勇者の世話係辞めたい 作:社畜
「魔法使い様ご飯ですよ」
『いりません』
……面倒臭いなぁと言う感情はとうに消えた。むしろいつも通りだなと笑う事が出来る。終わりが見えたからこその余裕かもしれない。
「何でですか?何があったんですか?」
こう言う時には辛抱強くしつこく聞く事が大事だ。返ってそれが失敗になる事もあるけれど、お互いの意見をぶつけ合って本音が分かる事もある。
暫くやり取りを繰り返した後、彼女は漸く扉を開けてくれた。
『すいません、部屋散らかしてしまって』
「良いんですよ、貴方に怪我さえ無ければ」
『え?』
「貴方様がいなくなれば、(魔王討伐が出来なくなって)多くの人が悲しみます。それに、貴方に会えないのは私にとっても悲しい事ですよ」
だから、不用意に動かないで下さいね。と私は念を押して。食卓までエスコートして、最後の関門に向かった。
魔法使いさんと占い師さんはどちらも引きこもりがちなんだけど、両者には違いがある。それは……
魔法使いさんは、ドジっ子で落ち込んで引き篭もる。軽い方の引きこもり。そして、占い師さんは。
「今日も皆様と一緒にご飯をお食べになられないのですか?」
『食べない、一人で食べるからそこに置いといて』
いつも通り。この通り変わらずな様で。いつもなら、私は言う通りにしたけれど今日の私は違う。
「いえ、皆で食べましょう。その方が美味しいですよ」
『一人だろうと二人だろうと変わらないでしょ?良いからそこから離れて』
「そうやって逃げて、何か変わりますか?」
『はぁ?』
全ては私の自分勝手な考えの為。私が楽をする為、そして彼女達を自立させる為。彼女達を自立させる、もしくは嫌われれば辞める事が出来る!
「かれこれ何年もそうやって小さな部屋の中をコソコソと逃げ回って何か変わりましたか?」
『……変わってる!』
「変わって無いですよ。あの時、目の前で友人を見捨てたあの頃から貴方は何も変わっていない。部屋に引き篭もって自分を責めたって何も起きやしないと思います」
『……』
「でも、私や私が嫌なら友達に相談する事は出来るでしょう?いつまでも一人で考えずに皆で解決させましょうよ」
『……』
暫く言葉は返ってこなかった。やっぱり、少し言い過ぎたかな。自分の本音が抑えきれなくなってるのかもしれない。気を付けないと。
『……貴方がそんなに言うなんて珍しいわね。何かあったの?』
「私は。別に、何も」
貴方達に嫌われる為に、頑張ってるんですなんて言えない。
『突然は無理だからちょっとずつ慣らして行くことにする。まずは……』
そう言って部屋に引き摺り込まれた。
『一緒に食べてくれない?』
こうして、占い師さんと一緒にご飯を食べる事になった。まあ、これで彼女が大人になれるのなら最高だと思う。