勇者の世話係辞めたい 作:社畜
夜遅く、全員寝静まった頃。そっと扉を開けて私は家を抜け出した。そのまま、灯りが少ない夜道を歩き続け一つのバーに辿り着いた。
『フッフッフッ……時間通り。優秀だネェ、実に優秀だ』
扉を開けると、軋んだ音がして。それと共に怪しげな老婆がカウンターで出迎えてくれた。
「初めまして」
『あぁ、宜しくネェ。今回は仕事の依頼をしたくて頼ませて貰ったのサ』
そう言って老婆は笑う。何が面白いんだろうなどと突っ込んではいけない。彼女は大切な仕事相手なのだから。
『その前に軽く、話をしようかネェ。まずは……今はどんな仕事をしてるんだイ?』
私の目を見てそう尋ねると、すぐ酒を頼んだ。酔っ払いながら、面接が出来るのかと不安になるがすぐに気にするのは辞めた。
「世話係です。四人の子供の家事を担当しています」
『成程ネェ、聞いた通り。間違いないみたいだネェ、それはそれは、もしこっちの方が良かったらそっちを辞めて、こっちの専属になる気は?』
「まぁ、仕事内容次第ですかね。今の所はキツくてすぐにでも辞めたいと思ってるんで期待はしてます」
『成程ナルホドネェ。次に行こうかネェ』
そう言って、彼女はいつの間にか置かれたグラス一杯の酒を飲み干し言った。
『じゃあ何で、そんな所で働こうと思ったんだい?辛いのが分からなかった訳じゃ無いだろう?』
そう言って私の目をジッと見つめた。それに対して私は。
「百合ハーレムを作ろうとしたからです」
本音を言ってしまった。何故か、彼女の前では嘘をつく事が出来なかった。さっきも今も全部本音を語っている。
『ふむ、面白いネェ。続けて』
「私は元々、騎士団で働いていたのですが。そこは男の中の男みたいなオスを煮詰めた様な汗臭い奴しかいませんでした。たまに女性騎士がいたとしても、男に染められてまるで男と喋ってる様な感じでした。このままで良いのだろうか?そう思った時に、世話係の仕事を耳にして速攻で騎士団を退職しました。そして、思ったのです。彼女達の胃袋を掴んで百合ハーレムを作ってやると」
『……そうかいそうかい。それぐらい野心と強くイカレた心を持っていた方が耐えられるかもしれないネェ』
そう老婆は言うと会計を済まし、付いてきなさいと言って店を出た。
『此処から先の話は誰にもしてはいけないよ。いいね』
そう念を押されたので、私は強く首を縦に振った。そもそも、今転職活動してますと現上司に言えるほど私のメンタルは強く無い。
『これから、アンタに働いて貰う場所は魔王城。そして、世話をして欲しいのは魔王様サ』
討伐対象じゃないですかー、ヤダー。
え、マジ?
「え、マジ?」