』
「君のお父上は彼を恐れて無理やり盟主の座を引き継がせたからね。正直、危ない橋を渡らせてすまないと思ってるよ。」
『いえ、私も過激派の思想には嫌気が差していますから。幼き日に貴方と出会わず、両親と同じタイプの人間になっていたかもしれないと考えるとゾッとします。できれば、妻と子供に悪影響が出る前に縁を切りたいところですが・・・あの男がいるうちは無理でしょうね。』
「君には引き続き彼の動向を見張っててほしい。私も近いうち宇宙へ上がる。」
『宇宙へ?どちらへ向かわれるのですか?』
アズラエルの問いに対し、彼は紅茶を飲み終えて答える。
「
同時刻、地球連合統一軍は、オーブに対して最終通告とも言える要求を突きつけた。
一つはウズミ代表を始めとする現政権の即時退陣。
二つ目は、国軍の武装解除・解体。
更には72時間以内に要求が通らなければ武力を以て対峙すると言ったものだった。
この要求に対し、ウズミは険しい表情を浮かべる。
「とうとう本性を露にしたか、ジョージ・シアーズ。どうあっても世界を二分にしたいか!敵か、味方かと。そして、オーブのその理念と法を捨てさせ、命じられるままに与えられた敵と戦う国となれと!!連合と組めば、プラントは敵に。プラントと組めば、連合は敵。例え要求を呑み、今日の争いを避けられたとしても明日はパナマの二の舞ぞ!!陣営を定めれば、どのみち戦火は免れぬ!」
彼の言葉に対し、集められた首脳陣の中で不満に思う者もいたが、誰一人要求を呑もうと提案する者はいなかった。
ただ、こうしている間にも連合艦隊が本国に南下しつつあるため、彼らは国民への報道・避難命令の準備に合わせ、マリューたちアークエンジェル組に事態を伝えることにした。
「スネーク、アンタのフリーダムの右腕部側面とシールドの内側にアーマーシュナイダーを収納することができるアタッチメントを増設しといた。右腕部のカバーは、刃と同じく耐ビームコーティングを施しているからビームサーベルの攻撃に対して籠手として使うことができる。不要と判断した場合は戦闘中にパージすることも可能だ。」
M1アストレイの調整、フリーダムとストライクの整備を行っていたスネークは、葉巻を吸いながらカズの話を聞いているところだった。人がいる場所でやると怪しまれると考え、人気のない喫煙スペースを利用して打ち合わせをしていた。
「ありがたい。ビームサーベルをナイフの代わりにすると出力の調整で時間がかかるからな。場合によってはストライクかアストレイを乗り換えてやっていこうか考えていたところだったから助かる。」
「諜報員からの情報で連合艦隊がこっちに向かってきている。ウズミ代表は、迎え撃つつもりだが・・・・正直、数が尋常じゃない。地球上、世界中が島国一つに対して全力で来るようなものだからな。」
世界を敵に回すと言う事がどれだけ恐ろしいのか、2人は良く知っている。
かつて、ピースウォーカー事件で自分たちが作りあげた
尤も傭兵部隊約300人と核弾頭1発だったMSFとオーブを比較してしまうのはなんだが。
そうしている間に、マリューがクルー全員に格納庫へ集合するよう命令が出る。
全員が集まると彼女は連合艦隊がオーブへ向かってきていること、中立の立場を貫こうとするオーブは外交を通じて戦闘を回避しようとしているが可能性は極めて低いことを告げる。
「これを機に艦を離れようと思う者は、今より速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従って避難してください。・・・・こんな、私のような頼りない艦長にここまで付いて来てくれて・・・ありがとう。」
話が終わるとクルーの中でどうするべきか話し合いが起き、残る者と退艦する者とで分かれて行く。
カズイもまた、悩んだ末に退艦することを選択した。
「降りるんだな、カズイ。」
「トールは降りないの?墜とされてあんな思いしたのに。」
見送りに来たトールに対して、彼は不安を隠しきれずに聞く。実際、自分はブリッジにいたのに対して彼は少ないとはいえ前線に出ていた。それ故に墜とされた時の恐怖で乗るのが怖くならないのかと気になっていたのだ。
「俺は残るよ。攻撃されるのは
「そう。あっ、ミリィは降りるよね?女の子なんだし・・・。」
「私も残るわよ。」
そこへ遅れてミリアリアが来た。しかし、連れてきた二人を見て彼らは驚く。
「さ、サイ!?それにフレイも。」
「ど、どうしたんだよ二人とも?オーブの軍服なんか着ちゃって。」
状況が呑み込めないトールに対して、サイは苦笑しながら答える。
「連合がオーブへ攻めてくるんだろ?だったら、一人でも人手が必要だからな。」
「そりゃあ、そうだけど・・・・フレイまで。」
「何よ!確かに頼りないかもしれないけど、私もみんなと同じ気持ちよ。」
オーブ軍の制服のため、違和感はあるもののどうやら2人ともアークエンジェルの追加クルーとして配属されたようだ。
「前の制服、残ってなかったからこの格好だけどやることは同じだよ。また、よろしく。」
「私もミリアリアと同じ制服にしたかったんだけどなぁ・・・でも、オーブ軍のも似合うでしょ?」
「お洒落じゃないんだからね。私たち、戦争するんだから。」
呆れた顔をするミリアリアたちを見ているうちに決心したはずのカズイは、自分も残るべきではないかとまた悩み始めた。
「・・・・俺もやっぱり残ろうかな。」
「「「えっ?」」」
「皆こうやって集まっているのに・・・俺一人だけ降りるってなんだからさ。」
「どうしたんだよ、今回逃したらまた降りれなくなっちゃうぞ?」
「でも・・・」
「どうした?こんなに集まって。」
迷っているところでスネークがカガリと共にやってくる。大勢集まったことで彼は、余計に気まずく感じた。
「キラ!」
「フレイ!?サイも。お前たち、まさか」
「俺たちも一緒に戦うことにしたんだ。降りる人もいるんだし、人手いるだろう?」
「それはいいが・・・・始まったら、後戻りできないぞ?」
「分かってるわよ。でも、キラたちが一生懸命戦うんだもん。私たちも手伝えることがあるならサポートさせてちょうだい。」
「フレイ・・・・・」
二人の意思が固いことを察してスネークは、これ以上何も言わないことにする。
「フレイまで言うなら尚更残った方がいいかな。」
「カズイ、俺たちは自分で決めた事なんだし、気にするなよ。」
「けど、俺だけ降りるとなんか卑怯者みたいな気がして・・・確かにみんなと比べてできることあまりないけどさ」
カズイは、周りと比べて自分はあまりできることがないと感じていたことを告白する。そんな彼に対してスネークは肩に手を置き、否定するように首を横にする。
「お前は十分すぎるほど頑張ってくれたよ、カズイ。ミリィやアークエンジェルのことも。俺がいない間も逃げずにベストを尽くしてくれた。でも、両親のことも心配なんだろ?」
「う、うん・・・」
「元々、早く家族にところへ戻りたかったのを我慢してここまで付き合ってくれたんだ。ありがとな、カズイ。だから、今度はお袋さんたちの傍にいてやれ。」
「キラ・・・・」
コーディネーターだからと無意識に遠い存在のように感じていた彼が自分のことをよく見てくれていたことにカズイは内心驚きつつも改めて友人であることに感謝した。
「俺、自分にできることをやるよ。親のところに行っても。」
「あぁ、それがいい。戦争終わったらまた会おう。全員で乾杯できるようにな。」
「うん、ありがとう。」
彼は、スネークたちと別れの握手を交わすと荷物を持ってアークエンジェルから降りて行った。
降りる選択を取ったクルーたちを見送った後、マリューはブリッジで考え事に耽っていた。
ヘリオポリス脱出からここまで半年近くで技術者であった自分が艦長をすることになり、味方に斬り捨てられて亡命し、今度は裏切られたかつての友軍と戦おうとしている。
こんなことが起こるとはあの頃、想像もできなかっただろう。
「なに黄昏れてんの?艦長さんが。」
これから先の不安を感じているとムウが気を遣うように声をかけて来た。
「少佐。」
「結局、退艦は11名。みんなすごいじゃないの。ジョシュアの件がよっぽど頭にきたのかね。」
予想よりも艦から降りた人間が少ないことに感心している彼に対し、マリューは今まで気になっていたことを聞く。
「少佐・・・・こんな時に聞くことじゃありませんが貴方はどうして戻ってらしたんですか?ジョシュアで。」
「えっ、今更?聞かれるとは、思わなかったぜ。」
そう言うとムウは、突如彼女を抱き寄せてその唇を奪った。マリューは、彼の行動に混乱。顔を赤くして離れた。
「わ、私は・・・モビルアーマー乗りは嫌いです!」
「あっ、そう?でも、今はモビルスーツのパイロットだから大丈夫だな。」
「・・・・」
その言葉で何も言い返せなかったものの転属で一度艦を離れた時に感じた感覚の正体をようやく理解できたのは彼女は、そのまま再度二度目の口づけをするのだった。
少し遅れてブリッジに上がって来たノイマンたちに見られていたことを知らず。
統一連合軍によるオーブ侵攻が迫っていることは、地上に戻ってきていたマルキオ導師の元にも届いていた。
自宅である教会で彼は、そのニュースをヴェノムとアスランと共に見ていた。
アスランは、フリーダム奪還の任務のために受領されたジャスティスで壊滅したアラスカを訪問後にこの島に立ち寄った際に海岸で待機していたコマンドデュエルを見に来ていた彼らと遭遇。ヴェノムに関しては、かつて自分が救助した子供の様子を見に来ていたところだった。
「どうやら避けられぬようですね。オーブと地球軍の戦闘は。人はたやすく敵となる。」
マルキオ導師は、盲目でありながら複雑な表情を浮かべる。敵対しているわけではないオーブに進攻しようとする現実にアスランは、動揺を隠せなかった。
「何故、オーブと地球軍が・・・・」
「目的のためなら手段は問わない。時に人間は、獣のように野蛮になる。奴らもウズミ前代表の対応に業を煮やしたんだろうな。」
「エイハブ。」
そんな中、彼に警戒していた子供のうち一人の少年がしかめっ面で足に蹴りを入れて来た。
「ザフトなんて俺が大きくなったらやっつけてやる!」
「これ!」
その行動に対してマルキオ導師は、注意をするが少年は構わずヴェノムの方へと行く。
「ボス!大きくなったら俺もボスの仲間に入れてよ!」
「ほう、それは構わないが・・・・俺は、お前に戦ってほしくて助けたわけじゃない。死んだ親父さんやお袋さんもそう望まなかったはずだ。」
彼は、少年の目を見ながら落ち着かせるように話す。
「でも、悔しいよ!ザフトのいいようにやられて!母さんたちも・・・・」
「そう思うことも大事なことだ。だが、お前は小さい。戦おうとすること以外に学ぶべきことも多いはずだ。まず、導師の下でそれが何なのかを学べ。大きくなってそれでも考えが変わらなかったらまた考えてやる。できるな?」
「う、うん・・・・」
ヴェノムにとって彼の姿は、かつて一人の兵士になろうと背伸びして何も果たせないままヘリの墜落で死んだチコと重なっていたこともあるのかもしれない。
彼は、少年にそう諭すとマルキオと小言で少し話をして教会を後にした。アスランも続くように出て行く。
「すまないな。アイツはカーペンタリア制圧戦で両親を目の前で殺されたんだ。俺が助け出した時、亡骸の前で泣いていたのは今でも覚えている。」
「・・・いえ、俺も情報ぐらいしか知らなかったので。」
二人は、機体の前まで来る。
「俺は、自分の拠点に引き上げる。これからのことに備えなければならないんでな。お前はどうする?」
「・・・・自分には任務があるので。ひとまず、オーブへ向かいます。」
「そうか。だが、間もなく連合の攻撃が始まる。気を付けろよ。」
「はい。」
アスランは、ジャスティスを発進させて島から離脱する。その後ろ姿を確認するとヴェノムもコマンドデュエルを起動させ、グゥルでマザーベースへと引き上げて行くのだった。
72時間後。
地球統一連合軍の艦隊はオーブ近海へと到達、臨戦態勢へと入っていた。
「『要求は不当な物であり、従うことはできない。オーブ連合首長国は、今後も中立を貫く意思に変わりはない。』、か。ウズミ・ナラ・アスハ、政治家と言うより思想家と言ったところだな。それだけでは、国民は守って行けんよ。」
オーブからの返答に対し、シアーズは苦笑を浮かべながら皮肉る。同時に予定時間となった。
「閣下、お時間になりました。」
「うむ。」
彼は、最後の通告とばかりにオーブ軍に対して通信を入れる。
『オーブ連合首長国並びに前代表であるウズミ・ナラ・アスハに告ぐ。私は、地球統一連合軍ジョージ・シアーズである。我らの要求を受け入れなかったことで貴国はこれよりザフト支援国と見なし、攻撃を開始することになる。これが最後の通告だ。オーブ軍は速やかに武装解除し、投降せよ。』
連合軍最後の通告に対しても解答は変わりなかった。残念に感じながらもシアーズは、全軍に攻撃開始の指示を出し、艦船からミサイル一斉発射と同時に次々とスカイグラスパーを始めとする航空戦力、ストライクダガーを中心とするモビルスーツ部隊が発進して行った。
対するオーブ軍もM1アストレイを中心とする部隊を展開、アークエンジェルも前線に出て迎撃を開始する。
「フリーダム、キラ・ヤマト発進する!!」
カタパルトが開くとスネークのフリーダムが先方とばかりに出撃する。続いてムウの乗るストライクとトールのストライク2号機がそれぞれストライカーパックを装備して前に出る。
『ストライク1号機、フラガ機発進どうぞ!』
「ムウ・ラ・フラガ。ストライク、出るぞ!!」
これまでと違い、3種類のストライカーパックを全部載せしたマルチプルアサルトストライカーで発進する1号機。
『ストライク2号機、ケーニヒ機どうぞ・・・・・気を付けてね。』
「あぁ、ストライク2号機発進します!」
ミリアリアに返事するとトールは、エールにコンボウェポンポッド、マイダスメッサーを装備させた状態で発進する。出撃すると3機はそれぞれ別の配置につき、フリーダムは領海で攻撃をしている連合艦、ストライク2機はオーブ本土の防衛へと付いた。
モビルスーツでの実践が乏しいもののムウは、シュベルトゲベールとアグニ砲をうまく使い分けて多数のストライクダガーを撃破。対するトールもM1アストレイの部隊と共に確実に敵を墜としていった。
「前線のストライクダガーの消耗が激しくなっています!更に空中を飛ぶモビルスーツの砲撃による艦船の被害が!!」
「オーブ領海にオーブの物ではない艦船を確認!『アークエンジェル』です!」
後方で控えていたシアーズは、報告を聞くと席をゆっくりと立つ。
「どうやら、敵の抵抗は予想以上のようだ。」
「前線の部隊から増援の要請が出ております。」
「ふむ、彼らの準備は?」
「既に機体の前で待機しています。後は『γ-グリフェプタン』を与えればすぐに出られます。」
彼は、格納庫へと向かうとパイロットスーツに着替えている3人の少年が薬を受け取ろうとしていた。
「『我が息子達』よ。準備はできたかな?」
声をかけると3人は、先ほどまでの不愛想な表情から一変して幼い子供のように駆け寄って来た。
「パパ!言われたもの以外全部ぶっ壊していいんだよね!!」
「あぁ、いいともシャニ。あのモルゲンレーテの施設とマスドライバー以外は好きなだけ壊して構わん。」
「やったらいつもみたいに『ご褒美』もらえるんだよね!?」
「そうだ、クロト。一番多く倒せたらまた新しいゲームを買ってあげよう。」
「じゃあ、僕が一番だ!僕が一番墜としちゃうもんね!!」
「うっせーぞ、お前ら!親父から褒美をもらうのは俺だ!!」
「なに!?」
「オルガうっざ。」
彼らは、出撃前に喧嘩しかけるがシアーズに優しく制され、それぞれ薬を手渡される。
「喧嘩するのはいかんぞ?お前たち3人でオーブのモビルスーツをたくさん墜とせば全員にあげよう。だが、喧嘩して倒せなかったらご褒美はなしだ。後で私も出る。それまでにどれだけ墜とせるかな?」
そう言われると3人は、喧嘩をやめて薬を一気飲みし、それぞれの機体に乗り込む。
「『フォビドゥン』『カラミティ』『レイダー』出撃準備完了です。」
「では、健闘を祈るぞ。息子達よ。」
艦の側面が開き、3機のモビルスーツが発進する。
《ディアッカとミリアリアたちの盗聴》
『お前らか。尋問?それとも移送?』
『えっと・・・・ディアッカだったよな。悪い、この艦また戦闘に出るんだ。』
『はっ?どういうことだよ?』
『オーブに地球軍が攻めてくるの。だから、アンタもうここに入ってなくていいって。釈放。』
『ちょっ、ちょっと待てよ!?』
『どうした?』
『なんでお前らが地球軍と戦うんだよ?』
『オーブが地球軍の味方をしないからよ。』
『ハア?なんだそりゃ?お前らナチュラルって、揃いに揃って馬鹿?』
『悪かったわね。でも、攻撃が始まったら大混乱だし、シェルターに逃げるならまだ時間があるから悪いけど後は自分で何とかして。』
『そう言われたってよぉ・・・・・あっ、バスターはどうしたんだよ?バスターは?』
『あれは元々こっち側の物だぜ。さっき、モルゲンレーテのエリカ主任たちが持ってってたよ。』
『げっ、マジか・・・。』
『こんなことになっちゃってごめんね。この間のことも。』
『・・・・・お前らも戦うのか?』
『私はアークエンジェルのCIC担当、トールはモビルスーツパイロットよ。それにオーブは私たちの国だし・・・・逃げるわけにはいかないの。』
『・・・・』
『じゃあ、俺たちも準備があるから。・・・あっ、これ二コルとジョニーさんから預かってた手紙。お前が釈放された後渡しておいてくれってさ。気を付けてけよ。』
『お、おい・・・・』