ルナティック幻想入り   作:アルパカ度数38%

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21-守屋神社3

 

 

 夜明けの日が昇る。

咄嗟に目を閉じるけれど、朝焼けは夕焼けと違ってその境は曖昧模糊とした物ではなくハッキリとしていて、だからその光は攻撃的に俺の瞼の裏まで届いた。

瞼が赤い輝きで満ちる。

朝も朝、早朝どころか夜明けであるこの時刻、空気は無数の針となって肌を刺すように冷たい。

瞼を開いた。

朝焼けの光は、まるで希望に満ちているかのようにきらきらと輝きながら、神社を照らしていた。

胸を張って、小さく、息を吸う。

朝の冷たい空気で肺を満たし、神社の出入口、鳥居の真下に立っていた俺は、踵を返し、それから上半身だけ振り返って、もう一度神社を眺めた。

矢張り厳かな神社が朝焼けに照らされている光景は、とても荘厳で、白いひんやりとした霧でも出てきそうに思える。

それでもそこには神奈子様が居て、諏訪子様が居て、東風谷さんが居るのだ。

そう思うと、僅かに親しみが増し、俺は僅かばかり此処に留まっていたい気持ちになる。

目の上に掌をやりつばを作って太陽の方に眼をやると、まだ日は昇ってすぐのようだった。

神奈子様は朝一番に、と言ったが、厳密には、住人が起きだす前に、と言う事である。

ならほんの少し、回想を行うだけの間は此処に居てもいいだろうか、と内心の甘えを許し、俺は少しばかりの回想にふける事にした。

 

 昨日、と言うか、時刻的には既に今日となっていた頃。

俺は夜中、神気の誘いによって、神奈子様に誘い出され、話をした。

東風谷さんの支えとなった事への礼から始まり、神奈子様の話はすぐに俺の事へと移っていった。

 

「明日の朝一番に此処を出ていって、もう二度と此処に来ないでもらえるかい?」

 

 と、神奈子様は言った。

俺は流石に驚き、そして同時に簡単に承諾できる事では無い、と思った。

何故なら俺は、東風谷さんに一緒に居ると約束したばかりなのである。

勿論、物理的には互いの都合もあるだろうと思い、枕詞に“心は”とつけたが、それでもたまには会いに行きたい物だ。

よって俺は、すぐに口を開いて詳細を聞いた。

 

「その、一体どういう事か、聞かせてはもらえないでしょうか?」

「あぁ、すまない、ちょっといきなりだったね」

 

 言いつつ、神奈子様は意見を変える様子は無いようであった。

お猪口を揺らし、酒の水面を揺らしつつ、神奈子様は続ける。

 

「権兵衛、あんた自分の能力には気づいているかい?」

「え? はい、“月の魔法を使う程度の能力”の事でしょうか?」

「いや、そっちじゃない、“名前が亡い程度の能力”の方さ」

 

 と、言われて俺は目を点にしてしまった。

確かに、俺は自分の名前が無いのではなく亡い、全く既存の状態を外れた状態にある事を理解していた。

だが、しかし。

 

「えっと、気づいてはいましたが、能力と名を冠する程の物なのだとは思っていませんでした」

「ん、確かに、神とでも出会わなければ、地味で気づきにくい能力だからね」

 

 言いつつ、神奈子様はこくりと一口、酒で口を湿らせてから言う。

 

「あんたは分かっているみたいだけど、改めて説明するよ?

物には、三つの状態がある。

名前が付く前と、後と、忘れられた状態。

権兵衛、あんたの名前はその三つの状態のどれでもない状態にあるのさ」

「それは、そうですけれど……。

それって、何かの効用があるような状態なのですか?」

「あぁ、ある」

 

 一旦区切り、神奈子様は俺の目を見つめる。

何故か、哀れみの色が垣間見えたような気がした。

 

「まず一つ、あんたは名前がどれでもない状態にある。

それ故にあらゆる名前と、あんたは等距離に居るの。

そこで誰かが見たい面影を思うと、権兵衛、あんたは少しだけその面影の持つ名前に近づく事になる。

そうすると、他の名前が等距離に離れている中一つだけその面影が近づく事になるから、その誰かはあんたに見たい面影を見る事ができるのさ。

これが、私が最初にあんたの能力に気づいた理由ね」

 

 と、神奈子様。

確かに、思い当たるふしが無いと言えば嘘になる。

と言うか、思い当たるふしがあり過ぎだった。

幽々子さんに妖夢さんにレミリアさんに、他にも思い当たる事はいくつかある。

ふと、俺は少し前にした妄想の事を思い出した。

俺には、もしかして人の心を操るような、忌まわしい力があるのでは無かろうか、なんて妄想。

ぞ、と思わず寒気を感じ、俺は自身を抱きしめた。

 

「あぁ、大丈夫、この効力自体は見る限り、そう強いもんじゃあない。

何か強い感情を抱く切欠ぐらいには成り得るけれど、それ以上の物じゃあないよ。

大事なのは、もう一つの効力」

 

 と言われ、思わず俺は安堵の溜息をついてから、オウム返しに言う。

 

「もう一つの、効力?」

「……神って言うのは、元々どんな存在だったか分かるかい?」

 

 が、返ってきたのは遠回りな言葉であった。

俺は、首を横に振る事で答える。

 

「神は元々、名無しの存在だった。

様々な物すべてが混ざった混沌の世界で、神はこの世の物一つ一つに名を付けてまわった。

これが神の力、創造の力さ。

そして神は、自らに名前をつける事で、その一側面を切り取り、性質を変化させる事ができる。

逆にまだ名前のついていない曖昧模糊な神は、名前がつく前の物にしか宿る事ができない。

つまり、どういう事か分かるかい?

妖怪が精神の生き物であるように。

神は、名前の生き物なんだ。

名前に関する事に大きく力や存在を左右される。

信仰が神の力を大きく変えるのも、名前に関する認識がものをいっているのよ」

「はぁ……成程」

 

 神職では無い俺にとっては、初耳な事ばかりであった。

耳新しい事を聞くのは心地良いが、しかしはて、これが俺の“名前が亡い程度の能力”にどう関係あるのだろうか?

小さく首を傾げる俺に、慌てるな、と言わんばかりに、神奈子様は苦笑気味に続ける。

 

「つまり、ね。 名前が亡い……名前と言う状態から離れているあんたは、神にとって天敵なのよ」

「………………」

 

 思わず、絶句した。

神の、天敵。

あまりに規模が大きすぎる話に、頭がついていかない。

 

「そうね、亡霊に対する蓬莱人に似た関係かしら。

神は名前に関する事によってその膨大な力を得るけれども、名前が亡いあんたには、神の力が及ばない。

身近な所で言えば、発酵なんかがそうかしら?

発酵の力は神の力、それが及ばない、なんて事に心当たりは無い?」

「そう、言えば。

家では何故か漬け物ができにくくて、食べ物が腐りにくかったような、気が……。

酒も発酵物ですか? 一応」

 

 思い出す。

そう、俺の自宅では漬け物ができた試しが無い。

代わりに野菜が腐りにくくて、そのお陰で俺は夏を乗り切ったのだ。

そして俺は、発酵物である酒を殆ど無限に飲める。

 

「でも、まさか、俺にそんな大それた力が……?」

 

 思わず、手を覗き込んでしまう。

神、つまり幻想郷で最も強い部類の存在の、天敵。

そう言ってしまうとあまりに大きい存在である。

俺は今まで自分を惨めな程卑小な存在だと思っていたからか、そのギャップの大きさに目眩すらした。

倒れそうになるのを根性で抑え、とりあえず“名前が亡い程度の能力”については後で考える事にして、口を開く。

 

「その、天敵と言いますけれど、俺は具体的に何か、神奈子様や諏訪子様に不利益を与えてしまうのでしょうか?」

「ああ」

 

 重々しく頭を振る神奈子様に、がん、と頭に殴られたかのような衝撃が走った。

動揺に震える俺を尻目に、神奈子様が続ける。

 

「あんたの近くは、まるで名前の真空のような状態なんだ。

あんたは名付ける事によって存在する力を、無限に吸いとってゆく。

そして何時かは……、その力を吸い尽くし、この世から消し去ってしまう」

「それ、は、つまり……」

 

 震える唇で辛うじて言う俺に、神奈子様が返した。

 

「簡単に言えば、あんたと一緒に居ると、私も諏訪子も消えてしまう。

そして早苗も、神としての力を無くしてしまう」

 

 深く、息を吐く。

自然と俺は俯き、このまま倒れてしまいそうなぐらいに脱力した。

久しく、絶望的な気分だった。

加えて慣れないような絶望でもある。

自分の余りの卑小さに絶望を味わってきたものの、自分の余りの強大さに絶望するとは、初めての経験であった。

項垂れる俺に、神奈子様が、気遣わしげな声で続ける。

 

「……その。

分かっているとは思うけれど、そんな事は私も諏訪子も嫌だし、早苗の為にもならない。

早苗が折角得た理解者を離したくは無いけれど、だからと言ってそれで私達が消えてしまうんじゃあ、あの子が報われないよ。

ううん、それだけじゃない、もしかしたら私達が消えた原因を、自分の我儘の所為だなんて思うかもしれない。

ただでさえ、両親を自分の手で殺したと思っているあの子に、それ以上の重荷を背負わせられないよ……」

「……はい」

 

 分かりきっている事だった。

それでも、東風谷さんとした約束を破る事になると考えると、胸が引き裂けそうな痛みが走る。

俺如きとは言え、今まで誰も理解者の居なかった東風谷さんの、初めての理解者なのである。

それが離れるとは、一体東風谷さんをどれほど悲しませる事になるだろうか。

思い出す。

まるで自らの血を掻きだすような様子で、懺悔するように己の罪を告白した東風谷さん。

俺を殺す事でしか迫り来る現実から逃れられず、しかしそれすらも成し遂げられずに全てに絶望した東風谷さん。

それらを一度救い、裏切るような形になるのである。

その悲しみは、当然今まで以上となるだろう。

想像だにできない程の、苦痛に。

 

 俺は、全身から活力を集め、どうにか体を持ち上げた。

揺れる頭で、どうにか神奈子様の目へと視線をやる。

真摯な瞳であった。

たかが俺相手だと言うのに、こうまで真摯な瞳で向きあってくれると言う事から、俺は神奈子様が諏訪子様と違い、東風谷さんを気にかけてくれるのでは、と想像する。

ただ、あまりの事実に、言葉に力は入らなかった。

 

「分かり、ました……」

 

 言ってから、俺が東風谷さんの事をお願いする立場にあるのだ、と気づき、大きく息を吸い込んだ。

胸を張る。

背筋を伸ばし、残る力を振り絞って、口を開いた。

 

「明日の朝一晩に此処を出ていって、二度と此処には近づかない事にします」

「あぁ、お願いするよ」

 

 と言ってから、神奈子様は最後に付け加えるように言った。

 

「所で、結果がどうなるか、気になるだろう?

落ち着いたら、私の方からあんたへと報告に行くよ。

なぁに、多少力が削げても、神社に戻る事ができれば、何とかなるさ。

時間が経ったら、そのうち早苗達もあんたの家に行かせる事ができるかもしれない。

だからさ、そんなにクヨクヨするなって」

 

 そして現在。

瞼の裏から、朝日の光が差しているのが分かる。

回想を終えて、俺は神社の鳥居の前で立っていた。

これから俺は、神社を去る事になるのだろう。

東風谷さんとはしばらく出会えないし、報告に来ると言う神奈子様も、すぐには来れないだろう。

だが、希望はまだあるのだ。

たまにしか会えなくなるだろうとは言え、東風谷さんを支え続ける事はできるのだ。

そう思うと、胸が幾分晴れやかになり、気が休まる。

 

 さて、そろそろ出ないと、誰かが起きだしてくる所だろう。

そうなれば面倒な事になるのは眼に見えているし、そうならない為にわざわざ俺は徹夜までしたのである。

それが無駄にならないように、俺は一歩、神社の外へと踏み出す事にする。

 

「………………」

 

 俺は、無言で一度、神社の方を振り返った。

だがそれだけにして、黙々と参道を歩いてゆき、妖怪の山を降りてゆく。

直接歩いて降りてゆくのは、下手に空を飛んで魔力を使えば、住人を起こしかねない、と言う配慮からであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 八坂神奈子は、一歩離れた所から権兵衛と諏訪子、早苗との関係を見ていた。

諏訪子は、明らかに権兵衛の能力に囚われていた。

神奈子の思い出せる限り、権兵衛と諏訪子の夫とはある程度の類似点はあるものの、どちらかと言えば似ていると言う程度に過ぎない。

だのに権兵衛の事を夫などと言うのは、恐らく主に二つの理由からである。

単純に権兵衛が好ましい人物であると言う事と。

権兵衛の“名前の亡い程度の能力”で権兵衛に亡き夫の面影を見た事。

どちらか一つならば良かったのだろうが、両方が重なってしまった今、諏訪子の愛情は狂的な物となっていた。

諏訪子の夫への愛情が深かった故に、自分が誰かを愛している事と相手が夫である事を等号で結んでしまった事もあるのだろう。

もしかしたら、早苗と同じように神奈子の気づかない所で、諏訪子は亡くした夫の事で心を病んでいたのかもしれない。

兎に角、それらの影響で生まれた諏訪子の愛情は、控えめに言っても一方的であった。

権兵衛の感情などお構いなしと言わんばかりに詰め寄り、権兵衛が自分を愛しているのが当然だと疑ってかからず、前提条件とすら考えている。

 

 早苗もまた、権兵衛に対する感情は正常とは言い難いよう神奈子には思えた。

早苗の告白は、少し唐突過ぎたし、罪を告白するにしても、出会って数刻の人間にあそこまでするのは少しおかしい。

恐らくは、彼女もまた権兵衛の能力に囚われていたのだろう、と神奈子は考える。

早苗は無意識に求めていた自分の理解者と言う像を、権兵衛に投影していたのだろう、と。

また、早苗にとって、権兵衛は現在自分の事を最も理解してくれている相手である。

そして早苗は孤独で居る事を恐れており、また、他者に依存的に育ってしまっていた。

となれば、これから早苗が権兵衛に対し、これまで神奈子と諏訪子へしていた以上に依存する事は、眼に見えている。

 

 確かに、と神奈子は思う。

確かに権兵衛は、優しい。

神奈子の長い生涯ですら見たことのないぐらいの優しさを持っており、その優しさをすれば、二人の愛情をも受け止められるだろう、と神奈子は予測する。

何せ、あの権兵衛なのである。

通常なら狂的な愛情と依存を抱えきれず、血を見る展開に成り得るだろうが、権兵衛なら何とかできるかもしれない。

できるかもしれないが。

権兵衛は、二人分の人生の全ての責任を、その小さく若い身に背負う事になるのだ。

恐らく権兵衛は、それすらもやり遂げるだろう。

そんな二人の責任を背負って、それでいながら辛そうな顔一つせず、誰かが幸せになって良かった、と、そう言ってのけるのだろう。

 

 だが、神奈子にはそれが辛かった。

見ていられないのだ。

ただの少し変わった人間にしか過ぎない権兵衛が、何千年と生きた祟り神や、現人神であり巫女でもある奇跡を起こす少女の全責任を背負って進む姿は、あまりにも哀れだった。

それを恐らく一切辛いなどとは漏らさないだろうという予測が、更にその姿を哀れに思わせる。

無論、権兵衛がそれを辛く思わない以上、それに手を出す事は単なる神奈子の自己満足になる、それは出来ない。

そんな事をした所で、権兵衛は困ったような顔で、大丈夫ですよ、と言って神奈子に心配させないよう、努めて笑顔を作るだけなのだから。

 

 よって権兵衛の能力が神の天敵であると言うのは、神奈子にとって僥倖であった。

勿論早苗が心配なのも確かだが、それよりもむしろ神奈子は、権兵衛が二人から離れる事の出来る口実ができる事に安堵していた。

これで、権兵衛が二人に依存され、その大きな責任を背負う事が無くなる。

そう思うと、神奈子は胸が暖かくなるのを抑えられなかった。

 

「まぁ、権兵衛には、幸せになって欲しいからねぇ……」

 

 独りごちて、神奈子は細めた目で、数時間前に権兵衛が通り過ぎた鳥居を見据える。

鳥居の前に直立したままでいるのは、万が一諏訪子や早苗が権兵衛を追うことのないよう、監視する為であった。

 

「権兵衛、かぁ……」

 

 不思議な男だったな、と神奈子は思う。

兎に角優しい男であった。

どれほど優しいかと言うと、千の言葉を尽くしても語りきれぬ程に優しく、そして万の言葉を尽くしても語りきれぬほどに懐の深い男だった。

あらゆる物を受け入れ、そして許せる男であった。

神奈子も長い事生きているが、人妖神仏仙人天人、あらゆる存在の中でも突出して権兵衛は優しかった。

 

 自分も、と。

自分も権兵衛に許されるような罪があったら、どうなっていたのだろう、と不意に神奈子は思った。

矢張り早苗のように依存的な感情を抱いていたのだろうか。

それとも、諏訪子のように一方的な愛情を抱く事になっていたのだろうか。

どちらも少しだけ羨ましいような気がしたが、神奈子は頭を振ってその考えを追い出した。

何せ、今はこの守矢神社で、神奈子だけが真の意味で権兵衛の味方なのである。

その上、恐らく権兵衛自身意識しての事では無いだろうが、愛の言葉を吐いてもらったのだ。

それで十分ではないか。

そう結論付けた頃、凄まじい神気が神社の中で爆発した。

諏訪子が起き、権兵衛の気配が無い事に気づいたのだろう。

同時、早苗が何事かと飛び起き、同じように権兵衛の不在に気づく。

そして直後、二人は何故か鳥居の前に立つ神奈子の存在に気づいた。

ドタドタと走りまわる音がし、諏訪子と早苗が表に出てくる。

 

「神奈子、権兵衛が何処に行ったか知らない!?」

「神奈子様、権兵衛さんが何処に行ったか知りませんか!?」

 

 殆ど同時に言うと、二人は鼻白んだかのようにお互いを見つめ合う。

諏訪子は昨日あれほど権兵衛を嫌っている様子だった早苗が権兵衛を探している様子に驚き。

早苗は、諏訪子が慌てる程に権兵衛の事を探している様子に驚いているのだろう。

しかしそれも数秒、再び神奈子へと二対の視線が降り注いだ。

溜息一つ。

神奈子は、辺り構わず振舞う二人に、目をひそめる。

こんな自己中心的な二人に、権兵衛に優しくされる資格があるのか。

それならば、自分の方がよっぽど……。

頭を過る考えを頭を振って追い出し、神奈子は口を開く。

 

「権兵衛は今朝一番に、自分の意思で此処を出ていって、もう戻ってくる事は無いよ」

 

 それに諏訪子は無言で身じろぎ一つせず、早苗は目を見開き震える事で答えた。

先に、早苗が口を開く。

 

「そ、そんな……、う、嘘です、権兵衛さんがそんな事する、理由がっ!」

「あるんだよね、これが」

 

 と言って、神奈子は権兵衛の能力について話した。

“名前が亡い程度の能力”。

神の天敵たる能力。

昨夜早苗と権兵衛の話を盗み聞きしてしまった事、それによって権兵衛が早苗を思い、此処を出るようにした事。

 

 それを聞いた早苗は、崩れ落ち、顔を両手で覆った。

全身を大きく震わせながら、ひゅうひゅうと呼吸をする。

信じられないけれど理解できてしまう、と言った様相であった。

それでも最後の抵抗とばかりに、面を上げ、叫ぶ。

 

「そ、それでもっ! 私一人なら、権兵衛さんの能力でも人間に戻ってしまうだけですっ!

そりゃあ、私は役立たずになってしまいますけど……。

それでも、お側に居させてもらう事すらもできないのですか!?」

 

 その言葉のあまりの身勝手さに、神奈子は顔を顰めた。

 

「それが、本当に権兵衛の為になると思うのかい?

神の力を奪ってしまったと言う咎を負わせ、何の力も無くなった小娘を養わなければならないようになる事が、本当に権兵衛の為なのかい!?」

 

 それを聞くと、己の自分勝手さを理解したのだろう、早苗は目を見開き、ひゅう、と大きく息を吸った。

それからだらんと腕を垂らし、尻をついて、天を仰いで脱力、放心する。

それを見て、神奈子は内心黒い喜びが湧くのを抑えきれなかった。

確かに私には何の問題も無いけれど、だからって問題のある子が気にされるのは、ずるい。

そんな感情が、神奈子の心の底には渦巻いていたのだ。

 

 それから、神奈子は諏訪子の方へと視線をやる。

全くの無表情で居る諏訪子は異様な威圧感を醸し出していた。

昨夜はそれに押されて思わず退いてしまった神奈子だが、今度は覚悟が違う、耐えしのいでみせる。

その様子を見ていた諏訪子は、へぇ、と小さく呟き、それから口を開いた。

 

「神奈子。 あのね、権兵衛はね、私の夫なの。

だから早苗の事より私の事を優先するのは、当然の事じゃない」

「あんたが権兵衛の伴侶だと言うのを百歩譲って認めるとして、だ。

あんたは伴侶を自らの手で失わせるような事を、権兵衛に強制するのか?」

「うん!」

 

 諏訪子は、迷いなく答えた。

思わず、神奈子は目を見開く。

 

「だって、他ならぬ権兵衛の手で私は死ねるんだよ?

私も幸せだし、それなら権兵衛だって幸せに決まっている!

ううん、それだけじゃない、私達、もう一度約束できるのっ。

来世でもまたお互いを見つけ、伴侶にしましょうって。

それも今度は、一方的じゃなくて、お互いにできるのよ。

ねぇ、とってもロマンティックだと思わない?」

 

 そう言って見せる諏訪子の瞳は、明らかに狂気を宿していた。

どろどろとした黒い物が、ずりずりと諏訪子の瞳の上を這いずり回る。

次第に上から上から重なって層を作ってゆくそれは、ある時、突然に舌を出してきた。

黒々と輝くそれは、蛙の舌のように一瞬で伸び、鞭のようにしなりながら神奈子の首に巻きつく。

あまりの気配に、神奈子は息をする事すらもできなかった。

震える手で喉を抑えようとするが、体はまるで何かヌメヌメとした物に巻き付かれたかのような感覚がし、動かない。

恐怖のあまり、神奈子が叫びそうになった、瞬間である。

 

「大体さぁ」

 

 と、諏訪子が呟いた。

同時に幻視が消え、神奈子は軽く咳き込むが、それを無視して諏訪子は続ける。

 

「神奈子、あんた本当に早苗の為に権兵衛を此処から出したって言うの?」

「け、ほ、なんで、そんな事?」

 

 疑問詞を浮かべる神奈子に、絶対零度の視線で諏訪子は答えた。

 

「だってさ、それなら何で権兵衛に経過を伝えるのは神奈子だけなの?

早苗じゃないのは分かるよ?

神としての力も比較して小さいし、何より落ち込んだ早苗を直接権兵衛の元に行かせるのは論外。

でも、私が入っていない理由は何?

神は権兵衛に近づくと力を無くしていくから?

それならなんで交代制を考えなかったの?

ううん、そもそもそんな深刻な事情があるなら、他の人妖を伝い手に、手紙でも送ればいい。

里の人間は駄目だけど、その程度の依頼を聞いてくれる人妖ならいくらでも居るでしょう?

ねぇ、私の言う事、何か間違っている?」

 

 がつん、と頭を殴られたような衝撃に、神奈子はよろめいた。

確かに、諏訪子の言う事は理論的で筋が通っていた。

何故思いつかなかったのだろう、と思うと同時、神奈子の背筋に悪寒が生まれる。

 

「やめろ」

 

 と、小さく神奈子は呟いた。

それを無視して、諏訪子は続ける。

 

「理由は簡単。

そうなればあんたが、唯一権兵衛の味方になれるから。

あんたが、権兵衛と二人きりの関係になれるから。

早苗の事なんて本当はどうでもいい、権兵衛の事だけ」

「やめろ……」

 

 頭を振りつつ、神奈子は否定の言葉を重ねた。

だってこのままでは、神奈子は諏訪子や早苗と同じく、権兵衛を自己中心的に接する事しか出来ていない事になる。

そうなれば、権兵衛にとって、神奈子は特別な相手ではなくなるのだ。

それは、嫌だった。

何故だか神奈子に理由は分からなかったが、兎に角嫌だった。

目眩が止まらず、神奈子はふらふらと諏訪子へ近づいてゆく。

そんな神奈子相手に、諏訪子は酷薄な笑みを浮かべて、断罪の言葉を告げた。

 

「あんたが、権兵衛の事が、好きだから」

「やめろっ!」

 

 絶叫と共に、神奈子は神力の篭った弾幕を放った。

明らかに神相手でも殺傷力のあるそれは、光の尾を退いて超速度で諏訪子へと突き進み、炸裂する。

極光。

爆音。

同時に生まれる砂塵が、諏訪子の姿を覆い隠す。

しかし暫くの間が経過すると、風が煙を払い、中の諏訪子が鉄輪で弾幕を弾いた姿勢のままでいるのが見えた。

殺気を顕に、憎悪の笑みを諏訪子は浮かべる。

 

「やっと本性を出したわね、この泥棒猫がっ!

私の権兵衛を奪い取ろうなんて、絶対に許さないよっ!」

「違う……、違うんだ、私は、お前たちと同類なんかじゃないっ!

わ、私は、もっと権兵衛に、真摯な感情を持っているんだっ!」

 

 対する神奈子もまた、憎悪を顕にし、般若のような顔で吐き散らした。

ぷっ、と思わず吹き出してしまいながら、諏訪子は答える。

 

「真摯? 騙して、自分だけの物にしようって言う事の、何処が?

そんな蛆虫のような感情ごとき、私の真摯な愛に敵う筈がないと知れっ!」

「黙れ……、黙れ、黙れぇっ!」

 

 再び絶叫と共に神奈子は弾幕を放ち、今度は諏訪子もまた応じて弾幕を放った。

すぐに両者は空中へと飛び上がり、舞台は守矢神社の空中へ。

神と神の殺意が篭った戦いが、始まった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 守矢神社は、局地的な豪雨に見舞われていた。

そんな中、雷と思わしき轟音が頻繁に響き、様々な色の光が縦横に走る。

蛍光色の弾幕が尾を引き、黒雲の中を走ってゆくその姿を見て、早苗は何だか現代に居た頃のネオンに似ているな、と思った。

弾幕は最早あまりの速度に、早苗の目をして線分としてしか捉えられなかった。

発生源である二柱の神もまた、上空に位置している上に高速で移動しており、更に背景が暗い雲となると、早苗には何処に居るのか分からなかった。

いっそ二人が居ると分からなければ良かったのに、と早苗は思う。

そうだとすれば、早苗は何もかもを忘れていられたかもしれなかったのに。

なのに上空からは、醜い罵り合いの声が聞こえてくる。

 

「何時から権兵衛に色目を使っていたの、私が出会う以前に盗み食いでもしようとしてたの?

それとも昨日一晩で、その軽い尻を振って近づくような出来事でもあった!?」

「黙れっ、一度負けたあんた如きが私の思い出を汚すなっ!

大体、時間を言うならあんたは殆ど一目惚れだっただろうがっ!」

「はぁ? 私の愛は、千年以上続く永遠の愛だろうがっ!」

 

 会話はどちらも一方的な物だった。

諏訪子は勿論、神奈子もまた諏訪子の神奈子評を否定するでもなく、ただ諏訪子の言葉を否定するだけ。

その必死さは、早苗が知る限り、早苗に一度も向けられた事が無い程の物で。

だから同時に、早苗は実感する。

 

 私は、お二人に捨てられてしまったのだ。

 

 昨夜の諏訪子と神奈子の様子から何となく感づいていた物の、実際に起こって感じる物は予想以上だった。

全身を虚脱感が襲い、早苗は最早倒れてしまいたかったが、尻をついた姿勢から重心を動かすのも億劫で、それもできない。

雨を相手に口を閉じるのも面倒で、時たま溜まってきた雨水に早苗は咳き込み、雨水を吐き出している。

昨夜以上に絶望的な感覚だった。

権兵衛を奪われるかもしれないと言う危機感より、実際に目の前でどうでもよく扱われたり、体の良いダシとして扱われたり、そうなる方がずっと応えた。

何より。

何よりも。

早苗の権兵衛は、早苗から引き離されてしまったのだ。

 

 権兵衛と二度と出会えないかもしれない。

そう思うだけで目の前が真っ暗になると言うのに、神奈子はそれを本当に仕出かしてくれたのだ。

本当は早苗は、権兵衛を神として仰ぎ、その巫女となる筈だったのに。

丁寧に、その道すらも奪って。

それも道理の通った、反論しようのない言葉でもって、である。

 

 早苗には、最早自分独りしか存在しなかった。

昨夜権兵衛に膝枕され、自分が独りでなくなった事を実感した直後だからこそ、余計にその辛さが分かる。

昨夜感じた幸福感全てが、絶望に置き換わったような感覚であった。

権兵衛のくれた幸福が、埒外の大きさであったからこそ。

それを失った絶望も、また大きく。

 

「………………ぁ」

 

 現実感を伴い、ようやくやってきた本物の絶望に、早苗は思わず声を上げた。

口に溜まっている雨水がぼこりと泡立ち、それを飲み込みそうになって、早苗はそれを口の外に吐き出す。

勢い悪く閉じた唇からあふれた雨水は、早苗の口の両端から零れ、喉を伝い、朝飛び出た時にそのままだった寝間着へとたどり着く。

先ほどからずっと雨に晒されていた寝間着は、雨が染みこみ、鉛のように重かった。

そんな風に早苗が絶望している間も、二柱の神の罵詈雑言は早苗の耳に入る。

聞き慣れた声だからか、雨音にも掻き消されなかった。

 

「ははっ、その分じゃあ、権兵衛が“名前が亡い程度の能力”で神を消してしまうかもしれないっていうのも、怪しいね。

あんたが私や早苗を遠ざける為の、嘘なんじゃあないの?」

「馬鹿を言え、お前は本気であの能力に気づいていないのか!?

権兵衛に会っている間、私の神力はどんどんと減っていったんだぞ!?」

「こちとら祟り神の束ね役、同じ山の神でも風雨が専門のあんたより、神力の減りは少なくってねぇっ!」

 

 なんて醜い、と自分を蚊帳の外に置き、早苗は思う。

罵声を叫び、権兵衛の所有権を争う姿は、とてもじゃあないが、あの優しい権兵衛に相応しい女には見えなかった。

醜悪である。

低俗である。

愚劣である。

あの高潔で、後光が差しているとしか思えない程神聖な権兵衛と隣に並べるなど、考えられなかった。

 

 そんな風に思っているうちに、早苗はふと今の二人のやり取りを思い返す。

単に諏訪子が神奈子を煽っただけの話であるが、しかし、しかしである。

本当に権兵衛は“名前が亡い程度の能力”を持っているのだろうか?

万が一持っていたとして、それは神の天敵と言うまでの能力なのだろうか?

生まれた疑問は、先ほどまで正しいと信じられるだけの理屈があった物を、強引に組み替える。

すると次々に早苗の中で思い浮かぶ考えがあった。

あれは、権兵衛を体よく諏訪子と早苗から離したいがためについた嘘なのではないだろうか?

優しすぎる権兵衛は、神奈子の汚らわしい嘘に騙されているのではないだろうか?

もしそれなら。

もしそれなら、仕える神たる権兵衛の目を覚まさせるのが、巫女としての役割なのではなかろうか?

“名前が亡い程度の能力”が神奈子にとっても都合が悪い話で、嘘を付くならもっとまともな嘘があったと言う事実を恣意的に無視し、早苗の中で次々に誤った論理のピースが積み上がってゆく。

 

「救わなくちゃ……」

 

 カチリ、と最後のピースがはまった音が脳内でし、早苗はぼそりと、出た結論を呟いた。

雷に撃たれたかのような感覚であった。

視界が霧が晴れたかのようにスッキリとする。

試しに早苗は立ち上がろうとしてみるが、先ほど絶望のあまり動かなかった体は、いとも容易く動いた。

 

「権兵衛さんを……ううん、権兵衛様を、救わなきゃ……」

 

 呟き、早苗はこれから自分の身に待ち受ける、壮大な試練に戦慄した。

雨の中、殺し合いを続ける二柱の神を見据える。

あの二人は、早苗にとって最早信仰と依存の対象ではない。

あれは。

あれは、敵なのだ。

権兵衛を惑わす、敵なのだ。

確信に満ちた考えが、早苗の脳裏を走った。

 

 最早早苗の目には、かつて慕っていた二柱の神など見えていなかった。

神奈子も諏訪子も、ただの敵としか認識できない二つの存在としか見えない。

すぐに敵を排除しようとするが、敵は早苗より遙か格上にある、正面から向かっても返り討ちだろう。

そう思い、早苗は空を観察した。

活力が戻ってきたのがいいのか、二人が消耗してきたからなのか、早苗の動体視力は二人の姿を捉え始める。

意外だが、神奈子の方が押されていた。

狂気迸る諏訪子の精神力が優っているのか、二人の服の傷跡は神奈子の方が多い。

と言っても地力は神奈子の方が上である、これで諏訪子に手を貸すのは早計と言わざるをえないだろう。

そう考え、早苗は二柱の神が互いに消耗しあい、自分の力でも排除できる時を待つ事にする。

 

「ふふふ……終わったら、権兵衛様に、褒めてもらうんだ……」

 

 そう呟き、早苗は頬を染めて自らを抱きしめた。

そして自分が寝間着のままである事に気づき、巫女服に着替えねば、と思いつく。

自分の部屋までスキップで帰り、早苗は濡れた寝間着を脱ぎ始める。

シャツのボタンを一つづつ外し、肩から下ろすと、重くなった寝間着は重力に従い畳に落ちた。

同様にズボンも脱ぐが、こちらは早苗の肌に張り付き、引っ張らないと脱げなかった。

下着もじっとりと湿っていて、気持ちが悪いので脱ぐ。

どうせすぐ濡れるのだが、気分である。

全裸になった早苗は、タオルで全身を手早く拭くと、姿見の前に立った。

濡れた緑の髪が張り付いている、全裸の少女の姿が鏡に写る。

 

「ふふふ……どんなご褒美、もらえるかな……」

 

 早苗は、右手を持ち上げ、人差し指に口づけた。

それから右手を下ろしてゆき、軌道上にある乳房の上で手を止める。

早苗は、軽く自らの乳房を揉んだ。

力に応じて乳房が凹む感触に、早苗は思わず頬を染める。

古来より、巫女は神の嫁でもあった。

そうなれば早苗もまた権兵衛の巫女になる事で権兵衛に嫁入りしたと言う事になる。

今夜私は、と早苗は思った。

今夜私は、権兵衛様と初夜を迎える事になるのだ。

厳密に言う初夜は昨夜過ぎてしまったが、権兵衛に対し宣言した日の夜であるのだから、初夜でいいだろう。

初夜と言えば、初めての夫婦の営みである。

自分が権兵衛に組み敷かれる所を想像し、早苗は僅かに息を荒らげた。

権兵衛の胸板は厚かっただろうか。

腕は逞しかっただろうか。

早苗は自分の知らない権兵衛を、一夜にして全て刻み込まれる自分を想像する。

夢のような光景に、電撃に撃たれたように早苗は震えた。

全身の肌が火照り、体を痺れるような快感が襲い、思わず股を摺りあわせてしまう。

 

 股間に手をやろうとした早苗を、巨大な弾幕がぶつかり合う轟音が引き戻した。

はっと気づき、このままでは勝った方の神が権兵衛の方に向かってしまうかもしれないと思う。

それが神奈子であれば、理性的に諏訪子の死を隠蔽するかもしれないが、諏訪子が勝者であるとすれば、それは望めまい。

手早く巫女服に着替え、何時もの格好になってから、少し考え、早苗は蛇と蛙の髪飾りを取り外し、床に投げ捨てた。

それから外に向かうと、丁度二柱の神とも消耗している所で、今出ていっても十分早苗に勝機がある所だ。

距離があるので、あまり放っておくと、一気に勝負がついた上に権兵衛の方へ向かわれてしまうかもしれない。

その危惧の為、早苗は今ここで二柱の争いに介入する事を決意する。

 

「待っててください、権兵衛様っ!

今、お救いしますからねっ!」

 

 叫び、早苗は地を蹴った。

そして殺意を全身に纏い、二柱の神の殺し合いの場へと突っ込んでゆく。

それは丁度、権兵衛の“知り合い”達が守矢神社に雪崩れ込む、一時間ほど前の事であった。

 

 

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