ルナティック幻想入り   作:アルパカ度数38%

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2009/09/05(満月


01-人里1

 

 

「これは、家では買い取れませんな」

 

 店主が、俺の野菜の一つを手にとったまま、勿体ぶって首を振りながら言う。

相も変わらぬ答えに、俺は汗をぬぐうついでに、リヤカーから手を離した。

するとリヤカーは前方に傾き、そして僅かに土を跳ね除け停止する。

確認した訳ではないので聞いたか読んだかした話なのだが、あらゆるものには重力があるのだという。

ならば当然リヤカーにも重力があり、地面がリヤカーを引っ張ると同時に、リヤカーも地面を引っ張り、それが僅かに土を跳ね除けたのだろう。

なぜなら重力とは、物と物とが惹きあう力であるからだ。

そして困ったことに、俺には少しばかり重力が足らないらしい。

今は特に、目の前の店主との間にだ。

にやにやと笑みを浮かべた店主は、手にとった俺の野菜を掲げながら、芝居がかった調子で言う。

 

「いやぁ、確かにこいつは見事な胡瓜です。

この太陽の光をいっぱいに吸った緑色、手にとっただけで分かる瑞々しさ、対してこの手触りのしっかりさ。

きっと囓ったらぱきっ、と音を立てて割れて、噛めばまるで水が口の中で弾けるようになるんでしょうな、そうでしょう。

夏妖精が気まぐれに祝福を与えていったと言うのも、分かります、分かりますとも、権兵衛さん」

 

 なら、何が悪いのか。

何処かで自覚しながらも、俺は、しかし、目で問いかけざるを得なかった。

 

「でも、でもですよ、権兵衛さん。

家に野菜を売りに来る皆さんは、夏妖精の祝福なんて気まぐれで、美味い野菜を作っている訳じゃあないんですよ。

何年も続く努力を重ねて重ねて、その上でお天道様の気分に付き合って、食いにやってくる動物の気まぐれを運良く避けて、それでやっとの事で美味しい野菜を作れるんです。

いや、貴方が努力していないって言いたい訳じゃない。

権兵衛さん、あなた、まだ此処に来て……幻想入りして、一年も経っていないって言うんでしょう?

聞けば外の世界は、殆どの人が農耕になど手を出さないと言います。

里に住んでらっしゃる外来人の方々も殆どがそうですし、手だってほら、私たち商売人よりも綺麗なぐらいなもんですよ。

貴方だって、多分幻想郷に来るまでは畑いじりなんて、するどころか考えもしなかったに違いない。

で、だ。

私にだって扱える農作物の量、と言う物は決まっていましてね。

どうやっても、一人の商売人が腐る前に売れる量の野菜なんて言うのは限られている。

しかも元々、私は既に限界に近い量の野菜を仕入れています。

となると、ですね。

やっぱり、夏妖精の気まぐれなんかでできる美味い野菜よりも、より努力を重ねておられる人の作った野菜を買い取りたいと思うのが人情なんですよ。

いや、本当に申し訳ないと思うんですがね」

 

 夏妖精の気まぐれも動物の気分も似たような物ではないのか、と思ったが、俺は口を開きかけるだけでやめてしまった。

どうこうと理屈を捏ねてはいるが、この商人が言いたい事は、自分は人情家であると言う事と、俺の野菜を買い取りたくないと言う事なのだ。

なにより雄弁に、声色とはうって変わった眼の色がそう言っている。

まるで、害虫が寄ってくるのを目にしたような、苦みばしった眼の色だ。

これを、普段一人で過ごしてばかりの俺の弁舌で覆すのは、果てしなく不可能に近い物事であるように思えた。

それよりはむしろ、他の商家を回って野菜の引き取り手を探す方が早いのではないかと思える。

しかし勿論、一番平易な未来であった、春にも野菜を買い取ってもらえた此処で夏野菜も買い取ってもらう、というものは消えてしまった。

その事実は、やたらと重く肩の上にのしかかってきた。

酷い、疲労感だった。

やっと、体から搾り出すような声で、言う。

 

「分かり……ました。他を、当たってみる事にします」

「おぉ、そうですか! ではでは、お気をつけて!」

 

 喜色満面で言い、店主は手に取っていた胡瓜を俺のリヤカーへと戻す。

その様子が、先程までと違って全身で喜びを表しているようであるのを見とって、俺は内心でため息をつく。

 

 ——しかし、いつもの事だ。

 

 そう言い聞かせるだけにして、俺は無言のまま礼をし、再びリヤカーの取っ手に手をやり、それから深く息を吸い込んでから、リヤカーを押し始めた。

それでも、少し行き、店主の視界から外れた辺りで全身の力が抜けてきてしまった。

再びリヤカーと地面との重力が熱烈に強くなり、俺は実際のため息を付き、背中とリヤカーとの間の重力を強くするに努める。

これから、他の商店を回らねばならない。

その為には、店主の目が放っていた悪意を体から放出する必要があり、それには力を抜いて意識を漂わせるのが一番良いと、体感で俺は知っていた。

その通りに暫く呆けていると、先程の商家の方から、嬉しそうな店主の声が聞こえてくる。

 

「おぉ、外来人の方ですか!

おや、幻想郷に来て初めて農耕に手を出した、と。

それでこの野菜を作られたのですか、それはそれは、努力もしたのでしょうが、運にも恵まれましたなぁ。

えぇえぇ、勿論買い取らせてもらいますとも!

いえ、勿論ずっと農耕を続けている里の人の野菜に比べれば見劣りしますがね。

この私、幻想入りしたばかりで何も無い貴方を見放す程、人情の無い男であるつもりは無いのですよ。

あっはっは! そうですか、ありがとうございますとも。

それでは内約ですが…………………」

 

 もう一度ため息をついて、俺は体を休める場所を変える事にした。

俺には、少し重力が足らないらしい。

直接的に言うと、俺は里の人間に嫌われていた。

 

 

 

      ***

 

 

 

 幻想郷には様々な物が落ちてくる。

降ってくるのでは無い。

置かれるのでもなく、捨てられるのでもない。

それは人間の意図しない所で手を離され、そのまま誰にも気づかれずに落下するので、落ちてくる物なのだ。

その、落ちてくる物と言うのは本当に様々で、生物無生物、時には亡者でさえも混在している。

無生物であれば無縁塚に多くが落ちてゆくのが常であるのだが、生物はと言うと決まった場所に落ちている事が無く、人里から妖怪の山まで様々である。

何処へ行くのかは、結局のところ、運の一言につきる。

 

 俺の運が良かったのかと言うと微妙な所で、良くも悪くもあった、と言うのが正解に近いだろう。

俺は、運悪く、魔法の森に落ちたらしい。

らしいと言うのは魔法の森の瘴気にやられてすぐに意識を失ってしまったらしく、気づけば人里で介抱されていたからである。

聞けば、運良く、通りかかった妖獣に食われるよりも先に、魔法の森の魔法使いに助けてもらったのだそうだ。

伝聞形なのは、運悪く、その魔法使いとやらと出会う機会が無く、直接礼を言う事すらできていないからである。

ついでに、もう一つ運の悪い事に、瘴気にやられてしまったからなのか、俺は自分の名前が分からなくなっていた。

いや、正確に言うと、分からなくなっていた、と言うのとは少し勝手が違う。

 

 ——名前を亡くした、と言うのが、一番しっくりくる。

 

 何せ俺が覚えていなかったのは、名前だけでなく、名前が関連するであろう事柄全てであったのだ。

それは多くの外の世界での記憶を含み、俺は両親や居たであろう友人の事も、通っていた筈である学校の事も、殆ど覚えていない。

それであれば普通記憶喪失と断ずるのであろうが、それは何となくだがしっくりこない。

普段一番使う物だからか、無くて一番困る物だからか、名前と言う言葉が入らねば、この現象を説明するのに言葉が足りないような気がするのだ。

そして名前と言う概念には、名づけられる前と後と、忘れられたと言う三つの状態が存在する。

そのどれにも当てはまらないように思える故に、名前を亡くした、と、そう言うように俺はしている。

恐らくは、それは正当な行為なのだろうと思う。

何せ俺はと言えば、何故か博麗神社に行っても外の世界へと戻る事ができず、それはこの名前を亡くした事象が原因なのだと思う、と巫女は語っていたのだ。

 

 以来俺は、自分の事を、七篠権兵衛と名乗っている。

 

 

 

      ***

 

 

 

「はぁ………………」

 

 深いため息をつくのも、これで何度目になるだろうか。

恐らく数えきれない程の幸せを口腔から逃しながら、俺は五軒目の商家で断られた後、小休止とばかりにリヤカーを置かせてもらって茶屋で涼んでいた。

残暑の陽光が傘に遮られ、ちりんちりんと風鈴の涼し気な音が鳴っている。

冷えた茶を手に取り、ごくりと一口喉を潤し、もう一度ごくりとしてから、口から湯のみを離した。

 

 春野菜で試したことがあるのだが、俺の家はどうにも漬け物が上手くゆかない。

代わりに何故か野菜が腐りにくかったので飢えずにすんだが、何時までも野菜が腐らない保証などないので、夏野菜もある程度売って金子に変えておかねばならない。

だと言うのに、この五軒、ずっと断られっぱなしだった。

幸い買う方はたまに足元を見られる程度で済んでいるが、売る方は春に春野菜を一軒目の商家へ持っていった一度しか売れていない。

最早俺には、人里で物を売る事など不可能なのではなかろうか。

むしろ今まで通り何故か野菜が腐りにくいのを期待して、白米を我慢して糊口を凌いだ方が適当な事柄なのではないだろうか、と思い始めた、その時であった。

視線を足元にやりながら考えていた俺の目前に、人影が差し込んだ。

面を、上げる。

 

「久しぶりだな、権兵衛」

「慧音、さん?」

 

 絹のような白髪の上に、四角い帽子と赤いリボン。

そこには、里の賢者であり、俺にとっても大恩人である上白沢慧音さんが立っていた。

 

「こちらこそ、お久しぶりです。先月ぶりでしょうか。お元気そうでなによりですね」

「あぁ、そちらもな。何時だったか、野菜ばかりで白米も肉も魚も食わずに居たと言う時を比べると、随分顔色も良さそうだ」

「いやだなぁ、慧音さん。その事は言いっこなしですよ」

「いいや、こればかりは合う度に言わせてもらわないとな。

あの時の君の顔色ときたら、まるで冥界の半死人のようで、到底見れたもんじゃなかった。

こればっかりは無かった事にする訳にはゆくまい。

君がもっと確り幻想郷に根付けるまで、口酸っぱく言わせてもらうぞ」

「ははは……。酢の物は苦手なんですがね。とりあえず、隣にどうぞ座ってください」

「あぁ、ありがとう」

 

 と、俺は弱りきりで頭を掻いてみせるながら、少し腰をずらし、慧音さんの座る分を開けてみせた。

すると慧音さんは、片手で僅かな風に靡く髪を、もう片手でスカートを抑えながら、俺の隣に座る。

僅かに、慧音さんの髪がふらりと広がり、何とも言い知れぬいい香りがした。

何だって女性と言うのは、こういい匂いがするものなのだろうか。

と言っても、幻想郷に来て以来まともに会話した女性と言うのは慧音さんぐらいなので、もしかしたら彼女だけがそうなのかもしれない。

だとすれば、俺は何と言うか、身分不相応に良い思いをしているようで、恐縮する次第であった。

とりあえず、と慧音さんは店員に声をかけ、冷たい茶を頼む。

合わせて俺も、口を開いた。

 

「ああ、店員さん、まんじゅうも二人分頂けますか?」

「って、あー、いいのか?」

「急にまんじゅうが怖くなりまして」

「くす、なら仕方ないか」

 

 俺の割と寂しい懐事情を知っている慧音さんは心配の声をかけてくれるが、ちっぽけな男のプライドと言う奴を察してくれたのだろう、小さく微笑むだけで許してくれた。

こういった寛容で懐の広い所を見ると、尊敬の念を抱くと共に、俺の小さい心に劣等感が沸いてしまう。

里の守護者として皆に慕われ、長い年月を経て素晴らしい知識を持ち、一手に幻想郷の歴史の編纂を引き受けている彼女。

その力は妖怪を退け、その知恵は寺子屋を通じて里人に伝えられる程に、大きい。

対して俺は、里の嫌われ者で、妖精の気まぐれさえなければ自分の食い扶持すら稼げない凡人。

勿論力は普通の男並で、知恵も外の世界の同世代でも平均的な程度でしかなかった。

どう考えても大きすぎる差で、それを自覚するたびに、この人の前に居る事が申し訳なく感じてしまう。

勿論慧音さんはそんな事気にもしないと言うのに、だ。

——ため息を、飲み込む。

頭を振って曇りを振り払うと、誤魔化すように茶を飲み、それを喉奥へと押し流した。

 

「最近、どうだ? そろそろ夏野菜の収穫の時期だと思うが、いいのができたか?」

「ええ。ちょうどここに置かせてもらっているリヤカーと一緒に、持ってきています。

良かったら、お一つと言わず、いかがですか?」

「お、よく出来ているじゃあないか。——本当にこれを権兵衛が?」

「ええ。春にも春妖精の気まぐれがありましたが、何故か、夏にも夏妖精の気まぐれがありまして」

「そうか——。夏妖精、か」

 

 声色に何か冷たい物を感じたので、俺は瞬きながら目を慧音さんへとやる。

疑問の目を感じたのだろう、ああ、と言って、慧音さんは困り顔で口を開いた。

 

「いやな、普段から妖精の悪戯で被害を受けると聞く事が多いと、妖精のお陰で、と言う事を聞くのが新鮮と言うか、奇妙な感じでな」

「あぁそうか、畑は妖精に被害を受ける事だってあるんですね」

 

 普段気まぐれに祝福を与えてゆくのを見てばかりだったので、それは想像の外だった。

もしかしたならば、商家が俺の野菜を引き取ろうとしないのには、俺ばかり妖精の祝福をうけていると言う事で妬みを買っているのも一因なのかもしれない。

それなら、俺は商家の人々を責める事はできないかもしれない。

今さっきだって俺は、慧音さんの寛容さに感謝すると同時、妬ましさも感じていたのだ。

当然、商家の人々の嫉妬と同じ穴のムジナである。

と言っても、想像の中での事でしか無いのだが。

 

「で、今日はこれから野菜を売りに、か。もう少し早く出た方が、涼しくて良かったんじゃあないか?」

「——えぇ。今更ながら、そう思っています。先に後悔なんて、器用な事はできなかったでしょうけど」

「尤もだ。後悔とは、後で悔いると書く。悔いると言う事は、過去に迷いを置いてきたと言う事だ。

迷いとは、現在にある物だけが触れられて、未来の物にも過去の物にも触れられはしないが、過去の迷いは感じる事だけはできる。

その感じる感覚が、後悔だ。

それを先んじてしてしまえば、それはただの悔いならず、未来に触れる事、すなわち未来予知になってしまう。

あらゆるものが確率であると既に実証された現在、未来予知とはありえない事だ。

だから、先に後悔などと言う事は間違っても出来はすまい」

 

 と、講釈を垂れ流していた慧音さんだったが、言い終えてから講釈の長さに気づいたのか、顔を赤くし小さくなってしまう。

 

「あぁ、すまない——。ついつい長々と解説を始めてしまって。

これだから寺子屋でも、授業が分かりづらいだのつまらないだのなんて言われるんだろうな。

本当に、すまない」

「いえ、俺は慧音さんの講釈は好きですよ? 面白いと思いますし」

 

 と、そこで慧音さんは、ばっと顔を上げてぱちぱちと目を瞬く。

それがあんまりな様子だったので、くすりと微笑んでしまう。

と言うのも、卓に手をつき身を乗り出し、白髪をゆらりと揺らすその様子は、普段の慧音さんと違って何処か子供っぽくさえもあったのだ。

美しいと言うより。

可愛らしい、と言った感じ。

そんな慧音さんが珍しくて、こちらとしても自然と笑顔になる。

焦った様子で続ける慧音さん。

 

「ほ、本当かっ。本当だよなっ」

「本当ですよ。こんな事で嘘をついたって、何の得にもなりゃあしません。

それどころか、死後の銭が減るわ、鬼に嫌われるわ、頭突きをされる可能性があるわで、損するばかりでしょう」

「そ、そうか……。いや、すまない、最近は妹紅にも講釈を遮られてばかりでな、気にしていたんだが——」

 

 一旦区切って、慧音さんは花咲くような可憐な笑顔で言った。

 

「ありがとう」

 

 ——。絶句。まるで、そこにだけ光が差したかのような、輝かしい笑顔だった。

その光は残暑の陽光よりも尚強く、慧音さんの白髪がきらきらと輝く様子は、まるでそれ自体が光を放っているかのよう。

花弁のような唇があ・り・が・と・うと動く様は、桜が舞い落ちるように可憐で、白磁の肌の上に浮いている様がそれを余計に引き立てている。

答えが帰ってこないのに疑問詞を浮かべる慧音さんの表情に、ようやく俺は言葉を取り戻した。

 

「どうも、いたしまして」

「くす、そうか。それじゃ、怖ーいまんじゅうも食べ終わったし、そろそろ行こうか」

「行こうかって、何処へ?」

 

 首を傾げる俺に、おかしそうに慧音さんが言う。

 

「野菜を売りに行くんだろう? 付きあわせてもらうよ。どうせこの後も月に一度の飲み会さ、ついでよ」

 

 

 

      ***

 

 

 

 滅多に里に来る事の無い外来人は、割と里に歓迎されている。

と言うのは、外来人は特殊な知識を持つ人が多く、珍重されるからだ。

それは時には学んだ知識ではなく、身につけていた道具であったりもするのだが、不思議と里にたどり着く外来人は、里の役に立つ知識を持っている。

例えば農耕の、革新的なやり方。

例えば今まで捨てていた物を、食べ物として活用する知識。

例えば建築に関する詳しい経験。

幻想入りした当初に、わざわざ貴重な薬を使ってまで俺が介抱されたのも、その知識を期待されての事だった。

 

 ——しかし。俺は、いわゆるハズレの外来人だった。

名前を亡くしていたとは言え知識は同年代の平均以上にはあったのだが、それでも里の役に立つような事を俺は知らなかった。

かと言って外の世界に追いだそうにも、俺は外の世界に戻れない、いわゆる不良物件である。

俺は、知らず、里の人達の期待を裏切ってしまっていたのだ。

そして当然、期待はずれの外来人をどうすればいいのか、と里人の間で議論が交わされた。

里には食っていくのに余裕が無い訳では無いのだが、だからと言って好き好んで、人一人を養う程の金を、役立たずの外来人に使おうなどと言う好事家が居る訳でも無かったのだ。

俺は、訳がわからないままに知らない場所に身一つで放り出され、しかも何もしていないのに期待はずれだと言われ、気づかぬうちに薬代と言う負債を負ってしまっており、更には呆然と俺を押し付けあう会議を見ている事しかできなかった。

正直に言って、その場で泣き出さなかったのは奇跡だっただろうと、今でも思う。

数日続く会議のうち、俺はお先真っ暗と言って過分では無い状況を悟り、絶望に満ちたまま会議の終わりを待っていた。

 

 そんな俺を引き取ると言ってくれたのが、慧音さんだった。

難色を示す村人を押し切り、寺子屋のテキスト作りや資料の整理に人が欲しい、と言って俺を拾ってくれたのだ。

今度こそ、俺は情けなくも泣いてしまった。

このまま放り出され、妖怪とやらに食い殺されてしまうのではないか、それでなくとも馬車馬のように働かされて乞食のような生活しか送れないのではないか、と思っていた俺にとって、彼女の示した仕事や生活は、あまりにも輝かしかったのだ。

泣き出してしまった俺を抱きしめ、しょうがないな、と零しつつ彼女が俺の頭を撫でてくれたのは、今でも覚えている。

 

 新しい生活が始まり、俺はすぐに彼女を尊敬するようになった。

名前さえ亡くしてしまった、何一つ無い裸一貫の俺に比べ、彼女は人の尊敬を集め、人の役に立ち、人を守っており、明らかに価値のある人だった。

なにより人格者であった。

数日の会議のうちにやや疑心暗鬼の気ができてしまった俺だったが、彼女の誠実さに触れるうちに、すぐに健全になれたのだ。

俺は、稚拙ながらも俺が全力で作ったテキストや資料を受け取る慧音さんを見て、彼女の役に立てる事を誇らしく思い、また、何時か彼女と対等な場所まで上り詰め、恩返しをしてみせよう、と決意をする事になったのであった。

 

 

 

      ***

 

 

 

 慧音さんにお裾分けする分を除いた野菜は、すぐさま売れる事となった。

当然といえば当然と言えよう、里の守護者たる慧音さんが隣にいるのだ、商家が屁理屈を捏ねて買い取らないと言うどころか、気を使って無理にでも買い取ろうとするぐらいだろう。

とは言え、だ、俺はまるで慧音さんを野菜を売る為のダシに使ってしまったような事になってしまい、申し訳なく思う他なかった。

別にやましい心持ちがあった訳ではないのだが、まるで彼女を利用してしまったかのような状況は、正直に言って心苦しい事この上無い。

商家にも卑怯者、と目で罵られんばかりの視線を浴びせかけられ、あぁ、秋の収穫はどう売ろう、と考えて、それからまるで慧音さんを疎ましく思ってしまったかのような考えに、更に自己嫌悪に陥る。

野菜が売れこそしたものの、複雑な心境であった。

 

「しかし、良かったな。これで秋の収穫までの貯蓄は十分だろう?」

「ええ。これも慧音さんのお陰ですかね?」

「? 何がどう、だ?」

「美人は三文ぐらいは得って事ですよ」

「早起きと同じぐらいって事ね」

 

 とは言え、それをおくびにも出す訳にはゆくまい。

努めて顔面の筋肉を明るい表情を作るようにしながら、慧音さんと談話しつつリヤカーを引く。

現在はお裾分けの為に慧音さんの家へと向かっている最中であった。

 

「と言えば、権兵衛、君はちゃんと早起きするようになったか?

何時だったかな、家に来たばかりの頃は、たまに吃驚するぐらい寝坊する時があっただろ。

驚いたぞ、とっくに起きて散歩にでも行っているのかと思っていたら、昼ごろ起きだしてきた事は。

永遠亭の姫君かと思ったぐらいだぞ?」

「はは、流石に暑いからと言って、床で寝たり、氷柱に張り付いたりはしていませんよ。

いい加減、朝起きるぐらいは何とかできるようになっています。

まぁ、と言うのも、家の前にはちょうど良い目覚ましがあるからなんですが」

「目覚ましって?」

「切り株ですよ。朝兎が飛んできては、すごい音を立てて頭をぶつけてゆくんです。痛そうにして、帰ってゆくんですけどね」

「そのうち朝を待ちぼうける事にならないといいんだがな」

「生憎俺は今の所、夜が止まった経験は無いですね」

「そりゃあ良かった。っと、もう着いてしまったな」

 

 言われて気づくが、既に慧音さんの家の前まで着いていた。

久しぶりに会話らしい会話をしたからだろうか、時間がたつのを忘れてしまっていたらしい。

慧音さんとの会話が心おどるものであったと言う事も確かだろうが、矢張り会話が久しぶり過ぎる事が主な要因だろう。

人は、人と関わらないと、緩やかに腐敗してゆく。

例えば言葉を忘れたり、表情の作り方を忘れたりした人間を思い浮かべるといい。

そんな人間と、正常な人間とは、果たしてコミュニケーションが取れるだろうか?

答えは、否だ。

人間関係を作れない存在とはつまり、最早重力の存在しない、人間以下の存在に過ぎない。

精神の腐敗した、人間。

発酵とは微妙に違い、食べる所も残らない、完全な腐り方。

俺が辛うじてそんな風になっていないのは、矢張り月に一度は慧音さんと会話する機会があるからだろう。

再び慧音さんへの感謝の念を新たにしながら、リヤカーから野菜を持ち出し、慧音さんの後について家へとお邪魔する。

 

「では、お邪魔します」

 

 先導していた慧音さんが、ぴくりと動きを止める。

何気ない一言のつもりだったが、それは俺の腐った感性による主観でしかなく、慧音さんにとっては違ったらしい。

どうしたものかと困惑する俺に、ゆっくりと振り向きながら慧音さんは言った。

 

「………………あぁ。どうぞ、としか、今は言えないんだったな」

 

 泣きそうな声で言う慧音さんに、しかし俺は、返す言葉が無かった。

全くもってその通りだし、しかもそれは、外から強制力があったのも確かだが、俺の意思がそこにあったと言う事も確かであるのだ。

であれば、今更言う事など、何も無い。

何も無い、筈なのに。

俺の口は何か言葉を紡ごうとして、むにゃむにゃと動き、しかし言葉らしい言葉を発する事は出来なかった。

俺は、何を言おうとしたのだろうか。

俺は、何を言うべきだったのだろうか。

どうすれば、目の前の女性から、僅かでもいい、僅かでもいいから悲しみを減らす事ができたのだろうか。

それが分かる程の知能があれば、そも、俺は彼女を悲しませる事も無かっただろうが。

それでも、思ってしまう。

俺は、果たしてあの時他にどうするべきだったのだろうか。

 

 

 

      ***

 

 

 

 おかえり、と言う言葉を慧音さんから聞くようになって、数週間が経った。

俺は毎日のようにテキストを作ったり資料を整理したり、その感想を寺子屋の受講生に聞いてフィードバックをしながら過ごしていた。

今と比べ、とてつもなく充実していた、と言って間違いない毎日だっただろう。

少なくともその間には俺は里人から謂れなき悪意を受けることは無かったし、寺子屋の人々は明るい子供や紳士的な知識人などが多く、対話するだけで心あらわれる事も多かった。

それもある日、突然に途切れる事になる。

 

 その日、俺は夜の散歩をしていた。

と言うのも、慧音さんが俺に、夜の仕事があるうちは相手もしてやれず、しかし灯りを消すわけにもゆかないので寝るにも不都合、そこで散歩はどうだと勧めていたからである。

夜は妖怪の時間と言っても、里の中であれば安全で、しかも、何らかの発見が無かったとしても、夜の灯りがぽつぽつと点った道を歩いてゆく行為は、何処か郷愁を思わせて、粋であるように思えた。

と言う事で、その数週間、俺にとって夜の散歩は最早日課となりつつあったのだ。

 

 ちょうど、散歩の折り返しの辺りを過ぎて、帰ろうとしている途中だったと思う。

俺は突然に名前を知らない男に声をかけられた。

と言っても、俺は慧音さんの所に厄介になっている外来人と言う事で有名だったので、俺が相手を知らなくても相手が俺を知っていると言うのはよくある事だったので、特に警戒もせずに振り向いたと思う。

 

 いきなり、殴られた。

その数週間、防犯と言う物を意識する必要すら無かった俺は、当然の帰結として思いっきりぶっ飛ばされ、ふらついて膝を付いたと思う。

そのまま押し倒され、俺は顔を避けてそこら中をぼっこぼこに殴られた。

いきなりマウントポジションを取られた上、喧嘩と言う物に縁のなかったらしい俺は、抵抗する間もなくすぐに動けなくなり、しかし意識は残っている程度の状態になる。

すると男は、俺に向かって汚い口調で、以下のような事を言った。

お前が慧音先生にどれだけ負担をかけているか分かっているのか。

あの立派な人にたかるなど、人間のクズめ、お前に慧音先生に養われる資格など無い。

これは里の総意だ。正義なのだ。お前をこれから里から離れたほったて小屋にぶち込んでやる。

 

 当然俺は、幾許かの反論を用いた。

負担をかけているのは分かっているが、それを軽減しようと努力をしている事。

あの人は立派な人だから、望んでもいないのに、強制的に俺が一人暮らしをさせられようものなら、激怒するであろう事。

どちらもそこそこに意を得た反論であったハズだったが、男はせせ笑うだけでこちらの反応を一向に気にする事はなかった。

そればかりか、続けてこんな事を言う。

努力だと? バカバカしい、お前のしている事がどんな事なのか、これから見せてやるとも。

そしたらお前は、自分から慧音先生から離れようとするだろうさ。

そうでなければ最低以下のクズだ、妖怪の餌にでもしてやるとも。

 

 男の言葉が本気であると悟った俺は、どこぞへ連れてゆこうとする男に、とりあえずは従う事にした。

勿論機会を伺って逃げたり、大声を出したりしようと思いはしたのだが、逃げようにも足腰は歩くのがやっとで、口元は男の掌で塞がれていたのだ。

どうしようもないままに俺が連れられてきたのは、慧音さんの家だった。

一体どういう事だろう、と内心首を傾げる俺を、男は慧音さんの書斎が見える窓へと連れてゆく。

そこでは慧音さんが、様々な種類の紙に何やら文字を書いたり図表を書いたりしていた。

それがどうしたのかと思う俺に、男は素晴らしいまでの笑顔で言ってみせた。

 

 あれをよく見ろ。お前の作った物だろう?

 

 ——それは。

事実だった。

確かに俺が毎日苦労して作り上げたテキストや資料を横に、慧音さんはそれを新しい紙に書き直したり、書き足したり、図表を付け加えたり——つまりは、俺の仕事を手直ししていたのだ。

俺は、その時、ようやくの事理解した。

慧音さんが寺子屋の作業に人が欲しいと言っていたのは、本当にただの方便だったのだ。

しかも自分で作れば一度で済む物を、二度手間を要してまで必要と言い張って。

しかも俺が気にするといけないから、俺に夜の散歩を勧め、その時間の間に済ませるようにして。

——俺は、段々と目の前がぼんやりとしてゆく事に気づく。

殴られすぎて意識がどうにかなってしまったのではないかと思うが、違った。

俺は、泣いていたのであった。

 

 一つだけ弁解をさせてもらうとすれば、この時俺は、慧音さんに、一片たりも騙されたと言う憤りを感じ無かったという事を言わせてもらおう。

俺は、ただただ自分の無力さが悲しかったのだ。

慧音さんに負担をかけるばかりで、努力と称してやっていた事も、その実全く実を結んでいなかった事が。

慧音さんに何時か恩を返そうという話が、此処に居るままではどうやっても叶いそうになかった事が。

俺には、慧音さんと対等の所に立てない事が、どうにも悔しく、耐え難い事のように思えた。

そしてそれに対処する為には、どうしても、慧音さんの元に居ては不可能であるように思えたのだ。

 

 その後のことは、正直言って、よく覚えてはいない。

気づけば俺はほったて小屋に住むことになっていて、里人を通じてその事は慧音さんに伝わっていた。

どうやって彼女を説得したのかも覚えてはいないが、しかし、彼女の顔がどうにも悲しげだった事だけは、覚えている。

それがどうにもできない事が悔しくて悔しくて、どうすれば良かったものなのか、俺は今でも考えてばかりいるが、答えは未だ出ていない。

 

 それからは、ご存知の通り、月に一度満月の日に慧音さんが家に来る以外に会話する事すらなく、奇妙なほどに里人と縁のないまま、もう半年近くが過ぎている。

 

 

 

      ***

 

 

 

 日が落ちた。

昼と夜との境界線上の黄昏が姿を消し、白黒はっきりとついた夜が姿を現す時間だ。

ふと顔を上にやれば、夜空にはぽっかりとまぁるい満月が浮かんでいる。

これは聞いた話なのだが、この世の月とは偽物であり、天蓋に映しただけのまがい物であるのだと言う。

所で、多くの中秋の名月を見る時は雨であり、丸い物であるだんごを見て、本物の満月を想う事が粋だと言うのだそうだ。

であらば、天蓋に映った偽の満月しか見れない俺達は、偽の満月と言う丸い物を見て、その奥にあるのであろう本物の満月を想像している事となる訳で、つまりは誰もが粋な人間になれる一時であるのだろう。

逆説、真の満月の力を借りている妖怪達には、そして慧音さんには、この天蓋の月は、一体どのように見えているのだろうか。

そんな事を考えている俺の目前で、正座して目を瞑った慧音さんが、なにやら俺には理解できない言語でぶつぶつとつぶやいている。

その頭には一対の角が生えており、片方には赤いリボンが巻き付けられていた。

 

 ハクタク、と言うのだそうだ。

その獣はあらゆる病魔を退ける力を持ち、あらゆる知識を持つと言われる妖獣なのだと言う。

その姿は人面に牛の体、やたら多い目に角に顎鬚を蓄えていると言うが、目前の彼女はワーハクタクだからだろう、額の二本の角しか共通点は見当たらない。

慧音さんとしてはそれをどう思っているのか知らないが、月下美人を拝める俺としては、よくぞそこまでに留めてくれた物だと大自然のさじ加減に感謝したいところである。

 

 さておき、ワーハクタクである彼女は満月の夜だけハクタクの力を発揮し、歴史を創る程度の能力を得るらしい。

これは慧音さんから聞いた話そのままなのだが、歴史とは、ただあるだけでは歴史にならず、誰かの手によって初めて歴史となるのだと言う。

例えば時の権力者が創る歴史が、一番分かりやすいだろう。

自身にとって都合の良い歴史は残し、都合の悪い歴史は削る。

そのように人為的に手が入って初めて歴史はできるのだが、この幻想郷には彼女以外に歴史に手をだそうなんて好事家なぞ、稗田家ぐらいしか居ないらしい。

従って殆どの歴史を彼女が創らねばならないらしく、満月の夜はその作業に追われているのだ。

 

 と、言っても。

俺の見る限り、彼女は、ほったて小屋に正座して、月明かりに照らされながら、ただぶつぶつとつぶやいているようにしか見えない。

恐らくはその中では俺には想像もつかないぐらい高度な事が行われているのだろうが、外面だけで言ってしまえばそんなものである。

さて、慧音さんが歴史の編纂を一区切りつけるまで、手持ち無沙汰である。

と言っても、あの名前も知らない、ついでに言えばあれ以来あった事も無い里人に放り込まれたこのほったて小屋は、とてつもなく簡易的な出来であり、暇を潰すような場所が存在しない。

床がある。

壁がある。

あとは慧音さんに貰った小さな箪笥と、畳まれた布団に、中心にある囲炉裏。

ついでに、やたらとでかく、今は全開にして月明かりを取り入れている窓、と言うか鎧戸ぐらいか。

床の間どころか畳すらなく、流しもない、まさにほったて小屋である。

これで隣に倉庫がついていなかったら、俺は取れた野菜で圧死していたかもしれないぐらいの狭さだ。

うむ、また暇になった。

と思った所で、慧音さんが一つうなずき、瞼を開く。

 

「っと、こんなもんか。悪いな、権兵衛。何時も場所を貸してもらって」

「いえいえ、こちらの方が何倍もお世話になっている事ですし。確か、人の居る場所だと落ち着いて歴史の編纂ができない、んでしたっけ」

「ああ。どうも自宅に居ると、子供がからかいに来たりする事もあるもんでな。

それに、矢張りこういった作業は、普段の仕事をする場所とは別の場所ですると、はかどるもんなんだ」

「はぁ、なるほど」

 

 分かったような分からないような。

首を傾げる俺を見ながら苦笑し、慧音さんは横にのけてあった瓶に手を出す。

 

「まぁ、こんな満月の夜に、小難しい話ばかりと言うのも窮屈だろう。美味しいお水を飲もうじゃないか」

「ええ、世にも珍しい酔っ払う水ですね」

「そう、鬼とて喉から手が出る、酔っ払うお水さ」

 

 俺も彼女に同じくして、部屋の端の方に寄せてあった瓶と、先程川で洗ってきた赤い杯とを持ってきた。

つまりは、酒盛りの準備である。

つまみも何も無い、酒だけ、二人だけの飲み会であるが、これもまた毎月一度の恒例行事であった。

二人して互いの盃に互いの瓶の酒を注ぎ、軽く顔の高さ程度に持ち上げ、唱和する。

 

「「乾杯」」

 

 

 

      ***

 

 

 

 このほったて小屋に一人暮らしをするようになって以来、俺はどうにも人と縁がなかった。

まず、近くに人が居ない。

それだけならばまだしも、当初の俺は何時しかの会議を思い出し、あの里人の里の総意と言う言葉を否定しきれなかったので、里に近寄ろうにも怖くていけなかったのだ。

なので俺は、取りあえずはと中途半端な己の知識を元に、出来る筈の無い農耕に手を出し始めたのである。

——果たして、それが当然のごとく失敗していたならば、俺はどうしていただろうか。

里人に頭を下げて農耕の知識を教わりに行く事になっただろうか。

恥も外聞も誇りも投げ捨て、慧音さんに土下座してまた住まわせてもらっただろうか。

はたまた、そのどちらもできないまま、実力に比さない誇りに殉じて餓死していただろうか。

 

 結果的に、その問の答えは闇へと消える事となった。

と言うのは、春告精を代表とする春の妖精達の気まぐれで、枯れ果てる筈だった家の作物が出来てしまったからだ。

いや、しまった、と言いつつも、それは勿論幸運の類であったのだが……兎も角、俺は一人のまま誰とも関わらずに、生きる糧を得る事となった。

生活できる、となると、当然俺が里人と積極的に関わる理由は薄れる事となる。

 

 少し、経緯を話すとしよう。

妖精の祝福があっても、慣れない畑の農耕は著しく俺の体力を奪った。

何せ、体力も低く朝から夜まで一日中働く事すらままならず、かといって、表情を削ぎ落としながら無心に野菜の世話を続けて尚、妖精の祝福を必要とするほど、俺の農耕の腕は低かったのだから。

当然、朝起きれば畑に出て、夜まで働いたあとは寝るだけの生活が続くだけである。

無論のこと、俺には里人と関わる時間も機会も無かった。

精々が野菜を売って、得た金で買い物をするぐらいであったが、その細い蜘蛛の糸すら、俺は掴めなかったのである。

と言うのも、俺の社交性の低さ故か、里人との間には義務的な会話しか成立させる事ができず、気の利いた言葉や、そうでなくとも世間話のようなものをする事すら出来なかったのだ。

俺は一人のまま、精神を腐敗させてゆく事となった。

 

 そんな俺の生活の唯一の慰めは、矢張り、慧音さんだった。

特に最初のうちは度々にこのほったて小屋に顔をだしてくれて、時には俺の適当すぎた農耕のやり方に口を出してくれたり、時には疲れ切った俺に酒を持ってきてくれたりした。

それでも俺の精神が腐敗してゆくのは、止められはしなかったが。

何せ、この満月の夜の飲み会が始まった時、まだ一人暮らしを初めて一月と経っていない頃だったと言うのに、再び慧音さんの情けによる方便である事すら考えられずに快諾していたのだから。

もっとも、今思えば、わざわざ時間を慧音さんが忙しい満月の夜に指定しなくても良かった訳で、つまりは恐らく、ようやく事俺は真実慧音さんの役に立てているのだろうが。

と言っても、流石に実感の湧かない役に立ち方な上、どちらかと言えば俺の方がより助かっているように思える部分もあり、未だ俺は彼女に恩を返せたとは思えていないのだが……。

 

 兎に角、月に一度の約束が出来てから、俺の精神の腐敗は止まった。

と言う事で、先にもまして、慧音さんは俺にとっての恩人であった。

月に一度とは言え、心を潤わせる機会が確実にあると言う事実は、俺の心にとって大きな慰めとなった。

仕事にも精が出て、夜寝る時も、泥のように何も考えずに寝るのではなく、慧音さんとの次の会話や酒の味を想像して楽しみにしながら眠る事ができるようになった。

生活に、メリハリができた、と言えば分かりやすいか。

無感動で無重力な生活から、重力が低いのは変わらぬようでこそあるものの、情動の動く生活へと。

 

 そしてそれ故に、俺はより慧音さんに恩を返さねば、と思うようになる。

恩は積もるばかりで全く返せる見通しはつかないものの、当初に比べれば幾らか生活はマシになってきた事もあり、このまま生活が上向きの向上線を辿り続けるのであれば、何時かは慧音さんに恩返しが出来るほどになるだろう。

少なくとも、経済的に自立し、おんぶ抱っこにしかなれない状況から抜け出す事ぐらいは、視界の端に見えた程度ではあるものの、見通しがつくようになってきた。

なればこそと、兜の緒を締める気持ちで、俺は再び慧音さんへの恩返しをするため、毎日を過ごすことになったのであった。

 

 

 

      ***

 

 

 

 満月を肴に、酒を口に含む。

すぐに飲み込むのは、少しばかりもったいない。

僅かに口の中で転がし、香りを舌触りを楽しんでから、飲み込む。

喉を、アルコールが焼く感覚。

酒とは元々、触れる物を清める物でもある。

俺達が酒を飲むときに喉を焼く感覚があるのは、生涯のうちに嘘をつき、喉が穢れを持ってしまったから、それを清める為に熱が生まれるためだと言う。

それは確かに仕方のない事で、嘘も無しに生きてゆく事のできる人間なぞ、存在しない。

しかし、であらば、その喉を焼く感覚を愉しむ、と言うのは如何なものなのだろうか。

己が清められる事を喜び、感謝の為に愉しみを感じる、と言う粛々としたものなのだろうか。

己が穢れていると言うのに、喉を焼く快感に不謹慎にも喜ぶ、不心得者の仕業なのだろうか。

それとも、そのどちらも知らず、ただただ与えられた快感に流される白痴の所業なのだろうか。

さて、俺がどれであるかは自分でも分からない。

と言うのも、俺は酒に弱く、毎月の宴会で最後まで記憶を保って要られた試しが無いからだ。

ひょっとしたら己の穢れに泣いているのかもしれないし、穢れを穢れと知りながら陽気に笑い続けているのかもしれないし、はたまた己をよそに誰かの穢れを永遠と指摘し続ける理屈家にでもなっているのかもしれない。

しかし少なくとも、目の前の彼女がどれであるかは、分かる。

 

「うぅううう………………権兵衛ぇ。私は。私はぁ、駄目な女なんだよぉ」

 

 慧音さん。泣き上戸の気があった。

 

「この前だってそうだ、永遠亭の兎にも授業がめっちゃ分かりにくいとか言われたんだ。

なんだ、ただそっと言うだけならば兎も角だ、思いっきり正面から言われたと言う事は、思わずそうしてしまうぐらいに分かりにくかったと言う事だろう?

本当に……本当に、私は駄目駄目さ。

う、ううっ、ぐすっ、しくしく。

——その返事にしたって、私はなんて言ったと思う? 「反面教師?」だ。

ははっ、笑ってしまうよな。

実はそうではないと言ってもらいたかったと言う浅ましい台詞な上に、それを言って、納得までされてしまったんだ。

私は……私は……なんて、駄目女なんだっ!」

 

 んぐ、んぐ、んぐ、がつん! と盃が床に置かれ、酒が僅かに宙を舞う。

何ヶ月か前にも聞いた話だなぁ、と思いつつも、俺は苦笑気味に盃を傾け、酒を一口。

 

「——ぷはっ。

慧音さん、最初から誰しもに受け入れられる授業なんて、誰にもできっこありません。

でも人は努力はできるし、貴方はその努力をしているじゃあないですか。

努力は凄い、なんたって、ぴっかぴかの綺麗な手だった俺だって、ここ半年ほどで、妖精の気まぐれ付きとは言え立派な野菜が採れるようになったんです。

慧音さんだって、努力を続ければ何時しかきっと、みんなにわかってもらえる授業をできるに違いないでしょう。

それにですね、慧音さん、昼間も言いましたが、俺は今の貴方の講釈だって、結構好きなんですよ。

だからね、そんな事言わないでくださいよ、慧音さん」

 

 と、俺らしく然程気の利かない言葉を吐き出していると、ふと、慧音さんの視線が一点にとどまっているのに気づく。

するするとその視線の先を辿ると、その先には俺の手があった。

はてさてどうしたものかと、俺はとりあえず掌を上げてみる。

慧音さんの視線も、つられて上がる。

手を左右に振ってみる。

慧音さんの視線も、つられて左右にふらふらと揺れる。

 

「………………どうしたんです?」

 

 と聞くが早いか、ばしん、と慧音さんは両手で俺の右手首を掴んでいた。

盃はどうしたのかと思うが、何時の間やら床に置かれている。

意味不明の、電光石火の早業であった。

 

「……あの?」

「そうだよなぁ、権兵衛。

権兵衛の手は、私の家に住んでいた頃は、綺麗な物だったよなぁ。

つるつるとしていて、まるで女人の柔肌かと思わんばかりだったが」

 

 言いつつ、慧音さんは片手で俺の手首を抑えつつ、もう片手の人差し指で、俺の掌をゆっくりとなぞる。

 

「これは、切り傷かな、大方尖った物にでも引っ掛けたんだろうな、君は少し鈍い所があったから。

これは、うん、火傷の痕か? 全く、薬缶に触る時は気をつけろとあれほど言っただろうに……。

これは、あぁ、擦り傷だな、一体何処でこさえたんだ、こんなもの、家の前の切り株にでも躓いたか?

これは………………。

これは………………」

 

 ぽつぽつと、次々に慧音さんの口から俺の掌の傷の要因が語られる。

一つ一つ、掌を辿ってゆく指先と共に語られる傷の要因は、そのおおよそが一致していた。

俺でも言われて思い出すようなものがあると言うのには、最早驚くしかあるまい。

この人にとっては、俺なんて何でもお見通しなんだなぁ、と思うと、気恥ずかしい思いが湧いてくるもので、思わず視線を下にやってしまわざるを得ないものであった。

 

 暫くくすぐったさに耐えていると、傷口の列挙が止まる。

恐らく全ての傷口を挙げてしまったのだろうか、と思い、視線をあげようとするが、それよりも先に、ぐいっと手首を引っ張られた。

妖獣化している慧音さんの膂力は相当な物で、俺は体ごと慧音さんに引き寄せられる。

自然、と言うか不自然、何故にか俺は膝枕されるような形になってしまった。

単純に子供のようで気恥ずかしいと言うのと、その、何と言うか、なんだかいい匂いだとか、大迫力の胸部だとか、太ももの元をたどった辺りを意識してしまい、顔を赤くしてしまう俺。

誘っているのか? と一瞬脳裏に過る物があったが、同時に香る酒の匂いがそれを否定する。

凄絶に申し訳ない気分になりつつある俺に、静かな口調で慧音さんは口を開いた。

 

「なぁ、権兵衛。お前が私の家を出ていかなければ、お前の手は綺麗なままだったのかなぁ」

 

 ——……。

一瞬、僅かに心に刺さるものがあったが、それを無視して俺は言う。

 

「かも、しれませんね」

「いや、きっとそうだっただろう。

——いや、それどころじゃあない、そもそも私さえ居なければ、こんなに傷をこさえることは無かっただろうに」

「いえ、そんな事はありませんよ」

 

 首を振り、今度こそは力強く返答する。

本当に、そんな事だけはありえない。

 

「俺は、本当に貴方に感謝しているんです。

感謝し切れないってぐらい感謝しているし、恩だって返し切れないぐらいに感じている」

「違う、違うんだ」

 

 頭を振る慧音さんにどうしても安心して欲しくて、だから俺は続ける。

 

「安心してください、貴方が例えどんな事をしていようと、俺はきっと、貴方への感謝を忘れない。

恩だって忘れない。

それだけは、ずっと変わりがありませんとも」

「違う、本当に違うんだ!」

 

 唐突に怒鳴り声をあげて、慧音さんはどすん、と俺を突き飛ばす。

暴力への忌避より先に、しまった、慧音さんを否定しすぎたか、と後悔の念に駆られる。

仰向けになった俺の腹の上へと、すとんと慧音さんが座り込んだ。

両掌を俺の胸のあたりに起き、覗き込むように俺の目を見ながら言う。

 

「あぁ、すまない、本当にすまない、突き飛ばしたりして。

でも、違うんだ、本当に違うんだ。

私は、君に感謝なぞされるような女じゃあないんだ。

私は、君に恩義なぞ感じてもらえるような人間じゃあないんだ。

だって、だって、う、ううぅう、うう………………」

 

 ぽつり、と、俺の頬へと慧音さんへの涙が落ちてきた。

泣き上戸の慧音さんなのだから仕方ないと思いつつも、どうしても申し訳なさが心の中から沸いて出てしまう。

だからせめて、近くにある頭をなでつけるぐらいはさせてもらいたかったのだが、何故か手が動かない。

いや、と言うより——。

体が、動かない。

酔いが回ってしまったのか、と内心首を傾げる俺の前で、何時の間にか泣き止んでいた慧音さんがぽつりとつぶやいた。

 

「少し、私の告白を聞いてもらえないだろうか」

 

 ふと、気づく。

何時の間にか、夏だと言うのに、俺の部屋は肌寒いぐらいになっていた。

空気が肌をささんばかりにちりちりと尖り、息を吸うのも少しばかり苦しく感じるぐらいだ。

そういえば、と思う。

俺の腹に馬乗りになった慧音さんは、ちょうど背後に大きな窓をおいており、そこから覗く満月が、ちょうど慧音さんの頭上に登っていた。

その姿はぞっとするほど美しいのだが、昼間の慧音さんと比べると、何処か違和感がある。

厳かと言うか。

艶があると言うか。

それとも、浮世離れした、と言うか。

——それとも、そんな事を思う俺の脳こそ、満月の狂気に毒されているのだろうか。

何処か霞がかってきた頭に、あぁ、俺は本当に酒に弱いんだなぁ、とぼんやり思う。

そんな俺を前に、粛々と慧音さんは語り始めた。

 

「始めは、出来心だったんだ。

私の家を勝手に出て行った君に、少しばかり腹がたっていたと言うか、寂しかったと言うか、何とも言いつくせないんだが、複雑な心づもりがあって。

いや、だからと言って、許される事をした訳では無いのだけれども。

私は、私は——歴史を、喰った」

 

 区切って、慧音さんは、もう一度言い直した。

 

「君と、里人とが話しているのを見て——、その歴史を喰った。

本当に、魔が差したと言うか、出来心だったんだ、本当にすまない。

いや、謝って済む問題では無いのだが、それでも、すまない、本当にごめんなさい。

でも、兎に角、私は、君と里人との会話の歴史を喰った。

一度喰ってしまえば、二度目三度目もすぐにだった。

その瞬間瞬間は何だか適当な理由をつけて、私はすぐに見かける度に君と里人との歴史を喰うようになってしまった。

いや、もしかしたら、そうすれば君が私に泣きついてきて、また一緒の家に戻れるなんて思っていたのかもしれないな。

兎も角、私は君と里人との会話を食べては食べて、眼につく限りは食べて——、ついには、君が生きてゆくのに必要最低限にしか残さず、喰い尽くしてしまったんだ」

 

 話が続くのと一緒に、慧音さんの体は僅かに前傾を強くする。

と同時に、両掌が胸から徐々に上へ上がってゆき、肩を通りすぎてゆく。

 

「満月の夜に会おうと思ったのは、それからだ。

歴史の編纂に君の家が便利だと言って、上がりこんで、でも私はどうしても言い出せなかった。

酒の力を借りても、だ。

本当は、謝って謝って謝りまくって、そして君が望むならどんな歴史でも創ってあげよう、とすら思っていたのにね。

でも、結局言えなかった。

ちょっとだけ、それらしい事を言えたけれど、本当にそれだけ。

それだって、あとから、向かいあわないままに気づかれる事が怖くて、その歴史を喰ってしまった」

 

 ついに慧音さんの両手は、俺の首へと達した。

艶かしく動く指先は、優しく俺の首へと巻きつく。

 

「次の満月の夜は、どうにか君に告白を出来た。

だけれど。

だけれども、あぁ、すまない、本当にすまない。

私は、君に糾弾されるのが、怖くて怖くて仕方がなかったんだ。

いや、それどころか、君がもしかしたら許してくれるかもしれない、と思うほどに浅ましく、更には、だと言うのに答えを聞くのが怖くて、怖くて、本当に怖くて。

また私は、歴史を喰ってしまったんだ。

私が、君に告白した歴史を」

 

 ゆるやかな強さで、慧音さんは俺の首を締めていた。

本当にゆるやかなそれは、僅かに息苦しいだけで、どちらかと言うと指の艶めかしい動きの方が気になるぐらいだ。

 

「それからは、毎月同じことの繰り返しさ。

君に里人との歴史を喰った事を告白し。

でも答えを聞かないままに喋れなくして、夜中には告白した歴史を喰ってしまって。

……ははっ、本当に浅ましい女だろう?

その通りさ。

私は、君に尊敬されるような女じゃない。

私は、君に恩義なぞ感じてもらえるような人間じゃあ、ないんだ!

里の守護者だ賢者だ何だと言われていても、実際の私はそんな、浅ましく、愚かな女なんだよっ!」

 

 叫ぶと同時に、慧音さんは更に体の前傾を強くした。

ちょうど、頭で月が隠れるぐらいの位置になって、言う。

 

「だけど、だけれども!

今夜こそ、今夜こそは、絶対に歴史を喰わないでみせる!

本当に、絶対にだ!

だから。

だから、許してなどとは、口が裂けても言わないけれど、せめて、せめて君の手で私を裁いてくれ!

どんな風にしてくれてもかまわない。

女の部分だって、君にくれてやろう。

だから、だからせめて………………」

 

 蚊の鳴くような小さな声になってゆく慧音さんに、しかし俺は、薄れ行く意識の中、思うのだ。

許す。

許すとも。

貴方は覚えていないのですか?

俺は、言ったのだ。

貴方が例えどんな事をしていようと、俺はきっと、貴方への感謝を忘れない。

恩だって忘れない。

それだけは、ずっと変わりがありません、と。

それはこんな告白をされた今でも、不思議と変わらないのだ。

本当ならもっと憤りを感じてもいいと思うのだが、何故にか、むしろ慧音さんの感じていたであろう、後ろめたさや後悔への憐憫があり、そして、奇妙に安堵すらもあった。

この人も、俺のように、自分を情けないと思い、消えてしまいたくなるぐらいの劣等感を抱えているのだと。

俺は目標としていたこの人と、一箇所でも対等に立つ事が出来ていたのだと。

だから。

だから、俺はせめて、許すの一言だけでも口にしたいのだが、どうにも意識が薄れていってしまい、それができない。

それに悔しい思いをしながら、せめてと、俺は掌を動かす。

ぽつぽつと涙を零している彼女の、角の生えた頭へと手をやり、ぽん、と載せる。

はっと驚いた彼女の両目が見開くのを見ながら、俺はゆっくりと意識を失っていった。

 

 

 

      ***

 

 

 

 朝。

ごっつん、と切り株に兎がぶつかると言う音は、本当に週に三回ぐらいはあるのだが、今日はそれが鳴らないままに起きる事となった。

と言うか、満月の夜が明けた日は、何時もそうである。

さてはて、満月の兎とくれば餅でもついて疲れはてているのだろうか、などと下らない事を考えながら、頭の霞を追いだそうと、頭を振りながら起きだす。

何時もの通り、慧音さんは何故だか正座したまま俺の寝顔を見ていたようだった。

一体どうしたものなのかと毎回思うのだが、聞くと毎回妙な反応があるので、今回も聞いてみる事にする。

 

「……おはようございます。毎度思うんですが、朝から正座って、どうしたんですか?」

「え? あ、うん、おはよう。いや、そうじゃなくて、と言うか、その、何だ、君は、………………覚えて、いないのか?」

「昨夜の事なら、毎度の事ながら。いやはや、いい加減お酒にも強くなりたいものです」

「………………そう、か」

 

 と言う反応も毎回の通りで、俺の返しも毎度同じである。

と言うのも、俺は多分幻想郷に来て、この満月の晩酌で初めて酒を飲むようになったのだが、その度に夜の一部の記憶が飛んでしまうのだ。

その事を話すと、いつもの通り、慧音さんは僅かに目を見開いた後、悲しげな笑みを見せる。

あぁ、多分きっと、俺は酒を飲む度に彼女との会話を忘れてしまい、それを共有できない事が彼女にとっては悲しい事なのだろう。

かと言って、覚えていない事で嘘をつくのも、すぐにばれてしまう事は間違い無い。

なので、やれやれ、いい加減慣れて酒に強くならねばな、と、余裕の出来てきた生活に一人用の晩酌の購入費を考えながら、俺はまた新たな一月の生活を始める次第になったのであった。

 

 




当時ブランクがあったこともあり、少々文章がねっとりしている。
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