機動戦士ガンダムSEED SOLID   作:赤バンブル

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すごく間が空いたけど何とか書けました。

原作に出ていない機体が登場?




PHASE:26『アスラン』

 

「未確認の反応3つ接近!モビルスーツ2、残りの1機は戦闘機・・・・モビルアーマー?」

 

「フレイ、正確に言ってちょうだい!」

 

「機体照合にデータがないの。変形するタイプなのかも。3機とも新型です!」

 

「イーゲルシュテルン掃射!寄せ付けないで!!」

 

接近してくる3機の反応をアークエンジェルは、弾幕を張り牽制を始める。オーブ艦隊の前に出ていたことで早速ターゲットにされたのだ。

 

「あれをやるよ。」

 

「言われるまでもねえ!オラッ!!」

 

オルガの乗るカラミティは、両肩の長距離ビーム砲と胸部のスキュラを発射して墜とそうとするが避けられて後ろにいたオーブ艦を1隻沈めるにとどまった。

 

「外れた。下手くそ!」

 

「なんだと・・・うおっ!?」

 

陸地に差し掛かったこともあってレイダーは、反転してカラミティを捨てるように墜とした。いきなりの対応にオルガはスラスター浮かせて何とか転ぶことなく着地する。

 

「クロト、てめえ!!」

 

「無駄に重いんだよ、お前!他の雑魚でも相手にしてろ!!」

 

吐き捨てる様に言うとクロトは、アークエンジェルの方へ戻るとレイダーをモビルスーツ形態へと変形させて艦橋前に迫る。

 

「撃滅!!」

 

「させるか!」

 

右腕に装備されている超高初速防盾砲を構えようとしたのも束の間、スネークのフリーダムが間に割り込む形で飛び蹴りする。思わぬ不意打ちにレイダーはバランスを崩して海に落ちた。

 

「うわっ!?」

 

「邪魔。」

 

そのレイダーを薙ぎ払う様に脇に突き飛ばして海中からフォビドゥンが姿を現す。出てくるや否や通常形態へとなり、オーブ艦の艦橋を鎌で切り裂いて沈める。

 

「ご褒美は俺のだもんねぇ。」

 

「クソ、もう1機いるのか。」

 

応戦しようとフリーダムが向かって行く中、沈んでいたレイダーが海上へと上がってくる。

 

「てめえぇ!!よくも!滅殺!!」

 

頭にきたクロトは、ワイヤーが付けられているスパイク付きの鉄球『ミョルニル』を発射。鉄球は、フリーダム目がけて高速で飛んで行くがスネークの機転で逆にワイヤーを掴まれ、引き寄せられる。

 

「ううっ!?」

 

「威力は高そうだが隙が大きいのが失敗だな。」

 

フリーダムによって振り回されたレイダーは、そのままフォビドゥンにぶつけられ揃ってまた海中に落ちる。

 

「ガッ!?クロト!!」

 

「お前がそこにいるのが悪いんだよ!バーカ!!」

 

2機が海上で喧嘩しているのを他所にカラミティは、陸地で街を破壊しながらM1アストレイを次々と墜としていた。

 

「ハハハッ!そら、ドンドン墜ちろ!!」

 

その足元では、オーブ兵たちがパイロットを救出して逃げようとしている。空いた穴を埋めるために他のM1が加勢に来るが彼らを巻き込まないようにするために迂闊に攻撃できないでいる。

 

「褒美は俺のものだ!」

 

更に撃墜スコアを稼ごうとオルガは右手に装備している大型バズーカ砲『トーデスブロック』を構えるが不意に飛んで来た槍状のロケット弾で破壊される。

 

「なっ!?」

 

何事かと槍の飛んで来た先を見るとミラージュコロイドを解除したブリッツがトリケロスからビームサーベルを展開して向かってきていた。

 

「やらせない!」

 

二コルは、ビームサーベルで斬りつけようとするがカラミティの咄嗟の判断でシールドで防御されてしまう。鈍重に見える機体だが見た目に反して機動性は高いようだ。

 

「クッソ!どこから湧いてきやがったんだ!!」

 

オルガは、イラつきながらスキュラを撃ち込もうとするがムウのストライクがシュベルトゲーベルで斬りかかってきたため、退避する。

 

「連合の新型か、大丈夫か!?」

 

「はい、まだ逃げ遅れている人たちがいます。」

 

「俺が奴の気を引くから、援護してくれ。」

 

「分かりました。」

 

二機がカラミティに応戦している姿をディアッカは、少し離れた場所から見ていた。本来ならシェルターに入ろうと避難していたのだが途中で気になり引き返してきたのだ。

 

地球軍の容赦のない攻撃に応戦していく二人を見て、彼は、持っていた手紙を握りしめながら自分だけ安全な場所へ逃げようとしていることを情けなく思っていた。別方面ではトールがアサギたちと共に応戦し、ジョニー達『ダイアモンド・ドッグズ』もM1アストレイに搭乗してオーブを守ろうと奮闘している。

 

「・・・・ッ!こんなんで俺一人だけ行けるかよ!」

 

何かを決心したのか彼はシェルターではなく、モルゲンレーテ本社の方へと走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥ~~~~いい加減、ウザい!!」

 

レイダーと共にフリーダムに攻撃を仕掛けていたシャニだが、攻撃をうまくかわされていることに歯ぎしりをしていた。ビームは、フォビドゥンの『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』で当たることはないが使用する分バッテリーも減るため、確実に稼働時間を削られていく。

 

一方のクロトは、レイダーの口部に搭載されている高出力ビーム砲『ツォーン』を使わない限りは稼働時間はそれほど減らないがシールドの連射砲以外は隙が大きいため、決定打を出すことができない。

 

「早く!早くしないと時間切れになる!!」

 

彼らがここまで焦るのにはある理由がある。

 

それは、出撃前に接取した『γ-グリフェプタン』の効力が切れてしまう事だ。

 

効き目が切れると禁断症状と同時に副作用が襲い掛かり、耐えがたい苦痛を味わうことになる。そうなれば戦闘継続は困難となり、動揺している隙に撃ち落されかねない。一応、症状を緩和させる中和剤が存在するのだが現在所持しているはずもなく、場合によっては出してもらえない可能性すらある。そのため、時間が迫れば迫るほど少しでも功績を上げようと躍起になり始めるのだ。

 

そんな2人の焦りを知るはずもなく、スネークはタイミングを見計らって反撃を開始する。

 

まずはビームライフルで威嚇射撃しながらフォビドゥンに接近し、防御しているタイミングを見計らってアーマーシュナイダーを振り下ろす。

 

シャニは、反射的に大鎌『ニーズヘグ』で防御するが間を置かずにシールドを接近してくるレイダーに投げつけてビームサーベルを展開。左のパンツァーを切り落とした。

 

「ウッ!?」

 

鉄壁の防御であったパンツァーが破損したことに彼は、焦りよりも調整によって抑制されているはずの恐怖心が勝る。硬直したフォビドゥンに対して、フリーダムはレールガンをゼロ距離から発射して海中へと墜とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、シャニとクロトだけでは荷が重いか。あの機体の動き、もしや・・・いや、考え過ぎか。」

 

後方艦隊の甲板でシアーズは、ストライクに搭乗すると母艦の甲板の上に立つと姿勢を低くし、スナイパーライフルでフリーダムを捉える。

 

このライフルは、バスターの装備である『超高インパルス長射程狙撃ライフル』のデータを基に狙撃用に再設計をしたものでランチャーストライカーのアグニ砲には及ばないものの射撃精度が向上、長距離から一方的に敵を狙い撃ちすることが容易となっている。ただ、今回のものはオーブ侵攻に合わせて急遽取り寄せた試作品のため、連射性能が極めて低い。

 

「狙撃後、私も前に出る。オーブ近辺を飛んでいた所属不明機の動きは?」

 

『ハッ、GAT-333『レイダー』1個中隊を向わせました。間もなく接触するかと。』

 

「邪魔だけはしてもらいたくないものだな。邪魔だと判断したら攻撃を開始しろ。」

 

シアーズは、2機の相手をしているフリーダムが背後を振り向く瞬間を狙ってスコープを覗く。背部のスラスターを狙い撃ちすれば、大抵のモビルスーツは機動力を失うどころかほぼ確実に爆散する。更に視認できる距離外からの狙撃のため、並のパイロットなら気づくことなく墜とされるだろう。だが、彼はこの狙撃が命中しないのではないかと感じていた。

 

(だが、私やあの女の例もある。パイロットがあの男ならば・・・或いは)

 

フリーダムが背後を振り向いた瞬間、シアーズは引き金を引いて狙撃を行う。

 

意識外からの攻撃にスネークは、スラスターを吹かして回避するが相手にとっては格好の的になった。

 

「パパだ、滅殺!!」

 

レイダーは、フリーダムに向けてツォーンを放つ。シールドを先ほど投棄していたため、スネークは防御する手段を失っていた。

 

「回避が間に合わん!」

 

ようやく攻撃が命中しそうになったことでクロトは、やったとばかりに笑みを浮かべるがそんな喜びも突然割り込んできた赤い機体のシールドの防御で打ち砕かれる。所属不明機はすぐにライフルを自分に向かって発砲、消沈したこともあって避けるのが遅れて左翼の根元が溶解した。

 

「クッソ!!なんなんだおめえは・・・・・!?」

 

我に返った彼は、苛立ちながらモビルアーマー形態にして反撃しようとする。しかし、色違いの自分と同じ同型機が10機以上も追いかけてきたこともあって動揺する。

 

「エッ・・・時間切れ?」

 

海中から上がって来たシャニは、冷や汗を掻きながら呟く。今のところ薬切れの発作は起こっていない。地上でムウたちを相手にしていたオルガもレイダー制式仕様たちが出てきていることにギョッとする。

 

「おいおい・・・・そりゃ、ないぜ・・・」

 

動揺する三機に対してスネークは、自分を庇った赤い機体に警戒しようとすると向こうから通信が入った。

 

『こちら、ザフト軍特務隊所属アスラン・ザラだ。聞こえるか、フリーダム・・・キラ・ヤマトだな。』

 

「アスラン?」

 

フリーダムは、破壊されたオーブ艦に突き刺さっているシールドを回収してレイダー部隊の攻撃を受け流しながらジャスティスの前に来る。

 

「何の真似だ?この戦いはオーブと地球軍の戦いだ。ザフトも介入する気か?」

 

2機を取り囲むように攻撃を仕掛けてくるレイダー1機をアスランは、ビームサーベルを展開して切り裂く。

 

『軍上層部から本戦闘に対して何の命令も受けていない。この介入は、飽くまで特務隊権限における俺個人の意思だ。』

 

ジャスティスは、背部の装備している『ファトゥム-00』を飛ばしてレイダー数機を蹴散らすとフリーダムがハイマットフルバーストでまとめて撃ち落とす。

 

 

そこへエールストライカーを装着したシアーズのストライクが向かってきた。

 

「3人とも後退しろ、間もなく時間切れだ。艦に戻って担当医(メディック)から中和剤を受け取って休め。」

 

彼は、クロトたちに通信を入れると刀を二本引き抜いてフリーダムに斬りかかる。

 

「っつ!全然墜としてないのに!!」

 

クロトは納得いかない表情を浮かべながらもレイダーを変形させて離脱する。スネークの攻撃でやや情緒不安定になりかけていたシャニの方は、レイダー部隊の内の二機がフォビドゥンを抱えられて引き下がる。

 

「ちっ、もうちっと倒せると思ったのによぉ。」

 

オルガも不満な態度を取りつつ近づいてきたレイダーの1機の上に乗って味方陣営の元へと引き上げて行った。

 

3機の新型たちが離脱していく中、フリーダムは自分に襲い掛かって来たストライクの攻撃を籠手で受け止めるが腕ごと切断されると判断して、押し上げると同時にパージした。

 

「クッ!」

 

「ほう、私の攻撃をうまく切り抜けたか。ますます興味深い。」

 

アーマーシュナイダーとビームサーベルで攻撃を受け流すスネークに対して、シアーズは二刀流の連撃で押そうとする。

 

「フッハハハハ、貴様の正体を見せてみろ!!」

 

全身のスラスターを吹かせて勢いよく海中に落とそうとするストライクに対し、フリーダムはCQCで対応しようとするがその戦い方に妙な既視感を覚えた。

 

(このストライクの戦い方、どこかで見たことがある・・・・記録でしかないが確かどこかで)

 

「キラ!」

 

「ムッ!?」

 

追い込まれたスネークを助けようとアスランは、レイダー部隊を相手にしながら左肩のビームブーメランを外して投擲する。背後からの気配にを察知したストライクは、寸でのところで回避する。しかし、背部のエールストライカーが破損したため、止むを得ず空中で解除した。

 

滞空能力を完全に失ったストライクを見てレイダー部隊の1機が変形して駆けつけるや上に乗せる。

 

『閣下、ご無事ですか?』

 

「あぁ、少し連中を甘く見ていたようだ。」

 

シアーズは、助けに入った兵士に礼を言うとすぐに上陸している部隊の被害状況を確認。アカツキ島への上陸・制圧は成功したが、本島の抵抗は激しい上にアークエンジェルに差し向けたスカイグラスパー・スピアヘッドの混成部隊は途中から駆け付けたディアッカのバスターの介入によって手痛い損害を被っている。また、本来ならば追い込むために、使用予定であったレイダー部隊にも損害が出てしまっている。

 

このまま進軍しても消耗が増すばかりだと判断した彼は、すぐに本隊へと連絡を取る。

 

「艦長、全軍に撤退の合図を送りたまえ。」

 

『撤退を?』

 

「オーブの抵抗は予想以上だ。我が軍は一時アカツキ島まで後退。翌朝、第二陣の合流と同時に再度攻撃を仕掛ける。」

 

『そんな悠長な・・・・』

 

「このまま全軍で強行制圧をすることは不可能ではない。だが、あのウズミ・ナラ・アスハのことだ。カグヤとモルゲンレーテを渡すまいと全滅と同時に自爆するやもしれん。」

 

『ムウ・・・確かに奴ならやりかねませんな。』

 

「なに、守るだけでは戦争には勝てん。オーブの戦力も無尽蔵ではない、いずれ限界を迎えて抵抗することもできなくなる。アスハがその前に白旗を上げればよし、そうでなければ・・・他の手もある。」

 

後方から信号弾が打ち上げられると同時に本島を攻撃していたストライクダガーたちは、撤退を開始する。フリーダムとジャスティスを包囲していたレイダー部隊も離脱し、地球軍は制圧したアカツキ島へと後退して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーブ軍は、すぐに各M1アストレイの修理と補給を開始。メカニックたちが損傷の激しい機体から優先的に格納庫へと運ばれて修理、軽度のものは補給行う。その間、パイロットたちは少しでも休もうとするが変わり果てた故郷を目の前に複雑な心境を浮かべていた。

 

そこへフリーダムとジャスティスが着地してくる。コックピットからスネークとアスランが降りてくるとかつてモルゲンレーテでの再会を彷彿させるような形で対峙する。

 

「・・・・」

 

「・・・・キラ。」

 

アスランが一声かけようとするとスネークは、銃口を彼に向ける。その行為に見守っていたカガリは思わず止めに入ろうとするが近くにいたムウに止められた。

 

「援護をしてくれたことには礼を言う。だが、特務隊となればただここに来たわけではあるまい。目的はなんだ?」

 

緊迫した空気がその場を支配する中、アスランは彼の目を見ながら口を開く。

 

「俺は、その機体『フリーダム』の奪還。あるいは破壊の命令を本国から受けている。・・・・だが、今は俺はお前とその友軍に敵対する意思はない。」

 

「・・・・質問を変える。俺がフリーダムのパイロットだったのをどこで知った?」

 

「ラクスから聞いた。彼女がお前の生存を教えてくれたんだ。」

 

「そうか。んで、これからどうするつもりだ?悪いが俺はフリーダムを引き渡すつもりはない。パトリック・ザラ・・・・お前の親父さんのことだ。フリーダムを奪還する他に俺や他の関係者の抹殺の対象に含まれているんだろ?」

 

スネークの一言にアスランは、黙って頷く。

 

「・・・・だが、俺には議長が・・・父が言っていることが正しいとは思えないんだ。あれはプラント、コーディネーターの未来のためと言うよりも自分のエゴのために戦っているようにしか見えない。」

 

「・・・」

 

「俺は・・・この世界の『真実』を知りたいんだ。何のために戦い、何を撃たなければならないのか。勲章や名誉のためじゃない。本当にすべきことを。」

 

真剣な眼差しで話す彼に対して、スネークは聞きながらも銃を下げる様子はない。

 

「アスラン、もしお前が自分の意思で俺たちと共に戦うと言うのなら同時に何かを捨てなければならないこともある。親父さん、プラント、ザフト・・・・共に行動してきたかつての仲間も。」

 

「あぁ、俺にはまだ父を捨てる覚悟はできていない。だから、今は『ザフトのアスラン・ザラ』としてではなく、お前たちの仲間として共に行動をさせてほしい。受け入れてもらえないなら・・・・その銃で撃ってくれても構わない。」

 

その言葉で一瞬誰もが無言になるが、痺れを切らしたのかカガリが二人に駆けより、肩を抱く形で強制的に重苦しい空気をぶち壊した。

 

「おぉ!?」

 

「カガリ?」

 

「お前ら、いい加減にしろ!親友同士が難しい話をしたってしょうがないだろう!『お互い生きててよかった』っていいじゃないか・・・・ったく、馬鹿野郎。」

 

嬉し泣きしながら言う彼女の言葉にスネークは、少し驚くが緊張が解れたのか思わず吹き出す。そのタイミングに合わせるかのようにトリィーが彼の肩に止まった。仲間の方を見ると預かっていたフレイが手を合わせてごめんとばかりの顔をしているのが余計に笑いを取る。

 

「ハッハハハハ、確かにカガリの言うとおりだな。ここで銃を向けるもんじゃない。今日のお前は俺の命の恩人だからな、アスラン。」

 

「キラ。」

 

向き合うべきことが多いものの二人は、ひとまず和解の握手を交わす。

 

 

その後、ニコルとディアッカの生存を知ったアスランが言葉を失ったのはそれからすぐのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モルゲンレーテの攻防でバスターから降りたディアッカは、無断で乗ったことについてエリカたちに謝罪し終えると休んでいたニコルとジョニーの元へと向かい、預かっていた手紙を返した。

 

「ディアッカ?」

 

「手紙俺に預けて頼むぐらいなら自分で会いに行くべきだろ?俺が渡したところで信じてくれねえだろうし。特におっさん、こんな事したら嫁さんカンカンになるぜ。どこほっつき歩いているんだってさ。」

 

手紙を受け取ったジョニーは、頭を掻きながら困った表情を浮かべる。

 

「そりゃあ・・・・そうだけど。今、ここから離れるわけにはいかないからな。」

 

「だったら、一緒に帰れるように動いた方がいいだろ?それに俺だって運よくカーペンタリアに戻ったところでプラントに戻れる保証ないんだしさ。」

 

そんな話をしているのを他所に修理現場を仕切っていたエリカの元へカズが鬼の形相でやって来た。

 

「エリカァ!!お前、何でキャサリーとはぐれているんだ!!どういうことだ!!」

 

いつもの余裕さなく、彼は彼女の襟を掴んで怒りをぶつけ始める。当のエリカも落ち着かせるように言う。

 

「ちょっと、待ってミラー!?私だってこんなことになると思わなかったわよ。まさか、キャサリーちゃんが避難中にはぐれるなんて・・・・」

 

 

実は、地球軍の攻撃が開始される際に娘のキャサリーが避難中に彼女の家族と離れてしまい、一時行方不明になっていたのだ。

 

敵の撤退後、その事実を聞いたカズは驚愕。すぐさま避難者リストを確認、戦闘で放棄された港近くのシェルターに娘のID登録がされていることが判明し、急いで部下たちを連れて急行した。

 

現場近くは既に攻撃に巻き込まれて犠牲になった民間人の遺体があちこちに転がっており、捜索が進むと少し掘ったところから自分が買ってあげた人形が出てきたことで生存が絶望的だと彼の顔面が蒼白となった。

 

しかし、それでも懸命に捜索したメンバーが範囲を広げて捜索すると攻撃で抉れた地形の端に重傷の少女と共に生き埋めになった形でキャサリーを発見する。

 

発見を聞いたカズは、急いで彼女の元へと向かうと抱きかかえて声をかける。幸いにもキャサリーは、気を失っていただけのようで彼を見るや泣きながら抱き着いた。

 

愛娘の安否を確認できたことで彼は、ホッとしたものの同時にエリカに対しての怒りが沸いてしまったというわけだ。

 

 

「もし、瀕死のあの子が庇ってくれなかったらキャサリーは、他の奴らと同じように死んでたんだぞ!!お前のことを信頼していたから頼んだって言うのに・・・・どう言い訳するつもりだったんだ、えぇ!!」

 

「だから、こうして謝っているでしょ!?他の方面も犠牲者が報告されていたんだし、私もあなたもやられてもおかしくなかったんだから。」

 

「・・・・・」

 

ある程度怒鳴りつけて怒りのボルテージが下がって来たのか、カズは掴んでいた襟を離し、ズレていたサングラスを直してため息をついた。

 

「・・・すまん、アイツがはぐれたって話を聞いてからずっと混乱してた。もう、肉親を失うのはごめんだ。」

 

「ハア、私にぶつけて少しでも気が収まったんならそれでいいわ。それで一緒に助けたその子の容態はどうなの?」

 

エリカは、服装を整え直すと落とした被害リストを拾いながら聞く。

 

「かなり状態が悪い。爆発に巻き込まれたせいで、右腕が欠損している上に全身の出血がひどい。応急処置をしているが、正直このままだと近くで死んでいた両親の後を追うことになる。」

 

「今のここじゃ、満足な治療をできそうにないわね。」

 

「悪いが俺たちは、今夜のうちにマザーベースへ引き上げる。水中からの移動なら奴らの包囲網から抜けられそうだ。一部のメンバーは残していくが。」

 

娘の恩人のためでもあるが、彼は事前に打ち合わせていたモルゲンレーテ技術者たちを連れてオーブを脱出することを告げる。

 

「この状態を考えるとそれがいいわね。私たちも直に宇宙へ脱出することになる。クサナギの換装で時間がかかるだろうけど完了したらしばらく身を隠すわ。」

 

「俺たちの方は、別ルートで上がる。向こうの進行状況は既に居住可能ぐらいに復旧しているがすぐに来られたら見つかる可能性がある。受け入れ態勢が整い次第、迎えをよこす。悪いと思うがしばらく必要物資の補給は自力でやってくれ。」

 

カズは、話を終えると仲間と共にオーブから脱出するための準備を始めようとその場を外そうとする。

 

「あっ、ウズミ様が街の被害状況確認から戻ったら貴方を呼んで欲しいって言ってたわよ。」

 

「俺にか?脱出の件については事前に打ち合わせしてただろう?」

 

「私の口からは言えないの。後で行ってちょうだい。それと・・・」

 

「それとなんだ?」

 

「悪いんだけどユンも一緒に連れてってくれないかしら?」

 

「ユン・セファンか。だが、彼女はクサナギに乗艦させるんじゃなかったのか?」

 

「あの子、おっちょこちょいだから・・・・逃げ遅れたら連合に捕まりかねないわ。あの子に色んなこと任せてたし・・・・。」

 

「そ、そうか。分かった。彼女も一緒に連れて行く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、スネークは小休憩も兼ねてアスランの話を聞いていた。

 

「そうか、クライン前議長は捕まったのか。」

 

彼は、葉巻を吸いながら一言呟く。

 

「彼はラクスと俺を守るために連行されることを選んだんだ。今のところは父も手を出すつもりはないようだがどうなるやら・・・・」

 

「お前の親父さんは国のトップだ。少なくとも個人の理由で始末するのは早々ないだろう。強行すれば、プラント国民からの印象が悪くなる。それに抑え込んでいる反対勢力がの歯止めが利かなくなって最悪内部分裂を引き起こして国家そのものが崩壊しかねない。」

 

スネークの言葉に対し、アスランは冷静に分析していると感心する一方で本当にそうなるだろうかと不安になる。

 

ラクスは現在も逃亡中だ。

 

彼女のことだから今も潜伏してプラント国民に対し、反戦を訴え続けているのかもしれない。そうなれば、パトリックは目障りだと思い、シーゲルを尋問して居場所を吐かせようとするだろう。性格を考えてオセロットに拷問をさせて無理やり吐かせるか、見せしめとして公開処刑を実行しかねない。特にオセロットは拷問のスペシャリストだという噂があり、拷問中に死亡する可能性すらある。

 

尤もその本人がスネークと繋がっていることを知らないが。

 

「だが、このまま戦争が激化すれば地球軍とザフト・・・いや、コーディネーターとナチュラルはお互いを滅ぼし合うことになる。それだけは避けなくちゃな。」

 

スネークは、葉巻の火を消して立ち上がると作業に戻ろうとする。

 

「キラ、行く前に一つ確認させてほしい。」

 

「フリーダムのNジャマーキャンセラーのことについてか?」

 

「そうだ。お前は、あのデータをどうするつもりなんだ?」

 

アスランの問いに対し、彼は迷いなく答える。

 

「誰かに渡すとしても兵器利用をさせるつもりはない。あのデータが地球軍の手に渡れば、核兵器が息を吹き返す。そうなりゃ、終末戦争一直線だ。そうなる前に俺が止める。」

 

スネークは、それだけ言うとフリーダムの方へと向かって行く。アスランは、その場に座り直すと彼とは対照的な自分に頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、早朝。

 

アカツキ島近辺まで後退していた統一連合軍は、遅れて来た第二陣と合流。次の攻撃への準備を進めていた。

 

「私は、別にオーブを乗っ取ろうとする意思はない。飽くまで戦時中の地球統一連合軍への加盟を望んでいる過ぎない。ザフトとの戦争が終われば、再び貴国は中立国として独立することができる。これでもまだ我々に反抗するつもりかね、ウズミ・ナラ・アスハ前代表?」

 

作戦準備が完了を待つ間、ジョージ・シアーズはオーブからの会談要請を受けてモニターでウズミと対談をしていた。

 

『オーブは中立の立場として貴軍にもザフト軍にも着く意思はない。我らは、理念と法を捨ててまで国を貴殿に売り渡すようなことなど。』

 

「売り渡すとは人聞きが悪い。今は地球に生きる者として一致団結するべきだと言っているのだよ。それを拒否すると言うのはザフトの味方をすると言う意味になる。これ以上の争いは互いに犠牲が増えるだけだ。こちらとしてもここで引き下がってもらえるのなら今回の一件での被害を被った貴国の復興支援の援助をしよう。」

 

『その代わりに『カグヤ』の使用とモルゲンレーテの全技術の解放を認めろと?』

 

「それだけの対価を求めるのは当然のこと、それだけで国は守られるのだ。先日の戦闘で既に多くの犠牲者が出ている。国民を犠牲にしてでも戦闘継続を望むのかね?」

 

痛いところを突くように言う彼に対し、ウズミは以前と態度を崩す様子を見せない。

 

『こんな不当な要求を受け入れることはできん。』

 

「ふむ、残念だ。ならば、我らは貴国に対する攻撃を再開させてもらう。では、この会談を終了する。」

 

そう言ってシアーズは、一方的にモニターを切る。そして、今度は別の人物へと連絡を入れる。

 

「君たちの代表は戦いをやめる意思がないようだ。おそらく、今回の攻撃で彼は本土から脱出するだろう。君たちは予定通り、送り込む工作員の侵入を手助けして欲しい。奴が自爆させる前に身柄を拘束する。期待させてもらうぞ。」 

 

 




《カズとウズミの会話の盗聴》

『アスハ代表、俺に何か用か?』

『・・・君にこれを預けたい。』

『これは?』

『モルゲンレーテの中で技術データすべてを納めたものだ。今、エリカ・シモンズに本社のメインサーバーの機密データを削除させている。つまり、ここに全ての重要機密が詰まっている。』

『おいおい、そう言うのは彼女が持つ物だろ?俺のような傭兵会社の人間が持つような代物じゃない。』

『本来ならな。だが、今日の戦闘で見ての通りオーブが失われるのもそう遠くない。それに・・・我々の中に裏切り者がいるかもしれん。』

『裏切り者?スパイか?』

『今日の戦闘で地球軍はMSの配備が少ない場所を把握していたように狙って攻撃をしていた。おそらく、情報が漏れていたのだろう。』

『それで身内に預けておくのは危険だと?』

『うむ、脱出した者たちと共に君たちに預けておきたい。再びオーブが立ち上がる日のために。』

『なるほどな、俺たちの(ヘリオポリス)で一緒に匿ってほしいって訳か。だけど、いいのか?もしかしたら、そのまんま頂いて返さないかもしれないぜ?』

『連合、ザフトの手に渡るよりはマシだと思っているよ。君たちは、この世界の抑止力としての役割を担うことになるかもしれんのだから。』

『・・・・分かった。コイツは、預かっておく。多少はいただくかもしれないだろうがいつかオーブが再び独立することになったらアンタたちに返す。』

『そうしてくれ。』

『俺たちは、先に離脱させてもらう。アンタとも・・・これが最後になるかもしれないな。』

『あぁ、私たちにもやらなければならないことがある。』

『今までの支援、感謝しているよ。』

『君たちなら乗り越えられるだろう。』
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